Hatena::ブログ(Diary)

キャズムを超えろ! このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-03-09

R&D、先行開発、開発現場、それともシステム開発? 就職活動前に各部門のイメージを持とう

家電...というか、モノづくりをする大手企業はソフトウェアエンジニアひとつとっても多種多様な職場が用意されている。Cerevoのようなスタートアップ企業ではR&Dもへったくれもないのだが、パナソニックニッサンといった大企業への就職を検討するなら、各部門の特性・力関係をしっかりと理解しておきたい。特に力関係については人事やリクルーターが本音を話してくれないポイントである。まずは各部門がやっている仕事のイメージと特性をかいつまんで説明していこう。

このイメージをしっかりと持つことで、面接時にとんちんかんなことを聞いたり、言ったりすることも減るはずだ。R&Dの募集に現場開発のイメージもってこられてもねぇ、というのが採る側の理論なのだから。

R&D(研究)部門

研究部門と開発部門では時間の流れ方が全く違う。技術系志向の人はまずここをよく読んで、どちらが自分の理想に近いかイメージしてみてほしい。

R&Dの人達は割りと早い時間に退社していく。どちらかというと社内会議などはすくな目だ。院卒の人なら、大学時代にやっていた研究に厳しいチェックが入って結果を求められる、またテーマ設定や達成へのアプローチに社内政治事情が多分に入る、と思えばいい。

良くR&Dは5年10年先の技術を作る部門だ!みたいな話があるが、家電メーカーのR&D部門だと3から5年先というのがいいところ。といっても電池関係やら材料関係、半導体関連の研究テーマの連中は本気で5年10年先をやっていたりするのだが、家電メーカーのメインストリームではない。どっちかってぇと半導体メーカーとか重電メーカーのイメージで、IntelHITACHITOSHIBAの重電系R&Dはこれにあたる。ちなみに自動車メーカーのR&Dでは平気で10年先をやってたりする。

3〜5年程度先のことをやるんなら、現場っぽいんじゃないの? と思うが実態はそこまで現場匂はない。技術を固めて特許を取って論文に落としてサンプルコードぐらいまで作ったところで、現場の開発部隊が採用してくれなければ遭えなくボツ。採用してくれた場合もコアのアルゴリズム以外はほとんど全部現場部隊に書き直されてしまって、とっても使いにくいUIで組み込まれてしまうなど、自分が狙っていたものとは異なる形で実装されてしまうこともしばしば。


裏を返せば最終製品に入れるモノを作るわけではないので、プレッシャーも少ないし製品販売スケジュールにあわせた深夜残業や休日出勤が伴う追い込みもあまりない、という楽な側面も。

もっともメーカーや製品によって、一部のR&D部門が最終製品に採用されるものをごりごり作っている場合もある。その場合は後に述べる現場開発部門と大差ない仕事になることから、先輩社員などからこのあたりを十分に聞きだすことをお勧めしたい。最終製品に入るコードを書くのか、それともそれは現場開発部門がやるのか?という点を聞けばわかるはず。同じ企業の研究所内でも、MPEG2デコーダーを研究している部隊は最終製品に入るコードを書いているが、入力インタフェースの研究をしている部隊は最終製品とは程遠く論文発表と知財取得ばっかり....なんて差があるのが一般的。


あと、R&D部門と開発部門の間にはキャズム...ではないが、大きな溝があることが多い。R&Dにいると開発部門の情報が入ってきにくいし、逆もしかり。中には双方に強いパイプを持っている管理職の人がいるので、そういう人の下につければラッキー。そういう人は人的ネットワークを大切にするので、入社後にうまく見つけて自分から近づいていけば、部署が違っても色々と教えてくれたりする。Panasonic時代のそういった諸先輩方には現在でも色々とお世話になっている。多謝!

