10.17〜23日記

10.17月
朝から普通に労働。後、御茶ノ水の紅テントへ。今日は唐組の演出久保井さんがワークショップをやるとのことでひっそりお邪魔。今上演中の『夜壺』の台本の一部が配られて(門外不出級の台本をこうやって読ませていただけることもすでに貴重!)、久保井先生が読み解いていってくださる。わたし、去年からちょびっと演劇に参加させていただいたりしてるとはいえ、まだ演劇1年生なので、戯曲ってどうやって読んだらいいんか未だにわからなくて、それを、ほほう、こうやって読んでいったらいいのか! て学んだ感じ。こうやって読んでいったらこの凄まじい情報量の唐十郎戯曲もわかるようになるんか! わたしは1年ぐらい前に図書館で唐十郎の戯曲を借りて読んでみたことがあったのやけど、正直わけわかめで、お芝居で見たらすごくおもしろかったのに、戯曲そのものやとわたしレベルのオツムでは読解出来なかった思い出があるのやけど、今回読み方を教わったので改めてまた読んでみたいなあ。その後、久保井先生が何人かずつ参加者当てて、実際にセリフを喋らしたりしていってて、これがまた巧妙なキャスティングなもんやから面白くて、聞きながらおなか抱えて笑った。年配の参加者さんが多かったのやけどみんなすごいイキイキ喋ってらして、とあるおじいさんなんてあの時間内で完全に演技に目覚めてしまった感があって、喋り方も見る見る変わっていってて、なんやかすごくいいものを見た。終わったあと久保井さん赤松さん気田さん&見守り隊の方たちとテント飲み。今日は公演後と違って人数もこじんまりやったのでまったりおしゃべりした感じでとっても楽しかった。

10.18火
朝9時に木村監督と桑原Pが車で迎えにきてくれて、楽器を積み込み、みんなで用賀のスタジオへ。今日はこの1か月くらいずっとわたしが曲作りで追い詰められていた映画の劇伴音楽のレコーディング日。用賀のスタジオ、すごく立派なところでいままでにわたしがレコーディングしたことある中でも1、2を争うレベルの高級施設って感じやった。ついたらエンジニア葛西さんがピアノ部屋にマイクを立てたり準備してくれていて、わたしはそろそろ到着予定のチェロの坂本弘道さんを出迎えるため駐車場で待つ。用賀ってはじめて降り立ったけど、如何にも世田谷の閑静な住宅街って感じで平日の午前中、今日はぽかぽか陽気で長閑。坂本カーが到着して、ひさしぶりに坂本さんと再会し、一緒にスタジオへ行って準備。色んなセッティングはわたしは手伝えることもないので、その間監督と一緒にコンビニへ買いだし。途中、交差点ですごい剣幕で怒っている自転車ジジイと車ジジイの喧嘩を目撃。自転車ジジイは車の窓に掴みかかって大声あげて怒ってて、それを交差点の真ん中でやってるもんやから、完全に通行の妨げになってて他の車たちもプップーて鳴らしだしてて、用賀は長閑やなんて思ってたけど意外と殺伐とした土地なかもしれん。気を取られたわたしたちはすぐ側にあるはずのセブンイレブンへ行くはずが、なんか変な道を曲がってしまって無駄に遠回りしてしまう動揺ぶり。スタジオへ戻って、坂本さんと打ち合わせしながらレコーディングスタート。ここからは怒涛というか鬼スピードで録っていきまくらないと時間切れになるので気持ちは焦る。監督とわたしのイメージの祖語などもあって結構曲によっては難航し、香盤表も順調に押してて途中3時ぐらいの時点では、やばいこのスピードで進めてては完全に間に合わない! とひとり焦りモードに入ってしまった。でも坂本さんのチェロの演奏は本当にすんばらしく恰好良くって、ミキサールームでわたしたちは感動しまくり痺れまくり。改めて、坂本さんにお願いして、そして受けていただけて本当に良かった! しかもあの坂本さんに実は今回、歌もお願いしちゃったりして、というのも声だけを何重にも重ねた合唱曲があって、それのコーラスのアルトを坂本さんに歌っていただいちゃった。これもすごく面白く録れた。エンディングテーマも超かっこよく録れて、坂本さんパートは全部録れたので先にお疲れ様でした。ほんで後半ギターで、森は生きているってバンドの岡田さんって方がいらして、実は監督がどうしてもギターのイメージのカントリーなニュアンスの曲を所望してる箇所があって、しかしわたしはギター弾けないしカントリー知らないし、なのでこのパートはエンジニア葛西さんのご友人の岡田さんにお任せしたのやけど、わたしやったら絶対浮かばない感じの曲に仕上がっていた。岡田さんも帰宅後、居残りの北村さんは残りのピアノ曲と主題歌の本歌をばしばし録って、なんとかリミットの時間までにちゃんと録れて本当によかった〜。ミキサールームの食料のテーブルみたら、アボカド明太、サーモンわさびマヨ、照り焼きマヨ、みたいな不思議な具のおにぎりばっかり並んでて、監督のチョイスセンスが面白すぎて笑ったけど、ジジイの喧嘩で相当動揺してしまっていたらしい。ぶじ終わって片づけた頃合いに制作ヘッドきさらさんが迎えに来てくれて、みんなで車に乗って帰路。途中、高速の降り場を一個間違えたらすごい遠いところまで行っちゃったけど、おかげで楽しいナイトドライブが出来た。御茶ノ水でレンタカーを返して解散お疲れ様して帰宅。あ〜頑張ったよねわたし超頑張りました! まだミックス終わってないから聞けてないけど、ちゃんと良いもん作れた手ごたえがあるので、これはきっと大丈夫! 帰って残りのおにぎりを食べて寝た。

