藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

今からリハーサル。


終了が惜しまれる冨山和彦さんのコラム。
巨大企業の趨勢を実際に見てきた氏が「ITの進化で水面下での革命が起きている」という表現は重い。
自分も最近ようやく「これからは今までの延長ではなくなる」と実感してきた。

ただ安定を求めたいわけではないが、先進国がここまで高齢化し、成熟してきたら「もうそれほどの大きなどんでん返し」はないのでは? と思っていた。
社会人になってもうすぐ30年になる自分が、今からそんな大波に遭ってどうなるのか…と思うと恐ろしさもあるが、硬直して「みんなが元気じゃない未来」よりは余程いい。
サーフィンをするサーファーは波には逆らわず、まずは自然体で波に従おうとするものだ。

そして50代以上に重要なのは若い世代の人たち。
気分的に何か「明るくない未来」が喧伝されているけれど、自分が過ごしてきたここ何十年も「誰かが明るい未来」を提示してくれたことなどなかったと思う。
強いて言えば「大企業=超安定」という常識があったけれど、それが今はかなり怪しい。

これからのIT社会では、各人が「たとえ大組織にいてもそこに阿らない」ということだろう。

組織でもやれるが、個性を失わないこと。
自分の価値観をはっきりと表現できること。
なんかが大事なのじゃないだろうか。

オフの楽しみ方もそうだし、仕事への取り組み姿勢もそう。
家族とか付き合う人たちへのスタンスも、もう通り一遍の正解はなくなりそうだ。
そういう"自分"を持っていないと、なんとも精神的に不安定になる「個性の時代」が特に日本でもやってくるにだと思う。
自分が永眠する時には、自分のヒストリーを語れるような人生にしたいものだ。

末期を迎えたカイシャ幕藩体制のなかでこの先、サバイブできるのは誰だ?〈後編〉

 江戸末期、多くの武士はそれまでと同じ日常を粛々(しゅくしゅく)と送っていました。まさか忠誠を尽くした藩が数年後になくなってしまうなんて、夢にも思わなかった。ところが、世の中はひっくり返ってしまった……。ITの進化による水面下での革命が起きている今、あの時代と似たような状況が始まりつつあると前号でお伝えしました。では、この時代をサバイブするには、どうすればいいのか。
 40代に入ると、人は保守的な未来を欲しがり、変化への適応力がさがっていきます。これを上げるにはどうすればいいか。ひとことで言うと、飽きっぽくなること、好奇心を持ち続けることです。言い換えるなら、人間としての色っぽさでしょうか。シリコンバレーが栄え続けているのは、ひとえに、そこで働く人々にこの要素が大きいから。
 加えて、日本のサラリーマンが求められているのは、自分の競争力を常に労働市場と照らし合わせること。これが圧倒的にできていない。不都合な真実も見つかるでしょうが、「その気になれば何とかなる」と、いい意味での万能感を持つことも必要です。
 例えば、自分が得ている報酬は、本当に正当なものか。年収1000万円の人には、オフィス代や社会保険料なども含めると3000万円ほど稼いでもらう必要があります。1日あたり約10万円。さて、今の自分の仕事ぶりに顧客はそんな対価を払ってくれるのか。報酬に見合った仕事のやり方に変えられなければ、同じ水準の報酬が続く保証はありません。

 逆に、「世のため人のためにいい仕事ができた!」と達成感を得たとしましょう。では、それに見合うだけの報酬もきちんと得ることができたのか、というシビアな見極めも必要です。そうしなければ、次の仕事はやってこない。勤めている会社の立ち位置と自分自身の立ち位置を、冷徹に見極めることで、次なる行動のきっかけを作ることができるのです。
 ここで今、重要なのは、世の中の成功や幸福の定義とは別のメジャーで、次なる行動を考えることです。時代の変わり目には、世の中の定義はいとも簡単にひっくり返ってしまう。
 それこそ、出世することが、必ずしも幸せとは限りません。自分の能力以上のポジションを与えられてしまうのは、むしろ不幸なことかもしれない。
 やっかいなことは、そのメジャーメントの作り方を、これまで誰も教えてくれなかったことです。ぼんやりと社会に広がっていた定義や基準を追いかけていればよかったのが、日本だったから。しかし、もうそれはなくなります。これこそが、時代が変わるということなのです。
 将来、自分や家族にいくらお金が必要なのか割り出す。自分が達成感を得られる仕事が何かを整理する。そのメジャーメントができてこそ、自分自身の幸せを作り出せる。こういう人こそが、激動の時代をサバイブできるのです。
 さて、8年間続いた連載もこれで最終回です。厳しい話も敢(あ)えてしてきましたが、少しでも皆さんへのヒントになっていれば幸いです。長い間、ありがとうございました。

Kazuhiko Toyama
Kazuhiko Toyama 経営共創基盤(IGPI) 代表取締役CEO
1960年生まれ。東京大学法学部卒。在学中に司法試験合格。スタンフォード大学MBAボストンコンサルティンググループ、コーポレートディレクション代表取締役社長、産業再生機構COOを経て現職。近著に『決定版 これがガバナンス経営だ!─ストーリーで学ぶ企業統治のリアル』(共著)(東洋経済新報社