読書記録39

wakaba-mark2010-05-10

ジャッカルの日 (角川文庫)

ジャッカルの日 (角川文庫)

映画にもなりヒットした、“ドキュメンタリー・サスペンスの大家”フレデリック
フォーサイスの小説デビュー作。アメリカにおけるミステリーの最高峰、
「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」’72年度ベスト・ノヴェル(最優秀長編賞)受賞作でもある。
反ドゴール派の秘密軍事組織OASは、度重なるドゴール大統領暗殺の失敗に、最後の切り札として、‘ジャッカル’というコードネームを持つプロの殺し屋を高額の報酬を
もって雇う。対する官憲側も、この情報をキャッチして‘ジャッカル’の暗殺阻止に司法警察刑事部のルベル警視を起用する。
一見風采の上がらないルベル警視が全力を挙げて、まるで雲をつかむような正体
不明の殺し屋に迫ってゆく警察力は凄まじいものがある。一方‘ジャッカル’も内通者を通した情報からルベルの動きを察知して、あと一歩のところで姿をくらます。4回も身分を変え、邪魔者を排除しながら、暗殺の準備を整える‘ジャッカル’と、イギリスを
はじめ各国の協力の下、この正体不明の殺し屋の身元を突き止めんとするルベル側との息詰まる迫真の攻防は本書のメインストーリーであり、かつ最大の読みどころ
である。
ドゴールが暗殺されず天寿を全うしたことは史実であり、暗殺が失敗することは誰でも知ってはいるものの、読者は「もしかしたらこんなことが実際にあったかもしれない」と思いながら、ページを捲る手を止められない。
本書は、ラストまで、どこまでがフィクションでどこまでが事実かと手に汗握りながら
読ませる、エンターテインメント小説の世界に“ドキュメンタリー・スリラー”という分野を生み出した傑作である。