2012-08-01
『或る年の冬 或る年の夏』が復刊された!
雑談・覚え書き |
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5月10日の当ブログで「復刊求む」と書いた藤枝静男の名作『或る年の冬 或る年の夏』が、講談社文芸文庫から7月末に復刊されました!
なんというベストなタイミング。これ、本当に名作です。必読です(併せて烏有版『田紳有楽』もぜひ!)
- 作者: 藤枝静男
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1993/11/02
- メディア: 文庫
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- 作者: 藤枝静男,七北数人
- 出版社/メーカー: 烏有書林
- 発売日: 2012/06
- メディア: 単行本
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2012-07-31
ロンドンに行く前に
最近ロンドンオリンピックがらみでロンドン市街の映像がよく流れていますね〜。
ロンドン地下鉄で使われている文字や標的マーク(ブルズアイ)はもちろんですが、ロンドン名物の二階建てバスでも、行き先表示や路線番号などで、河野英一さんがデザインしたニュー・ジョンストン書体が次々と映し出されています。
たくさんの日本人がオリンピックの応援にロンドンを訪れていると思いますが、ほとんどの人はそんなことには気づかずに通り過ぎているんだろうなあ。もったいないなあ。
日本人デザイナーの文字がロンドン中にあふれ、バスと一緒に街中を走り回っているんだと思うと、ロンドンにいっそう親しみがわいてきますよね。(詳しくは→烏有ブログ2010/10/29の訪英日記5で。日記3と4では河野英一さんも登場しています)
これからロンドンに向かう皆さん、その前に『ジョンストンのロンドン地下鉄書体』を読んでから行くと、よりいっそうロンドンを楽しめると思いますよ!
ジョンストンのロンドン地下鉄書体 ― Johnston's Underground type
- 作者: ジャスティン・ハウズ,後藤吉郎
- 出版社/メーカー: 烏有書林
- 発売日: 2010/12/21
- メディア: 大型本
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ついでにもうひとつ。
「くるり」というバンドのシングル『everybody feels the same』のCDジャケットで使われているフォント、ジョンストン・サンズっぽいですね。勝手には使えないニュー・ジョンストンではなくて、オリジナルのジョンストン・サンズをもとに市販用に復刻されたP22 Underground Proの方かな。
everybody feels the same(初回限定盤)(DVD付)
- アーティスト: くるり
- 出版社/メーカー: ビクターエンタテインメント
- 発売日: 2012/08/01
- メディア: CD
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2012-06-02
活字鋳造所・蔵出し記事
雑談・覚え書き |
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名古屋活版の記事のついでといってはなんですが、もう一つ活字鋳造所の記事を。
これは、印刷系某協会の会員向け冊子に掲載するはずだった記事で、書いたのは2009年の3月ごろです。
最初、先方から連載のお話をいただいて、いくつか企画案を出した中から選ばれたのが「絶滅危惧印刷」というものでした。活版やガリ版、コロタイプ、手動写植、プリントゴッコ等々、いま消え去ろうとしている印刷について、現状をリポートするというものでした。
ただ、シリーズ名が「絶滅」では差し障りがあるから「今を探る」で、ということになり、記事内容にもOKが出て初校まで出ていたものなんですが、そこで某協会内から「今さら活版もないだろう」という意見が出たということで、結局お蔵入りになったんです。
担当者からは「今の印刷会社の経営者が読んでも参考になるような、希望のある内容に直してほしい。工夫して苦境を乗り越えてきた、というような」と言われたんですが、「そうすると詐欺みたいになっちゃいます。絶滅危惧種の印刷の未来に希望もへったくれもないです」といったらボツになりました。
