橘玲「臆病者のための裁判入門」 (3) 事件に対する裁判所の判断が知りたい

こんにちは。Victoriaです。

さて、
橘玲「臆病者のための裁判入門」を読んでいると、

臆病者のための裁判入門 (文春新書)

臆病者のための裁判入門 (文春新書)








判決文というのは最初に結論があって、
それに合わせてつじつまを合わせていくもの









というのが、
よくわかるんだけれども、









損保の担当者がトムをだましたかどうかという信義の問題は、
最終的には担当者とトムの間のやりとりを再現するしかなく、
会話の録音記録等がない状態では、
結局、当事者の言い分をもとに判断するしかないわけだけど、









そうすると、
細かい点では、
双方の言い分に食い違いがあったり、
記憶にあいまいな点があったりする。











そこのところを、
どのように解釈するかが裁判官の腕の見せ所なわけだけど、









今回の「ガイジン VS 損保」の戦いでは、








限りなく、
「損保の担当者がウソをついたかもしれないが、それは謝って済むレベル」
という結論にむかってすべてが構築されており、









そのために、
原告のトム側は、
もともとなんの争点にもなっていないような細かい部分で、
不利な事実認定をされ、
要するに、
徹底的に「揚げ足取り」をされたあげく、
裁判に負けている。








一度、
前例をつくってしまうと、
今後の企業活動に支障を来すからという、裁判所の「親心」なんだと思うけど、








お金の問題じゃなく、
こういうのって、
もう誰も信用できないって思ってしまうくらい、
一個人にとってはショックなことなんじゃないかと思う。











事実、
判決に納得できないトムさんは、
高裁に控訴するわけだけど、
そこでこの事件が、
「日本で暮らす外国人が、日本語の能力や保険の知識が十分でないために、
大手損保会社の担当者にウソをつかれた事件」
だと理解してくれる裁判官に出会い、
和解をすすめられた席で言ったことばが、










「お金の問題ではなく、
この事件に対する日本の裁判所の判断が知りたい」。
 









最終的に、
「担当者がウソをついたという判決文は書けない」
と判事に言われ、
和解に応じてこの事件は幕を閉じる。









判決で勝つことはできなかったけれども、
和解で実質勝訴にしたのだから、
それで矛をおさめるように、
そう、裁判所が示したということだ。










日本では民事訴訟の判決に効力が乏しく、
判決で負けても賠償金を払おうとしない被告がたくさんいるらしいんだけど、









こういう話を聞くと、










トラブルに巻き込まれた時、
自分の人生で、
何を一番大事と考えるか、という優先順位を間違うと、
その後の人生、
二度、苦しむということで、










トラブルに巻き込まれたことでも十分大変なのに、
その後、
不毛な裁判に巻き込まれたり、
あるいは、
泣き寝入りを余儀なくされ、
いつまでも憎しみの感情が抜けなかったり、
どっちも悩ましい・・・










あとがきで橘玲さまがお書きになっているんだけど、
長い裁判の過程で、
たくさんの法曹関係者に会ったけれど、
みんな公正かつ優秀だったとのこと。










そうなのよ・・・










いろいろ、
腹のたつことや悲しいことは多いんだけど、










特に、
相手がデカイ組織だと、
何もできないが故になおさら歯がゆいんだけど、











一人一人の担当者は、
ホントに真摯に受け止めてくれて、









親身になって助けてくれるのに、








全体として組織にはめこまれてしまうと、
とたんに、
そういう一人一人の人間がもってる、
人としての温かさとか善意とかが、










不思議と、
どっか行ってしまって、









ホントにそれでいいんですか?というような、
冷たい仕打ちをされてしまうことが多いのよ・・・










なぜなんだろう・・・???










Victoriaでした。



・・・

橘玲「臆病者のための裁判入門」
橘玲「臆病者のための裁判入門」 (1) ガイジン VS 損保 - Victoriaの日記
橘玲「臆病者のための裁判入門」 (2) なぜ損保の担当者は顧客にウソをつくのか - Victoriaの日記







なお、本書のさわりは、
著者の橘玲さまがブログで紹介なさっています→『臆病者のための裁判入門』事件の発端 えっ、ぜんぶウソだったの!? – 橘玲 公式BLOG