10.19水
昨日頑張ったから今日は遊ぶ! と決めて、ひさしぶりに映画を見に行く。渋谷、まずはシネパレスで『淵に立つ』を鑑賞。浅野忠信の危険人物感からなんとなく予想はしていたつもりやったけど、中盤から想像の何百倍もハイレベルなえげつない展開になり、でもこういう後ろめたい罪の意識の連帯からくる泥沼家族ってたくさんあるんやろうと思うしたぶん他人事じゃない、うちも。大人になった蛍ちゃん役が本当にうますぎて震えた、演技と思えなかった。古舘寛治さんのラストもすごくよかった。空き時間にブックファースト枡野浩一さんの『愛についてはもう仕方ない』を購入してドトール入って読む。ラズベリーコーヒーっていう変な飲み物を頼んだら、うすいコーヒーにラズベリーの紅茶のティ―バックが浸してあるという謎の飲み物やって(コーヒー豆自体にラズベリーの香りがついてる系のを想像して頼んだらまさかの逸品が。。。失敗)、コーヒー×紅茶というやってはいけない合体飲料、なんともいえない微妙な味やった。夕方からアップリンクへ移動してわたしの好きな平山夢明原作の『無垢の祈り』を見に行った。こちらは狭いアップリンクとはいえ満員でむさくるしい男子がぎゅうぎゅうって感じで、平山ファンはこういう男子が多いのか! 冒頭のシーンから絵的に超かっこいいし音楽もめっちゃかっこよくて好み! そしてBBゴローがすごい怖くてびっくりした。こんなまじめに凶悪な役できる人なんや! 血のつながらない父親(BBゴロー)に虐待されまくって学校でもいじめられて日常が最低すぎるから近所で起きたバラバラ殺人事件の殺人鬼をヒーローに感じて会いに行く福田美姫ちゃんという子役ヒロインの子が諦念が漲っててめっちゃよかった。ラストシーンはわたし泣きかけやった。しかし平山原作やねんからえげつないに決まってるし、前評判も、日本映画やけど倫理的に日本公開無理かもとかゆわれてて先に海外で公開されてたらしいとかでそんな映画やからみんなある程度わかって見に来てると思ってたけど、凄惨なシーンの連続やので客席からオエーってえづいてる声が漏れだしててなんか面白かった。みんな感受性が豊やなあ。終わって、渋谷駅のぐちゃぐちゃを歩くのが嫌で、代々木公園駅まで歩いて地下鉄。初台に住んでた頃はこの辺よく自転車で通ってたけど、知らん間に奥渋谷とか名前がついてすっかりオシャレタウンと化しててウワ〜って感じやった。肉片飛び散りまくる映画をみたところやのにわたしはなぜか珍しく食欲が湧いてしまい、しかも劇中で福田美姫ちゃんが自分で作って食べいたラ王の袋ラーメンが無性に食べたくなって探したけどコンビニ以外と売ってなくて残念。マルちゃん正麺で我慢。

