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懐疑論者の祈り メモ

2012-01-05

ロレットチャペル 奇跡のらせん階段 2014/9/28資料追加+暫定改定

ようやく階段の製造者まで到達した。けど、そこは教会のスキャンダル?というか、
名誉を棄損する話にもなるので次回にする。とりあえず前半まで更新した。

[概要] 
 ロレットチャペルとはニューメキシコのサンタフェにある美しい教会。
ここは「奇跡の螺旋階段」というオーパーツ然とした物件があることでも知られている。
この螺旋階段には非常に興味深い逸話が残されており、その超常性は特筆に値する。

f:id:wakashimu:20070414043413j:image:w360:leftこれが今に残るロレットチャペルと奇跡の螺旋階段。

このゴシック建築の教会は、1873年から5年かけて建造する計画としてスタートした。
当時はインフラ等が整備されておらず、資材の運搬等も困難であったが、建築は順調に進んだ。
ところが、いよいよ完成が見えてきたとき、恐るべき大失態が発覚する。

この教会、吹き抜けの礼拝堂2階部分に、聖歌隊が乗るための足場が設けられているのだが、
そこに登る方法が想定されておらず、階段を設置しようにも、そのスペースが無いというのだ。これは本気で困った。

対策としてハシゴや改築など、いろいろな案が出たが、いずれも外観を損なうものばかりで相応しくない。

そこで困ったときの神頼みにもっとも相応しいこの人達は、聖ヨセフ(大工)に祈りを捧げたという。

私としては、なんとも身勝手な話に思うのだけど、9日間の祈り(ノベナ,novena)によって報われる。

尼さんたちが祈り続けると、どこからともなくロバと共に大工道具箱を持った老大工がやってきたという。
老人は「事情はすべて判っているよ」といった様子で、問題を解決すると申し出る。
所持品の大工道具は、ハンマー、のこぎり、T定規、木材を浸した水桶というわずかなものでしかない…。

後で法外な請求をされるかもしれない、あるいは善意による無能な者が、教会に不釣合いなヘンテコな階段を造ってしまったらどうするのか?

近年の話だが、スペインのSanctuary of Mercy Churchという教会で100年の歴史を持つキリストのフレスコ画を無茶苦茶な状態に修復した事件があったのを思い出してしまった。

ともあれ、祈りが通じたと信じる関係者一同はその手の疑念を抱くことなく作業を一任。

そんなこんなで数ヵ月が経った。

おお、見よ、階段のスペースがなく困っていた礼拝堂内に、場所を取らないばかりか、芸術性も高く、教会にマッチした螺旋階段が建造された!
二階の足場に昇り降りができるようになっているではないか。

f:id:wakashimu:20120105210809j:image:leftこの、奇跡の木造螺旋階段は、33段で、360度を2回転する螺旋構造。
使われた資材は、階段の素材以外には、木の釘だけ。そして、素晴らしいことに支柱も、壁面との接触がない。

かくして教会の面子丸つぶれといった危機を迎えた設計上の大失態は、もっともエレガントな
無柱螺旋階段「奇跡の階段("Miraculous Stair")」によって救済された次第である。

階段の完成後、司教らが労をねぎらうべく食事に招いたが、当の大工は金さえ受け取らず消えてしまったという。

結局、この偉大な大工が何者か誰も知らず、正体不明だったのだが、あまりにも見事な螺旋階段なので、
然るべく対価とお礼のため、新聞に広告を出して呼びかけたが、結局わからず現在にいたっている。

※この手すりが無い写真は、現在の写真から手すりを修正加工した再現画像。

ロレットチャペル側の公式ページによれば、現在も祈りに応えた「聖ヨゼフ」がつくったと説明している。

この階段、建設当初は、前述の写真のように手すりがなく、乗り降りするたびに上下にゆれるので無茶苦茶怖かったらしい。
当時12歳だった修道女が、当時、揺れがあまりに怖すぎるため、修道女達の希望で後に手すりが取り付けられと証言している。

