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ワーグナー聴けば聴くほど

2011-11-03

歌曲対訳「四つの最後の歌」

19:54

R・シュトラウスの「四つの最後の歌」を訳してみました。1〜3曲はヘッセ、4曲目はアイヒェンドルフですが、どれもとてもいい詩だと思います。翻訳は原文にない言葉を補ったりしているので、かなり自由な訳にしています。

Frühling

-

In dämmrigen Grüften

träumte ich lang

von deinen Bäumen und blauen Lüften,

Von deinem Duft und Vogelsang.

-

Nun liegst du erschlossen

In Gleiß und Zier

Von Licht übergossen

Wie ein Wunder vor mir.

-

Du kennest mich wieder,

du lockest mich zart,

es zittert durch all meine Glieder

deine selige Gegenwart!

-

明け初めていく谷間で、

ぼくはずっと夢を見ていた・・・

君のこずえと水色の風、

香りと小鳥の歌声を。

-

いま君は初めてつぼみを開き、

きらめく衣装を身にまとい、

光をいっぱいに浴びて立っている。

奇蹟のようにぼくの前に。

-

君がふたたびぼくを見いだし、

心を優しくいざなうと、

ぼくの身体はわななきふるえる・・・

例えようもなく美しい君の現前(すがた)に!

ここでいう「君」とはもちろん春のことです。

September

-

Der Garten trauert,

kühl sinkt in die Blumen der Regen.

Der Sommer schauert

still seinem Ende entgegen.

-

Golden tropft Blatt um Blatt

nieder vom hohen Akazienbaum.

Sommer lächelt erstaunt und matt

In den sterbenden Gartentraum.

-

Lange noch bei den Rosen

bleibt er stehn, sehnt sich nach Ruh.

Langsam tut er

die müdgeword'nen Augen zu.

9月

-

庭は悲しみに暮れ、

雨は冷たく花に沁み込む。

そのとき夏は黙りこくって、

終わりの時におののくばかり。

-

金色の葉が落ちていく・・・一枚また一枚

アカシアの高い枝から。

夏は驚きあわてて、力なく微笑む・・・

死にゆく庭を夢に見ながら。

-

夏は長いことバラのかげに立ち尽くし、

憩いを求めていたけれど、

やがて、ゆっくり、ゆっくりと

疲れたその眼を閉じていく。

この曲の冒頭は、ひとたび聞いただけで、ブリュンヒルデの眠りの場面の引用(オマージュ?)だとわかります。次に出てくるモティーフはジークフリートのモティーフとよく似ていますので、まさに意図的なものでしょうか。

Beim Schlafengehen

-

Nun der Tag mich müd' gemacht,

soll mein sehnliches Verlangen

freundlich die gestirnte Nacht

wie ein müdes Kind empfangen.

-

Hände, laßt von allem Tun,

Stirn, vergiß du alles Denken,

alle meine Sinne nun

Wollen sich in Schlummer senken.

-

Und die Seele unbewacht,

Will in freien Flügen schweben,

Um im Zauberkreis der Nacht

tief und tausendfach zu leben.

眠りにつくとき

-

昼間の仕事に疲れきり、

ぼくは憧れずにはいられない・・・

あの満天の星空を

遊び疲れた子供のように、この手に抱きしめたいと。

-

両手よ・・・もう何もしなくていいんだ。

頭よ・・・もう何も考えなくていいんだ。

ぼくのあらゆる想念(おもい)は、

もうすぐ、まどろみへとおちていくのだから。

-

そのとき誰にも見張られなくなったこころは

限りなく自由にはばたいてゆく・・・

夜の神秘のまじわりの中で

深く・・・そう、何千倍も深く生きるために。

この曲で印象的なのは、中間部のヴァイオリンソロでしょう。チェレスタの音は星のまたたきを感じさせます。

Im Abendrot

-

Wir sind durch Not und Freude

gegangen Hand in Hand;

Vom Wandern ruhen wir

nun überm stillen Land.

-

Rings sich die Täler neigen,

Es dunkelt schon die Luft,

zwei Lerchen nur noch steigen

nachträumend in den Duft.

-

Tritt her, und laß sie schwirren,

bald ist es Schlafenszeit,

daß wir uns nicht verirren

In dieser Einsamkeit.

-

O weiter, stiller Friede!

So tief im Abendrot.

Wie sind wir wandermüde

Ist dies etwa der Tod?

夕映えの中で

-

苦しい時も楽しい時も

手に手をとって歩いてきたね。

でももうさすらうのはやめて、

この静かな土地に憩うとしよう。

-

ここはぐるっと谷に取り巻かれている。

もう空が暗くなってきた。

二羽のひばりがまだ夜を避けて、

夕もやに向けて飛び去ろうとする。

-

おいで・・・ひばりは飛んで行かせればいい。

もうじき眠りの時が来る。

決して離れ離れにならぬよう

ぼくたちは、ずっと二人っきりでいよう。

-

ああ・・・どこまでも平和な静けさ!

夕映えの中、遠くまで広がっていく。

なんとも旅に疲れてしまったね・・・

死とは、もしかして、こういうことなんだろうか?

-

(「春」「9月」「眠りにつくとき」・・・ヘルマン・ヘッセ

(「夕映えの中で」・・・ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ)

この曲の名盤は、シュヴァルツコップ=セル=ベルリン放送響と言われており、確かにいいのですが、シュヴァルツコップの歌唱は好みが分かれるところかも知れません。セルの指揮はこの人の完璧主義ぶりがよくわかります。

私のおすすめは、例によって、ポップさんとテンシュテット盤で、テンシュテットの指揮するオケの深い響きとポップさんのみずみずしい声がマッチしていると思います。(単独のが出てこないので、下記はいつも紹介するお買い得盤)

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「最後の歌」なので、すべて死をイメージするのですが、実はそうではなくて、1曲目なんかは若々しい歌ですし、3曲目まではすべてその表現でいいのかなと思います。その意味で、この盤の難点は第4曲です。若々しすぎる感じです。

ですから、同じポップさんでも、マイケル・ティルソン・トーマスロンドン響との演奏を推す向きがあるのもわかります。この盤はオムニバス盤ですが、第4曲がすごくいいと思います。

1993年5月の録音なので、亡くなる半年前ですね・・・。そう考えると、この「最後のうちでも最後の曲」を歌えるというのは、果たしていいことなのか?という気もしてきます。

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