平凡社つながり 10

 小林祥一郎さんの著書「死ぬまで編集者気分」を話題としていますが、この本の帯に
は、次のようにあります。
「『新日本文学』『太陽』の編集長、そして新『世界百科事典』を立ち上げ、さらに電子
百科『エンカルタ』編集長を歴任。五十年にわたって戦後の編集現場を疾走した、稀代の
編集者が書き下ろす『失敗』の出版私史」
 この本の大きなテーマの一つは紙に印刷された百科事典を、どのように魅力あるものに
するか、そしてデジタルに移行できるかというものですが、このどちらもがうまくいかな
かったことを「失敗」としているものです。
 デジタル化にあたっては、当時飛ぶ鳥を落とす勢いであったマイクロソフトと組んだの
でありますからして、相当に期待は大きかったものと思われます。
ちょうど、この時期に季刊「本とコンピュータ」という雑誌が期間限定で刊行されて、こ
れには、瀧沢武さんによる「『世界大百科事典』電子化日誌」という文章が掲載されて
います。これぞ、まさしく小林さんがかかわったプロジェクトでありますが。この瀧沢さ
んの文章から引用をしてみることにいたしましょう。
「いま、『世界大百科事典』(以下大百科)のデータベース化と新しいCD−ROMづく
りに取り組んでいる。この仕事は日立デジタル平凡社(以下HDH)という組織の集団作
業だが、僕としてもこの数年、それをめぐってあれこれ考えたり動いたりしてきた。
『大百科と(の)デジタル化という主題の、大きなマイルストーンとなる作業だ。・・・
 本の大百科の企画は七十年代の半ば、今はマイクロソフト小林祥一郎さんを中心と
する五人のチームで始まり、やがて大編集部が形成されて、併せて十数年かかって完成し
た。HDHではこの大百科のデジタル化を進めているのだが、作業は毎週のプロジェクト
会議を軸に展開する。・・刊行予定は98年二月。」
 この文章が書かれたのは97年10月くらいのことだそうで、掲載された「本とコンピュ
ータ」3号には、HDHから発売のウィンドウズ95版の「世界大百科事典」CD−
ROM版の広告がありました。定価は7万円で、発売記念特価57000円とあります。
このCD−ROM版は、どのくらいの販売数を記録したのでしょうか。