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京都からすま和田クリニック 和田洋巳の相談室 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2011-07-11

がん細胞の数と、その数に応じた治療のめやす

| 15:28 |  がん細胞の数と、その数に応じた治療のめやす - 京都からすま和田クリニック  和田洋巳の相談室 を含むブックマーク  がん細胞の数と、その数に応じた治療のめやす - 京都からすま和田クリニック  和田洋巳の相談室 のブックマークコメント

    この表は、私が考える、がん細胞の数とその数に対応するがん治療法の目安です。

    f:id:wadahiromi:20110711144235p:image:w360

    たとえば耳かき一杯くらいの大きさのがん細胞の数は1000万個程度になります。
    がん細胞が一億個程度にまで増えると、小指の先ほどの大きさになります。
    がん細胞が10億個ほどになれば、がんは5センチ程度の大きさになるのです。

    このうち、免疫力だけでは退縮させることができる
    がん細胞の数は10万個から100個程度です。
    がん細胞の数が1000万個を超えると、
    免疫力だけで対応することは困難になってきます。


    患者さんの体が持っている免疫力を使って
    がんを治療するのが免疫療法ですが、
    この表を見ても分かるとおり、免疫療法だけでがん治療を行うのは
    なかなか難しいと言わざるをえません。

    抗がん剤治療を検討するとよいのは、
    がん細胞が100万個から1億個の間にあるときです。

    がん細胞が1万個から10万個を超えたあたりから
    免疫力によって抑えることができなくなります。
    そして、手術可能ながん腫瘍という形で発見されるのが、
    早くて1億個だからです。

    1億個というと膨大な数のように思えますが、
    実際には小指の先ほどの小さな腫瘍です。

外科手術と化学療法。どちらを選ぶべきか

| 15:28 |  外科手術と化学療法。どちらを選ぶべきか - 京都からすま和田クリニック  和田洋巳の相談室 を含むブックマーク  外科手術と化学療法。どちらを選ぶべきか - 京都からすま和田クリニック  和田洋巳の相談室 のブックマークコメント

    がん患者さんの中には、手術をせずなるべく
    抗がん剤で治療を行いたいという人もいます。

    しかし手術と抗がん剤とでは、受け持つ役割がまるで違うのです。

    現在、がんの切除手術で期待される効果は、
    がんという体内の炎症の塊(つまりこれがエントロピーです)
    外科手術によって取り除くことで体内のバランスが整い、
    その結果、免疫力を向上させることです。

    しかし、手術をすればすべてのがん細胞を取り除くことが
    できるというわけでもありません。
    相当早期のがんでない限り、外科手術が成功したとしても、
    微小ながん細胞の取り残しはあると考えたほうがいいでしょう。

    その取り残しのがん細胞の活動を抑えるということが
    私が抗がん剤に期待する役割です。

    「抑える」と書いているのは、がん細胞のはたらきをおとなしくさせ、
    細胞が増殖するメカニズムを止めるだけだからです。

    実は抗がん剤を使う場合は、もう少し腫瘍が大きくなっていても
    効果は期待できるのですが、
    すべてのがん細胞が抗がん剤によって退縮するわけではなく、
    生き残る細胞もあります。

    問題は、生き残ったがん細胞は
    その抗がん剤に対して耐性を持ってしまうということです。


    抗がん剤という毒物を乗り越えて生き残った細胞ですから、
    強い生命力を持ったがん細胞です。

    このがん細胞を抑えこむためには、
    もっと強い抗がん剤が必要になってしまいます。
    このように、抗がん剤によるがん治療は、
    がんと抗がん剤のイタチごっこになる可能性があるのです。

    だから私は、がん細胞を「撲滅しよう」とするのではなく、
    がん細胞のはたらきを抑える程度のゆるやかな形で
    抗がん剤を使用することをすすめています。

    ゆるやかな形での抗がん剤使用とは、
    ごく少量を長期間に分かって使うという方法です。
    この使い方であれば、免疫系はあまり
    ダメージを受けることがありません。


    がんは、免疫不全による病だということもできます。
    免疫のはたらきを健全に保つことは、
    がん治療においてきわめて大切なポイントだといえるでしょう。

2011-06-26

がんを引き起こすエントロピー

| 18:38 |  がんを引き起こすエントロピー - 京都からすま和田クリニック  和田洋巳の相談室 を含むブックマーク  がんを引き起こすエントロピー - 京都からすま和田クリニック  和田洋巳の相談室 のブックマークコメント

