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わぱのつれづれ日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード Twitter

2012年05月05日(土) 規制

課金ビジネス行き過ぎにメス〜消費者庁が「コンプガチャ商法」に中止要請

マスコミや投資家を中心に、その高い利益率と市場拡大から猛烈なプッシュを受けてもてはやされているモバゲー・グリーの日本ソーシャルゲーム。利益中心、いかに客に金を出させるかに腐心した戦略でかなりえげつない、きわどい商法も多数行っていて規制などの話も頻繁に出ていたのですが、本日ついに商法の一つ「コンプガチャ」に消費者庁のメスが入ることが明らかになりました。

コンプガチャは違法懸賞、消費者庁が中止要請へ : 社会 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

FNNニュース: 消費者庁、ソーシャル...

コンプガチャ商法に対して、消費者庁は景品表示法で禁じている懸賞とみなしてまず週明けにも中止するよう注意勧告するようです。注意に従わず中止しないようであれば、法に基づく措置命令も取るとのこと。措置命令は行政処分であり、従わなければ罰則もあるようですね。

措置命令 とは - コトバンク

最初にネットで大きく話題になったのは読売新聞の紙面。その後各種ネットニュース系でとりあげられ、FNNがニュースとして報じた感じですかね。読売新聞も紙面のダイジェスト版のような記事をネットでも公開しています。

以下、今回動きに関して、これまでの流れをざっと振り返りながら感想を述べてみようかと思います。


開発費高騰とソーシャルゲームの台頭

開発費の高騰に対して少子化などでユーザーが増えていかなかったゲーム業界。その高騰ぶりは以下のデータを見ても分かるかと思います。

GEIMIN.NET/テレビゲームの開発費

かけるコストに対するリターンが見合わない不毛な場と化してきたところで、各社利益を得る方法をあれこれ探っていました。任天堂がDSやWiiで取った戦略は「新しい層を呼び込むこと」。またスペックを抑えたハードでもゲームが売れる土壌をつくることで開発費抑制にもつなげる狙いがありました。この大胆な施策はリスクもありましたが結果的には見事成功。任天堂プラットホームとして高い利益を生み出し、サードも特にDSではいろいろなジャンルで大きな売上を上げることができました。

一方、この任天堂の戦略も陰りが出てきます。WiiやDSでは各々WiiFitや脳トレといった社会現象化するほどのタイトルで一般を惹きつけたのですが、その多くは飽きて離れていってしまいました。結局残っているのは従来のゲーマーが中心。任天堂3DSではこうした従来ゲーマーを獲得して利益を上げることに腐心しています。一般層向けはこれからみたいなことをこの前の経営方針説明会でも行っていましたね。

そんな浮動層が流れていたのが、スマートフォンのアプリ市場。無料や100円程度のアプリが次々と出てきており、スマートフォンで電車などのちょっとした時間でも遊び易いことで人気を集めています。ただこれら単体アプリは過剰な安値競争になってしまい、なかなか利益性の面ではまだ十分な成功の筋道が見えない状態。そんな中、同じくモバイルな分野で高収益性を誇っていたのが、モバゲー・グリーなどのソーシャルゲームです。

通称モバグリとも呼ばれる両者は、ガラケーを中心にブラウザゲーで伸ばしていました。無料をうたったCMでゲームに詳しくない人を多く引き込み、そのソーシャルでの人のつながりやランキング争いでサービスへの定着化をはかり、さらにそこへ「アイテム課金」という制度でとくにコアな客に多くのアイテムを買わせることで大きな収益を上げていました。ブラウザゲー中心なので開発費も少なく済み、すさまじい利益率を稼いでいましたね。


特定の顧客の重課金を図る各社

そんなソーシャルゲー商法ですが、基本無料なシステムだけにその収益は実際に課金をする人次第。その売上について、その課金者に対してより多くの課金、重課金をさせるような取り込みが最近は大きくなっていた模様です。

