晩鮭亭日常

2017-08-27 小沢昭一的墓参。

小沢昭一的墓参。



 今日は休み。


 お盆に行けなかった墓参りに行く。陽射しは夏だが、今日は風にどこか秋が交じっているような涼しさが感じられて助かる。


 2時間ほどの車中は、岡崎武志人生散歩術」(芸術新聞社)を読む。“井伏鱒二”、“高田渡”、“吉田健一”、“木山捷平”と読み進めながら、東武線一ノ割駅に到着。小さい駅ながらもいつもは駅前に一台はタクシーが並んでいるのだが、今日は影もカタチもない。駅前のコンビニで線香と供え物を買って歩いて霊園へ向かう。風に吹かれながら20分弱歩く。古利根川沿いの車の通りの少ない道なので、イアフォンで「CD版 小沢昭一的 新宿末廣亭 ごきげん三夜」を聴きながら歩く。このCDの存在を知ったのは『本の雑誌』9月号に載っていた連載エッセイユーカリの木の蔭で」の中で北村薫さんが《小沢昭一が、新宿末広亭の高座に上がったのが、平成十七年六月下席。連日超満員、末広亭が壊れるのではーーという奇跡の十日間となった》と紹介する高座の音源CD銀座山野楽器で手に入れた喜びを語っているのを読んだから。最近雨が続いていたせいか、小さな川なのにまるで大河のように水を満々とたたえた古利根川を横目に見ながら小沢昭一的話芸を楽しむ。スタッフが記録用に舞台袖で回していたカセットテープ音源だから音質はよくないのだが、そんなことまったく気にならない。この十日間がどれほど至福の時であったかが手に取るようにわかる。もちろん、そこにあるのは豊富な経験に裏打ちされた話芸であり、語りの強弱であり、知識であるのだが、それ以上に小沢昭一という役者であり、放浪芸の探求者であり、落語音曲の愛好者である人間そのものを聴いている喜びである。

 寺とこうべを垂れた稲穂に囲まれた昼下がりの道を思わず「あはは」と笑いながら歩いていると、これから両親の墓参りをしようとしている自分がとんだ親不孝に思えてしまうが、面白いものはしょうがない。


【早期購入特典あり】CD版 小沢昭一的 新宿末廣亭 ごきげん三夜+CD版 小沢昭一的 新宿末廣亭 たっぷり四夜(同時購入特典:CD版 小沢昭一的 
新宿末廣亭シリーズ特製・全3形態収納スリーブケース付)

本の雑誌411号2017年9月号


 よく絞った雑巾で墓を拭き(柄杓で水をかけると墓石がいたむのでよくないと業者の人に教えられた)、雑草を抜き、霊園の事務所で買った花を供え、線香に火をつける。缶ビール缶コーヒーを置いて手を合わせる。同じ霊園にある母方の伯父の墓にも参って霊園を後にする。墓参りをすると少し心が軽くなる。残された者のメンタルケアとして墓参はあるのだなとつくづく思う。帰り道も小沢昭一。古今亭志ん生を語っている。バチが当たるくらいに面白い。こんな面白いものを教えてくれた作家北村薫さんは埼玉県のここら辺の出身だから、なんだか奇遇な感じがする。



 せっかくここまで来たのだからと姫宮駅近くにある知人のパン屋に寄ってパンをしこたま食べ、しこたま買って帰る。



 帰りの電車も「人生散歩術」。詩人田村隆一神保町の裏通りで飲んでいたという話になったところでこちらも乗り換え駅の神保町へ到着。東京堂書店に寄り道。




古典名作本の雑誌 (別冊本の雑誌) [ 本の雑誌編集部 ]



 埴原一亟(はにはら いちじょう)の小説に魅せられた京都古書善行堂店主の山本さんがセレクトした小説集。夏葉社らしくシンプルだけど趣味のいい装幀の本となっている。

 「古典名作 本の雑誌」は様々なジャンルの名作を20ずつ挙げていくという本。巻頭の対談・佐久間文子×津野海太郎「死ぬまでに読みたい古典名作」の中で永井龍男青梅雨」(新潮文庫)が挙がっているのに小躍りする。岡崎武志さんの推奨で初めてこの短編集を読んだ時の衝撃は忘れがたい。淡々としてうまく、坦々としてすごい。



人生散歩術 こんなガンバラナイ生き方もある [ 岡崎武志 ]

青梅雨 (新潮文庫) [ 永井龍男 ]


 神保町から地下鉄に乗り換えて地元駅へ。「人生散歩術」は“古今亭志ん生”まで進んだ。さっきまで小沢昭一語るところの志ん生を聴いていたところだからタイムリー。貧乏のどん底で家賃は只だがなめくじが出る長屋に越した志ん生一家。なめくじを殺そうと塩をかけるが、大きな奴がその塩を頭をふって払いのけていくという志ん生の語りを語る小沢昭一の声を思い出し、ニヤニヤしている内に駅に着く。なめくじの頭ってどこだろう。


 そういえば、昨日の夜に再放送を録画したNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の33話「嫌われ政次の一生」を観た。これまで観たことのないドラマの1話だけを取り出して観てあれこれ言うのは僭越なのだが、評判通り直虎(柴咲コウ)が政次(高橋一生)を処刑するラストシーンは見事だったと思う。ただ、一番気になったのはそこではなく、政次の詠んだ辞世である《白黒をつけむと君をひとり待つ天つたふ日そ楽しからすや》と言う歌。先日ブルーレイで2回目の「カルテット」見直しをしたばかりの僕からするとこれは主題歌「おとなの掟」の《白黒つけるにはふさわしい 滅びの呪文だけれど》を意識したものになっているとしか考えられない。33話の題名に政次役の俳優名前を入れるような脚本家ならそれぐらいやってもおかしくはないと思うな。

 

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