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懐疑論者の祈り メモ

2012-01-05

ロレットチャペル 奇跡のらせん階段

[通説]
 ニューメキシコのサンタフェにて、1873年から工事5年の予定で、ゴシック建築の教会を建設。そして、設計上の大失敗をしたのだが、逆に奇跡の螺旋階段という名物を得ることで有名になった教会である。

f:id:wakashimu:20070414043413j:image:w360:leftこれが今に残るロレットチャペルと奇跡の螺旋階段。

この教会。吹き抜けの礼拝堂2階部分に、聖歌隊が乗るための足場が設けられているのだが、建設が順調に進み、完成間際に問題が生じた。そこに登るための階段を設置するスペースが無いことが判明したのだ。

当初は、ハシゴや改築など、いろいろな案が出たが、外観を損なうものばかりで嫌だという。

そこで、困ったときの神頼みにもっとも相応しいこの人達は、聖ヨセフ(大工)に9日間も祈りを捧げたという。

なんという身勝手な態度。かつてモハメッド・アライ・Jrは言っている。

 「祈りとは、ありそうもないことを願うムシのいい性根ではない。かならず実現するという決意」

そのとおり、と思うが、なんと、ロレットチャペル建設関係者及び修道女一堂による、ムシのいい性根、非生産的な祈りは、特定宗教を身びいきした何者かによって報われたらしい。

もっとも、祈りを捧げた聖ヨゼフは、大工というだけでなく、その嫁は、浮気による妊娠をしていたのに、処女懐胎という強引な主張で切り抜けたのではないか、という疑惑が提起される処女マリア。もしその疑惑が真実であれば、マリアもまた、ピンチをチャンスに変えた歴史的成功者でもあることから、今回のようなピンチに祈りを捧げる相手として悪くはないかもしれない。

ともあれ、9日間の祈りを受けたのか、どこからともなくロバを連れ、大工道具箱を持った白髪の老人がやってきたという。 しかも彼は「事情は全部わかっているよ」という勢いで作業に入ったという。所持品の大工道具は、ハンマー、のこぎり、T定規というわずかなものでしかない…。ペテン師か?

さらには、鶴の恩返しを想起させる様相で、作業を見ちゃいけないという注意が勧告されたという逸話も派生的に語られている。これが事実ならば、ますます怪しい…と、私は思ってしまう。

泥棒かもしれないし、後で法外な請求をされるかもしれない。あるいは善意による無能な者が、教会に不釣合いな階段を造ってしまったらどうするのか?

ともあれ、そんなこんなで数日、階段のスペースがなく困っていた礼拝堂内に、あいや、場所を取らないばかりか、芸術性も高く、教会にマッチした螺旋階段が建造されており、二階の足場に昇り降りができるようになっていたのだ。

f:id:wakashimu:20120105210809j:image:leftこの、奇跡の木造螺旋階段は、33段で、360度を2回転する螺旋構造。使われた資材は、階段の素材以外には、木の釘だけ。そして、素晴らしいことに支柱も、壁面との接触がない。

※この手すりが無い写真は、現在の写真から手すりを修正加工した再現画像。

そういうわけで、教会の面子丸つぶれといった危機を迎えた設計上の大失態は、もっともエレガントな「奇跡の螺旋階段」という救済措置によって解決したのである。しかも、この螺旋階段は、いまだに建築工学上の謎とされているばかりか、当のご老人は金さえ受け取らず帰ったという。
(階段完成時に死んだ、食事を用意しているうちに消えたという話もある)


その後、みんなこの老人が誰か知らず、あまりにも見事な螺旋階段なので、お礼をすべく新聞などで呼びかけたが、結局わからず、現在にいたっているそうだ。

また、この階段、建設当初は、前述の写真のように、手すりがなく、乗り降りするたびに上下にゆれるので無茶苦茶怖かったと伝わっている。当時12歳だった修道女のコメントでは、怖すぎて上れずガクブルだったとのことだ。そして、修道女達の希望で後に手すりが取り付けらることになり、それ以降が現在のような見た目になっている。

この階段は、その後も実に85年、保存のために使用制限するまでは、ほぼ毎日使われてきたが、問題もなく、安全上、しっかりとした構造であることが証明されている。(現在は保存のため、結婚式以外では原則として解放されていない)

f:id:wakashimu:20120105202706j:image:left[補足と注目]
・近年、素材などの調査がなされた。
 →新種の杉だった(真偽不明・未確認)

・支柱がない+壁面と階段の接合がない(完成時)
 →普通の螺旋階段の情報を調べた範囲では確かに異常。
 
・なのに強度が高い
 →写真が示すようにかなり頑丈。

この階段を上ったという並木氏の証言では「けっこうゆれる」とあり、修道女の「上下にゆれて怖い」という報告もある。画像が示すように、頑丈さはかなりのもので、この螺旋階段は、現代の建築関係者も見学しに行っては感嘆してくるという素晴らしい出来だという。

なお、私の嫁、那須野美穂の兄が建築関係者のため聞いたところ、支柱がなくこの強度は確かに異常だとの所見。頑丈さの他にも「常識的に、こんなのつくったら途中でぶち壊れる」「木をきれいに曲げる技術は意外と普通」「仮説として、力学的にスプリングになっているのではないか」「一人でつくったというのは物理的にムリ」といった感想。

「木の釘」しか使っていない件は、日本には釘さえ使わず強度の高い木造建築を可能とするテクニックがあるし、どうにかなりそうだ。いまだ建築関係の専門家にとっても謎というのは、謎の度合いによる解釈の温度差があるだろう。たとえば、より精緻な調査の結果、技術的に困難だということが確かだったとしても、巨石の加工や扱いに関する技術など、失われた職人技術というのは意外と多いわけで、その一つかもしれない。

いずれにせよ、超常性抜きに、これをつくった職人(達)が超一流であることに疑念はない。

[真相へのアプローチ]

f:id:wakashimu:20120105202704j:image:left私は、並木氏の本で知って、非常に面白かったので調べていたら、本当に面白いミステリーで気に入っている物件だ。

現在では、Joe Nickellが98年に調査した報告が足場になりそうだ。こちらは、不可能というほど不可能ではない構造という認識になるだろう。

ジョー・ニッケルの調査では、他所では言及されていないものの、現在の手すりバージョンでは、支柱こそないままだが、手すりから壁に接合している部分があり、安全度が強化されていることが確認できる。

『Skeptical Inquiry』1998年12月「Helix to Heaven」Investigative Files , Joe Nickell
http://www.csicop.org/si/show/helix_to_heaven/

いずれにせよ魅力的な物件で、さらなる調査もあるだろうから、後に、より徹底して調べたい話である。

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