春高楼の花の宴
 めぐる盃影さして

 咲いた桜になぜ駒繋ぐ 駒が勇めば花が散る

 ゆさゆさと桜もてくる月夜哉

 人恋し灯ともしころをさくらちる

 いちはつの花さきいでてわが目には今年ばかりの春行かんとす

 花びらの山を動かすさくらかな

 あおによしならのみやこは咲く花のにほふがごとく今盛りなり

 ゆで玉子むけばかがやく花曇

 木の間なる染井吉野の白ほどのはかなき命抱く春かな

 花にそむ心のいかで残りけむ捨て果ててきと思ふ我身に


 さくらに関わる「うた」をチョイスしてみた。

 作者は順番に土井晩翠、山野鳥虫歌、鈴木道彦、加舎白雄、正岡子規酒井抱一、小野老(おゆ)、中村汀女与謝野晶子西行である。

 上記は、詩人の大岡信さんの『折々のうた』から選んだ。昭和54年に始まり平成19年まで続いた詩歌を取り上げたコラム集で、『折々のうた』が全11巻、『新折々のうた』が全10巻、その他に『総索引』もあって大著である。
 
 今朝、朝日1面の大岡信さんの訃報に接して。