田中ユタカ/愛しのかな(2)

絵:★★★★★、話:■■■■■、愛:♥♥♥♥♥、次回購入意欲:♪♪♪♪♪♪

愛しのかな(2) (バンブー・コミックス DOKI SELECT)

愛しのかな(2) (バンブー・コミックス DOKI SELECT)

 心も体も限界を超えて疲れ切ってしまうと少々工口い話では何のエネルギーも湧いてこなくなります。そんな時でも荒んだ魂を救ってくれる本だと思います。なんかね、ほんとに幸せな気分を分けてもらいました。
 ヒロインのかなの愛らしさは筆舌に尽くしがたいのですが大吉くんがまたすばらしい。こいつになら、かなを任せられるみたいな、そんな二人の愛のお話です。二人が出会い愛を深め合う1巻めも大好きな本なのでしばらく語りたい気持ちもあるんですが2006年最高の1冊であるこの本を読んだことがないなんて不幸な人はいないと思うので内容は省略。この巻は、そうして始まったふたりの生活が綴られています。1巻ではこれだけ愛し合ってても、かながこの世のものじゃないため急にいなくなるんじゃないかという不安みたいなものがありました。楽しく笑えるシーンでもどこか哀しく切ない空気が残っていたのですが、この巻はそうした不安が薄れ、アパートの外の世界を出て大吉くんといっしょに楽しんでいるのを見て思わずニコニコしてしまう自分が居ました。こういう人物の魅せ方はほんとうにすばらしいですね。彼女が発する表情や動きや声などすべてのものにぶれがなく、アンリアルなものをリアルな人物に変える力を感じます。
 なお1巻は工口工口なラブラブシーンが結構ありましたが2巻めはLIFE12(第12話)だけ。しかも顔の表情をメインに直接的な表現はキスくらいなんですけど、うまいよなぁ。バタバタとじゃれ合う「動」のシーンからスッと重なり合ってキスを交わす「静」のシーンに移り、かなの呼吸音が徐々に荒くなっていくあたりの演出はごくりと喉を鳴らしそうでした。
 最後に、このシリーズには、かな、大吉くん以外にコンビニのオカルト好き店長と店員の女の子、そしてエッチのやりすぎから恋煩いまで診断できるお医者さんくらいしか主要登場人物はいなかったのですが、詩子さんというこれまた不幸な女の子が新しく加わりました。かなとの関係が崩れるとは思えないのですが次巻はどう展開するのか楽しみです。

井ノ本リカ子/モモタノハナ

絵:★★★★★、話:■■■■□、愛:♥♥♥♥、次回購入意欲:♪♪♪♪

[isbn:9784840122153:detail] 田中氏の作品の感想を書いた日なので出来が悪ければ別の日にしようかと思ったのですが、こちらも良作でした。完全な一般向けでしかも絵柄にふさわしく淡い純愛ストーリーです。私は井ノ本さんの非工口作品を読むのははじめてだったので、ちょっと調べてみたら児童向けに「[isbn:9784757503014:title]」で他の作家と一緒に執筆されているようです。全然中身が想像できないので読んでみたいなぁ。

 さて、舞台は田舎町の高校。入学シーズンから少し遅れて転校してきた主人公桃太(姓は春原!)とそこで出会う女の子とのお話。主人公はどちらかというと内気でストーリーをぐいぐいひっぱる力もないんですが1巻通してちゃんと存在感は示せてたと思います。どきどき感を共有するにはいいキャラクタなのかもしれません。美人で優等生で委員長のさゆりさんと、ご近所でちょっと妹っぽい、うめちゃんらと少しずつ接近する、どちらかというとのんびりした展開でしたがダレた感じもなく最後までいい雰囲気を楽しめました。それにしても、ヒロインのひとりが「うめ」って名前はすごいなぁ、いくら田舎でも。と思ってたら主人公は「桃」太だし、他に、さ「ゆり」に「菊」乃。そして「竹」田くん。お花や木の名前をつけたかったんですね (w いえ、いいんですよ、「うめ」じゃなく「うめちゃん」と呼べば可愛いし。ただなんとなく手抜き感が...。
 少年漫画系ではちょっと読めない淡いお話だったので、ちょっと少女漫画っぽいテイストを感じましたが、広い層に読んでもらえる作品になっていたんじゃないでしょうか(私が読めるという点で)。こういう作品を今後も描かれるなら応援したいですね(刺激が少ない話はなかなか売上げにつながらないかもしれませんけど)。さりげなく漂う色気(単に巨乳だからじゃなく柔らかい体の線とか、むちむちの太ももとか)に反応してくれる読者が多ければいけると思うんですが。
 それにしても普通の工口以外にショタ、ホモ、スカトロから純愛まで描くんだからプロだよなぁ。確かに大きく作品の軸がずれてるわけでもないんですけど、男性作家ではこういうジャンルを同時に描ける人は思い出せません。