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2006年12月14日 アスキーアートの法と慣習 ”堋蟯掲載

[]アスキーアートの法と慣習

初めに

 アスキーアートとは、コンピューター上に打ち出される文字、記号などを組み合わせることによって作られる絵のことのである*1。日本においては、2ちゃんねるやそれと同様式の掲示板で作られることが多い。そして、アスキーアートによるキャラクターも作られている。主に90年代辺りから作られだしたと思われ、「モナー」や「ギコ」などが有名である*2

 このようなアスキーアート(アスキーアートキャラクター)は、興味深い違い特徴がある。それは、著作権意識がその他のアート(音楽や絵画)と比べて緩いことある。例えば、タカラが「ギコ猫」という名称を商標出願したさいには、「ギコはみんなのものだ=======!!!」 「みんなの共有財産を、一企業の独占は許せない。」 などの反発が起こった。また、アスキーアートを描く人々の間でも、誰かの作品をコピー・改変して、自身の作品に取 り込むことが自由に行われている。

 しかし、アスキーアートに関するいくつかの事件、出来事を通して、アスキーアートに関わる人(2ちゃんねらーに限らず)のアスキーアート対する認識は複雑化している。そのため、単なる「共有財産」という表現だけでは説明不足になりつつもある。

 本エントリーはそのアスキーアートに対する認識、つまり規範意識がどのように変化し、どのような形になっているのかを、少しではあるが見ていきたい。具体的には、「ギコ猫」騒動を初めとするいくつかの事件、出来事からそれを見ていくつもりである。

 なお、題名である「アスキーアートの法と慣習」は、感銘を受けた白田秀彰氏著「インターネットの法と慣習」から、拝借したものである。

ギコ猫騒動

 最初に、ギコ猫騒動を取り上げる。もっとも、本エントリーではギコ猫騒動以前のアスキーアートに関する事件・出来事も書くつもりである。しかし、アスキーアートの権利問題に対する「『パンドラの箱』を開けてしまったのではないか」*3と言われるように、この騒動によってアスキーアートに対する規範の構築が一気に進んだと考えられる。よって、全体を見渡すためにも、ギコ猫騒動を最初に書く。

 なお、以下の文章において「ギコ猫」と「ギコ」という表記が出てくる。前者は、キャラクター本体であるアスキーアートは含まず、名称だけを指している。後者は、名称とキャラクター本体であるアスキーアート二つを指している。他の意味を含む場合は、そのつど書く。ただし、引用の部分はこの規定に従わない。

概要

 6月2日、2ちゃんねるニュース速報板」にて「【商標】『ギコ猫』はタカラの猫?【申請中】」というスレッドが立てられた。その内容は株式会社タカラが「ギコ猫」という名称を商標出願していた(出願日は平成14年(2002)3月12日)、というものであった。

 これに対して、2ちゃんねる住民は反発。各板に商標反対のスレッドが立てられる事態となった。そのなかで2ちゃんねる管理人、西村博之氏も反応を示し、タカラに対して質問のメールを送るなどした。

 そして翌6月3日、タカラは自社のホームページ上にて商標出願の取りやめの手続き、客・取引先に対する詫び状を掲載した。西村氏に対しては、商標出願の取りやめの手続きをしたこと、西村氏・2ちゃんねる利用者に対するお詫びの返事を出した。

(以前、ギコの事件簿(,,゚Д゚) - タカラギコに書いたものを転載)

メディアの反応
  • 新聞・ネットメディア

 ギコ猫騒動はタカラという企業相手の祭りだったこともあってか、ネットメディアだけでなく、一般の新聞も取り上げている。

ネットメディアではZDNetJAPAN(現ITmedia*4 *5 *6、Mainichi INTERACTIVE*7などが。新聞では、産経新聞*8静岡新聞*9中日新聞*10神戸新聞*11共同通信*12 *13などが取り上げている。

 マスコミの視点を見るためにも、以下に共同通信の記事を引用する。

 「ギコ猫」登録に猛反発 タカラが商標出願取下げ 2002.06.03

 玩具メーカー大手のタカラは三日、同社が三月十二日付で出していた、インターネットの掲示板サイト人気のキャラクター「ギコ猫」の商標登録を出願を取り下げる手続きを取った、と発表した。

 同社は「ギコ猫には著作権はなく、将来は商品化も考えていた」としている。ところが二日、ネット上で出願の件が伝わると、「一企業が商標登録するのはおかしい」との反発が広がり、数え切れないほどの抗議メールが殺到。商品化は難しいと判断した。

