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2009-06-13 短期連載 武藤良子「先走り仙台ひとり旅 濃厚版」完結編

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サンモール一番町を歩き「壱弐参横丁」を見に行く。平日の夕方とあって、横丁のほとんど全ての看板、提灯、に灯が灯っている。こういう場所は冷やかして歩くだけでもウキウキとする。どこかでゆっくり腰を落ち着けて飲みたいが、今日で最後の仙台、まだまだ行きたいところが残っている。

東二番丁通に出る。NTTの大きなビルの横に「仙台銀座」と書かれた看板があり、そこから先は小さな飲み屋街になっている。昼前「仙台朝市」に行ったとき、前野さんに、雑誌掲載を断わるこだわりの喫茶店、と教えてもらった小さなカフェが、この飲み屋街の中にある。古そうなバーの2階。木の細い階段をあがり、ドアを開ける。カウンター席とテーブル席が3つか4つ、壁の棚には、絵本、雑貨、月光荘の文具が並んでいる。窓際のテーブル席に座り、アイスティーとクレープを注文する。そば粉のクレープの上には濃く甘いキャラメルソースとバニラアイスがのっている。皿の端には塩が盛ってあり、お好みでどうぞ、と言われる。キャラメルとアイスと塩と混ぜて食べる。塩っぽさと甘さとどちらもあるのにケンカしないのが面白い。ノートをひろげ、今日1日のことを書いていく。旅行中、所々でこうして座り、お茶を飲みながら、または酒を飲みながら、思い出し、書く時間が好きだ。


気づくと火星の庭の閉店時間の夜7時を過ぎている。慌てて預けたままになっている荷物を取りに行く。健一さんとメグたんに2日間のお礼を言い、荷物を受け取り、また歩きだす。前日マゼランさんに教わった銭湯に行く。


定禅寺通を歩き、晩翠通を左折。白松がモナカ本舗の裏手に銭湯「駒の湯」はある。煙突らしきものは見当たらない。ビルの2階にあるイマドキの銭湯だ。階段をのぼると券売機があり、大人400円、の切符を買う。入ると右奥に下足箱があり、左手にフロントがある。フロントの向い側は壁になっており、その壁の右端が男湯、左端が女湯の入り口になっている。脱衣所は狭く天井も低い。クリーム色のロッカーが並び、体重計、籐製の古いベビーベッドが片隅に置かれている。洗い場に入る。サウナがある。壁の両端にカランが並び、中央に鏡も何も付いてないシンプルな島カランがある。正面奥の壁にはどこかの海と松の図のタイル絵があり、その下に大きな湯船と小さな湯船がある。湯船はどちらも同じ温度、同じ深さで、分かれている意味がよくわからない。東京の銭湯では、小さい湯船は深く温度も熱い、と無言の掟があるのだが、仙台にはないのだろうか。時間は夜の8時ごろ。お客さんは2人か3人。仙台の銭湯も厳しいのだな、と湯に浸かっていると、ずいぶん長く入っているわねぇ、とおばあさんに話し掛けられる。今日はサービスデーで夕方までは100円で入れたこと、だから夜はほとんど人がいないこと、家にも風呂はあるのだがついつい大きいお風呂に入りにきてしまうこと、そんなことをおばあさんは話す。このタイル絵は松島よ、と最後に教えてもらう。


銭湯を出て、路地を歩きながら仙台駅を目指す。途中、飲み屋の前で餅つきをしている集団がいたが、あれは何だったのだろう。駅前に出て、佐藤さんのいるジュンク堂仙台ロフト店に寄って帰ろうとビルの前まで行くと、とっくに閉店していた。明日寄るから、と佐藤さんに言っておいたのに申し訳ない。新幹線の時間まで30分以上あるので、駅前にあるブックオフで時間をつぶすことにする。文庫の105円棚を見ていると、携帯電話が鳴る。火星の庭の健一さんからだ。ムトーさんにDVDを渡そうと思って仙台駅にいるんですけどムトーさん今どこですか、ブックオフです、新幹線の時間まだ大丈夫ですかそれなら今からそっちに行きます、と電話は切れた。5分か10分か、気配を感じて振り向くと、DVDを抱えた健一さんが立っていた。このDVDは健一さんがつくった特撮映画「88(ダブルエイト)」。渡し忘れちゃったから、僕もブックオフ見て帰るので、それじゃ、と笑顔で健一さんは本棚の向こうに消えていく。DVDをもらった私は、死にかけの金魚のように、ただパクパクと口をあける。突然だったり、ものすごくうれしかったりすると、私の言葉は出てこなくなる。いつでも私の言葉は、一番大事なときに役に立たない。


新幹線の時間が迫っている。夜食を買い、新幹線に乗り込む。夜の新幹線の車窓からはネオンしか見えない。仙台周辺のネオンが途切れ、またネオンが見え出したと思うとそこはもう大宮だった。仙台と東京の距離なんて、そんなものなのだ。

(完)


武藤良子ブログ http://d.hatena.ne.jp/mr1016/


わめぞが仙台へ大移動! 古本縁日 in 仙台(6月20〜21日)についての詳細はコチラ!

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"6月の仙台は本の月" Book! Book! Sendai 2009

http://bookbooksendai.com/