帰還

無事、関西に戻ってきました。久々にゆっくりできそうです。

しかしながら、本当にカルチャーショックの連続でしたねぇ。ある意味、とても面白いなぁと感じたわけですが。視点を変える重要性をより認識させられたように感じます。一つ制度を変えるだけでも、その業界との話だけではなく、弁護士や患者団体、警察、税制、財源などで各所との交渉が必要なんですから。しかも、それぞれのサイドにはそれぞれの利権なり、考えなり、方向性があって決して一筋縄ではいかない。同じサイドでも内部に対立がある。結局のところは、ステークホルダー皆が納得してさらに世間・マスコミに理解されうるものを作ろうとすれば、決して100点の制度なんてあり得ないし、60点、70点で妥協するのが精一杯なんですよね。ステークホルダーの規模が大きくなればなるほど、この点数は下がらざるを得なくなります。僕自身は中高の頃に2、30人規模の組織を動かす仕事はしましたが、何千、何万ともなる大きな組織になるとそう簡単ではないでしょう。しかも、そのアウトカムは1億人に影響しうるわけですからね。

ある意味、「制度を作る立場のものは360度から批判を受け続ける存在であり、逆に批判を受けなければそれはやりすぎたり偏った政策をした可能性があると考えるべきである」「だが、ネットの過激すぎる意見には多少の怖さを感じる」という彼らの率直な意見には本当に感心しました。ある種、どちらかのサイドに立つことをせずに色々な意見を俯瞰的に見ることができるという価値は大きいと思うし、低給の中にもやりがいもあるのだろうなぁと思います。もっとも、彼らの多くは暇がなくてブログなんか見てないようですがね。ブログはあくまで一個人の意見ですから、信用できないというところも大きいのでしょう。やはり組織活動というものはそれなりに重要ではありそうです。

さて、雑多な感想を。
クレームを入れたり、座り込みをしたり交渉を申し込んだりする団体というのは、本音レベルでは彼らには嫌われやすいでしょう。正直な話、対応するのが鬱陶しいですからねぇ。一応、丁寧には対応してますが。国と都道府県も仲が悪いです。法令解釈などで自分である程度考えればいいものを最終的には国に丸投げしてきますからね。まぁ逆に都道府県にしてみれば、何かあるたびに地方分権都道府県に仕事を振ってくる国が鬱陶しいのでしょうが。
その一方で、感動する書籍だとか、自ら問題解決を図ろうとしているところなんかは彼らも注目していますし、心証がいいですね。日医もそういう動きをして、積極的に問題解決を図ろうとしないとダメでしょうね。最初の間は、多少は自己犠牲も必要です。

この経験を通してやっぱり強く感じたのは

  • 医療側の意見はあくまで一つの意見
  • 日医は勤務医も取り込んでちゃんと自発的行動をすべき
  • 医療側のプロフェッショナリズムが求められている。それがないと不信感だけがつのる
  • 地方も問題を自分で解決する姿勢を打ち出さないとダメ
  • 統計の結果は2年ほど遅れてしか出てこない。あまりに早い動きや、統計には表れないデータに行政はついていけなかったり、力不足になることは多い
  • 基本的に政策には複数の研究班の研究報告や検討会の委員の意見が反映されやすい。現場の感覚は、言っている側がちゃんと証拠を出してくるか、政治レベルでの変化がないと取り入れられにくいだろう。その点、その辺のデータの根拠がしっかりしているヒット書籍はそれなりの信用力がある。もっとも、「現場の感覚」なるものが果たして正確に現場を捉えているかどうかは不透明な部分もある(「現場の感覚」には結構、誤解であったり自分の理想が反映されたりもするので)
  • 多くのネット医師は行政の一つ一つの政策を誤解&深読みしすぎている(「〜を策略している」というようなことはほとんどない。正直な話、そこまで考えている余裕もない。新聞記事は事実を誇張して書いていることも多く、その影響が大きいのだろう。もっともその記事が検討会の委員の間で既成事実化してしまうという現象もあるのだろうが)