Wii体験会レポート(ハード編) 『Wiiリモコン ポインティング』

ソフトレビューばかりでなく、複数の体験プレイを通じて感じたWii自体の印象についても語ってみたいと思います。まずはWiiリモコンポインティング操作についてです。

ポインティングについて

多くのゲームで使われていたポインティング操作。メニュー選択などでは実に快適でしたね。操作感としてはまずリモコンをテレビ画面にアバウトに向け、その際に表示されるポインタを見ながらリモコンの向きを変える、という感じです。

ダイレクトポインティングかどうか(絶対座標か相対座標かという意味だとおもいますが)ということが色々論議を呼んでいるようですが、少なくとも自分が使っている限り、「リモコンで指し示したつもりのところにカーソルがくる」という感覚は感じられました。ただ、これだけの感覚な理由では、絶対座標なのか相対座標なのかの結論は出ないでしょう。


ちなみに、一部動画などを見てポインタの向きとその指している方向と大きく違っていると指摘する声もあるようですが、これは撮影したカメラ位置が利用者からずれていることの影響の方が大きいかと思います。実際にはそれほどの大きなズレは感じません。

リモコンによるポインティングと銃型コントローラとの違い

上記の話題と関連して、よく比較されるWiiリモコンガンコンなど銃型コントローラですが、その使用時のスタイルにはいろいろ違いがあるように思います。
一番違うのは、目線・コントローラ・ポインタの位置関係でしょうか。ガンコンの場合、シュートする際に目線→ガンコン→ポインタ位置とほぼ直線に並んだ状態で使用することが多いかと思いますが、リモコンでのポインティングでは基本的に目線の下にリモコンがあるため、絶対的であろうと相対的であろうと、画面上のポインタを見ながら操作することには変わりません。ここが、ガンコンとは決定的に違うところでしょう。一応、リモコンでも手をまっすぐ伸ばして目線と合わせられないこともないですが、手首が結構無理な体勢になってしまうのできついものがありますし。

Wiiリモコンの操作感に近いのは、レーザーポインタでしょうか。レーザーポインタ自体は、大学生などであれば発表会で使用したことがあるんじゃないでしょうか?これは確実に絶対的なダイレクトポインティングではあるのですが、その位置の調整は実際には、レーザーの照射されたポインタ位置を見て行うことになります。また、相対的なマウスとも感じとしては近いですね。こちらも、マウスカーソルを見て相対的に動かすわけですし。もっとも、マウスの場合は大きく動かす場合は一度マウスを浮かせてから再度動かすか、ゲーマー向けの大きなマウスパッドを使うということが必要になりますが(その分、解像度が高く詳細な操作が行えるわけですけど。)


つまり、ダイレクトポインティングかどうか、ということ自体は使用感とは別に考える必要があるわけですね。Wiiリモコンの通常の使い方では、結局はポインタ位置を見ながら操作する訳なので、絶対的、相対的という話はあまり意味はないかと思います。

ただ、自分は今回RedSteelやメトロイドなどシューティング操作するものをプレイしていません。これらを体験した人がポインティング精度をどの程度に感じたのかは自分では分かりません。また、Wiiの場合ザッパースタイル(銃型アタッチメント)というものも用意されています。これだったら、目線・コントローラ・ポインティングを直線上にそろえられるわけで、また変わってきそうな気がしますね。

ポインタの認識範囲

もう一つ、これはパンヤをプレイしていたときに体験した興味深いエピソードを紹介しておきます。パンヤでは、俯瞰図での操作はBボタンを押しながらポインタを動かして移動などをするのですが、これが思ったよりちょくちょくポインタが反応しなくなりました。少し大きく手首を動かすとポインタが画面端に行ってしまい、動かなくなる、という感じですね。

これについてスタッフに聞くと、「画面と距離が少し遠いため」という説明が。実際に、立ち位置のマットより少し近づいて操作したところ、先ほどより大きく手首を動かしても操作できるようになりました。直感的なものとしては、遠い場合も近い場合も、大体ポインタの向きがディスプレイからはずれたところでポインタが移動しなくなる感じでしたね。

こうなると、Wiiはテレビの大体の大きさも把握しているような感じです。ただ、そのためにはキャリブレーションなどで立ち位置とディスプレイの大きさを調整してやることが必要な気もします。そうした調整をせず、距離によってポインティング角度が変わるのであれば、それはセンサーバーを利用した仕組みに秘密が隠されている、ということかもしれませんね。

Wiiリモコンの距離の把握

センサーバー関連でもう一つ興味深いネタとして、「Wiiはリモコンとテレビとの絶対的な距離もある程度把握している」ということがあります。これは、写真チャンネルを利用したときに分かったのものです。

これまで、東京ゲームショーElebitsの操作などで、ボタンを押しながら引く、押すという操作があり、これはボタンを押した場所を初期値とした相対的動きを利用したものでした。同様の動きは、パンヤのカメラ視点のズームでも見受けられました。この操作の場合、ボタンを押した視点の位置が重要で、手を伸ばしきった状態を視点にすると前にそれ以上押せない、という物理的な制約もありました。