    ◆ 生命は非平衡の開放系

    前回、がんはどのようにしてできるのかという話をしました。

    今日は、がんを引き起こすもととなるエントロピーの話をしようと思います。

    私たちの体では、食べたものと体の中で作られるものによって、エントロピーと呼ばれる、
    ある種の産業廃棄物のようなものが発生すると言われています。

    これは、複雑系理論に影響を与えたロシア出身の学者イリヤ・プリゴジンの考えです。

    エントロピーの出入りについては下の図を見てください。

    f:id:wadahiromi:20110626180644p:image:left これは生命体でのエントロピーの出入りを示す図です
    (『散逸構造(イリヤ・プリゴジン)』岩波書店より)。

    イリヤ・プリゴジンは、「生命は非平衡の開放系であると考えました。

    楕円の部分が生命体をあらわしています。
    diSが生命体の内部で作られるエントロピー、
    deSが生命体と外部との間で
    やりとりされるエントロピー
    です。

    この不思議な図が、私たちの体の中で何が起こって、 どのようにがん細胞が作られてゆくのかということを 簡単に説明しているのです。


    体内のエントロピーdiSは生きている限り蓄積するばかりです。
    いっぽうdeSのほうは、外部から取り込んだり、
    また外部に放り出すこともできるエントロピーです。

    イリヤ・プリゴジンは、エントロピーを外部とやり取りできることが
    生命体の特徴だといいました。
    生命体は「開放系」であるという理論です。


    ◆ 体内に蓄積するエントロピー diS

    なぜ、生きているだけでエントロピーが蓄積するのでしょう。

    私たちの体の細胞の中には、ミトコンドリアという小器官があります。
    ミトコンドリアは酸素を使って、ATPという生命を維持するために
    必要なエネルギーを作り続けているのです。

    ミトコンドリアはATPを作るときに、酸素を活性酸素という形にして使います。
    活性酸素がミトコンドリア内にあるときは問題ないのですが、
    ときどきわずかな活性酸素が外に漏れ出します。

    これがイリヤ・プリゴジンのいうdiSであり、体内で蓄積してゆくエントロピーです。

    私たちが、酸素呼吸して生きてゆく生物である以上、
    体内にエントロピーが蓄積することを避けることができません。



    ◆ 外部から取り込まれるエントロピー

    エントロピーを外部とやり取りするとはどういうことでしょう。

    体の中にエントロピーが溜まるということを分かりやすくイメージするには、
    体が酸化する と考えてみてください。

    外部から入ってきて体を酸化させるものはいろいろありますが、
    もっとも有害なものが喫煙でしょう。
    タバコは非常に体を錆びさせるものです。

    ほかにも酸化の原因はたくさんあります。
    大量にお酒を飲むと活性酸素がたくさん出ます。
    また焼肉のような食事も要注意です。

    どうして焼肉が悪いのでしょう。

    それは、牛や豚などの赤身の肉に含まれる鉄分と体内にある過酸化水素が結びついて、
    ヒドロキシルラジカルが生成されるからです。
    ヒドロキシルラジカルは極めて毒性が強い活性酸素です。

    もちろん、古くなって酸化した油などは当然体によくない
    エントロピーの塊だといえます。

    このようにして、外部からもエントロピーは取り込まれます。


    ◆ 抗酸化物質のはたらき

    エントロピーの増加をゆるやかにする物質もあります。
    いわゆる「抗酸化物質」です。

    抗酸化物質をたくさん取ると体内の酸化を食い止めることができます。
    抗酸化物質にはさまざまな種類がありますが、主に植物に含まれています。
    ビタミンC、ビタミンE、リコピン、フラボノイド、ポリフェノールなどが代表的な抗酸化物質です。

    これらの抗酸化物質は食物という形で外から取り込みます。

    しかし抗酸化物質といっても、酸化した物質エントロピーを排出するわけではなく、
    酸化の速度をゆるやかにするだけです。

    体に溜まったエントロピーはどのようにして排出されるのでしょう。


    ◆ エントロピーを排出する「デトックス」

    生きている限り、ミトコンドリアから常に活性酸素が吐き出されます。
    内部エントロピーの蓄積です。

    食事や喫煙、飲酒などによって外部からもエントロピーが取り込まれます。

    これらのエントロピーを排出するのがデトックスということになります。

    よく耳にする言葉ですが、デトックスとは具体的には「排泄」だと
    考えればいいと思います。

    排泄には、便と尿と汗と呼吸があります。
    もっとも有毒物質を大量に排泄することができるのが排便です。


    実に、体内に溜まった有毒物質の七割以上が大便によって排泄されるといわれています。
    デトックスのためには、腸内環境を整え健康な便を出すことが非常に重要になってきます。

    尿の量を増やしたりやたくさん汗をかくことは難しいけれど、
    よい便を出すようにすることはできます。

    便秘症の人も、たかが便秘とあなどることなく、
    健康なお通じのために工夫するとよいでしょう。

    体内に蓄積して体を老化させ、がんの引き金となるエントロピーを下げるためには、
    「健康なお通じ」が第一歩になるのです。


2011-06-11

患者さんに優しいがん治療

| 22:51 | 患者さんに優しいがん治療 - 京都からすま和田クリニック  和田洋巳の相談室 を含むブックマーク 患者さんに優しいがん治療 - 京都からすま和田クリニック  和田洋巳の相談室 のブックマークコメント