消費者庁、コンプガチャを中止要請との報道…資本市場関係者との問答(放談) | Social Game Info

そんな中で生まれた数々の仕掛けの一つが「コンプリートガチャ」。ネットガチャ自体が、そもそもガチャの数が有限でなく確率が目に見えず操作し放題という点で大きく問題視されているのですが、コンプガチャはさらにえぐく、ガチャで一定のアイテムを揃えないとレアアイテムが得られないというもの。ある程度集まってくると最後まで集めたくなる心境を逆手にとって重課金を煽る商法ですね。普通のガチャでもコンプを狙うとそういう傾向はありますが、コンプガチャはコンプリート自体がアイテムを貰う一つの条件になっているのが、とくに今回問題になったようです。


景品表示法の「懸賞」に相当

今回該当するとされたのは、景品表示法で禁止している「懸賞」というもの。以下のPDFの5の部分が

5 前三項の規定にかかわらず、二以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、 異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞による景品類の提供は、 してはならない。

懸賞による景品類の提供に関する事項の制限(PDF)

この部分が絵合わせというもので、組み合わせることで検証となる形の提供はしてはいけないということのようです。この件についてはJAROのページで分かりやすい説明が書かれています。

当たり券3種類そろうと応募できる懸賞は可能か?|JARO 日本広告審査機構

元々はプロ野球カードで複数枚揃えるとさらにおまけがもらえる、というのが問題となって規制が入ったようです。コンプガチャはデジタルデータという違いがあるためこれには該当しないと主張されていたのですが、今回改めて消費者庁から該当する、と示されたわけです。


対応を迫られる各社〜ビジネスモデル再考も

今回のものは、まずはコンプガチャが正式に注意勧告がされます。冒頭でも触れましたが中止しなければ措置命令さらに従わなければ罰せられます。実質的に、コンプガチャは各社廃止せざるを得ないでしょう。ソニーもすでにみんなといっしょでコンプガチャを導入したところ。

週刊トロ・ステーション@まとめwiki - ゲームセンター/カプセルポンポン

従来の月額課金をやめて基本無料+アイテム課金を導入することにしたPSO2などもコンプガチャ相当なシステムが導入されているようです。

PSO2、有料コンテンツのスクラッチ(ガチャ)とコンプ特典装備 - YouTube

特にソニーも含めた大手メーカーが基本無料、ガチャなどで高収益を図るモバグリ商法に乗っかろうとしていたところ。それだけに、その中でも大きな利益率を誇るコンプガチャが規制されるということは、単純なゲーム上の中止だけでなく、ビジネスモデルの観点からも再考が求められるかもしれません。

一方、任天堂は先日の経営方針説明会で「射幸心を煽るガチャは行わない」と明言していましたし、ドラクエXも「ガチャは無い」とわざわざ明記されていました。このあたり、規制の動きが既にいろいろ出ていましたし、ポリシーにも反するということではっきりした態度に出て、成功した感じですね。今回の消費者庁の動きが無ければ、またマスコミに「儲かる仕組みに乗っかろうとしない古い会社」とかバッシング受けるところですから。実際、一つそんな記事出てますけど。

任天堂は反ソーシャルゲーム宣言で、自分で自分の首を絞めないか - IBTimes:世界の最新ビジネスニュース

仮定に仮定を重ねる、非常にひどい記事ですが、日経・産経あたりもこういった論調で書いてきそうでしたからね。もっとも今回のガチャ規制を「ネット課金に踏み出した任天堂に暗雲」とか無理やり絡めてきそうな気もしますが。


現時点ではコンプガチャのみ〜求められる業界自主規制

今回のガチャ規制はコンプガチャのみで、通常のガチャは景品表示法の観点からは対象外とのこと。ただ、問題視されていることはかわりなく、今後別の法案などとからめて規制の動きになるとも見られているようです。