一方、写真チャンネルでは、ボタンを押していなくてもリモコンの距離でブラシの大きさが変わります。しかも手の前後だけでは足らず、立ち位置を変更してテレビに近づいたり遠ざかったりしないと最小のブラシ・最大のブラシとならない状態。こうしてみると、そもそもリモコンの絶対的な距離もある程度把握できていると考えるのが自然でしょう。絶対位置が分かれば、相対位置を求めるのは簡単ですからね。(逆に相対距離だけなら、加速度センサでもある程度何とかなるかと。)このあたり、センサーバーを用いた認識方法の謎を解く、1つの手がかりになる気もします。

ポインティング認識の仕組みについての推測

以上、ポインティング範囲やリモコンの距離把握について、体験会を通じて新たな知見が得られました。この二つに関連するのはやはり、センサーバーでしょう。これについて、まだ詳細な技術情報は公開されていないので、確定的なことは言えません。ただ、今回の知見を元に、個人的な推測を述べてみたいと思います。

まずは、センサーバーについてこれまで分かっている情報の整理から。先週のIGN Weeklyの中でWiiのメニュー部分が9分ほどにわたり紹介されていましたが、その中にセンサーバーに関する項目も含まれていました。

IGN: IGN Weekly Video 1726578

この動画自体非常に見所が多いのですが、この動画の7分あたりからがWiiのセンサーバーの設定項目の説明がされています。項目としては以下のような感じ。

  • センサーバー
    • センサーバーの位置
    • 感度

センサーバーの位置は、TVの上か下か、という設定項目があります。また、感度調整の方では+ボタンと-ボタンとで感度を調整するようです。

この部分の動画を見ると、ちょうど上記画面に入ったときにポインタカーソルが左上に動くのに合わせて、画面上の2つの点が右下に動いています。さらに、この感度調整に入る直前のダイアログに書かれた英文では、以下のような内容が書かれています。

原文:Aim the Wii Remote at the TV. Press + and - to adjust sensitivity until only two blinking lights apper.

訳:Wiiリモコンをテレビに向けてください。点滅する光りが2つだけ表示されるまで+と-ボタンを押して感度を調整してください。

これらの情報から推測すると、上記画像の二つの点はセンサーバー側の両端に付いている光源を表し、感度調整ではセンサーバー以外の光源を拾わないようにその感度を調整しているということではないでしょうか?この想定は、リモコン側にセンサーバー認識用CCDカメラが付いていることを前提にしています。
感度調整は、認識に用いるしきい値を調整している感じですかね。赤外線での認識は蛍光灯や夕日といった影響を少なからず受けるので、それによる誤認識が起きないようにするための仕組みなんじゃないでしょうか。さらにセンサーバーの光源も実際には左右に4つずつ付いているようなので、これら8個の光源の点滅タイミングを自然界ではあまり生じないパターンにすることで、よりセンサーバーの特定を確実にしているのでは、と自分は推測しています。


上記推測が正しければ、Wiiリモコンからセンサーバーの位置、そして両端の光源の位置まで把握できることになります。この2つの光源が、Wiiリモコンの距離の認識に影響しているのでは、と自分は推測しています。

つまり、Wiiリモコンがセンサーバーに近づけばWiiリモコンに写るセンサーバーが大きくなるので、必然的に光源間の距離が広くなります。逆にセンサーバーから離れればセンサーバーは小さく写りますので光源間の距離は狭くなります。この仕組みに従えば、Wiiリモコンが検知した光源間の距離をはかることで、Wiiリモコンとセンサーバーの絶対的な距離が大体分かる計算になるわけです。

また、ポインティングにもこの2点の光源情報は利用できます。つまり、リモコンがセンサーバーを写せている限り、リモコンの絶対的な向きが大体把握できるわけです。センサーバー位置のテレビの上側、下側、という情報は、中心とどの程度ずれているか、ということに対する大まかなずれを考慮するためのものじゃないかと推測します。つまり、リモコンがセンサーバーをCCDの端にでもとらえているうちはかなりの精度でポインティング位置を補足でき、それからはずれた部分は加速度センサなどで補正する、という感じなんじゃないかと予測します。

この推測に従えば、パンヤポインティング範囲が限定されていることも一応説明できます。つまり、リモコンがセンサーバーを少しでもとらえていればリモコンが静止していても中心からのズレを計算でき、視点移動動作ができます。しかし、センサーバーを補足できないほど動かし、その状態でリモコンを止めてしまうと、リモコンがどこを指しているか把握できなくなるのではないでしょうか?
通常のポインティングならば加速度などでアバウトに補正するだけで使えるでしょうが、パンヤの視点移動動作のように、中心からのズレの向きと大きさで画面を動かす場合には、センサーバー情報を頼らざるを得ない、というように考えます。

全体を通じて

上記で行った分析は、あくまで知的好奇心から行った個人的推測にすぎません。一応得られる手がかりから理論的には推測したつもりではありますが。果たして真相がどうなのかは気になるところですが、技術的なノウハウ情報な気がするので公開されない気もしますね。

もっとも、ゲーマーにとってはこうした技術的内容はどうでもよく、「実際に動かして思い通りに操作できるかどうか」ということでしょう。今回はあまり「枯れた技術の水平思考」では無いと思うので、精度・使用感の部分の調整は十分行ってほしいものです。