追記:今日SONYのR&D部門の人と会ったところ『そうそう、こんな感じ!』というコメントをいただいた。Panaに限らずな感じです、はい。

先行開発部門

現場とR&Dの間みたいな位置づけの部門。シュウカツしてると一番意味不明な部署だったりする。R&Dと現場は部署が異なっていることが多いが、先行開発は現場側の部署に属することがほとんど。R&Dと違って論文書いたりすることは稀。

R&Dが5年先の「採用されるんだかされないんだかよーわからんけど将来性ありそうなところ」に張るのに対し、確実に次はそこに行く・・・という現場部門の戦略にのっとり、必要な技術を「最終製品に突っ込めるレベルまで高める」ことをターゲットにすることが多い。

わかりにくいので具体例を出そう。10年ぐらいまえにこれからは動画をインターネットで配信する時代になる、そうなると強力なDRM(著作権保護の仕組み、暗号化)が必要だ! となって、どういう暗号化方式がいいか、さまざまな暗号化方式を研究してタイプA暗号やタイプB暗号を作り出すのがR&D。

R&Dの様子をみてるとどうも時代はタイプB暗号だねぇ、という流れが出てきて、2〜3年後にはそういう暗号使った動画配信をTSUTAYAとか巻き込んでやっていく時代になるのかねぇ、と言い始めた頃には先行開発部門がタイプB暗号をいかにテレビやDVDレコーダーに組み込んで使うかの検討をはじめている感じだ。


論文はあんまり書かないけど特許はいっぱい書くぜ!というのも先行開発の特徴。あと、ある程度規模が大きく、面白い仕掛けをゼロから考えて前に進めていくのも先行開発だ。「いっそ次のテレビはジェスチャーでコントロールするようにしてみたらよくね?」とか「音声認識で『点け!』っていったら点くテレビとかどうよ?」というアイディアを、世にある技術に加え、R&Dにある技術を組み合わせて実現し、社内を説得していく。


R&D部門でもこういったことはやるのだが、先行開発部門は先に述べたように現場部門側。R&DだとPC上でのデモにとどまるところが、先行開発部門がやると実際のテレビのうえでジェスチャー操作や音声認識が動くわけだ。実現可能性面でも、実際のユースケースを想像させる面でも、説得力は数十倍ある。R&Dでもこういうことはできなくはないけど調整がメチャ面倒で時間もかかり、旬を逃すこともしばしばだ。

かなり現場に近い仕事をすることも多いので、R&Dほどのんびりとした空気ではないが、現場ほどの壮絶さもない。


現場(開発部門)

家電メーカーの開発部門と聞いて真っ先に思い浮かぶイメージはこの開発部門だろう。数ヵ月後に発売される商品の中に入る機構やソフトウェアを開発する部署である。お客様が最終的に手にする製品のすべてをこの部署が決めるといっても過言ではない。家電メーカー技術陣の根幹。

製品発売前の修羅場で結構グロッキーになっていることが多いイメージ。マーケティング部門やら何やら全部ひっくるめて、製品発売日という大きな単一の目標に向けて進んでいるのだからしょうがないのだが。

1つ間違えれば発火したり、データが消えたり流出したりして大事件になりかねない仕事だ。このへんの"重さ"がR&Dとは比べ物にならない。それゆえに物凄い責任感があり、やりがいもある。”BRAVIA X1000は俺の子供”的な発言をしたくなるらしい。それゆえに精神がわりとタフな人でないとやってられない。締め切りに追われるのが苦手な人には向かない。テスト前の3日ぐらいでトランザム*1を発動できるタイプの人には向いてる。

新しいこと・面白いことを企画してゼロから作り出していく部分はR&Dや先行開発ほど多くはない。勿論開発現場で発案される面白いアイディアもあるのだが、色んな会社と長い期間調整を重ねて花火を打ち上げるような要素はない。数ヶ月先に次の商品、それが終わればまた数ヶ月先にその次の商品が控えている現場において、そんなのんべんだらりとしたことはやっていられないからだ。

