日々記 観劇別館

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『ダンス・オブ・ヴァンパイア』感想(2009.7.12マチネ)

クロロック伯爵=山口祐一郎 サラ=大塚ちひろ アルフレート=泉見洋平 アブロンシウス教授=石川禅 ヘルベルト=吉野圭吾 シャガール安崎求 レベッカ阿知波悟美 マグダ=シルビア・グラブ クコール=駒田一

本日、今期2回目のTdVを観てまいりました。
今期初の1階(E列下手サブセン)での観劇でした。この席では群舞の全体を見通すのは難しいですが、役者さん方の表情を細かく見るには、視力の悪い自分には1階の方がありがたいです。

以下、全部「ネタバレ注意」です。

まずは伯爵の感想からまいります。
初日ほどには歌声のカラー・バリエーションは多くなかったような気がします。それでも、「お前を招待しよう」でサラを誘う歌声の若々しい情熱にはやはり圧倒されるばかりでした。
また、素のご本人にナルシスト指数があれほど低そうなのに、「神は死んだ」であれほど自己陶酔度満載の艶々した歌声を響かせるのは素晴らしいと、本日素直にそう思いました。
1幕終盤のロングトーンも伸びる伸びる。その場面での演技は初演の時と動きは変わらず、前回同様下ネタだと思うのですが、この方がそれを演じても全く嫌らしく見えないのは不思議です。
「抑えがたき欲望」ではちょっと作詞っぽかったらしいですが、私自身は気づかず。何でかは分かりませんが、その時伯爵を見る目も踊る化身を見る目も、すっかり歌詞の世界に入り込み、妙に厳粛かつ冷静になってしまっていたのです。伯爵の気持ちになる、というのではなく、ひたすら伯爵の姿と歌声を(オペラグラスを覗きつつ)正面から受け止め、身体全体で呻く化身と1セットで五感に焼き付けていくようなそんな時間を過ごしておりました。
しかし、その後の舞踏会で登場した伯爵の姿を見た瞬間に沸騰する私の血(笑)。息子さんにエスコートされたちひろサラが降りてきて、噛みつく前の嬉しそうな表情と、血を吸って欲望を満たした後の声なき獣の咆哮。そしてちひろサラと手を取り合ってデュエットした後に、さあ、仲間達と踊るのだ、と促すニッコリ顔。これこれ、この一連の表情をじっくり見たかったのよ!と1人でひっそりとたぎっていたのでした。

今回のサラは今期初見のちひろちゃん。予想はしていましたが、歌が初演の頃とは段違いに良くなっています。声の響かせ方が綺麗で、泉見アルフの声とも伯爵の声とも良い感じにハモっていました。
それと、入浴中の動きが大胆。湯船から上がる時に1階で腰の辺りまで見えたということは、2階では多分もっと嬉しいとんでもないことになっていたと思われ(^_^;;)。
泉見くんは先日観た時は遠くて分かりませんでしたが、近くで見るとやはり汗が凄いですね。「外は自由」でちひろちゃんとデュエットしている時に、汗がポタリポタリと垂れ落ちていくさまを目撃してしまい、笑いを堪えるのが大変でした。……泉見くん、ごめんなさい。

初日はまだ様子見かな?と思っていたシルビアマグダですが、今回、彼女が結構色々と表情を作っていたことに気づきました。
まず、夜這いしてきて抱きしめようとするシャガールの指をぷすりと縫い針で刺して追い出す時のうっすら微笑んだ顔が一瞬色っぽいです。それから、教授が人類のため〜♪と歌い踊る時、調子を合わせて一緒に踊りつつも教授を見やる眼差しは明らかに不審者か宇宙人を見るのと同じものだったので、笑ってしまいました。
禅さんはだいぶ教授になじんできた印象でした。地声が綺麗な分、早口でもお歌が聴きやすいのが禅教授の良い所だと思います。市村さんのようなバレエの基礎を生かした激しいアクションが少ない分、超音波な歌声で空飛ぶ鳥が落ちてくるとか、ほどがあるだろう、な天然さとか、そういう場面で笑わせてくれます。
また、市村教授は「抑えがたき欲望」の直後に皮肉げに拍手したりしていましたが、禅教授はそれはしていません。「伯爵にも感情があったんですね」というアルフレートの台詞に対して「くだらん!」と返す声色がいかにも興味なさそうで、本当にこの人は伯爵に標本としての関心しか持っていないんだな、と感じさせられました。

ヘルベルトは初日ほどには暴走していませんでした。アルフレートを襲って教授に十字架を突きつけられる場面では、「目をつぶっていれば大丈夫!」と叫んだ後に思わず股間を両手で押さえて隠し、十字架を見てしまい撃退されるという展開になっていました。ヘルは去り際に捨て台詞を残してましたが上手く聴き取れず。

それと前回、伯爵の命令を無視した疑惑が生じていたクコールの最期の行動については、今日じっくりチェックしていましたが、やっぱりどう見ても「十字架をどけろ」という命令を一瞬立ち止まって聞いた後に無視して立ち去っているようにしか見えません。
それにしても舞台版では、クコールが何故あの最期を迎えなければならないのか?という伏線が全くないので、あんなに良い子に働いていたのに何て気の毒な、という気持ちになります。
ちなみに幕間のクコール劇場では「クコールさーん!」という掛け声に「飲み屋の常連じゃないんだから」と返しつつ、ハタキを宙に浮かせて見せていました。

ラスト、ちひろサラが泉見アルフに噛みつく時の血糊が若干多めだったらしく、ちひろサラの口から血が滴り落ちていました。頬には血の筋が着いて、ちょっと怖い顔になっていました。

フィナーレでは、本日もヘルベルトの指導で客席ダンスを踊りました。

初演の時よりも遥かにじっくり愉しんで観ることができているヴァンパイア・ダンサーズについても、初日からずっと書きたくて仕方ないのですが、どうしてもTdVに関しては他に萌えポイントが多すぎて感想が長くなってしまいますので、また別に書きたいと思います。