京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室

がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。

講座:なぜがんは発生し、成長し、そして増殖するのか?〜第6回〜

前回、IGFを多量に取り入れるとがん細胞の増殖につながる可能性が高いということについて説明をさせていただきました。

今回は、そのIGFががん細胞と関わるという証拠を紹介しながら掘り下げていきたいと思います。



 これは内分泌レビューという雑誌の、『IGFとがん細胞の増殖と転移』というレビューです。この中に、IGF-1のレセプターとIGF-1は人において胎児発生時から個体発生期に決定的な役割を果たす、とあります。これが無いと受胎しても体を作れないということになります。しかしながら、一旦できてきたら、ある状態では悪性腫瘍に非常に強く発現し、刺激すると、悪性腫瘍がどんどん進んでいくというようなことも書いてあります。



結局のところIGFが強く発現していると、DNA障害性物質、例えば抗がん剤放射線に対して非常に強い抵抗力を示してきます。



さらに、薬剤の耐性遺伝子、薬剤を外に放り出すような遺伝子群が発現し、がん細胞が治療に非常に強い抵抗性を果たすようになります。乳製品を摂りながら治療を受けても効かないというのは、こういうところにも理由があります。



そこで、この論文では、ある細胞をネズミに植え付けると、ネズミの肝臓にポチポチと見えるように、がんができます。ところがこのマウスにIGFの受容体を抑える抗体を注射しますと、同じ細胞を植え付けても、がんがほとんど出てこなくなります。という具合にIGFの働きを止めてあげることで、がんの転移がかなり抑制されるようです。
このようなことから、IGFががん細胞の増殖と転移において重要な役割を果たしていることがわかります。

そんなIGFの働きを止めるのに一つ、いい薬剤がありますが、この話は次回ご紹介させていただこうと思います。