せっかくなので、ここで蔵出しします。
(人物写真は割愛しました。記事の最後に次回の予告もありますが、初回がボツになったので当然次回もありません。)
印刷温故知新
活版印刷の今を探る1
街の新刊書店に行き、本を開いてみる。そこには当然のように、平版オフセット印刷による文字や写真が並んでいる。経済産業省『工業統計表品目編』によれば、2006年の時点で印刷物の出荷額は平版の印刷物が全体の72.9%を占めており、凸版印刷が7.1%、凹版印刷が7.5%、紙以外への特殊印刷が12.6%とある。こと出版物の印刷に限れば、80%以上はオフセット印刷になるのではないだろうか。
一方、一歩古書店に足を踏み入れれば状況は一変する。活版や原色版、グラビア印刷、石版、銅版、コロタイプなどが1冊の中に同居し、それぞれの特徴をアピールしている。今ではアートギャラリーに並ぶことの多い石版画や銅版画が、印刷物として一緒に綴じ込まれている姿に、牧歌的な気分を感じる印刷人も多いのではないだろうか。
このコーナーでは、今日ではなかなか見ることができないさまざまな印刷物や印刷技術の今を探り、記録に残していきたいと考えている。まずトップバッターとして、文字印刷で一世を風靡した活版印刷を取り上げてみたい。
【活版印刷とは】
本誌を読まれる方には言わずもがなだが、最初に少しだけ活版印刷について。活版印刷とは、出っ張った部分にインキを着ける凸版印刷の一種で、文字どおり金属の活字を用いる印刷方法のことである。鉛、スズ、アンチモンの合金からなる活字を、原稿どおり1文字ずつ拾い(文選)、ページに組み上げて(植字)原版を作り、印刷する。部数が多い場合には原版から紙型を取り、鉛版を作る。紙型は原版の凹凸を写し取った紙製の鋳型で、これに活字合金を流し込んで原版を複製し、印刷用の鉛版を作る。印刷後は、活字をケースに戻すなり活字や鉛版を溶かすなりして再利用する。
木活字や整版ではなく、金属の活字を使った活版印刷が最初に日本に入ってきたのは16世紀末期。キリシタン版(16世紀末期)や駿河版(17世紀初頭)が知られているが、本格的な商業としての活版印刷の始めは、本木昌造が1870年に設立した新町活版所だとされている。それから約百年間、活版印刷は日本における文字印刷の主役であり続けた。しかし、1960年代から70年代にかけて、写真植字、オフセット印刷が台頭し、出荷金額は1972年、事業所数も1981年には活版(凸版)印刷と平版印刷の比率が逆転する(『工業統計表品目編』)。今では活版の印刷物を目にする機会もすっかり少なくなった。
【活字鋳造所を訪ねる】
東京都新宿区榎町に、現在も活字を鋳造している佐々木活字店(佐々木精一社長、従業員4人)がある。1919年の創業以来、印刷用活字の鋳造を主に、戦前はタイプライター活字の鋳造、現在は組版、印刷まで行っている。
同社の塚田正弘氏は、「最も忙しかった1950年代前半には、職人1人に鋳造機1台、15〜16人がフルで働き残業しても間に合わなかった」と言う。そのころ、日本でもベントン式彫刻機が普及し、「電胎(電鋳)母型から機械彫りになって、字がすっきりした。その時分はずいぶん需要があった。需要があるからモノタイプ(自動鋳植機)などが発展する」。このような相乗効果もあり、活版印刷の品質はより向上していった。塚田氏によれば、活版印刷の品質が最も良かったのは1965年ぐらいからだという。
戦前から大手、中堅印刷会社は、自社で活字の鋳造を行っていた。現在唯一同社で鋳造を担当している岸田道一氏も、最初は印刷会社の鋳造部にいた方だ。「印刷屋さんの鋳造と、活字屋の鋳造は微妙に違う。こっちはできたものを売る商売だけど、印刷屋さんは自分のところで使うから、ある程度出来が悪くてもがまんできる。買うとなると、いいもんじゃないとダメ」というような、現金な一面もあったようだ。
活版印刷が主流だったころは、印刷会社内での鋳造では間に合わず、活字会社にもたくさん注文がきた。やがて印刷会社がオフセット印刷など次の展開の準備に入ったころから、活字会社に文選、組版まで任せることが増え、佐々木活字店でも文選工を雇って対応した。腕の良い文選工は文選箱1箱(9ポで約1000本)を15分で拾ったそうだが、歩合制のため「拾うそばから活字を補充する女工さんがいて、遅れると怒鳴られる」なんてこともあった。しかし、活字を1本ずつ手で拾うのは能率が悪いと、1985年と1987年にモノタイプを導入、最初こそ2台をフルで動かしても間に合わなかったが、数年で仕事が減ってきた。現在は月刊雑誌2誌と、まれに来る単行本を組むのに使っているだけだそうだ。
