吉例顔見世

 昨日、午前中に近くの公共施設のロビーで打ち合わせ。午後から名古屋御園座に「吉例顔見世」をのぞきにいく。
 歌舞伎見巧者を自認する岩下尚史氏が2013年に「勘三郎團十郎などを失っても役者はたくさんいるので歌舞伎は危機ではない」と言ってはばからなかった。しかし、昨日の御園座を見て、花形俳優が不足しているのが実感される。
「女暫」(おんなしばらく)は女の豪傑(スーパーマン)の話だが、これが中村魁春ではねぇ。華がなさすぎる。御年70歳、小柄で地味な方なので、舞台映えがしない。和事の女将さんくらいの役が「にん」(相応しい役者)で、「女暫」の巴御前は重すぎる。
 かつて玉三郎の「女暫」を観たけれど、花道に玉三郎巴御前が現われると客席がどよめいたものである。圧倒的な存在感を玉三郎は持っていた。それに比べると見劣りがして仕方がない。
 四代目猿之助菊之助七之助あたりがもう少し年齢を重ねないと難しいのかなぁ。

「連獅子」は尾上松緑中村萬太郎であった。萬太郎、顔だちが目鼻立ちがはっきりしているので、赤塗りの色若衆が「にん」と言える。松緑にしても萬太郎にしても、若さがあるので迫力のあるいい舞台だった。紅白の毛振りはよく合っていた。

「与話情浮名横櫛」(よわなさけうきなのよこぐし)は、中村梅玉中村時蔵である。ワシャはやっぱり華はないけれども梅玉という役者の与三郎(この物語の主人公)は「にん」だと思っている。仁左衛門の与三郎も観たけれど、梅玉のほうがヘボそうなので、感情移入が容易だった。
 そうそうこの話のヒロインであるお富を平成28年に浅草公会堂で中村米吉
http://www.kabuki.ne.jp/meikandb/meikan/actor/302
がやっていた。こいつは観たかったねぇ。

 ここで拾い物をひとつ。序幕の木更津海岸見染の場で、茶店娘のおかつという役を演じていた中村梅丸
http://www.kabuki.ne.jp/meikandb/sp/meikan/actor/25
という若手俳優である。これがなかなか達者だ。この役者に今後も注目していこうっと。