鼻づら主義者と耳しっぽ主義者…越えられない壁なのか?

Muzzlers VS Ear-tailists: Is there an unbreakable wall between them?

序論 〜 鼻づら主義と耳しっぽ主義

 第一に、マズラー(Muzzlers)なる獣人愛好者たちがいる。マズラーとは、マズル(muzzle)、すなわち動物の突き出た鼻づらを愛するためにそう呼ばれる(自称する)ものである。ただし、人間の顔に単に動物の鼻づらをつければよいというものではない(注1)。概ね動物の頭部全体を有することが不可欠といえる(注2)
(注1)犬の扮装グッズに見られるパターン。例えば、2008年のソフトバンクモバイルCM「ソフトバンクごっこ」。2011年のグラクソスミスクラインCM「コンコン秘書」も類似ではあるがマズルとは言い難いであろう。
(注2)なお、頭部以外が動物の外観に近いものである必要があるかどうかは別問題であるが、頭部だけ動物(例えばエジプトの神々のように(注3)。)というキャラクターは、マズラーの嗜好からはやや外れるように思われる。
(注3)もっとも、エジプトの神々は完全な動物化した姿にもなるといわれるので(その意味では動物変身型獣人でもある)、適切な引用ではないかもしれない。


 次に、耳しっぽキャラを愛する者たち(Ear-tailists)がいる。耳しっぽキャラとは、外観はほぼ人間であるが、付属する動物の耳やしっぽという表現手法により、「人間ではない」ことを主張するキャラクターである。もちろん、単に耳しっぽを飾りとしてつけただけの「人間」であることを主張するケースもあって、これは物語の文脈的には「獣人」とはいえないであろう。


 本稿は、これらの選好の違いはどこにあるのか、ということについて分析しつつ、選好の本質を考察するものである。