母型と活字が並ぶ店内
今回の取材中にも、しばしば活字の注文が入っていた。最盛期には約300社から毎日のように注文が入ったが、現在取引のある会社は約50社。注文票も、昔は字で埋まっていたが、今は1本とか2本であることが多い。製本会社から表紙の箔押し用に活字の注文がくることもある。また最近では、活版印刷に興味を持った若いデザイナーなど、個人からの注文が少しずつ増えているそうだ。そのため、通常は5本単位で注文を受ける本文用活字のバラ売りにも対応している。
塚田氏は「昔の印刷の職人は、刷ったものに凸凹のあるのは恥だといって、へっこんでいるところに紙をはったりなんかして調整し、平らになるように刷ったもんなんですよね。ところが活版の良さを改めて見出してくれた若い人たちは、その特徴を見せるために、裏から見て出っ張ってるほうがいいって、うんと押しを強くしてくださいって。だからね、分からないです」と苦笑いをしながらも、「若い人が活版印刷に興味を持ってくれるのはありがたい。彼らも一生懸命やっている」とうれしそうに語る。そして目下の心配は、「製造がとっくに終了している活字鋳造機が、いつまで持つか」ということだそうだ。
丁寧に活版印刷された文字には、オフセット印刷にはないシャープさ、切れ味がある。次回は、そんな活版印刷の魅力に惹かれ、新たに活版工房を立ち上げた若手デザイナーと、現在も質の高い活版印刷を守り続ける老舗印刷会社の取り組みを紹介したい。
2012-05-06
名古屋活版地金精錬所について
雑談・覚え書き |
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名古屋活版地金精錬所が廃業を考えているそうです。
以前、名古屋活版を取材させていただいたことがあるんですが、『印刷雑誌』のバックナンバーを調べてみると、もう6年も前になるんですね。
最近名古屋を訪れた嘉瑞工房の高岡昌生さんの話だと、資金繰りに困っての廃業とは違うようですが、注文の低迷にやる気をなくしているようです。それにしても、このまま廃業してしまうのはなんとももったいない。ない文字は母型から製作してくれるし、活版印刷まで請け負ってくれる、貴重な鋳造所だと思うんだけど。なんとかならないものだろうか……。
当時書いた記事(『印刷雑誌』2006年3月号)を、少し加筆訂正して転載します。活字が足りなくて困っている方々、注文するなら今のうちです。そして、名古屋活版存続のために、できれば、継続的な発注を。
*関東地方からの発注の際には、必ず旧角・新角のご確認を。下記「一緒に組めない6号活字」を参照ください。
(追記:今年6月での廃業は思い直し、もうしばらく事業を継続することになったもよう。ひと安心です。→10/1のコメント欄で、ケイジ様という方から年内をメドに廃業らしいという情報をいただきましたが、11/5に名古屋活版様から電話をいただき、現在廃業の予定はなく、事業は継続していく、との力強いお言葉をいただきました。頑張ってください!)
後世に残る出版物
名古屋活版地金精錬所
現在ではほとんど見かけなくなった活版印刷。しかし,少部数の名刺,各種案内状や賞状などで,シャープな文字品質が求められるような印刷物には,今も金属活版が用いられている。出版印刷の分野でも,書肆山田のように今も活版印刷を使い続けている出版社があり,また,自費出版でどうしても詩集や句集を活版印刷で出したいという需要もあるようだ。
【毎月500社から活字を受注】
名古屋市南区要町の名古屋活版地金精錬所(鈴木宗夫代表)は,原字の設計からベントン式彫刻機を使っての母型制作,活字の鋳造と販売,活版印刷物の制作までを手掛けている。
同社の工場の周りには,廃業した活版業者から譲り受けた活字鋳造機や活版印刷機が,ブルーシートをかぶせた状態でたくさん置かれていた。これらは現在使用している機器が故障したさいに備え,部品取り用としてストックしてあるそうだ。工場に入ると,現役稼働中の50台を超える活字鋳造機が出迎えてくれた。
50台の鋳造機が所狭しと並ぶ工場内
