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◆Atelier of puss◆

2012-06-03

グイド・レーニ作・『ベアトリーチェ・チェンチの肖像』


・・・
Beatrice Cenci, 1577年2月6日 - 1599年9月11日
16世紀当時のイタリア貴族女性。
彼女の家はローマでも有数の家柄であったが、
当時の家主であったフランチェスコ・チェンチ、
つまり彼女の父親は非常に暴力的且つ非道徳的な人物であり
妻・ベアトリーチェを含める子供達の虐待は勿論、
遂に物心付いたベアトリーチェ強姦するまでになった。
所謂、”近親相姦”の間柄と成らざるを得なかった彼女、
そしてフランチェスコを除くチェンチ一家は、
ベアトリーチェが二十代の頃に父の暗殺を計画。
数名の協力者を得て彼の暗殺を実行(毒殺)するが、
死にまでは至らず、やむを得ず一家総出で撲殺。

長期に渡る父・フランチェスコの”不在”に対し
不信感を抱いた警察が一家やその周辺の調査を始め、
ベアトリーチェの恋人はその際の拷問によって死す。
事実を他言する事はなかったが、その後の調査で
一家の犯行が突き止められ、裁判にて死刑(斬首)宣告を受ける。
ローマ市民は事件背景を知った後に死刑撤回を促した、
と言われるが、当時の教皇・クレメンス8世は一切同調せず、
これはチェンチ家の遺産を手に入れる為とも伝えられ、
結果的に彼らの死刑を実行した。


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この一枚は、その最大の悲劇のヒロインである
ベアトリーチェ・チェンチ”の肖像です。
実際には「肖像」ではなく「遺影」と言って過言でありません。
何故ならこの画は、彼女の死刑執行直前に描かれた一枚。
死刑極刑、つまり斬頭刑ですから、画からも分かるように
彼女は頭に白いターバンを巻いて髪を束ねています。
そして白装束は彼女の支持者が提供したとも言われています。


様々な絵画研究者等に度々取り上げられる事が多いのが、
フェルメール作・『真珠の耳飾りの少女』との対比。

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こちらの画は言わずと知れたフェルメール作の画であり、
モデルは不明とされていますが、最有力説としては
彼の娘であるマリアだと言われている事もしばしば。
ただこの”マリア説”に関しても、マリアとこの少女との
年齢の不一致によって度々議論されています。
(ちなみに映画版では”モデル”として扱われました)


二作の共通点・類似点は一目瞭然と思います。
噂ではフェルメールはこの『ベアトリーチェの肖像』を
以前より知っており、それを参考に描いたとも言われています。

私はこの『ベアトリーチェ・チェンチの肖像』、
そして『真珠の耳飾りの少女』の二作を見た際に、

「ああ、まるで対極の二人なんだろうなぁ。」

と、ふと頭に過りました。
お恥ずかしながらこの『ベアトリーチェ・チェンチの肖像』を
知ったのもごく最近ですし、それまでは彼女の事を知り得なかった。
そんな中で、直感的に”対極”と言う印象が過ったのでした。


調べていくと、まさに”対極”のようである二人。
画家側とベアトリーチェを比較するのは感心ではありませんが、
真珠の耳飾りの少女』の作者であるフェルメールは、
一部でモデルとも言われている娘・マリアをとても愛していた。
その一方、肖像画のモデルとなり、悲劇の短き人生を終えた
ベアトリーチェは父からの異常なまでの精神・身体的虐待を受け、
遂には父を暗殺するまでに至ってしまった。

・・・この二つの物語は、まるで天と地の差のようにすら思います。
そんな二人にもある共通点が、画以外に一つあるのです。

ベアトリーチェが亡くなったのは22歳、
そしてフェルメール最愛の娘、マリアが亡くなったのも
同じく二十代前半なのでした。


先ほど述べた、”対極”。
これは私がその瞬間、一瞬に感じたものですが、
それは彼女らの人生が、忠実に現れているものでした。
その他に私が受けた印象として、まずベアトリーチェ
「表情が艶っぽい」・「男(世間)を知っている」といったもの。
耳飾りの少女は「あどけない表情」・「純潔」。

それぞれこの二点を強く感じました。
(現在放送されているTVドラマでは、
『Wの悲劇』・・・のようなものでしょうか?)


その美貌、父故に若くして死刑判決を受け、斬首されたベアトリーチェ
父・フェルメールに愛されながらも若くして旅立ってしまったマリア。

もしフェルメール自身が、この『ベアトリーチェ・チェンチの肖像』、
そし彼女の悲劇を知っていたとすれば。


彼の最大の作品と言っても過言ではない『真珠の耳飾りの少女』の画に、
ベアトリーチェの悲運な運命を託したのかもしれません。
そして新たなベアトリーチェの命を吹き込んだのかもしれません。

そう考えると、『真珠の耳飾りの少女』の画と『ベアトリーチェの肖像』
この二作の画は複雑、且つ美しく絡み合っているのかもしれません。

ピエロピエロ 2015/06/07 21:20 すごく参考になりました。

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