隣の大統領〜「私のスイス案内」を読みました。

笹本駿二 著 岩波新書 日頃通勤につかっている電車に乗ったところ、ふと、向こうにいる人品卑しからぬ中年男性。 なんだか見覚えがある。 あれ?内閣総理大臣の鳩山さんではないか。 見つめていると向こうから挨拶をしてきて(「こんにちは」)、おいしいラ…

伝説の人物〜「レッド・ダイアモンド・チェイス」をよみました。

チャールズ・ベノー 坂口玲子 訳 早川書房 家族や親戚の間で、何かと話題にされる人物というのは、いないだろうか。 何かすると(何もしなくても)なにかと比較対象され、説教のタネにされる。 例えば・・・「何々はお前の年では、もう(何かすごいこと)を…

超「かっこいい」小説〜「身元不明者89号」を読みました。

エルモア・レナード 田口俊樹 訳 創元推理文庫 さっき調べたが、エルモア・レナードはこのブログでは初紹介のようだ。 いや〜、面白いのに、このブログはじまってからは、読んでないか、読んでも紹介しなかったのか〜。申し訳ない。 虫が思うに、小説の形容…

やったぁ、勝ったぜ!・・・で?〜「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」(下)を読みました。

ジョージ・クライル 真崎義博 訳 早川書房 ヴェトナム戦争をご存知だろうか。 本来はヴェトナムの内戦だったが、アメリカは1965年(北爆開始)に参戦して以来、煮え湯を飲まされ、散々な目にあったあげく、敗退した。これはゲリラ戦が本式の軍隊に勝った…

政治家に何ができるのか〜「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」(上)を読みました。

ジョージ・クライル 真崎義博 訳 早川書房 これは映画になっている。映画はまだ観ていない。いずれテレビ放映されるまで待とうかなと思う。 実在の人物に関するノンフィクション。主人公は、チャーリー・ウィルソン。テキサス州選出の下院議員である。5年目…

ふるさとに帰るネロ・ウルフ〜 「黒い山」を読みました。

レックス・スタウト 宇野輝夫 訳 ハヤカワ・ミステリ 出た〜〜〜!ふっか〜〜〜つ!!未読のネロ・ウルフもの! しかも、巨デブのネロ・ウルフ、運動するとか言って、ダーツを買ったのに、矢が落ちたのを拾ってもらうのを待っていたあの、ネロ・ウルフが・・…

人の精神という素晴らしいもの〜「レナードの朝」を読みました。

オリヴァー・サックス 春日井晶子 訳 早川書房 これは昔、映画を観た。 最近、インフルエンザが流行っているが、第二次大戦後にインフルエンザが大流行した際に、それと時を同じくして、おそらくその後遺症と思われる眠り病と呼ばれる奇妙な病気にかかった人…

メンズリブという生き方〜「男の人ってどうしてこうなの?」を読みました。(5)

スティーヴン・ビダルフ 菅 靖彦 訳 草思社 さて、この本が提案する新しい男の生き方は7つのステップに分かれていて、まだ「父親との関係を修復する」と「セックスに神聖さを見出す」の二つしか終わっていない。なお最初のステップからふまなくてはならない…

男とセックス〜「男の人ってどうしてこうなの?」を読みました(4)

スティーヴ・ビダルフ 菅 靖彦 訳 草思社【はじめに】 更新が遅れてしまった・・・。この題名を見てもらうとわかるように、かなりタブーな話題な上に、考え始めるといろいろ浮かんで筆が止まってしまうためである。ウーマンズリブもそうだが、メンズリブも、…

父親との対決〜「男の人ってどうしてこうなの?」を読みました(3)

スティーヴ・ビダルフ 菅 靖彦 訳 草思社 ではどうしたらいいか。 男性がこのように孤独を感じ、強迫的なまでに競争的であり、感情を表に表すことをおそれているのはなぜか。 答えは簡単、どうしたらいいかわからないからだ。 成熟した大人の男性は、自分の…