同社では,明朝体,呉竹(ゴシック)体,正楷書体,宋朝体,各種欧文書体など,初号(42ポイント相当)から7号(5.5ポイント)もしくは6ポイントまで,様々な書体を取り揃えている。現在,顧客名簿には約2500社あり,そのすべてが活版印刷会社として稼働しているかどうかはわからないが,毎月400〜500社から活字の注文が入ってくるそうだ。
鋳造機から出てくる初号活字。母型をセットし,地金を流し込むと,正方形の活字が次々とできあがってくる
【一緒に組めない6号活字】
北海道から九州まで,全国の注文に対応しているが,活字によっては大きさの規格が違うため,注意が必要となるそうだ。
東京を中心とした関東地方と,名古屋や大阪など他の地域では,たとえ同じ号数でも活字の大きさが違うため,サイズによってはそのまま同じ版で使用することはできない。これは,ポイント活字と号数活字との併用が容易になるよう,他の地域では「6号=8ポ」となるように号数活字の大きさを変更したが,東京では変えなかったからだそうだ。ポイント活字と一緒に組めるものを「新角(しんかく)」,組めないものを「旧角(きゅうかく)」といい,旧角とポイント活字では,初号,2号,5号の活字は一緒に組めるが,その他の1号,3号,4号,6号といった活字とはサイズが合わないのだ。
活字がびっしりと詰まった活字棚。現在約150トン分を常備している
【ない文字は原字から制作】
同社では,ベントン式彫刻機用の原字の設計から行っているため,たとえ母型がない文字であっても,新たに作ることができる。弊社が発行している『欧文活字』(*印刷学会出版部で発行していた復刻版)でお馴染みの(有)嘉瑞工房も,長宋体(長体宋朝体)は同社から購入している。嘉瑞工房の名刺で使っている長宋体の漢数字は,縦組用に原字から書き起こしたものだ。通常,長宋体の活字ボディは縦長であるため,縦組には向かない。そこで,縦に組んでも字間が空きすぎないデザインを特注したのだそうだ。
ベントン式彫刻機でパターンをなぞり母型を制作する。パターンは,原字を元に画線部分を凹型とした文字版のこと
名古屋活版地金精錬所の鈴木代表は,「活版印刷はオフセット印刷と比べて文字がくっきりとシャープ。褪色も少ないため長期保存できる。後世に残したいものにはやはり活版印刷」と語る。しかし,年々詩集や小説など数十ページを超える出版物を請け負える活版印刷会社が少なくなっている。そこで同社では,今後は活字鋳造だけでなく,活版印刷物の制作も積極的に行っていく予定だ。また,和紙メーカーと協力し,手漉き和紙と活版印刷それぞれの特徴を活かした新商品の開発も進めている。(編集部U)
組版したものを結束糸で縛り,句集1ページ分の版が完成
(印刷学会出版部発行『印刷雑誌』2006年3月号より転載)
ケイジ
名古屋活版さんは年内をメドに廃業を決められたようです。
uyushorin
ケイジ様
名古屋活版さんの情報、ありがとうございます。
モチベーションが戻ってこなかったのでしょうね。
年内ですか……残念です。
uyushorin
今日名古屋活版さんからお電話をいただき、
けっして廃業を決めたわけではなく、事業は継続する、
とのことでしたので、訂正させていただきます。
誤解を与えてしまい、誠に失礼いたしました。
ケイジ
先週でしたが、NHK名古屋放送局ニュース番組「ほっとイブニング」で、この名古屋活版が詳しく紹介されました。「国内で唯一50年以上、活字の母型を作り続けている熟練職人が名古屋市の工場にいる。活版印刷にこだわる最後の活字職人の熱い思いを伝える。」という内容でしたが、それによれば、「やれる限りやる」というご発言でした。
実は昨年、廃業を決める方向であったことは嘘ではありません(ご本人から伺いました)。ただ内々の話で正式なものではなかったので、それを書いてしまい、本当にご迷惑をおかけしました。事情は判りませんが、継続の意思を固められたのでしょう。
ひとまず、嬉しいかぎりです。こちらこそ失礼いたしました。






なお『アンゴウ』『剃刀日記』『田紳有楽』『欧文活字』が我が家の書棚に並んでいます。『ジョンストンのロンドン地下鉄書体』は本屋の不手際で、まだ書棚に到着しておりませんが。
先日は東京での知人の個展に顔を出したついでに、青山ブックセンターのタイポグラフィ本フェアをちょっとチェックしてまいりました。
コメント、そして烏有本のコンプリート!誠にありがとうございます。
『或る年の冬 或る年の夏』は大好きな作品なので、
書店店頭で復刊を知ったときはうれしい驚きでした。
藤枝文学、今後もますます盛り上がってほしいものですね!