前回までで、がん細胞の糖分の使い方(ワールブルグ効果)、そして溜まった酸を吐き出す仕組み(ナトリウムイオンプロトンポンプ)についてご説明しました。

これらの性質・仕組みによって、がんは生存し増殖を進めていくわけですが、がんの増殖についてもう一つ重要なものがあります。

それはIGF-1というものですが、これはInsulin-like growth factorsと言い、血糖が上がったときに同時に上がってくる成長因子です。ブドウ糖はIGF-1を大量に産生しますが、IGF-1はミルクの中にも大量に含まれています。

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IGF-1は過食をすると発現すると考えられています。Insulin-like growth factorsを調べてみますと、インスリンとは20%くらいが同じタンパクなのですが、培養細胞に加えるとインスリンを加えた時と同じように分裂を引き起こします。そしてこれは、成長ホルモンの一種で筋肉、骨、肝臓、腎臓、神経、皮膚及び肺の細胞を増殖させると書いてあります。

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米国では牛に合成の成長ホルモンを注射して、ミルクの産生を増やしています。ですから、アメリカでは、これを理由にミルクを嫌う人もいます。

もう少し詳しく見てみますと、ショウジョウバエを対象とした研究結果ではありますが、IGFの対立遺伝子をノックアウトすると寿命が延びています。それからIGFは前立腺がん、乳がんの細胞を刺激します。IGFは乳汁中に存在し、特に牛成長ホルモンを与えられたときに顕著で、アメリカの乳牛は60%ほどが、牛成長ホルモンを投与されています。ちなみに確かめたわけではないですが、乳を出さなくなって廃牛にした肉は非常に安いので、安く売っている肉自体にも入っている可能性は高いです。

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この人はジェイ・プラントという、イギリスの地球科学者で、自分が乳がんになり、何回も再発、リンパ節転移を繰り返します。自分で調べて、言われていることを全部守っているのに、何で再発するのだろう?と疑問に思いました。彼女はさらに調べ、アジア女性に乳がんが比較的少ないことを知りました。そのことから自分はミルクを飲むことで再発しているのではと思い、ミルクをやめると再発が止まりました。そこで、彼女は『乳がんと牛乳』という本を書きました。我々のところに来院されるがん患者さんでも、良くお話をうかがうと非常に積極的に乳製品を摂っておられます。ちなみに、私のところに来ると、『それはやめなさい』と伝えています。

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その理由はIGFが大量に入りますと、IGFの受容体というのがあり、それが次々に刺激を引き起こして、mTORという細胞増殖を促すタンパクが刺激されることで、次の細胞分裂に向かっていきます。これを制御しているのがAMPKで、これに対しての治療の方法などは、次回以降述べていきます。

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現在では、上記のようなことからIGFは、細胞分裂の早期のところを促進するような物質である、ということが明確に分かっております。すなわちIGFを多量に取り入れると癌細胞の増殖につながる可能性が高いというわけです。

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がん専門医の和田洋巳が40年近くのがん治療の経験で感じた「がんが住みにくい体づくり」について書いていきます。そのほか興味深いがんの症例やがんを防ぐ基礎知識など。