先にあげたDRMの例では、先行開発部門が実装したタイプB組み込みプロトタイプをどうやって最終製品に落とし込むかを考え、コードに手を入れたりそれ以外の部分を調整したりする。今度のモデルはメモリがXXMbyteだから先行開発部門が作ったプロトじゃ大きすぎる。バックグラウンドの処理のアレとコレを削って、暗号使うときはソレとアレを使えないようにした対応しよう...なんてところをやるイメージ。あるいは暗号化動画配信を受けるためにはカード番号を入れる画面が必要だからそれを作って...とか、Felicaで決済しないといけないのでFelicaチップをどこにどういう回路で取り付けようか....なんてところを考えて、作っていく。

仕事に制約事項が多くてタフなのも現場の特徴。回路の都合上Felica読み取り部は上面につけたいけど、デザイン部門からLEDはすべて前面に集中させてくれと言われて困った...とか。A,B,Cの機能が同時に使えないと商品としてクソな仕様になっちゃうけどプロセッサパワー的に3つは絶対同時には使えないどうしよう、とか。当然だが、妥協して2つ同時に落としたところ案の定ABC3つ同時じゃないのはクソと2chで叩かれてへこむ、という結果が。

システムソリューション部門

いわゆるSI屋さん。こちらもものづくりの世界とはちょっと遠いので注意。家電メーカーだと、スピーカーとプロジェクターと照明とエアコンを組み合わせて映画館に納入します、とか。カメラと照明と屋外大型ディスプレイと電光掲示板を組み合わせて球場に納入します、とかそんな感じの仕事をする。勿論ただ組み合わせるだけでは能がないので、それらをつなぐサーバシステムやちょっとした接続用機器を開発することも多いが、テレビやビデオのようなコンシューマー向け量産品を作る仕事ではない。

いわゆるお客様商売なので、神経すり減らすことも多いらしい。あと、大手企業なのに下請け、というパターンもちょくちょくある。頭張ってるのが大手SIerだったり広告代理店だったり。当然だが主体性が低くなるにつれて理不尽なことも増えてくる。

何百億の国家大プロジェクト、みたいなのに関われるというやりがいはこの部門でないとなかなか味わえないかも。首都圏外郭放水路の坑内監視システムを受注して納品、とか。新設される国際空港の案内掲示板システム一式納品、とか。

社内システム部門

番外編だが、大企業は社内システムを自社で作ることが多く、それなりに人をさいている。基本的にここに行ったらものづくりには携われないので注意。だから行くな、というのではなくそういう側面を期待しないように、ということ。

まとめ

相当浮世離れしたことをやりたいならR&D、ちょっと浮いた(新しい)ことをやりたいなら先行開発、最終製品を自分の手で作り上げたいなら現場開発、国家プロジェクトとか大規模システムに関わりたいならソリューション部門。全部ひっくるめてやりたいんだ!というなら大手企業はあきらめてベンチャーや中小に行くしかない。


ちなみに最後に話をひっくり返すけどおもろいことやりたいという思いとスキルがあればどんな部署でもおもろいことができる。おもろい上司に当たればさらによし。おもろいことをやる最短パスはおもろいことをやるキャラとして社内で確立している人の下につくこと。就職活動するときから、おもろいことをやっている人を探してアタックしていけば道が開けやすくなる。運悪くそういう人と入社まで知り合えなかったとしても、入社後に回りを見渡せば必ずそういう人が見つかるはず。見つかったら、そういう人に「同類」と認めてもらうようアプローチすべし。おもろいことやるにはおもろいことやりたい人チームを作らないとできないので、その人がおもろいことをやるときに呼んでもらえるようになれば完璧。


Panasonic時代には何人もの「おもろいえらいひと」からおもろいことをやろうとするタイミングで声がけしていただき、貴重な体験をさせていただいた。その体験は会社が変わった今も生きている。多謝




一応以前書いたシュウカツネタにリンクを張っておく。

就職活動ではみんな「商品企画」希望っていうけど企画職能はツブシが効かねぇぞ!

モテる合コン王子は就職活動でコミュニケーション能力ありと判断されるか?

あとがき

だめだ...ボリューム的に朝の5時に書くエントリじゃなかった...。推敲する余裕なかったので日本語がぐだぐだになっているのは勘弁w

*1ガンダムOOに登場する、短時間であるが機体の性能を3倍に上げることができるシステムのこと