サーカスの虎がいなくなった街で。

 仕事を終えて綱島に出る。


 この街に新しい古本屋ができたということを「古本屋ツアー・イン・ジャパン」で知り、これは一度覗いてみようと思い立った。


 ブックオフのあるブロックのひとつ手前(駅寄り)の通りに面したビルの1階に開店したての古本屋「FEEVER BUG」があった。


 すこし通りから引っ込んだガラス張りの入口を入ると予想より広い店内に本、漫画、CD、DVDなどが整然と並んでいる。品揃えの詳細は上記“古ツア”さんのブログを参照してもらうとして、率直な印象はサブカルを中心としたストレートな中央線系古本屋だなあというもの。数列ある書棚のひとつが絵本の棚になっているのもまさに中央線ぽい。


 挨拶代わりに1冊購入。

 店の雰囲気に合わせたサブカルな本を選んでみた。


 この街には以前「湘南ブックサーカス」があり、それが無くなってその跡地に「ジェットシン」という古本屋が入っていたのだが、それも数年前にやめてしまっていたため、ブックオフ以外に古本屋がなくなっていたのだ。


 この新しい古本屋の誕生を喜びたい。


 せっかくここまで来たのでブックオフにも寄る。105円棚から。


 「諸葛孔明」は最近ちくま文庫に入った。最近のちくま文庫は中公文庫の絶版ものをラインナップに加えようという動きを見せている。それは歓迎したいのだが、この「諸葛孔明」は中公文庫版をブックオフでいまだによく見かけるのでちくま文庫でという気持ちがおきない。吉田健一「東京の昔」の中公文庫はめったに見ないからちくま学芸文庫を買ったけどね。 

諸葛孔明 (ちくま文庫)

諸葛孔明 (ちくま文庫)

東京の昔 (ちくま学芸文庫)

東京の昔 (ちくま学芸文庫)


 ヘッセ本は新潮文庫の平成5年の復刊シリーズの1冊。世界文学だから青い背のヤツ。このシリーズの神西清訳「チェーホフの手帖」も欲しいな。

 現代教養文庫夢野久作小栗虫太郎久生十蘭の傑作選シリーズは中学・高校時代に本屋で見かけるたびに何やら自分の知らない魅惑的な世界が詰まっていそうでゾクゾクした。その気持ちが今でも残っているから105円なら迷わず買います。


 ブックオフを出て駅に戻る。最近ここに東池袋に総本山があったあの有名店直系を謳ったラーメン屋がオープンしたと聞いたので探してみると駅前にすぐ見つかった。


 さっそく特製つけ麺の“中”を頼んでみる。つけ汁を飲んでみると魚節のダシのきいた醤油味。横浜にあるこれも直系を標榜する店の味とはかなり違うような気がする。東池袋の店には行く機会がなかったため横浜の店の味をそれだと思っていたのだがそうではないのかなと疑問に思う。どちらが東池袋の味に近いのかは分からないのだが、個人的には横浜の味の方が好きだな。ただ、横浜もここも麺の量はやたら多いので食べ切るのに難儀する。落語「そば清」の清さんではないが消化を助ける草があれば舐めてみたいくらいの満腹の身体を抱えて電車に乗って帰る。