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2010-04-02

[]大和撫子の声 その1

「あなたはモテたいですか、それとも全くモテないほうがいいですか?」

と問われれば、それはやっぱりモテたいと答える人のほうが多い気がするのですね。全くモテない方がいいです私はモテなんて邪魔です、とか言う人はあんまいねーだろーな、つーか。

でもまあここで、

「じゃあモテモテになればなるほどいいですか。モテの度合いが強ければ強いほどオッケーですか!?」

と訊かれたらたぶん私は、

「いやたぶんソレは違うつーか、過ぎたるは及ばざるが如しつーか、過ぎたるモテは身を滅ぼしかねん気がするので、適正値のモテにしてください。君子中庸をすってやつです君子じゃないけど」

と答える気がします。

うん、だって、ほんとにモテてモテてしょうがないひとって、すごい大変そうな気がするんだもの。


というか私は、モテすぎて人生が狂ってしまってるんじゃないのこの人、という人を知っているのでした。

彼女の名前はコジョウ・ミミエさん(仮名)。笑顔がチャーミングで人当たりの良い女性です。

ミミエさんの人生には本当に洒落にならないことが多すぎますので、いつものことながら事実を大幅改訂して原型を残さない形でお送りさせていただきます。うちのブログはリアル知人もいっぱい読んでいたりするのでスミマセン。


情熱的な男性が多すぎた大学編

さて、ミミエさんのモテ伝説が始まったのは高校卒業後のことでした。

大学に入学した彼女は、「一年生に向けた単位のとり方説明会」みたいな有志の先輩が開催してくれた親切な説明会に出席して、親切な先輩の説明をふんふんと聞いていたら、いつの間にかその親切な先輩に情熱的過ぎるほどの恋心を寄せられるようになっていたのです。

「この間『ぼくは大学院に行くから貯金ができない。披露宴の費用は君が出してね』と言われたの。『え、そもそもわたしたち付き合ってないですよね?』と思わず聞き返したら、なんかすっごく怒られて……それ以来大学に来るといつも先輩に見られている気がする……留守電はいつも先輩からの着信でいっぱいだし……メールボックスも先輩からのメールでぱんぱんだし……」

そう言って疲れきった様子で机に突っ伏すミミエさん。心なしか顔色も悪いです。そしてその後、私がトイレに行くために教室を出たらほんとに出入口のすぐ脇に先輩がいらっしゃいましたので、「見られてる気がする」というミミエさんの言葉は心労がもたらした錯覚というわけでもなさそうでした。


幸いなことにミミエさんが五月の連休を利用して帰省し戻ってきた頃には、先輩はミミエさんへの恋情を振り捨てることに成功なさっていたので、すべてはイッツオーライ、ミミエさんの楽しいキャンパスライフはこれからだぜ、と思われたのですが、それは甘すぎる見通しだったことがあっさりと判明しました。


ミミエさんは入学後すぐにファミレスでバイトを始めたのですが、その結果情熱的すぎるほどの恋心を寄せる男性のお客様が、雨後のタケノコのようにボコボコと発生してしまったのです。

お客様はプレゼントを持参して仕事中のミミエさんに差し出し、そのたびにミミエさんはプレゼントを置きに控え室に戻らねばならず、プレゼントを断ると「客への口の利き方がなってない」とか怒鳴られ、おかげでバイトの業務にもけっこう支障をきたす羽目になり、おまけにミミエさん以外のウエイトレスに接客されると不機嫌になって「ミミエを出せ」とか言い出すお客様もいらっしゃったりなんかして、だんだんミミエさんはバイト先で居心地が悪くなってきてしまったのです。


その頃、もちろん大学にもミミエさんに惚れ込んでいる男性は何人かいらっしゃって、ですがミミエさんの体はひとつしかありませんから全員に「私もあなたが好きです」という好意表明をするわけにはいかず、というかぶっちゃけミミエさんはその中の誰のことも好きじゃなかったりしたので、結果的に失恋してしまう男性が発生し、いつの間にかミミエさんにはしょっちゅう無言電話がかかってくるようになっていました。

ミミエさんはもともとスリムで華奢な方だったのですが、心労のせいかますます痩せはじめ、儚げな風情が更に増してきたりしていましたが、それもまたよくなかったのでしょう。


学生だからバイトに行くのは昼ではなく、夕方から夜。よって、バイトからの帰り道はいつも暗い。

ミミエさんはそれでも気をつけてなるべく明るい道を選んで帰っていたのですが、そんな努力もむなしく、ある晩ついに包丁を持った男性に数百メートルにわたって追いかけまわされるという事態が出来しました。

幸い、ミミエさんは自転車に乗っていて、相手は徒歩でしたのですぐに振り切ることができましたが、だからといって怖くなかったかというとそんなことは全然なくてむしろすげー怖かったわけですミミエさん。

その日は彼氏に助けを求め、自宅まで送ってもらうことができましたが、その際

「でもね、これから毎日おれがお前の送迎をすることは無理だよ? なるべく一人で帰れるようになってね」

と言われて、ミミエさんはなんだか激しく絶望してしまったのでした。


警察に行こうよ、とすすめた人間が何人もいましたが、恐怖でがんじがらめになったミミエさんは、

「警察に行くことで余計相手に恨まれたら嫌だ。たぶん犯人は知り合いなんだし」

と言いました。

そもそもミミエさんが親元を離れて一人暮らしをすることを、彼女の両親はあまり快く思っていませんでした。もしも警察沙汰に巻き込まれたことを知られたら、自分は絶対に地元に連れ戻されてしまう、それは嫌だ、とミミエさんは言いました。


バイト先での居心地はすこぶる悪く、大学に行っても安らげない。

無言電話の主と包丁男子が同一人物なのかどうかもわからなくて、同一人物だったら熱烈ストーカーな感じで怖いけど、別人だとするともっと怖い気がするし、そもそもどちらにせよ犯人はきっと自分の知っている人で、自分の周りの誰なのか考え始めると、心当たりがありすぎてとにかくもう酷く怖い!

