丸谷才一全集は実現するか

 いつごろからか、個人の作品を収録した文学全集が刊行されなくなり
ましたですね。そのむかしであれば、個人の文学全集をだしているという
のは、大家のあかしでありましたが、最近は、大家であってもだしていない
人は珍しくなしです。
少数でも熱心な読者のいるひとのほうが文学全集は、販売企画が立てやすい
せいか、実現するようです。その代表は、最近の小沼丹全集などでありますか。
かったの小沢書店や、未知谷のような小出版社がマイナーな作家の個人全集を
地道に形にしています。
 かっては、個人全集というと筑摩書房でありました。ちくまの図書目録には
多くの個人全集が掲載されていました。いつかは岩波、筑摩から個人全集という
のは、作家にとっての目標でありましたでしょう。
 現在では老大家のような存在になっている丸谷才一全集が、でていないと
いうのは、なにか裏事情でもあるのではないかと思うほど、不思議なことです。
文芸春秋社講談社、新潮社というところが、全集をだしそうな出版社ですが、
丸谷全集を出すにあたってのネックはなんでありましょうか。(売れないという
ほかになにがあるでしょうかね。)
 むかしの断簡零墨を収録した文学全集ではなく、単行本となっているものを
採録したかたちでもいいから、丸谷全集を企画するとしたら、どのような
ものを採用して、なにを捨て、全部で何巻構成とするか、編集委員は誰にするのか、
そのようなことを考えて遊ぶというのは、楽しいことであります。
 でも、やっぱり売れないかな、これじゃ。