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2007年09月22日

官僚医師 11:45 官僚と医師を含むブックマーク

図書館で題名を見てぱっと借りてきた本。笑える話、頷ける話も多くてなかなか面白い。著者はキャリア官僚を経て医学部に再入学し、開業医をしている。

まぁ、当ブログでも何回も指摘しているように、官僚医師も構造が似ているがゆえに抱えている問題や、取り巻く状況というのもよく似ているわけです。逆に言えば、昨今の医師官僚の対立を見ていると、「どっちも同じような連中の集まりなのだからもっと相互理解して仲良くやれば?」と思うことも多々あります。傍から見ているとこの対立がバカバカしく思えるのも事実です。

この本の中で面白かったのが「天下り」と「医局からの派遣」がよく似ているという点。確かに医局で教授が交代したり、睨まれて40代半ばで出世の道がなくなった人は、飛び出して開業するか、おとなしく「天下り」のごとく、教授の手足となって関連病院の部長クラスとして働くか。でも関連病院の部長クラスの方が大学病院より給料はいい。官僚天下りと同じ仕組みです。

最近は医局崩壊でそういう人も医局に呼び戻されていて、過酷な労働を強いられているようです。官僚の方でも相次ぐバッシングと「小さな政府」政策で人減らしが続いているので、独法に天下って万々歳だったのが、突然本省に呼び戻されるケースが増えてきているようです。同時に、若い官僚官僚システムに見切りをつけて民間に行ったり、政治家に転身していることと、医局崩壊で若いうちに医局を飛び出して開業したり、自分で病院を探してそこに就職する医師が増えているということは非常によく似ていますね。

色々批判を受ける縦割りですが、医療でもチーム医療が叫ばれている中とはいえ、やはり科による縦割り的な要素は強いわけです。

本当に考えれば考えるほど構図がよく似ています。

トルコの救急車 17:52 トルコの救急車を含むブックマーク

今年の夏は7月に6年ぶり2度目の海外旅行に行きました(今回は組み立てではなくてツアーだったので高齢者の散財っぷりを見させていただいたわけですが)。前はアメリカに行って、2ヶ月後に同時多発テロだったわけですが、今回の行き先は僕の強い希望もあってトルコ1週間になりました。イスラムの国です。で、まぁ普通の観光写真を載せてもいいのですが、面白い写真がいいかと思ってトルコの救急車を載せます。現地ガイドによるとトルコ医療は安くもないが、高くもないということで比較的良心的なのだとか。日本と同じか少し安いぐらいで、ちゃんと皆保険制度もあるようです。

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向こうは赤十字マークではなくて赤新月社マークになっています。

スレイマン・モスクの近くにあるBusiness hospitalの救急外来。救急はACILのようです。

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大森 義範大森 義範 2007/09/22 18:44 過労自殺するくらいの大学関連病院の部長職が
官僚の天下り先と同じレベルだとは到底思えませんが?
そこらへんの分析はどうでしょうか?
退職金なんかも、そんないい値段では無いと思いますし・・・
権力構造は似ているのかもしれませんが、
社会的優位性という点で考えてみると雲泥の差があるように思えます。

vvvfigbtvvvfigbt 2007/09/22 19:50 霞ヶ関にも課長クラスの自殺の名所はあるみたいですよ。

あと、官僚は平均給料低いですからね。天下っても2000万いく人は局長クラスぐらいじゃないですかね。医師はSDは大きいかもしれませんが、Meanの給料は比較的マシですからね。底を見れば官僚も医師もいくらでも低いところはあります。まぁ人が死ぬ、死なないという点は大きいとは思いますけどね。あと、あまり知られていないことかもしれませんが、天下りだって決して楽だとも限りませんしね。某省にいる親戚なんかは「本省にいるときの方がまだ楽だった。給料もいいけど、仕事もきつい。何日も家に帰れない」と漏らしていたりします。

医師に関してですが、関連病院の部長クラスといっても様々です。部下に恵まれれば比較的よい条件で働けますし、地域や科によっては非常に大変なところもある。SDの議論は別に必要ですが、Meanという点ではそこまで変わらないのではと思います。もし、そこまで違うのなら医師はみんな官僚になってますよ。でも実際のところ、医系技官は不足状態、5年生存率は60%程度です。医師の方がよかったと戻っていく人も多い。

