任天堂株主総会レポート by そらねこ屋 〜 新作プレイアブルのレビューも

時価総額が一時ソニーを抜き、業績絶好調な中で行われた2007年任天堂株主総会。その中で長らく放置状態だったDSワンセグチューナーの試作品や発売時期が披露されたということで、こちらでも取り上げさせて頂きました。

わぱのつれづれ日記 - DS用ワンセグチューナ年内発売へ 〜 株主総会で試作品披露

それ以外の株主総会の情報としては、Yahoo掲示板のものを一部紹介したのですが、毎年詳細な株主総会のレポートを掲載されている「そらねこ屋」さんのところでも、2007年株主総会のレポートが公開されましたので紹介したいと思います。

07'任天堂株主総会レポート

※なお、昨年のもこの日記で紹介させて頂いています(わぱのつれづれ日記 - 任天堂株主総会 質疑応答について)。毎回丁寧なレポートありがとうございます。

質疑応答集 〜 信念の感じられる返答

総会で出た質疑応答について詳細にレポートされており、とても参考になりますね。さすがに株主総会だけあって、金銭に絡むところが中心になっている感じです。中でもいくつか印象深いコメントをピックアップしてみたいと思います。

  • (製品への飽きについて)どのような良い商品でも、いずれ飽きるのは、娯楽商品の宿命。脳は、いつも新しい驚きを求めているから。しかし、お客様に欲しい商品を聞くだけでは、うまく行か ない。お客さまに「何をしたら驚きますか?」と聞いて実行しても、既に分かってしまっている事なので驚きはなくなってしまう。お客様の不満や、望むものを聞く努力(理解する努力)は必要だが、それに、驚きを提案しなくてはならないと考えている。
  • (社会的役割について)現在、任天堂がゲームの範囲を広げている。Wiiを中心に「茶の間文化の復権」が出来れば良いと考えている。以前は、豪華なもの 複雑なものが良いと考えられていたため、任天堂も一時はそれに乗って悪魔の循環をしてしまった。これが良かったから と言って同じ事をくり返し続けてはいけない。現在は、直感的なインターフェースがカギになっているが、それも続かないだろう。適切に新しいものを作って行きたい。
  • (リコール対応について)今回の件は、実はリコールではないが、お客様から見れば、リコールのように感じるだろう。リコールとは、本来、法的な規制のかかるものを言うのだが、今回は自主交換なので。
  • (会社の成長について)プラットフォームがうまく行けばにぎわい、良い循環になる。逆にうまく行かなければ、悪魔の循環になる。現に、任天堂自体がそうなった(悪魔の循環)時期が数年前にあった。 浮沈の激しい業界だが、出来る事なら、毎年売り上げを更新し続けたい。以前、山内元社長よりこんな事を言われた。「娯楽の世界には、天国と地獄しかないんだよ。中間があれば良いんだが。」

まずは「飽き」に関する最初の2つ。客が望んでいることを提示するだけでは、客を驚かせることができない、というのは前から繰り返している岩田社長の信念ですね。ソニーなんかも、そうしたポリシーを持っていた会社の代表格だと思うのですが、PS3なんかは久夛良木氏が独特のことをやろうとしすぎて無理が生じ、急激に通常ゲーム側に舵を振ったためにどっちつかずになっている感じになってますよね。任天堂の場合は岩田社長にぶれがなく、かといって我が道を突き進むタイプでも世間の空気もちゃんと読める人なのがうまくいっているところなんでしょうね。現在のインターフェース変化路線も、ただそれだけでは長続きしない、というのは自覚しているようなので、次なる「消費者が驚くようなこと」としてどんなものを示してくれるか、楽しみですね。

リコールのくだりは、やはり「リコールではない」というところを強調しておきたいみたいですね。まあ、Wiiのストラップについては実際その通りではありますが、返答の中にあるようにリコールと認識されるのも無理ないでしょう。「リコールじゃない」と繰り返し語るのもちょっといやらしい感じはします。(まあ中には、「リコールじゃないのに無料で交換対応!なんて素晴らしい会社!」とマンセーしてしまう人もいるとは思いますけど。)まあ、でもこれも法律上のリコールまで行くまでに世界的に手を打つという決断ができてしまったからなんでしょうけど。

最後のは山内氏の名言集に加えられそうな言葉ですね。「娯楽には天国と地獄敷かなく、中間はない」というのは、いかにもシビアな目線を持っていた山内氏らしい言葉です。自分はまさにこの山内氏が君臨していた時代にメガドライバーだったので、当時はメチャクチャ嫌いな人でしたが、その後時代が変わり、今になって山内氏の語っていた未来像がいろいろ実現しているのをみて、本当にすごい人なんだなぁ、と思っています。語録なんて読むと、非常に味がありますよね。

