Dry Season (Dratt)

先週に引き続き、UW Cinematheque で Dry Season (原題:Daratt)というアフリカ映画を見てきました。アフリカ映画というのはそもそも珍しい(多分初めて見たと思います)のですが、しかもチャド共和国作品というのは貴重であるようです。チャドと言えばしりとり界における代表的なチートのひとつである「ン」から始まる固有名詞であるところの「ンジャメナ」という首都以外に何も知らなかったのですが、アフリカの中央部にある貧しく、内戦に苦しんできた国の一つであるそうです。
上映前に映画学科の教授と思しき方による簡単な映画紹介があったのですが、チャド国内には映画会社がないため、他のアフリカ映画と同様に複数の国による合作となっているようです。おそらく予算はそれほどかかっていないと思われますがとても良くできた映画で、昨年のベネチア国際映画祭では審査員特別賞を受賞したようです。
内容は、内戦中に父親を殺された少年が親の仇(かたき)に復讐することを決心して実行に移すまでの心の葛藤と心境の変化、そして成長を描いた話なのですが、仇が働いているパン屋を見つけ出して様子をみてみると、妊娠中の美しい妻と暮らし、モスクに熱心に通う敬虔なムスリムで、近所の子供に無料でパンを分け与えるという無骨ながらも過去の過ちを反省してまっすぐに生きている男であることがわかり、祖父から託された父親の形見でもある銃で復讐をうとうにも躊躇しているうちに成り行き上住み込みでパン屋で働くようになり、衝突しつつも心の触れ合いを交わすうちに不思議な親子のような関係が芽生えてきて、最初は尖っていた少年の心境も次第に変化していく、そんなある日のこと・・・というような話です。ラストシーンはネタばれしないでおきますが、かなり感動しました。特に砂漠で少年を中心として3人の男が直線上に並ぶシーンは象徴的な場面であるとともに奥行きのある構図が面白くてとても印象的でした。