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「荒尾競馬本年度で廃止」との報道

荒尾競馬の廃止が正式に決定したわけではありません。スリードな見出しや記事にご注意を。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110825/trd11082510060014-n1.htm
http://kyushu.yomiuri.co.jp/news/national/20110825-OYS1T00642.htm
現存最古の地方競馬 荒尾競馬来年廃止へ - 競馬ニュース : nikkansports.com
熊本のニュース | ニュース | 熊本日日新聞社

市は2009年、学識者らによる荒尾競馬の「あり方検討会」から「09〜11年度の収支状況、将来の見通しをもって判断することが妥当」との提言を受け、11年度中に結論を出すとしていた。
 前畑市長は6月、「10年度決算は13年ぶりに約4300万円の黒字だったが、赤字構造から脱却できていない。出走馬が減り、レース編成にも苦慮。全国的に販売状況は厳しく、将来の展望が見えない」と表明。
 市は6〜7月、調教師や騎手、厩務[きゅうむ]員、馬主の代表からのヒアリングや、住民懇談会も開いたが、事業を継続できる好材料は見いだせなかった。10月には来年度の競馬開催の認可申請準備に入る必要があるため、9月市議会を前に廃止の方針を決断したとみられる。
(中略)
 現在、在厩馬は約270頭。廃止に伴い、所属騎手13人と調教師14人をはじめ、厩務員ら関係者約180人が職を失う。市内への経済波及効果は約9億円と試算されており、地元経済への影響も懸念される。
(一部を抜粋)

http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/259980

清算費用は競馬関係者への見舞金などを含め「最大で40億円程度」(市幹部)。半分を累積赤字の清算と建物撤去費が占める見込みで、10年償還の地方債「第三セクター等改革推進債」(三セク債)を充てる計画。残りは市の貯金に当たる財政調整基金(7月末現在、約24億5千万円)を取り崩すという。費用の一部は「県にも負担を求めていく」(前畑市長)考えだ。

http://www.nhk.or.jp/kumamoto/lnews/5005131641.html

一部報道で「荒尾市が本年度限りで廃止する方針を固めた」と報じられたことについて、荒尾市は「今年度中に結論は出すべきだが、方針を固めたわけではない」としてきょう午後にも報道内容に対するコメントを出すとしています。

http://www.tku.co.jp/pc/news/view_news.php?id=24230&mod=3000

荒尾市の無策ぶり
霧島賞の次の日に報道されるというのも、なんだかなぁ……と思ってしまうところです。
「将来の展望が見えない」ため、荒尾市の前畑市長が本年度限りで廃止する方針を固めたとのことですが、荒尾市
一体今まで荒尾競馬を好転換させるために、何をしてきたというのか。具体的には野放しのままだったではないか。
第1〜2回「荒尾競馬あり方検討会」議事録 - 座布団が行司にクリーンヒット
「荒尾競馬あり方検討会」が提言を荒尾市長に提出 - 座布団が行司にクリーンヒット
荒尾競馬あり方検討会」という会を立ち上げ、荒尾競馬の経営好転に役立つ意見でも出すのかと思いきや
実際には頭の良い方々が集まってもそんな案は一つも出せずに、結論としては「09〜11年度の収支状況、
将来の見通しをもって判断することが妥当」などという、誰にでも言えるような提言を出すにとどまった。
この提言というのも、最初から廃止の言質にするためだけに出させたもののようにしか私には見えない。


しかも昨年度は約4300万円の黒字だったのにだ。この黒字も馬主や現場の人たちの苦しみの代償によるものだ。
手当てについて | 村島俊策騎手公式ブログ ~ しゅん坊~の館 - 楽天ブログ
荒尾競馬は昨年、出走手当てを大幅に削減している。出走手当てを減らせば当然入ってくる馬は少なくなるわけで
そうなると調教師は馬の委託料を減らさざるを得なくなり、馬の管理もそこからサラリーを得ている従業員の給料が減り、
あるいは解雇されて馬を十分に管理できなくなれば馬自体の成績も悪くなる。まさに負のスパイラル。
厩舎の経営は成り立たなくなるため出走手当ては賞金以上の聖域だったはずなのだが、ここを切り詰めるということは
ある意味でかなり切羽詰っているのだろうな、とは感じていた。それでも多くの方々の苦労と努力で黒字にしたのだ。
荒尾市が具体的に経営改善のための策を講じたことは(報道など見る限りでは)特になかった。
それで「将来の展望が見えない」とは、呆れかえる。まさに荒尾市の無策が招いた結果ではないか。
例えば帯広市は「ふるさと納税」を通じて、ばんえい競馬に寄付できる仕組みを作った。そんなことすらしていない。


