「アップデートがあるからデバッグコストは軽減できる」 by CESA会長和田氏

現在のゲーム市場の覇者、PS陣営で電波発言を吐きまくっているのが、SCE社長・久夛良木氏、スクエニ社長&CESA会長・和田氏、エンターブレイン社長・浜村氏の3人。各々のトップ企業のトップが一番電波発言を繰り返すという、非常にいびつな業界となっているわけです。
そんな中、ソフト団体のCESAが記者相手に懇談会を開いたらしく、そこでまたも和田氏から衝撃的な電波発言がなされた模様。
CESA主催の記者懇談会でメーカートップがざっくばらんに語った / ファミ通.com
特に問題なのは以下の発言でしょうか。

また、オンラインへの常時接続によって、ソフトのアップデートが可能になることを取り上げ、「ゲームメーカーはこれまで、ソフトの開発時に膨大なコストをかけてデバッグ(バグを発見し、取り除く作業)をやってきたが、このコストが軽減されるのではないか」(和田氏)とも語っていた。発売まえに、通常ではあり得ないような状況を想定してバグを見つける必要性は薄れるからだ。

えーと、これは要するに、「バグがあるまま出しても、ユーザがデバッグしてくれるからOK」ってことですか?社長自ら、ベータ版出しますよ、ということですか?えぇ、それは非常にすばらしいことですね。ベータ版を買ったユーザは、バグにぶち当たっても全く嫌な感情を抱かず、しかもソフトウェア完成度アップのために、嬉々として「こんなバグありましたから、修正お願いします」とご丁寧に報告してくれることになってくれることになっているんですね。いやぁ、すばらしい。流石プレーステーションワールド、ソフト会社にとっては天国のような世界ですねw。


とまあ、皮肉はそれぐらいにしておいて。実際、昨今ネット経由のアップデートは当たり前となってきています。PCのゲームであれば当然ですし、デジタル家電や携帯電話などでも、ファームウェアの更新機能がついていることが多くなっています。こうしたアップデート機能を持つことで、従来であれば回収交換が必死である事項が起こっても低コストで改善できますし、微妙な規格の変更などがあっても後から対応することもできます。そういった意味で、アップデート機能とは非常にメリットの大きい機能です。

しかし、あくまでこのアップデート機能は、おまけに過ぎません。オンラインによるアップデートが可能だからと言って、別にデバグ作業を簡略化していいものでは無いのです。デバグ作業をして、それでもどうしても取りきれなかったバグがあった際に、アップデートがあると回収交換というリスクを回避できると言うだけで。基本的に販売されるソフトではバグがないことが前提であり、ソフト経営者側であれば、当然それを目指すのが当然なわけです。バグが頻発してしまえば、当然それは企業の信頼低下を招いてしまうわけですので。それを、よりによってCESAという業界団体のトップの経営者が「アップデートあるから、デバグ手を抜いてもOK」という発言をしてしまうのは、もうゲームソフト業界全体はおろか、ソフトウェア業界すべての信用を著しく失墜させる失態だと言えるでしょう。

これについては、remmさんの日記でも強く批判されています。
pseudonium - Pn - 開いた口がふさがらない
remmさんの言うとおり、アップデートが基本であるPCゲーム(特にエロゲ)では、発売当初ではゲームにすらなっていないものが平然と出ています。最近では、発熱地帯さんが取り上げた「サマーデイズ」なんかがいい例でしょうか。
発熱地帯: 相変わらず、かっ飛ばしてるなあ。。。。。
要するに、CESA会長はこういった自体が頻発しても、ソフト会社側が楽になる、コストが減るならOKということらしいです。これが、CESA団体を代表する人の言葉な訳ですから、当然彼を会長に選出した、CESA団体加盟会社の総意と見てもいいんですよね?
今後、CESA加盟会社のソフトを発売日に買う際には、バグがあることを覚悟した上で買うことが求められそうです。デバッガになりたくなければ、発売日に買うのはやめておけ、という和田氏のありがたいご忠告なのかもしれませんね。


この発言から思い知らされるのは、この和田氏の根底にある顧客満足度 追求姿勢の欠如」ですね。たしかにこの和田氏は「金を稼ぐ」ということについてはかなりいろいろ手を尽くしますし、無策でただじり貧になっていく他の会社と比べれば優秀な経営者なのかもしれません。先日のファミ通浜村通信との対談でも、ゲーム業界の行き詰まりにいち早く気づいていたようですし。ただ、この和田氏の取る手法にはどうにも「今ある会社のリソースで、いかにして多くの利益を上げるか」しか考えてないように見えるんですよね。FFやDQに「張り付いている」ファンから以下にお金を吸い上げるかを考えた結論が、FF13というナンバリングタイトルを分散させて10年間搾り取ろうという戦略だったり、「自社リソースでもっとお金を稼ごう」という意識の結果が松下との3Dインタフェース事業だったり。どれも「会社側」の都合ばかりで、それにより顧客がどういった心情となるかが全然考慮されてないように見えるのです。今回のデバグ手抜き発言もそう。顧客満足度第一であるならば、絶対こんな発言を公の場でできないでしょう。ファミ通の記事では「"立て板に水"といった感じで質問に答えていた」とありましたが、そうしてすらすらと答える状態で、こうした顧客軽視の発言が出来てしまうのだから、所詮そういった感覚の持ち主だということです。


短期的に見れば、たしかに和田氏の戦略もうまくいくかもしれませんが、たとえうまくいったとしても、顧客軽視の戦略で待っている結末は、ユーザからそっぽ向かれてしまうことしか思い浮かばないんですけどねぇ。一度落ちた信頼度は、そう簡単に取り戻せるものではないですし。スクエニエニックスの方だけでも、なんとか生き延びてほしいところですがどうなりますか。CESA会長として和田氏が今後も業界内で影響力を強めていくようであれば、軽視される顧客側としては非常に厳しい未来が待っているかもしれませんね。それは最終的に、ソフト業界側に跳ね返っていくものだとも思いますけど。