山内語録

株主総会後 〜 宮本氏のサインやフォーエーバーブルーの体験など

株主総会後は、岩田社長の写真撮影や宮本茂氏のサインなどもあったようです。自分はかなりミーハーなところがあるので、こうしたのはとても魅力的に感じますね。昨年のWii体験会では青沼氏と江口氏にお会いして握手とサインをいただきましたが(Wii体験会in東京会場レポート)、是非宮本氏や岩田氏にもお会いしてサインなどをいただきたいですね(特に岩田氏)。

また、それ以外にも各種ゲームの体験ゾーンも設けられていたようです。その中でも、Wiiでの発売タイトルとして今まで映像でしか紹介されていなかった「フォーエバーブルー」の体験台もあったようで、そのレポートをそらねこ屋の美夜さんがされていますので、以下に転載してみたいと思います。

もうほとんどの人が帰ってしまっていて、社員さんの方が多いくらいの状態で、みんな昼も食べて無いだろうし、悪いから帰ろうかなぁと内心思いつつ、「FOREVER BLUE」が気になってたので、最後にプレイ。(遅くまで申し訳ないですと言ったら、笑顔で、「いやいや大丈夫です」と言って下さいましたー)
ダイビングして、海中の魚を見たり、ポインタを魚にあててAボタンを押すと詳しい解説が見られたり、魚をなぜられたり。泳ぐのはポインタで行き先を、Bボタンでひれを動かす事で移動。船の上にもペンギンや、アザラシがいて、それも、AボタンでなぜなぜOK。特にアザラシは、それで懐いてくれるそぶりがあったりして可愛いv「ニンテンドッグス風なんですよ」との事。
船の上のビーチベッドに寝ると、視界モードになってひたすら海が見えるのも良い感じ。「環境ビデオっぽくなるんですよ。このゲームでは、何かをしなきゃって事は無くて、1日中好きなように過ごす事が出来ます」何かのモードで詳細が出てた中にMP3と言う項目があったけど、もしかして、音楽を追加出来たりするのかな?聞いて見れば良かった。キャビンに入ると、今まで出会った魚を図鑑風に見られたりするのも、コレクター魂をそそられるかな。何だかとても癒されるゲーム(らしくないけど)です。

撮影・サイン・握手会?+新作体験

海の中、をイメージしたソフトかと思っていましたが、何かトータルのバーチャルレジャーっぽい感じもしますね。PSPで「ポータブル・アイランド」という仮想リゾートソフトがありましたが、それとだぶるところもあるのかもしれません。

ポータブル・アイランド 手のひらのリゾート

ただ、面白そうなのが仮想ダイビングモードでの魚や動物とのふれあいですね。nintendogs風、というのは、ここで持ってくるかと思いました。ダイビングは人気のあるレジャーですけど、かなりお金のかかる娯楽ですし、いろいろなところに行こうとするとライセンスが必要だったりしますからね。Wiiでのなんちゃってダイビング気分というのも、それなりにニーズはあるかもしれません。

もっとも、ダイビングはそもそもそうしたレジャー施設に行き、その空気・開放感、料理などを楽しむことも目的ですし、自然の作り出す、日常では見られないような美しい光景を見られることも大きな魅力な訳です。綺麗な後継という意味では、本来はHDゲームの方が適している感じはするんですよね。Wiiの映像能力でどの程度そうした「感動できる光景」を再現できているのか、一度自分も体験してみたいところです。

まとめ 〜 株主との良好な関係が感じられる株主総会

以上、そらねこ屋さんのところのレポートをざっと見てきましたが、これだけ大きな会社でありながらも、株主と良好な関係を気づいていることが感じられるレポートでしたね。質疑応答の中にあった、以下の質問なんかなかなかほほえましいものがあります。

岩田社長が就任して以来、しゃんしゃんで終わってはいけないと思い、いつも発言して来たが、今回の皆さんのすばらしい質問を聞き、私の発言はいらないかと思いながらも手をあげさせて頂きました。以前、若さだけで、目標が達成出来るのかと厳しい事を申し上げたが、今の経営の達成率は尊敬に値する。いろいろほめたいが、今までの皆さんもほめていらっしゃるので、ほめ殺しになってはいけないのでこの辺りでとどめておきます。
私もWiiの発売日に並んで、買いました。皆さんも(と、周りのお年寄りを見渡しながら)Wiiを買って、それを渡さずに自分の家に置いて、茶の間に孫を引き寄せましょう(周りから笑い)。

こうした発言が出るのも、これまで子ども向け、勉強などを妨げる悪しきものと大人から疎まれていたゲームを、DSやWiiで幅広い年代に広げた効果と言えるでしょうね。自分も、子どもの頃にゲームをプレイしているのを親から白い目で見られていたものですが、今や帰省するたびWiiSportsで親と一緒に盛り上がったりするわけですからね。ビデオゲームの社会的地位を上げてくれたことは、ゲームを子どもの頃から趣味とする自分にとって本当にありがたいことだな、と感じています。

岩田社長自身が警戒しているように、今は好調に推移しているからと行って、いつまた数年前のような崖っぷちの状態になるとも限りません。ただ、そうなったとしても今持っている信念をまげず、ビデオゲームの健全な発展を引っ張っていって頂きたいですね。