黒い黄門

グランドジャンプ」連載中の、徳弘正也『黄門さま〜助さんの憂鬱』は、ぼくがいま楽しみにしている漫画のひとつです。


ここ2〜3話で、黄門さまの正体がだいぶわかってきました。


この漫画は、時代劇ではありますが主要登場人物がほとんど現代人と同じメンタリティを持っていて、封建社会の非人道性を描いているのが特徴です。
んで、多くの家来を死に追いやりながら「世直し」の旅を続ける水戸黄門。そのモチベーションが明かされています。


この作品における黄門さまは、基本設定としては「引退したもと地方政治家」であり、隠然たる影響力は健在ながら、表立った権力は保持していない人物です。
で、1628年生まれという「戦国時代に間に合わなかった世代」であり、いくさ場で華々しく散ることに強烈な憧れを持つ人物として描かれています。
そのために、家来を修羅場に投入しては死なせることでスリルを感じており、いずれは自分もしかるべき戦場に立ちたいと思っている人なんですね。



つまり、徳弘正也の描く暴君光圀は、明らかに石原慎太郎を意識しているといえるんです。

誰も書けなかった石原慎太郎 (講談社文庫)

誰も書けなかった石原慎太郎 (講談社文庫)


青年誌に移行してからは社会派の色合いが強く、権力批判が目立つことが多い徳弘正也ですが、おなじみの時代劇キャラを使いつつ、現代の政治家を批判するというなかなか凝った趣向はさすがにベテランの味だと思いました。無理に入れてるようなギャグが滑り気味なのは心配ですが、この先も注目して読みたい作品です。

黒い都知事 石原慎太郎 (宝島SUGOI文庫)

黒い都知事 石原慎太郎 (宝島SUGOI文庫)