その後、この「奇跡の階段」は、保存のために使用制限するまでの85年間、ほぼ毎日使われてきたという。
それでも耐久性に問題はなく、しっかりとした構造であることは証明されていると言って良いだろう。
ちなみに現在は保存のため、結婚式以外では原則として解放されていない。

f:id:wakashimu:20120105202706j:image:left[注目・補足・謎]
・素材の謎
 →近年、素材などの調査がなされた結果「新種の杉」だったとの話がある。
  新種はさておき、少なくとも、サンタフェ付近には存在しない木材であることは事実。

・支柱がない+壁面と階段の接合がない(完成時)
 →普通の螺旋階段の情報を調べた範囲では、これは確かに凄い。
  無柱螺旋階段というのは、確実に一般的な存在ではないが、不可能というわけでもない。
  たとえば「中心の無い螺旋階段(ロフト用)」は興味深い。
 
・なのに強度が高い
 →写真が示すようにかなり頑丈。何らかの説明は欲しい。

・完成度
 →現代の建築関係者も見学しに行っては感嘆するほど素晴らしい出来だという。

・ヒント
 →この階段を上ったという並木氏の証言では「けっこうゆれる」とあり、修道女の「上下にゆれて怖い」という報告が裏付けられている。

なお、私の嫁、那須野美穂の兄が建築関係者のため所見を尋ねてみた。

1.「支柱がないのにこの強度というのは、確かに異常」
2.「常識的に、こんなのつくったら途中でぶち壊れる」
3.「木をきれいに曲げる技術は意外と普通」
4.「仮説として、力学的にスプリングになっているのではないか」
5.「比較的短い期間で、一人の人間がつくったというのは物理的に不可能なレベル。絶対ムリ。」
6.「木の釘」しか使っていない件は、日本にも釘さえ使わず強度の高い木造建築を可能とするテクニックがあるし、どうにかなりそう。

だいたいこんな感じであったが、それぞれ納得。
いまだ建築関係の専門家にとっても謎というのは、謎の度合いによる解釈の温度差があるだろう。

たとえば、より精緻な調査の結果、技術的に困難だということが確かだったとしても、巨石の加工や扱いに関する技術など、
現代では失われた職人技は意外と多いわけで、奇跡の螺旋階段もまた、その典型的な事例かもしれない。


いずれにせよ、超常性抜きに、これをつくった職人(達)が超一流であることに疑念の余地はあるまい。

[真相へのアプローチ]

 私は、並木氏の本で知って、非常に面白かったので調べていたら、本当に面白いミステリーで気に入っている物件だ。
現在では、Joe Nickellが98年に調査した報告が足場になりそうだ。
といっても、「不可能というほど不可能ではない」という認識に落ち着くだろう。

ジョー・ニッケルの調査で注目に値する点は、他所では言及されにくい部分で、現在の手すりバージョンだと、
支柱こそないままだが、手すりから壁に接合している部分があり、安全度が強化されているという指摘だろうか。
『Skeptical Inquiry』1998年12月「Helix to Heaven」Investigative Files , Joe Nickell

f:id:wakashimu:20120105202704j:image:left参考文献
『The Fatima Crusader』(Issue 83, Summer 2006) Carl R. Albach
『世界怪奇事件ファイル』 並木伸一郎
『St. Joseph Magazine』(April 1960) Sister M. Florian
The Sisters and Their Santa Fe Chapel』Cook, Mary (1984)
※改定『Loretto: The Sisters and Their Santa Fe Chapel』Cook, Mary (2002)

参考WEB
「Skeptical Inquiry」Volume 22.6, November / December 1998
Helix to Heaven」Investigative Files , Joe Nickell
「Sisters of Loretto - THE MIRACULOUS STAIRCASE - 」Dan Paulo (閉鎖)
Loretto Chapel Online
中心の無い螺旋階段(ロフト用)
「About.com Urban Legends」「The Mysterious Staircase of Loretto Chapel - Analysis

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