一応、邦画劇場

過去の自分、現在の自分、そして未来の自分に向き合う映画鑑賞

Wの悲劇

私的評価★★★★★★★★★☆

Wの悲劇  ブルーレイ [Blu-ray]

 (1984日本)

 「顔ぶたないでっ! アタシ、女優なんだから!」

 劇団「海」の研究生、三田静香(薬師丸ひろ子さん)は、20歳の女優の卵。オーディションで役を得るため、劇団の帰り道でもセリフの練習を繰り返すなど、日々努力を重ねていた。その様子を公園で見ていた不動産屋の社員、森口昭夫(世良公則さん)が、静香に声をかける。昭夫は、挫折した元劇団員だった。静香は劇団の次回公演『Wの悲劇』の選考オーディションに臨むが、狙っていた主役の座は同期のかおり(高木美保さん)に射止められ、静香はセリフが一言しかない端役(兼プロンプター)を与えられたのだった。オーディションに失敗し落ち込む静香に、昭夫は劇団員当時の苦悩や葛藤を、自分の友人のこととして語って聞かせる。そして昭夫は、静香がスターになれなかったらという条件で結婚を申し込み、逆に静香が女優として成功した場合は、サヨナラの意味を込めて、大きな花束を贈ることを約束する。そんな静香に、かおりから主役の座を奪いとる、千載一遇のチャンスが訪れる。しかし、それは引き換えに看板女優のスキャンダルを被るという、危険な賭けだった…。


 薬師丸ひろ子さんの、アイドルから本格女優への転機となった作品。
 オリジナルの脚本と演出が、実に緻密で凄いと思いました。
 看板女優役の三田佳子さんの演技は、もちろん風格があって凄いのですが、同じ劇中劇に出演される俳優の皆さんがベテラン揃いで、たいそう重厚感のある舞台になっています。

 そして、主役の薬師丸さんが、それまでのアイドル然とした、可愛いだけの映画と違って、凄かったのです。舞台の上では、意欲に満ちた新進気鋭の女優として和辻摩子役を凛々しく演じ、舞台の外の素の三田静香では、大丈夫かと思うほどブサイクで垢抜けない研究生を演じ、そうかと思うと、時折ハッと胸を打たれるほどの気高い美しさを全力で発揮してみせる『女優』という役柄を、見事に演じきっていたのです。とにかく、薬師丸さん演じる静香の一挙手一投足から、目が離せません。その時々の心の動き、表に出てくる表情やしぐさが、気になって仕方なくなります。それほど、静香は魅力的な役になっています。

 エンディングは、元々のシナリオとは異なるのだそうです。ステキな終わり方なんですが、よりによって、そんな顔でポーズ入れちゃうなんて…そこで☆ひとつ減点って、厳しいかしらw?

●監督:澤井信一郎 ●原作(劇中劇):夏樹静子(小説「Wの悲劇」/角川書店刊)