10.20木
普通に労働。後、11月4日の銀座の本屋さんEDIT TOKYOってところでやらせていただくライブの打ち合わせで、企画の編集者さんT橋さんと、IKAZUGOKE相方飯田華子さんとで足立区のもつ焼き屋さん。こないだ取材していただいたヴィレッジヴァンガードマガジン企画のイベントで副編集長T橋さん仕切りで綿密に打ち合わせしつつ、途中からは普通に楽しい飲み会。T橋さんもお酒すごい強くって、I田さんもふたりともハイボールをすごい飲んでいた。足立区のハイボールは氷が入っていなくて、原液がそのままキンキンに冷えてるから全然氷で薄まってなくてすごい濃ゆい!(らしい)のやけどふたりともすごいハイペースでがんがん飲んでて、偶然ふたりとも大学が哲学科やったとのことで、哲学論とかも飛び交ってて、まさかこんな足立区の酒場でこんなインテリトークって感じで聞いてておもしろかった。T橋さんはお聞きしていたら経歴もすごいエリートでらっしゃるしハンサムで出来る男って感じやのに全然イケてる人オーラを出さないし嫌味が全然なくて、うんこの話とかにもすごいうれしそうに食いついてくれたりして楽しくおしゃべりして結局閉店まで飲んでご馳走になってしまった。飯田さんともうちょっとおしゃべりしたくて今度は駅前の日高屋へ。餃子とメンマをつついて近況をおしゃべりして楽しかった。日高屋は飯田さんとぐらいしか行かないけど、意外と食べ物おいしい!っと行く度に思う。120円のメンマごときもおいしかった。あ〜よく食べた。

10.21金
目覚めて、あれっなんか身体が珍しくつやっとしている。もうそろそろ季節的にもわたし、全身が乾燥しすぎてカサカサで粉を吹いてしまう時期で、今年も手から足から粉ふき芋状態になってきていたのやけど、昨夜もつ焼きを食べたおかげで身体に油分が浸透したのかな。午前中、書きかけで今月末には仕上げないかん小説とにらめっこして、午後から笹塚のスタジオへ。25日にタブレット純さんとやるライブの練習で、タブレットさんのバンドがリハしているスタジオへ途中から参加。ちょっと早く着いたので笹塚近辺をちょっと散歩。昔、初台に住んでたときはこの辺もよく自転車でうろうろしていた。幼稚園バスみたいな可愛い店構えのパン屋さん、まだあった。ここは一個が小さくて可愛くてだいたい120円でおいしい。クリームパン買って食べ歩きながらスタジオへ。バンドメンバーの皆様とははじめましてやったけど、みなさんやさしいおじさまたちで安心。セッション曲のリハをした。昔からよく聞いていたわたしもファンのあの方のバンド時代のあの曲を練習したりラストのラストのデュエットを練習したりした。終わって、タブレットさんとふたりで幡ヶ谷駅まで歩いて新宿までご一緒した。道中、電車で寝るのが気持ちいいって話で、わたしもタブレットさんも不眠症で家のお布団では眠れないのに、電車やとすやすや寝れるからわざと遠回りの経路でお昼寝目的で移動することがよくあるって話で盛り上がった。タブレットさんはこのあとお笑い芸人としてお仕事で事務所のライブがあるらしい。ご多忙でらっしゃる。帰って、小説書かないとと思ったけどなんか気が進まなくて結局ずっと枡野さんの『愛についてはもう仕方ない』を読んでいた。枡野さんは、お酒飲めない、バツイチ、食欲も性欲も物欲もなくってだいたいコーヒーともらいもんのお菓子とか齧って暮らしてらっしゃるそうで、しかも人から食料や服をもらうことが多いそうで、全部わたしとおんなじやんって感じで勝手に親近感が湧いてしまった。そして一番わかるーって思ったのは、年相応に見られず、若く見られるのは困るというかこれはもうなんかちょっとある種の奇形なんだと思う、みたいに書いてらしゃって、そう! それ! 正しくそれ! とものすごーくシンパシーを抱いてしまった。とはいえ根本的に違うのはわたしは前回の結婚生活があまりに淡泊やったからもうなんの執着もないしなんなら普段は忘れてしまってるけど、枡野さんはお子さんもいてらしゃるしものすごく強烈な体験をしてらしゃるので、この本も、というか枡野さんの作品のほぼすべてのテーマがそれな点かな。気に入った歌↓
「自己愛にひたる他人もゆるしたい 自己憐憫も憐憫したい」
「据え膳を食わないことが恥なんて思ってないし食べ残します」