死ぬな!日本の男たち〜「男の人ってどうしてこうなの?」を読みました(2)

スティーヴ・ビダルフ 菅 靖彦 訳 草思社 警視庁によると、2008年の日本の自殺者数は3万2249人という多さである。世界的にもロシアに次ぐ。うち男性は2万3478人にもなる。去年は、平均して毎月2千人近い男性が、人生に絶望して自殺をはかり、成功したこ…

メンズリブ入門〜「男の人ってどうしてこうなの?」を読みました。(1)

スティーヴ・ビダルフ 菅 靖彦 訳 草思社 ウィメンズリブ、もしくはフェミニズムについては最近日本でも広く認知されてきている。上野千鶴子さんなどのご著書などを拝見すると、日本のフェミニズムは欧米のものとはちょっと違うような印象を受けるが、今回は…

9・11はアメリカのオウム事件〜「自爆テロリストの正体」を読みました。

国末憲人 新潮新書 9・11事件やロンドン地下鉄での同時多発テロ、モロッコでのテロ事件など、ここ10年くらい、自爆テロが次から次へと発生し、何物にも代えがたい貴重な命など多数の損害が発生している。こういったテロリストにどういったイメージをお…

さよならマイホームドリーム〜「住宅喪失」を読みました

島本慈子 ちくま新書昔「夢にまでみたマイホーム〜」なんていう歌の一節があった気がするが、「マイホーム」はほとんどのサラリーマン家庭にとっての夢だった。今でもそうだろう。しかし、今・・・その夢が遠ざかりつつある。 派遣村の時に、自動車工場の閉…

死ぬことに向き合う〜「死ぬまでにしたい10のこと 初めて人生を愛することを知った女性の感動の物語」を読みました。

ナンシー・キンケイド 著 和田まゆ子 訳 祥伝社 これは深夜テレビでやっていた映画に感動したため、原作本を読んでみた。短編なのですぐ読める。 これは映画のほうがよかったかもしれない。 というか、20代そこそこで、ガンで死んでいく女性が死ぬまでにし…

自分の時間を取り返せ!〜「モモ」を読みました(5)

ミヒャエル・エンデ 作 大島かおり 訳 岩波書店 ふと気付いたが、登場人物の紹介だけで、肝心のあらすじにからむところは何も紹介していない。 本の表紙に書いてあるように、「時間ドロボウから時間を取り戻した女の子(=モモ)のお話」なのだが。 さて、時…

観光ガイドのジジ〜「モモ」を読みました。(4)

ミヒャエル・エンデ 作 大島かおり 訳 岩波書店 さて、今日は、モモのもう1人の親友を紹介する。 前回紹介した道路掃除夫ベッポは小柄で無口なおじいさんだったが、こちらはハンサムな陽気な若者である。なによりも対照的なのは口から生まれてきたのかと思…

道路掃除夫ベッポ〜「モモ」を読みました。(3)

ミヒャエル・エンデ 作 大島かおり 訳 岩波書店 聴く才能のある女の子、モモには二人親友がいる。 まずは、道路掃除夫ベッポ。 無口なおじいさんである。 虫は「モモ」にでてくるキャラクターで、一番自分に近いような気がする。親近感を覚える。それはこん…

「聴く」という才能〜「モモ」を読みました。(2)

ミヒャエル・エンデ 作 大島かおり 訳 岩波書店 大きな男物のブカブカの上着を着て、(袖は折って)つぎはぎのスカートをはき、はだしで歩く女の子、モモ。 年は10〜12歳ぐらい。本人に年を聞くと、生まれた後のことしか覚えていないので、わからないと…

気がつくと、周りに誰もいなかった。〜「モモ」を読みました。(1)

ミヒャエル・エンデ 作 大島かおり 訳 岩波書店 気がつくと、周りに誰もいなかった。 小学校4年か5年の時である。田舎の小学校に通っていた虫は、大人しい、目立たない子だった。 担任の先生は体育の若い男の先生で、その先生の授業だったと思う。あ、小学…