そして誰も自分を守ってくれない、守れない。自分自身の手で出来ることには限界があって、彼氏に出来ることにも限界があって、仕送りの額はぎりぎりだからバイトをやめることもできなくて、でもあんな目に遭ってもう一度バイトに行くなんて出来る気がしなくて。


そんな葛藤に悩まされていたミミエさんはついにある晩イライラが頂点に達してしまい、いつものごとく無言電話がかかってきたとき、カッとなって

「もうほんとふざけんな、なんなんだてめー、悔しかったらここまで来てみろ」

と怒鳴りつけてしまったのですが、そしたら二十分後くらいに、ほんとに誰かがアパートの部屋の前にやってきて、ドアをがんがん叩き始めました。

ミミエさんは恐怖のあまりドアに近寄ることもできず、よって結局誰がドアを叩いていたのかわからなかったのですが、とにかくその誰かは最終的には歪んでボコボコになるまでドアを叩き、蹴りつけたのでした。

ミミエさんに再び呼び出された彼氏が駆けつけたときには犯人は既に部屋の前から立ち去っていたそうですが。


歪んだドアをなんとかするためにミミエさんは不動産管理会社に連絡し、不動産管理会社は保証人であるミミエさんのお父様に連絡し、ミミエさんのご両親は

「これだから一人暮らしはさせたくなかった」

と怒り狂い、ついにミミエさんは大学を途中でやめて実家に連れ戻されることにあいなりました。




地元に戻って就職編

せっかく入学した大学を短い期間でやめざるを得なかったミミエさんは、そりゃあ悔しい思いをしましたが、それでも一人暮らしを続けている間には決して得られなかった安心が、家族との生活にはありました。

ミミエさんは地元の企業に就職し、これでやっと平穏な暮らしが始まったと誰もが思ったのですが、それもまたやはり甘すぎる見通しってやつだったのでした。


勤務を開始して数カ月で彼女の直属の上司が、ミミエさんに惚れ込みました。

直属の上司には四年ほどの交際の末につい先日両家のご両親にも挨拶を済ませたばかりという婚約者がいらっしゃったのですが、そういう事情を彼は特に意に介さなかったようです。

とはいえ、ミミエさんはそんな事態は大いに意に介しましたので、

「付き合って欲しい」

と言われたときに、

「そんな。婚約者がいらっしゃる方とお付き合いはできません」

と答えました。

そしたら上司さんは、あっさり婚約者の方と別れてしまいました。

いやちょっと待って、そもそも私は結婚ギリギリ目前で職場の部下に手を出そうとする男性というのが根本的に嫌なんでございますよ? それは今更婚約者と別れたからといって変わる結論ではないのですよ?

ミミエさんはそういう意味のことを破れ気味のオブラートで包んで伝えてみたのですが、

「話が違う。婚約者さえいなければよかったんじゃないのか。お前を信じて婚約者と別れてやったおれのことを思いやれ。責任をとれ。償え」

と上司はご立腹。

結果、上司はあまり優しくはない態度でミミエさんに接するようになったというか、ぶっちゃけ苛めを始めてしまったり、時を同じくして職場では

「ミミエさんて男遊びが激しい、ひどい女らしいよー」

という噂が広まり始めたり、まあ確かにその上司が噂の発信源かどうかは物的証拠を得たわけじゃないからわからないわけなんですけど、心証としては限りなく黒に近いグレーだよね、みたいな事態になってしまって、ミミエさんはまたしても心労で痩せ細り、とうとう退職を決めたのでした。


ミミエさんは女子高の出身でした。

それもあって、彼女には男性というのはどことなく未知の存在だったわけなんですが、女子高という隔離環境を離れた数年間、彼女は「男性ってもしかしてすっごく怖い存在なんじゃないの!?」という学習をしてしまいました。

そんなことないよ良い人もたくさんいるよ、と周りの友人たちは言ってみたわけですが、そんな言葉でミミエさんの恐怖が克服できることはなく。

考えた末にミミエさんは、ほとんど女性しかいない職場に行けば身の安全を確保できるのではという結論を出し、女性ばかりの職場で働くために有効な資格をとろうとある専門学校に通うことにしたのでした。




楽しかった専門学校

専門学校時代は、ミミエさんにとって比較的安らげる時代であったようです。

もちろんその間にも、行きつけのレンタルビデオショップの店員に交際を申し込まれて断ったら店内でいきなり怒鳴りつけれたり、旅行先のホテルのラウンジ

「おれとチークを踊ってくれたら二十万円あげる」

と見知らぬ中年男性に申し込まれたりとか、居酒屋で友人がトイレに立って一人になった途端見知らぬサラリーマン

「この近くのホテルの部屋をとってあるから一緒に行こう」

と突然話しかけられたり、中学校の同窓会に出席したら途中で体調を崩して早めに帰ろうとしたミミエさんを家まで送る権利をめぐって男性数人が争いはじめ、酒の勢いもあってちょっとしたバトルロワイヤルが展開されたりとか、まあそんなことはちょくちょくちょくちょく、あったわけですが、それでもミミエさんにとっては、概ね安らげる日々と言えました。


さて専門学校を優秀な成績で卒業して資格を取得したミミエさんはその後、念願通り女性ばっかりの職場に就職できたわけなんですが、これでやっと平和な人生を獲得できたという彼女の見通しは、やっぱり甘かったんでした。

てなところで長文なので次回に続く

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