消費者庁がコンプガチャ禁止へ、GREE田中社長は暖かくして寝る(補足あり): やまもといちろうBLOG(ブログ)

すでにソーシャルの世界ではレベルアップガチャといった、まるでパチスロのリーチシステムかのような露骨な射幸心を煽るシステムも出てきているようですし、根本にあるのが「ゲーム性関係なく射幸心をいかに煽るか」と講演とかでも公言してしている以上、一つ規制してもまた別のえげつない商法が出てきかねませんよね。

ガチャ商法/ ネットガチャ商法/ 同人用語の基礎知識

こうしたえぐいことをやっていては、当然社会的な批判はまた受けることになるでしょう。ただでさえ儲かっていてやっかみや妬みを持っている人も多いんですし。

結局のところ、「社会の信頼がなければ企業としてやっていけない」という、CSRの観点の一つとも思うんですよね。

企業の社会的責任 - Wikipedia

企業、業界として社会に信頼される事業展開が出来ないのであれば、結局今回のように国などの公的機関の横槍をゆるす形となってしまいます。今回の件について、「ゲーム性の規制はより大きなゲーム規制につながる」と文句を言う業界関係者の方もちらほら見られますが、そうした介入を招いたのは自分たち自身であるということをしっかり反省して欲しいところです。なぜ国に介入される前に、自分たちで「やってはいけないこと」の線引きができなかったのか。まずはその説明をした上で、規制に対する反論をしていただきたいところです。


まとめ〜健全な課金ビジネスの育成なるか

個人的にも、単純な規制歓迎という考えはありません。むしろ、「規制を受けないために自主規制する」ことが非常に重要だと考えています。以前、モンハンCERO Cに対してファミ通の浜村氏が自ら異を唱えるようなことを言っていましたが、あれなんかもひどいことだと思いました。CEROに問題があるのは分かるのですが、自主規制機関に対して内側の人間&立場のある人間がそれを価値がないものかのように言ってしまっては、今回のように国の介入が入りかねませんからね。法律で規制されたりしたら、もうどうしようも無いですし。

今回の件でも、利益のみを追及して自主規制が後手後手に回っていたことのしっぺ返しのように思います。つい最近ですからね、複数企業で集まりを持って未成年者対策とかをやろうとしていたのも。こうした規制関連の報道があってからのことでしたし。

冒頭の方で述べた「開発費高騰に対する収益悪化」は、依然として深刻な課題です。現状のコンシューマーは、値段設定がファミコンなどの時代に止まっており、個人的には不健全な状態とも思っています。ネットの普及に基づき配信形態とかも自由度が出たのですが、ソフトに対する対価をより得られるようにすることは間違っていないと感じます。消費者側はそりゃ安くやりたいということで反感は強いですが、理論的に納得出来る課金形態とかであれば、世間に受け入れられていくものもあるでしょう。追加コンテンツとかはすでにそうですし。

それだけに、そうした健全な意味での課金ビジネスの広がりをも、こうした過剰なえぐい商法の横行は潰してしまいかねないのが懸念点です。「課金=悪」と社会的にも思われてしまっては、正直ソフトメーカーはこの先生き残ることが極めて難しくなると思いますし。大手サードがすでにえぐい商売に手を染めてきているところですし、任天堂も岩田社長の理念は立派なのですがFE覚醒のDLCはキャラのバラ売り的なところもあって結構賛否両論。まだまだユーザーが両手をあげて受け入れられるような状況にはなっていないように思います。

パッケージソフトの呪縛からは、どこかで抜け出す必要はあると思います。それをどうやって健全な形でやっていくか。各社目先の利益に目が眩んで道を誤っているような印象も受けるだけに、しっかりと自制心を持って「何が社会的に受け入れられるものなのか」と、もう一度客観的に見つめ直し、ゲーム愛を持って健全な課金ビジネス育成に努めていただきたいものです。