現在、がんは二人に一人がかかるともいわれています。
日本の平均寿命が伸びたことや、食生活が欧米化していることからも、
今後がんにかかる方はますます増えてくると考えられます。

これから、

  • がんとはどういう病気なのか
  • がんを防ぐことはできるのか
  • 防ぐためにはどのようにすればよいのか
  • もしがんになったならどのような治療を受ければよいのか

ということについてこのブログで書いていこうと思います。


がんの再発を防ぐには

私は京都大学在職中、自分が手術を手がけた肺がん患者さんの再発率が高かったため、
肺がんの再発を防ぐためにさまざまな方法を模索しました。

いくつもの方法を試すうちに、がんの再発率を下げることに関して、
かなりの確信が持てるようになってきました。


その手応えをさらに深め、実践するために、自分のクリニックを開きました。
開院して2年間で470人の新しい患者さんにお目にかかりました。
そのうち8割が進行がんの患者さんです。


がんの治療は、一般に非常につらく苦しいと思われていますが、
私のがん治療は患者さんに優しいというのがキーワードです。

苦しくないがん治療
が私の治療です。

がんはどうしてできるのか

| 22:48 | がんはどうしてできるのか - 京都からすま和田クリニック  和田洋巳の相談室 を含むブックマーク がんはどうしてできるのか - 京都からすま和田クリニック  和田洋巳の相談室 のブックマークコメント

がんを理解する

私は専門医として、約40年がんという病気をみてきました。

今感じていることは、がんを予防する、そしてがんを治療するためには、
がんを理解することが大切だということです。

まず、相手を理解することで、どのように対応すべきかが見えてくるのではないか。

このように思っています。

それではがんの成り立ちについて話を進めていきましょう。

がんの成り立ち

わたしたちは、体の中に約60兆という非常にたくさんの数の細胞を持っているといわれます。
どうしてこれほどたくさんの細胞を持つ必要があるのでしょう。

それは進化の必然と関連していると私は考えます。

この60兆の細胞は、生命を維持するためにさまざまな活動を行なっているわけですが、
そのときに全体のうちの一定の割合が不安定な動きをします。

細胞全体の中に、いわば自動車のハンドルの「あそび」のような存在があるのです。

ある一定の割合とは、総数のルート分にあたります。

シュレーディンガーのルートnの法則

ここでノーベル物理学賞を受賞したシュレーディンガーの『生命とはなにか』を参照してみます。

量子力学を生み出したシュレーディンガーは、
現代医学の基礎である分子生物学の生みの親でもあります。

そのシュレーディンガーは、生物の法則を物理学の側面から解き明かしたのですが、
ここでルートという概念が出てきます。

シュレーディンガーは、ある物質の中で、
全体の中のルートn(nは数字)の数の分子が誤差的に乱れた動きをすると言いました。

nが100であればルートnは10です。nが100万であれば、約1000がルートです。

さて、人間の細胞総数である60兆個のルートは、約774万個となります。

約774万個の数の細胞が乱れた働きをするのです。

この乱れた動きをする細胞は、体の「ゆらぎ」ともいえる部分で、
さまざまな環境の変化などに適応するために必要なものです。

自動車のハンドルの「あそび」は安全な運転のために必要なものです。

同じように体の中で乱れた動きをする約774万個の細胞は、
わたしたちが生命活動を正常に維持するために必要なものだといえます。

しかし、これらの細胞は、一方ではよくない働きをする可能性もあります。

毎日5000個できるがん細胞のもと

わたしたちの体の細胞は、約2年ですべて入れ替わるといわれています。

そうすると、2年間で774万個の乱れた動きをする細胞が
発生する可能性があるということになります。

これを1日あたりの数で見てみると、ざっと数えて1万個程度になります。

分子生物学的に見てみると、一日1万個程度の異常細胞が出る可能性があるのです。

そのうち約半分、五千個くらいががん細胞のもとになるのではないかと考えます。


これらがん細胞のもとを排除するのが免疫力です。

発がんというのは免疫の力が落ちてきたときに起こるのです。


異常細胞を生み出すエントロピー

これらの異常な振る舞いをする「ゆらぎ」細胞は、
喫煙や飲酒、無茶な食事といった生活習慣から生み出されたさまざまな不要物が
蓄積した結果生じることがほとんどだと思います。

私は、細胞の働きを乱す原因となるものを、エントロピーと呼んでいます。

エントロピーについては、次回詳しく書くことにします。