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2018-02-18

「脱原発政策は国家を滅ぼし国民を不幸にする」

エネルギー会が「脱原発政策は国家を滅ぼし国民を不幸にする」という資料を発表している。中で明らかな間違いがあるので指摘しておこう。

http://www.engy-sqr.com/media-open2/20180214datugennpatu.pdf

11、12pのエネルギー収支比についての記述。最新のドイツの研究とはこの論文のことだろうと思われる。

http://festkoerper-kernphysik.de/Weissbach_EROI_preprint.pdf

その最終ページに12pと同じ図が載っている。左から5番目、エネルギー会の資料にはLNGとあるが、論文にはCCGTとはあるがLNGの記載は無い。ドイツはロシアからのパイプラインがあるからドイツの論文でLNGを比較する必要が無い。ドイツ論文では液化はしていないということだ。

では液化した場合のエネルギー収支比はどうなのか。電中研H7

http://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/download/2uabJbYFY0yhUTbskum6WNbmIlWEZBIu/Y94009.pdf

原子力学会天野2006 http://www.rist.or.jp/atomica/data/pict/01/01040119/07.gif

ウイキペディア https://ja.wikipedia.org/wiki/エネルギー収支比

産総研 2008 https://unit.aist.go.jp/rcpv/ci/about_pv/e_source/RE-EPR.gif

定義が違うのか、値も比率も様々だが、LNGのEPRは太陽光や風力より低いかせいぜい同等というものが多い。もちろん最新の研究で変わる部分もあるだろうが、それは再エネのEPRが高まる方向に働くだろう。

ワイスバッハはEPRの高いCIGS等の化合物半導体を考慮に入れていない。産総研は寿命後のリサイクルを考慮に入れている。産総研とワイスバッハの比率が大きく違うのはたぶんそのせい。どちらが実態に近いかと言えば産総研だろう。

つまり、エネルギー会の資料は液化しない天然ガスの資料を液化したものと誤った表示をしている上、再エネの実態も反映していない資料を参考にしている。いずれも正しく評価すれば再エネのEPRがLNGを超えることは十分期待できる。

日本の今の主力電源がLNGなのだからそれよりエネルギー収支比の高い再エネを使うことには少なくともエネルギー収支比の点からは問題がない。残念ながらエネルギー会の資料は都合のいい資料を探し出して根拠にしている感が強く、説得力のあるものとは言えない。

以上は資料のうち再エネを批判する目次の1の内容の一部。全体目次はこうなっている。

1. 安定供給の視点から 再生エネには限界がある (安定供給)

2. 温暖化対策の柱として原子力発電は不可欠である (温暖化対策)

3. 脱原発・再エネ全面依存は国民負担の増大で国民生活を脅かす(経済性)

4. 我が国のエネルギー安全保障上 原子力の利用は欠かせない (安全保障)

5. リスクゼロの追求は国民を幸福にできない (原子力安全)

6. 核燃料サイクルにより日本のエネルギーは盤石に(Pu利用 )

7. 高レベル放射性廃棄物は地中深く安全に処分できる (廃棄物処分)

8. 我が国の産業基盤維持のため、原子力産業の発展はゆるがせない(産業基盤)

9. 原子力指向の世界的潮流の中で取り残されてよいのか (世界的潮流)

10.日本のエネルギーの将来は (原子力あるのみ)

それぞれコメントしてみよう。

1.変動性再エネが安定供給上難があるのは皆わかっている。それを改善する技術開発は必要。しかし限界を先に決めてしまってはだめだ。

2.温暖化対策には原発は有効だが、国土が狭く地震・津波・天災の多い日本でやらなくても問題はない。また、再エネも温暖化対策に有効。つまり日本では温暖化対策として再エネがより適している。

3.再エネは設備費割合が大きく一時的に負担が大きくなるのは避けられないが、再エネ価格は世界的には大きく下落しており、経済性も認められている。将来的には燃料費ゼロで寿命を延ばすほど経済性は改善する。日本が高いのは土地代人件費が高いなど日本特有の事情があるが、その費用は国内で還流する。経済性もすぐに答えをだせるものでなく、改善努力でよくしていくことができる。

4.安全保障なら燃料が不要の再エネが一番。原子力はウランが輸入できなければ終わりだ。ただし海水ウランを実用化すれば別だ。エネルギー安全保障を言うなら海水ウラン研究を進めるべきだろう。

5.リスクゼロなんて国民はだれも追及していない。追及しているのは安全神話を宣伝する電力会社。なぜリスクゼロを言わなければならないかというと保険がないからだ。無保険なのに安全神話を信じて原発を動かせば国民は不幸になる。

6.もんじゅも再処理工場も失敗続きでいったいいつの話をしているのだろうか。プルトニウム利用ができるころには元になるウランが枯渇しているのでは?

7.そりゃ処分はやればできる。しかし何万年の安全を確認できる人はいない。反対運動は当然起きる。そしてこれまでのところ処分地選定は成功していない。学術会議が当面中間処分とレポートを出しても無視。やる気があるとは思えない。

8.だいたい、原発をターンキー契約で買った国に産業基盤なんてない。下請け企業の集合に過ぎない。国民の半数が再稼働にすら反対で、ウランは将来枯渇するのだから国内の原発産業の衰退は明らか。産業が大切なら海外で思う存分活躍すればよい。

9.原子力の世界の潮流が原子力拡大ならウラン枯渇は早まる。つまり早期撤退がベスト。逆に原子力縮小なら日本は世界の潮流の先端だ。

10.この期に及んでもプルトニウム活用を主張するなどの頭の固さはどうなっているのだろうか。様々な選択肢があるのに他を否定することだけに全力を注ぎ、過去の路線の延長だけが有効と思う人だけで日本の原子力は構成されている。百歩譲って原発を活用するにしても根室に移転すればいろいろといいこともたくさんあるのだが。やるべきことは原子力関係者の性格を改善することだろう。まあ、無理だろうな。

http://agora-web.jp/archives/2024855.html