車中のとも

 今回の旅行のともは、谷崎潤一郎の「痴人の愛」でありました。
 自分で車を運転して旅行にでる時は、運転中は本を読むことができないのでありま
すね。( あたりまえですが。)
仕事場まで自分で車を運転して通っていた時は、往復に要する時間に本が読めたら、
けっこうページを稼ぐことができるのにと思ったものです。
 今回の旅行に谷崎の小説を持っていったのは、これが面白いからでありますね。先
日にブックオフへといった時に、大きな文字で印刷された新潮文庫版「痴人の愛」を
入手して、この版で読んでやりましょうかと思いました。
 この版で数ページ読んでみましたら、やはりなんとなく違和感がありまして、60年
ほど前にでた新書版全集をひっぱり出してくることになりました。
 それにしても、文豪 谷崎の文字遣いを真似て国語のテストに書きましたら、大き
く×をもらうことでありましょう。
文庫本の最初のページに、そういうところがあったので、これは間違いではないかと
思って、新書版全集を見てみたのですが、当然ながら、それは谷崎の用字でありまし
て、誰がなんといおうと自分はこのように書くという感じです。
 新書版全集から、そのところ引用です。
「私が始めて現在の私の妻に会ったのは、ちやうど足かけ八年前のことになります。」
 小学校のテストでありましたら、「始めて」のところは「初めて」としなくては、
×ですね。そのとき、文豪 谷崎はこう書いているのに、どうしてこれは×なんです
かと先生に質問をしたら、先生はどのように説明をするのでありましょう。
 それはさて「痴人の愛」は、あと20ページくらいで読了となります。それにしても、
まあすごい小説であることです。