なぜ「今」なのか
そして私から言わせれば「将来の展望が見えない」とは思えないのだ。好転の材料はまだいくつか残っている。
PATで地方交流重賞など発売へ - 座布団が行司にクリーンヒット
まず、来年1月からJRAのPATで地方の馬券発売が開始されること。どのレースが発売になるかはまだ決まっていないが
荒尾競馬の窮状などを説明し、上手くJRAと交渉すれば、販売されるレースを増やしてもらうことも可能かもしれない。
http://www.daily.co.jp/horse/2011/08/01/0004321333.shtml
前述の地方馬券PAT発売や岩手競馬への支援(南部杯の代替開催など)を見るに、JRAとNARの間に存在した壁が
少しずつ瓦解しはじめているようにも見える。このPATでの発売はまさしく大チャンスではないか。この効果を見る前に
廃止決定に動くとはあまりにも時期尚早すぎる。13年ぶりに黒字に転換した直後でもあり、どうして今なのだろうか。
その理由は恐らく記事中にある「第三セクター等改革推進債」(三セク債)にあるものと思われる。
第三セクター等改革推進債 - Wikipedia
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/259019
今年2月から荒尾競馬組合は会計方式を従来の官庁型から企業型に変えたが、それもこの平成25年が限度の三セク債
発行に間に合わせるためであったのではないかと某紙の解説記事にはある。返済期間は基本10年で延長もある。
これを利用したとしても結局は地方債なわけだから将来にツケを回すことだし、負債が帳消しになるわけではない。
そもそも「三セク債」を使いたいがためにこの時期の廃止方針、その前の会計方式変更というのはまさに廃止ありきの
やり方で、結果廃止になったのならばまだしも「三セク債」を使いたいが為に廃止にするのでは本末転倒ではないか。


競馬場が存在する意味
「市内への経済波及効果は約9億円と試算されて」いるという。競馬場がそこに存在するだけでも十分に意義がある。
廃止後のことも考えなければならない。海にすぐ隣接するあの土地は今後どうなるのか。今後にアテはあるのか。
無ければ、約9億円の効果があるハコが消え去るだけ。後には何も残らず、むしろ地元経済に打撃を与えるだけだ。
影響は荒尾市周辺だけではない。荒尾競馬場九州産馬のメッカであり、多くの限定レースが存在している。
九州の馬産地への打撃も大きい。生産者や九州の馬主会からも、何かしらの動きがあることに期待したい。


廃止以外の方法の検討を
仮に荒尾市がもう『経営していくのは自信が無い』と言うのであればそれでもいい。競馬場を存続させていくには
別に荒尾市が絶対に経営しなければならないというわけではないのだから。経営権を手放せばいいだけだ。
つまり経営権の民間委託や、他競馬組合との統合、または荒尾競馬場の施設・馬場を貸し与えるということ。
現在多くの競馬場が馬不足に悩んでいて、その割には開催数が多く、1レースにおける出走頭数減少に苦しんでいる。
そのために経営統合、開催日程調整なども含めて、今回の荒尾競馬廃止論を機に考えてみてはどうだろうか。
いわゆる「ブロック化」というやつである。規模が縮小されることになったとしても、ゼロになるよりはまだいい。
荒尾競馬存廃 : 須田鷹雄の日常・非日常
内厩制放棄の話→ついでに福山の話 : 須田鷹雄の日常・非日常
廃止か存続か : 須田鷹雄の日常・非日常
笠松でイタリアン - 斎藤修 | 競馬コラム - netkeiba.com
サラブnet
この辺の話は須田鷹男氏や競馬知識人の多くも語っているところで、須田氏は他に内厩制の廃止なども主張している。
一番良いのは佐賀競馬にそのまま吸収されることだろうが、佐賀もこういう所での腰の重さは半端無い。
あるいは南関東など経営の好調な競馬場の傘下に入る。そうなると例えば下級条件戦のみ荒尾競馬場で開催するとか
荒尾開催が激減するなどの影響はあるかもしれないが、それでも完全廃止になるよりはマシだろう。
そして民間委託。岩手競馬は民間委託すると言いつつ結局独自に経営改善することに至ったが、ばんえい帯広競馬
既にオッズパークが経営している。競馬以外の公営競技では、実は民間委託を行っている場は結構多い。
民間委託で現場にはさらなる厳しい条件が突きつけられる可能性もあるだろう。
それでもやはり「廃止になるよりはマシ」なのである。どうにかして厩舎関係者や中で働く多くの人々、
そして周囲で経済効果の恩恵を受けている人たち、遠くでは馬産地など、関係する人たちの為にも続けなければ。
一度廃止になればもう二度とその地で競馬が行われることは無い。しかし荒尾市はこういった動きも見せていない。
仮に廃止となれば清算費用は「最大で40億円程度」という。この額を出すくらいなら、私なら施設を残しつつ
どう活用するかを考える。なぜ、経営が成り立たなくなればイコール廃止に強引に持っていこうとするのだろうか。


「面倒くせぇからこのまま放り投げてしまおう」というような荒尾市のやり方には到底賛同することはできない。
廃止までに努力した様子もなく、また廃止にしなくても良い方法があるにも関わらずその手立ても講じないというのは
行政の怠惰そのものだ。今からでも遅くはない、前畑市長を中心に荒尾市はもっと仕事をしてほしい。
無理ならば責任を持って引継ぎを行うべきだ。私は競馬ファンとして荒尾競馬場は絶対に廃止になってほしくないと
思っているが、そういう感情を抜きにして客観的に見ても即廃止するような動きはベターではない、悪手だと思う。
まだ報道のみで廃止が正式決定ではないので言及はこの程度に留めておくが、よりベストな方向に進んでほしいと願う。


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