まぁ、最近の時代の趨勢を見る限り、医師や官僚といったエリートに自殺が多いのはもはや当たり前になってきている気がします。残念ですけれどもね。日本という社会はそんな社会なんだろうなぁともはやあきらめ顔で見ているんですが・・・。

bn2islanderbn2islander 2007/09/22 21:47 縦割り問題の多くは、上がきちんと判断しないから問題になっているだけだと思うのですが。「ある範囲を超えて独断で判断してはいけない」と言うのは、官僚でも医師でも民間企業だと同じだと思います。そして、縦割り問題が発生する時の多くは、「範囲を超えた判断」や「独断」を求められているわけだと思います。「範囲を超えた判断をなぜしないのか」と文句を言われても役所や官僚は困ると思うのです。

vvvfigbtvvvfigbt 2007/09/24 18:01 bn2islanderさん、コメント有難うございます。
そうですね、政治家・上層部の問題も大きいとは思っています。ただ、省によっても違うかもしれませんが、隣の課との間でもあまり交流がありませんよね。扱っている課題自体はよく似ていて関連があるにも関わらずです。
急に全てを改善することは難しいでしょうが、やはり行政も今までの法律指向(〜法は〜課)ではなく、少しずつオブジェクト指向(抱える問題や対象となる業務ごとに〜課という風に)にならなければならないのではないかと思います。異なる課での併任なども多くなっている現状を考えると、いっそ管轄する法律に関しては課レベルで持たせるよりは局レベルで一括管理する方がいいのではないかと思います。

大森 義範大森 義範 2007/09/27 02:31 僕が学生の頃から週刊誌で、官僚の自殺の記事はぼちぼち出ていましたね。
激務でビルの中で歯車として働いているのを考えると医師の方がマシか・・・。
いや官僚さんから見れば、血の見て働くなど信じがたいと言われるでしょう。
官僚も叩かれることが多くなって、天下りも厳しくなって、
有能な人材が今後行かなくなる恐れはあちこちで指摘されていますね。
天下りの原因も、能力に見合った給料を若いときにもらえなかった事を考えると
構造的には医師とだいぶ似てくる・・・。
>5年生存率は60%程度です。医師の方がよかったと戻っていく人も多い。
これは知りませんでした。勉強になりました。ありがとうございます。

元内科医元内科医 2007/09/30 08:18
医師の抱える問題は労働条件と司法における判断が車の両輪としてあります。
司法判断に医学的正当性が担保されない現在、医業はロシアンルーレットです。
官僚の方個々人が業務を遂行する上でで常に民事訴訟と刑事訴訟の被告になる可能性にさらされているのであれば両者の相同性を議論することに意味があるのかもしれませんが、それに全く触れないのであれば、医師が常に強迫的に持たされているストレスを理解できない「そとのひと」の意見であるという印象が残ります。

vvvfigbtvvvfigbt 2007/09/30 12:34 おそらく、医師と官僚の違いを大まかに評価するとすれば、訴訟リスクが給与格差につながっていると考えられます。月残業200時間や労基法が守られていない(官僚はもともと守られない構造、医師は慣習的に守られない構造)など、仕事時間にはあまり大差がありませんし、むしろ国会対策時期などはの官僚の方が医師よりは長いと思われます。勤務医のドミノ倒しと本省の人手不足は全く同構造、同質だという指摘もあります。医系技官の半分近くがすぐにやめてしまうのは、医師と同じく国会対応などで意地悪な野党対応でこき使われてBurn Outするからなんですね。そして本省はますます人手が足らなくなり・・・ってことです。
では何が官僚と医師と違うか、訴訟リスクと給料です。医師は人の命や生活を直に預かる立場にあります。したがって何かあったときはご存知のように、医局内での地位が低下するだけではなく患者から訴えられうる立場(最近では刑事訴訟リスクもあります)にあります。それに対して、官僚は政策的な失敗をしてもいわゆる官僚医局内での地位は低下しますが、その責を基本的に問われることはありません(ただし、最近では会計検査院などから業務に明らかな法律違反があれば賠償を求められることもあるようです)。医師には訴訟リスクというものがあるわけです。

基本的にはその分が給料の差につながります。先日ご指摘いただいた、病院の非常勤医の話(ただ、あのような日雇い状態が本当であればバレたら処分が下ると思いますが)を勘案しても、片手間臨床のバイト医もおりますので、やはり平均給与としては8、900万程度はあると考えられます。患者さんからこそっと医者のポケットに入るお金も少なくなったとはいえ、数万〜十数万円はあるでしょうね。それに対し、キャリア官僚の給与は平均して700万もいかないでしょう。課長補佐クラスで430+手当で550万ぐらい。かつては講演会で年150万ぐらい稼げたそうですが、今は10万程度です。大抵は45才課長どまりでそれで1000万いくかいかないか。そこから先は天下りですが、天下りとて最近は厳しいし、おそらく今後5年以内に大きく制度が変わると思われます。少なくとも医者が目の敵にする厚労官僚は、財務や経産などに比べると就職先・待遇は悪いはずです。