 同社は「ネット利用者のことを考えると軽率だった」とし、ウェブサイトにおわび文を掲載した。

 「ギコ猫は」、コンピューターで使われる文字や記号を組み合わせて描く「アスキーアート」の一種。一九九九年ごろから掲示板サイトの中で生まれたとされ、国内最大規模の掲示板サイト「2ちゃんねる」では、さまざまなデザインで書き込まれ、親しまれている。

 ギコ猫の著作権は不明確だが、商標登録された場合、掲示板サイトへ書き込みの際、自由に使えなくなる可能性が高い。2ちゃんねるには「ギコ猫はネットの共有財産」などの意見が一万件以上も書き込まれ、タカラには株主などから心配の声も多数寄せられた。


  • 学術関係

 この騒動に関しては一般のメディアだけでなく、学術の方面からも反応があった。当時GLOCOMリサーチアソシエイト独立行政法人経済産業研究所研究スタッフ、東京大学情報学環学際情報学府修士課程であった澁川修一氏(現GLOCOMリサーチアソシエイト:id:shibudqn)による「タカラ『ギコ猫』商標登録問題と2ちゃんねる」*14は、今回の騒動に対する論文である。加えて、澁川氏による二つ目のギコ猫騒動に関する論文「『ネットの創作物は誰のものか』〜匿名掲示板とタカラ『ギコ猫』商標登録騒動から考える〜」が「新現実 vol.2」に掲載された。これは、アスキーアートをクリエイティブ・コモンズライセンスで出すことを主張したものであった。しかし、後日翻案権の問題から澁川氏本人がその論文の欠点を認めている。*15 *16

 また、社団法人著作権情報センター附属著作権研究所による、人々の著作権に対する意識調査ためにおこなわれたグループインタビューにおいて、「著作権制度が保護する対象の広がりについて」というトピックで「ネットコミュニティー等による共同創作物に対する著作権制度のあり方が問題になってきている」の例として、今回のギコ猫騒動が取り上げられている。この意見、例は、同研究所が2003年2月20日、社団法人日本音楽著作権協会・6階大会議室にて行われたミニシンポジウム「著作権制度と文化の関わり」での配布資料にも載っている。

著作権が保護する対象の広がりについて

ネットコミュニティー等による共同創作物に対する著作権制度のあり方が問題になってきている

例:ネット掲示板サービス「2チャンネル」の匿名参加者が共同で作り上げたキャラクターである「ギコ猫」は、参加者には共有物として捉えられていた。ところが(匿名の)創作者の意図に反して、企業が商標登録しようとしたため、企業が非難された。

「著作権白書―文化的側面から見て―」社団法人著作権情報センター附属著作権研究所p90

その他

後日、書き直し・手直しの可能性あり。

  • 続き

犬が目覚めた日 - 法的側面―アスキーアートの法と慣習

*1:日本語の場合、正確には「JISアート」というが、一般的には「アスキーアート」という語が広まっている。そのため、本エントリーでも「アスキーアート」という語を使う

*2:ただし、アスキーアート系の板を除き、現時点においてこの二つのキャラクターが使われているのを見ることは少ない

*3タカラ「ギコ猫」商標登録問題と 2ちゃんねる

*42002.06.03「ギコ猫」、タカラが商標登録を出願

*52002.06.03 タカラ、「ギコ猫」商標出願を取り下げ「ユーザーにお詫びしたい

*62002.06.03「ギコ猫」騒動、タカラが軽率だったこと

*7:2002.06.03 抗議殺到で「ギコ猫」商標登録取り下げ タカラ

*8:2002.06.04「ギコ猫」商標出願取下げ タカラ

*9:2002.06.04 「ギコ猫」の商標登録の出願を取下げ―タカラ 抗議メール殺到で

*10:2002.06.04 「ギコ猫」独占するな タカラが商標登録出願 猛反発受け撤回、おわび

*11:2002.06.04 「ギコ猫」商標出願取下げ/タカラ

*12:2002.06.03 「ギコ猫」登録に猛反発 タカラが商標出願取下げ

*13:2002.06.03 利用者の気持ち考慮を「ギコ猫」登録に猛反発 タカラが商標出願取下げ

*14GLOCOM「智場」No.78 2002年7月1日発行

*15コラム it@RIETI

*16「ギコ猫論文ver2を巡る言い訳」