愛のことはもう仕方ない

愛のことはもう仕方ない

10.22土
朝は小説とにらめっこ。数行しか進まず。昼に駅のホームで飯田さんと待ち合わせして、一緒に阿佐ヶ谷へ。今日は11/6の母親教室にゲストで出ていただく歌人枡野浩一さんと打ち合わせ。南阿佐ヶ谷ミスタードーナツでドーナツを買って、枡野さんの仕事場兼カフェでもある枡野書店へお邪魔。白い小さいお部屋に本が綺麗にたくさん並べてあって、学校の机と椅子が5個あって、それを給食のときみたいに並べて、枡野さんが豆から淹れたおいしいコーヒーとかがぼう茶っていうおいしいお茶を淹れてくださって、みんなでティ―タイムしながらコントの会議&読み合わせもした。枡野さんは本当に芸人事務所に入って芸人さんをやってらした経歴もあられるし、五反田団とかの劇にも役者として出てらしゃるので、セリフ読んでも面白いし、こうやったらもっと面白いんじゃないっていうのも提案してくれたりして、なんか今回の母親教室はすごい新しい風が吹きそうである! わくわく! 枡野さん、本だけ読んでいたら気難しい方なんやろうなあとびびってたのやけど、すごい話やすくておもしろいし、こちらの話もちゃんと聞いてくださるし、やはり文筆家さんやから何気なく話すこと名言飛び出しまくりで感動した。良い話をたくさん聞かせていただいた。南阿佐ヶ谷駅に書原っていう良い本屋があるよっと教えてもらい、帰りに飯田さんと寄ってみたら、確かに新刊本屋さんやのにすごく良い取り揃えで、めっちゃ大きいわけでもないのにいい本しっかり揃ってて、きだみのる『気違い部落周遊紀行』という面白そうな本を購入。足立区足立区とうるさい我らですが、こういう良い本屋さんが当たり前にあるって思うと、阿佐ヶ谷いいなあって思っちゃうね。

気違い部落周游紀行 (冨山房百科文庫 31)

気違い部落周游紀行 (冨山房百科文庫 31)

10.23日
朝、洗濯しようと思ったら洗剤がもうなくて、買いに行きたいけど薬局は10時からしか開かないし、でも我が家の物干しに陽が射すのは早朝の数時間だけなのでなるべく早朝に干したいしでアーってなる。午前中にちょっととある曲をトイピアノで録音したり作業して、また小説とにらめっこして、夕方家を出てまたもや紅テントへ唐組『夜壺』を見に行く。もう4回目。完全に狂っている! さすがに4回も見ていると、あっ今日はばらんこちゃんほっぺのチークが濃くって可愛い! 香取さんはまゆげが尖ってて勇ましい! 看護婦さんの白タイツのデニール数が上がってて分厚い! とか、「バタつきパン」の発音が「バターつきパン」に変わってる! とか、「ちゃ〜ん」て伸ばしてはったのが「ちゃん」て発音になってる! とか、今日の血のりは濃ゆい! とか、だんだん見方が変態の域になってきてる気がする。そういう細かい変化を発見してはひとりでニヤニヤしている。我ながら気色悪いお客でちょっと引く。来週からは鬼子母神さんで上演か〜行けるかなあ。小説が書けてたら行ってしまうでしょう。書けてるんやろうか。いや、書かないと!