ということで、やっぱりキャリア官僚と医師では年収ベースで100万〜200万ぐらいの差がついています。この差の大半は訴訟リスクであると解釈できます。では訴訟リスクを評価してみます。ご存知のように、医師には医陪責保険が存在します。保険料は団体や科によって異なりますが、月5万〜8万ぐらいです(まぁ赤字のところも多いみたいですけどね)。民事訴訟の時には医陪責でだいたいがカバーされますから、60万〜100万ぐらいが民事訴訟リスクとなります。そして刑事訴訟リスクですが、大野事件など有名なものが増えたとはいえ30万人近く医師がいるなかでせいぜい診療関係業務で訴えられるのは年に数十人程度であるということを考えると、リスクは極めて小さいことがわかります。その中でも実刑判決というのは僅かですし、医師免許取消しは業務関連ではほとんどないので、一人の逸失額が1億円だとしても評価できるリスクは多く見積もって年10万円程度ではないでしょうか。すなわち、医師が患者の命を預かるリスクは70万〜110万ぐらいだと推測できるのです。これに心理的な負荷にもある程度インセンティブがついていて、それが数十万。諸所の調整も含めて最終的に100万〜200万ぐらいの差がついていると考えられます。これを多いか少ないかというのは個人の価値判断に委ねられるところが大きいですが、人命のリスクというのはお金に換算すると実はそれほどでもないのだということが分かります。

色々な人の話を聞いて、結局はものは見方だと最近思っています。医師が怖がる裁判ですが、法廷に慣れれば「あっ、そう」という程度のものだそうですし、人の命にしてもトラックドライバーが大事故のリスクを抱えながら低給で働かされている様子を見れば、その程度かなとも思います。日本の裁判はアメリカのように意味不明な額を要求されることがないので、比較的リスクは算定しやすい。最近の医学生は、医療ミスなどの報道で訴訟リスクを知った上で医学部に入ってきている人が多いように感じます。従って、訴訟は嫌なことは嫌ですが、そこまで訴訟リスクを怖がってはいないというのが実状です。訴えられるときは訴えられる。そのときは患者も敵だと思って戦えばいい。そんな感覚じゃないでしょうかね。医療崩壊が医学生の間で問題として認識されながら、あまり重大視されていないのは、実状を知らないということもありますが、訴訟やリスクに対する見方が違うということもあるでしょう。

逆にあまりに一つの裁判に医師が過剰反応している様子を見ると、理解はできるがそこまで怖がらなくてもいいじゃないかと思うわけです。実際、現時点でのリスクをお金で評価すればそれほどでもないということは前述の通りです。医師という人種が人命絶対、平等主義的な考えの人に多いというファクターも、リスクや格差の過大評価に大きく影響しているのではないかとも思いますが。

医師だけではなく、日本国民一般に言えることですが、日本人はリスクを極端に怖がる性質があるのではないかと思います。リスクはどこにでも潜在しているにもかかわらず、表面に出てきた氷山の一角であるリスクを異様に怖がる。ワクチンの副作用などは典型です。とある投資セミナーで堺屋太一氏が言っていたことですが、日本の個人投資家の一番の問題点は「リスク無しでハイリターンを求めること」であると。まさにその通りであると思います。何度もこのブログでも言っているのですが、今、日本人に本当に必要なのはリスク教育です。リスクをとるということを過剰に恐れない、リスクについて正しく理解するということがなければ、いろいろな意味で今の医療崩壊は防げないし、国家の沈没も避けられないのではなかろうかと思います。

あと、一つ言えば、「そとのひと」であるからこそ、「なかのひと」からの情報を元に他業種と比較したリスクの正確な判断が出来るということは往々にしてあると思います。基本的に「隣の芝は青く見える」ものなのです。社会学では常識になっているのですが、そのバイアスは「なかのひと」である限り、必ずかかります。私とて、将来その業界に行くことが決定済みであるゆえ、そのバイアスは多少なりとも持っていると自覚しています。このブログも世間から見れば医師寄りのブログという評価を受けていることでしょう。実際、以前、医師の給料の低さを嘆いたら「既得権益漬けのやつの発想」とトラックバックをもらったこともあります。

唯一、市場は恒常的にバイアスがかかりにくい仕組みになっています。破綻すればとんでもない方向に行ったり、格差がどんどん広がるということはありますが、市場は破綻しない限りは、比較的正確な評価をしてくれます。二流で激務の厚労省はいくら扱う予算が大きくても、東大キャリアは入ってきません。他科に比べて訴訟リスクの大きい産科はみんな行かないですよね。勤務医と開業医では開業医のインセンティブの方が総合するとやはり大きいので、みんな開業するわけです。
私は市場原理主義者ではありませんが、ある程度市場には信頼を寄せています。多くの人が参加するというsystemとしてのhomeostasisがあるからです。

この観点から行くと、これだけ医療崩壊が騒がれていてもやはり医学部が人気なのは、やはり何かがあるわけです。それを単に高校生が実状を知らないだけ、と評価するのは間違いのように思います。どんな職種でも期待はずれというのは多々あるのですから。医者という職業にはそれを打ち砕く何かがあるのであろうと私は思います。

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