書く時間の長さと作品の完成度〜「フランチェスコの暗号」(上・下)を読みました。

イアン・コールドウェル&ダスティン・トマソン 薄くても何回もエントリを書きたくなる本もある。内容がそれだけ深いのだ。 しかし、これは、上下巻分かれていて、けっこう厚いのだが、今日一日で十分。短めでいいぐらいだ。 それに、解説の最初で簡潔な、言…

悪(ワル)になりきれない悪人〜「マクベス」を読みました。

シェイクスピア 作 木下順二 訳 岩波文庫「なんだあの血まみれの男は?」 シェイクスピアの劇作は皆そうだが、有名なので、知らず知らずあらすじを覚えてしまう。この冒頭の方に出てくる有名なセリフなんて、あまりにいろいろなところで引用を耳にした。 さ…

あなたの人生と命くれますか?〜「テイキング ライブス」を読みました。

マイケル・パイ 広津倫子〔訳〕 徳間文庫 「今の自分としての人生を捨て、全く新しい人生を送りたい」 そう思ったことはないだろうか。 誰でもちょっとは、あるのではないか。 引越し(転校)や旅行や進学がわくわくするのは、そのためではないだろうか。 夜…

SF抒情詩〜「太陽の黄金(きん)の林檎」を読みました。

レイ・ブラッドベリ 小笠原豊樹 訳 ハヤカワ文庫 昨日も書いたと思うが、どうも、SFは苦手である。時々、読んでみようかな・・・と手を出すものの、やっぱり「ミステリの方が面白いや」と思ってしまう。そのためか、天秤の片方に読んだことあるミステリを…

パラレルワールド〜「夢の10セント銀貨」を読みました。

ジャック・フィニィ 山田順子 訳 早川書房 いや〜SFってなんか苦手である。なぜだろう。小説は架空の話を書くものだが、SFは、設定自体が架空である。 その設定になんか、著者の思い込みが反映されているような気がするのだ。 本を読むのは大好きだが、…

あるユダヤ人の逃避行〜「ナチスになったユダヤ人」を読みました。

マイケル・スケイキン◎著 小澤静枝◎訳 DHC よく知られているように、1941年12月8日の日曜日に、日本軍は真珠湾攻撃を行った。 しかしその日は、ポーランド領白ロシアのノヴォグルデクに住むユダヤ人にとっては忘れられないものとなった。 (現在、こ…

日本再発見〜「武士の娘」を読みました。

杉本鉞子 大岩美代 訳 筑摩叢書 あれ?と思うのではなかろうか。 日本人の名前が著者なのに、訳者がいる。 そう、実はこの本は英語で書かれたものであり、それを和訳したものである。 杉本鉞子(エツコ)さんは、長岡藩(現在の新潟県)の家老の家に生まれ育…

怪しい沈没船〜「ジャマイカの墓場」を読みました

ジョン・ラング 浅倉久志 訳 ハヤカワ・ポケミス 前回の本とまとめて借りなかったら、「ジョン・ラング」がマイケル・クライトンとは気がつかなかっただろう。 それにしても、この日本語版の題名は、ナイと思う。これで、小説の内容や面白さを知ることはでき…

墓ドロボウ〜「ファラオ発掘」を読みました。

ジョン・ラング(マイクル・クライトン) 沢川進 訳 ハヤカワポケミス 考古学は魅力的な学問ではあるが、学問がたいていそうであるように、報われることが少ない。発掘品は博物館にいってしまう。考古学者に残されるのは、発掘者という名誉と、論文だけであ…

まっすぐ立つ〜「自省録」を読みました。(3)

マルクス・アウレーリウス 神谷美恵子 訳 岩波文庫 何かするときいやいやながらするな。利己的な気持ちからするな。無思慮にするな。心にさからってするな。君の考えを美辞麗句で飾り立てるな。余計な言葉や行いをつつしめ。なお君のうちなる神をして 男らし…