小沢信男著作 11

 小沢信男さんの著作でこれまでのところ文庫本になったのは残念ながら犯罪もの
だけであります。鶴見俊輔さんの檄に応えたかたちになりますが、だんだんと小沢版
「犯罪全集」の趣となってきました。
 元版がでてから10年、講談社文庫版がでてから6年が経過して、「定本犯罪紳士録」
ちくま文庫 1990年10月30日)が刊行されることとなりました。

 この文庫のためのあとがきに、小沢さんは次のように書いています。
「本書の刊行から十年にして、この定本を編む機会をえたことを、よろこびとします。
篇中もっとも初期の『蒸発』の章は、もう二十五年前の仕事になります。稚拙なりに、
あの時代の記録にもなりえているかと自負します。この機会にいささか推敲を試みま
した。とりわけ巻末の『紳士録』は補筆修正し、十数項目加えました。
 じつは六年前に、関係各位のご厚意によりいったん講談社文庫の一冊となりました
が、これは絶版です。このときに数項目を加えたのですが、今回は、ほぼ全面的な
加筆であります。おりしも昭和が終わって、平成へそこで、これをもって『紳士録』
明治・大正・昭和篇の区切りとします。定本と称する所以です。旧版をお持ちの方も、
この新版を揃えてご損になるまい、と存じますが、いかがなものでしょう。」
 定本「紳士録」に加わった方に「三浦和義」さんがいらして、これによって三浦
さんから名誉毀損で訴えられるということになります。このことは柏原成光さんの
「わたしと筑摩書房」にあったものですが、この本を話題にしたときに引用してお
りました。( http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20090729 )
 文庫版「定本犯罪紳士録」には、「本書は1980年2月18日、筑摩書房より刊行され
たものに加筆訂正、定本としたものである。」とあるのですが、「犯罪紳士録」元版
の奥付は、「1980年2月20日初版第一刷発行」とありまして、この文庫の日付は誤り
ですね。
 この定本となる文庫のちょっと前に、小沢さんは「犯罪百話 昭和篇」をちくま
文庫の一冊として編集しています。(1988年9月27日刊行 )
 小沢さんは自分の作品から「万博型結婚詐欺」を選んでいました。