規則的、変則的、偶然的——大久保進先生古稀記念論文集

2010年度をもって早稲田大学を退職された大久保進先生の古稀をお祝いして、有志が企画・編集を行った論文集がこの度刊行の運びとなりました。大久保先生に薫陶を受けた執筆者22名による論文に加えて、先生の講演「芸術の価値と無価値について考えるために」の原稿や、同じく先生の手によるエーリッヒ・ケストナー「人間の価値と無価値」の邦訳も収められています。どうかお手に取ってみてください。

—【収録論文】―

「小市民」への憧れ
ラオウル・アウエルンハイマーのカサノヴァ劇・・・荒又雄介 

内なるゲットーを脱するために
ドイツにおけるヒップホップ音楽の受容と展開・・・伊藤壯

「書くこと」と「食べること」
カフカの『失踪者』における「食」の意味について・・・江口陽子 

シュティフター日蝕観測記・・・岡田素之 

C. D. フリードリヒの「寓意的風景画」 
再発見されたセピア画連作《四季》について・・・落合桃子 

ヘルダーリンの「音調の交替」について
神経科学からのアプローチ・・・小野寺賢一  

イグナーツ・フェルディナント・アルノルト『血の染みの付いた肖像画
ドイツにおける〈解明される超自然〉の一例・・・亀井伸治

日常的暴力あるいは暴力的日常の迷宮
クレメンス・マイヤー『暴力』の物語構造・・・杵渕博樹

異教の楽器としてのオルガン
音楽の関わりで辿るハンス・ヘニー・ヤーン・・・黒田晴之 

「真剣な戯れ」としての諷刺 
ゲーテ文学における行為遂行性についての予備的な考察・・・河野英二

Fr.シュレーゲル『ギリシア文学の研究について』おける「模倣」の概念
                          ・・・胡屋武志
ある声の記憶としての旋律
R・シューマンベートーヴェンの《遥かなる恋人に寄す》・・・佐藤英

譯さないもの、下らないまま・・・佐藤正明

キレイなペニス
第一次世界大戦下のドイツ軍における性病対策と身体の規律化・・・嶋田由紀

親子の悲喜劇
ファレンティン劇『受堅者』におけるコミック・・・摂津隆信

ゲーテの動物形態学
パリ・アカデミー論争によせて・・・高岡佑介

電子マネーニューロマーケティング、そして生のエコノミー・・・高橋透

ドイツとアメリカの間で
ユダヤ人財産の返還をめぐる冷戦時代の国際政治・・・武井彩佳

〈限界=境界〉のトポグラフィー
フリードリヒ・シュレーゲルのフランスへの旅・・・武田利勝

聖歌とプロパガンダ
宗教改革期のドイツにおける《歌唱》の社会的作用について・・・蝶野立彦

ジェームズ・クックタヒチの金星観測
天文学を航海術に実用化する実験をめぐって・・・森貴史

「系譜学の事故」 超世代的伝承のイメージをめぐって
緒方正人とベンヤミン・・・柳橋大輔

芸術の価値と無価値について考えるために・・・大久保進
付録 エーリッヒ・ケストナー:人間の価値と無価値(大久保進訳)

(※敬称略)

規則的、変則的、偶然的―大久保進先生古稀記念論文集

規則的、変則的、偶然的―大久保進先生古稀記念論文集