VOCALOID2で「きしめ〜ん」 〜 ave;new公式ブログで

最近世間をにぎわせているVOCALOID2。いわゆる音声合成ソフトではあるのですが、本物の声優を起用し、なおかつ人工音っぽさを薄めて色々調整ができるということで、そのクオリティの高さが話題になっています。

クリプトン | VOCALOID2特集

すでに、その性能を使ってニコニコ動画などでは「歌わせてみた」と称するMAD動画(音声?)がいろいろ上がっていましたが、なんとオフィシャルでこのVOCALOID2を使っちゃうところが出てきたようです。

True My Heart」シングルCDに併せてave;newオフィシャルで公開

今回題材となったのは、「きしめん」の空耳弾幕ソングとして有名な佐倉紗織 feat. ave:newの「True My Heart」。自分も、ニコニコ動画を見始めた当初から、オリジナルから様々なMAD形式まで繰り返し聞いている曲ですね。

True My Heart

True My Heart

佐倉紗織 「きしめん」CD出てます - アキバBlog

今回、上記CDの発売記念として、ave;newの公式ブログにてVOCALOID2バージョンが公開されてます。

今週のave;new | ♯19 ave;new feat.初音ミク(試聴あり)

上記ページでは音声だけが、初音ミクの画像付きバージョンがYouTubeにも上がっていたので紹介しておきます。

まだ電子音っぽいところは残ってはいますが、曲調がテクノっぽくアレンジされていることもあり、結構綺麗に聞こえますね。このVOCALOID2は調律する人の腕でかなり変わってくるそうなので、さすがは本職というところでしょうか。以下に原曲+空耳つきの動画も上げておきますので、聞き比べてみるのも面白いでしょう。

高度な技術の、実に「くだらない」活用法(いい意味で)

しかし、今回のVOCALOID2のように、これだけ技術が上がってくると、同じ音声合成といっても新しい価値が生まれてきますよね。高い技術を、高い処理能力で実現することで、こうした新しい娯楽、広がりを見せられるわけです。

最近自分が繰り返し見ているアイドルマスターのMAD動画なども、制作にはPC用フリーの動画編集ソフトを使っている方が結構います。めちゃくちゃ凝った動画であっても、ツール自体は無料だったりするんですよね。そうした、高い技術が敷居の低いところにおちてきたことで、今回のように実にばかばかしくくだらない、でも最高に楽しい娯楽がユーザーレベルから生まれてくるわけで、なんだかんだ言って技術の進歩はすごいな、と感じますね。

PS3などでもこの方向性は可能か

先日、このブログで紹介した「プレステ3はなぜ失敗したのか?」が、いつのまにやらAmazon.co.jp ベストセラーの一桁台にまでランクアップしているような状況のPS3ではありますが、実はこのVOCALOID2のような路線も、自身の高い処理能力を生かすものとしてはありなんじゃないですかね?

実際、すでにPS3を活用して、非常に高いレベルでの音響処理を行うシステムが開発、発売がされていたりします。
eetimes.jp 多チャネルのリアルタイム音響測定、 「PS3」でフィックスターズが実現(2007/08/20)

上記のものは完全にプロ向けのものですが、PS3という娯楽コンピュータという位置づけからしたら、もっとライトな部分でのフル活用もできてもよさそうなものです。VOCALOID2的な音声合成も、Cellの力を使えば自由に音声を取り込んで調律できるようにするとか、より高度なことを実現できるかもしれません。また、PS3は高いグラフィック能力も持っているだけに、アイドルマスターのMAD動画作成のように、PS3の動画を使ってその場でMAD動画作って、そのままネット配信してしまうとか、そういったシームレスな遊びも出来るかもしれません。

ただ、この手の「遊び」の提案は、なによりもセンスが必要です。「この技術はすごいだろ!」という見せ方ではだめで、任天堂のようにタッチペンやモーションセンサーを実世界の遊びとリンクさせて提案したり、今回のVOCALOID2のように声優やキャラをつけてネタ要素を含ませるとか、そういった「面白い」と直感的に分かるひねりが必要となってくると思います。できれば、ソニーもクールとかかっこつけたところを狙うのではなく、PS1のころやっていたような、馬鹿馬鹿しいもの、ゆるいもの、そんな路線を超高性能・超絶技術の無駄遣い状態でばく進してみて欲しいところです(まあ、この路線に一番似合うのは古き良きセガな気もしなくはないですがw)。

各社連携した新しい「エンターテイメント」の創造に期待

また、ネット時代のこの世の中では、自社規格やアーティストに固執することのない、柔軟な取り組み方も必要でしょうね。企業の「金を稼ごう」というエゴが露骨に見えてしまうと、どうしても有志の盛り上がりは生まれてきませんから。まあ、ソニーも最近はかたくなに守っていたATRACを諦めたり、Rollyといったお遊び機器も出してきたりしているので、本気で取り組めば結構おもしろい展開になってくるかもしれませんね。

久夛良木氏が目指した高い処理性能を持った機器がネットワーク上でつながることで生まれる新しいエンターテイメント。ビジネス的な面では課題が山積みではありますが、そうした思想そのものは面白いと思ってます。ネット、コンピュータ、ゲーム機、マスコミなどなど、各々自社だけが勝ち組を意識して競合するのではなく、柔軟につながり、補完しあって、新しい娯楽を消費者に見せてくれるといいな、と思います。