藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

あえて世に問うのは誰か。

透明化の時代の中で、どうも日本にいると報道の歯切れが悪いなぁ、と思っていたら案の定。
日本はこの暴露事件について「中国、ロシアと同様に国として追求しない」と宣言しているらしいが、一体どうしたことか。
しかも「それ」を伝えるマスコミはない。
マスコミと権力、というのは一見対峙しているようで実は「同じ側」にいる部分もある。

パナマ文書がなぜ漏洩したのか? とか
漏洩の仕方があまりにもシステマチック(2.6Tバイトのデータを世界のジャーナリストで手分けして分析)なのはなぜか?とか
持ち出された「モサックフォンセカ」事務所のコメントとか。

さらに合法である節税の情報が、ここまで明かされるということの道議とか。
こうした議論を機に、一気に「フラット化」つまり税制の世界統一、みたいなことが進むむきっかけなのかもしれないが、
(そうだとしたら、実に巧妙な「世界政治」だという気もする。税制の"逃げ場"がなくなるから。)

単なる暴露事件ではない「ネット時代の"富のあり方"」を問うのがこの度の出来事ではないだろうか。
ECサイトとか、ネットが経済を伸ばしてきたけれど、今度は「ネットが経済のあり方を問う」と言っているような気がする。
一つ一つの事件を「歴史の流れの中で捉える」視点を持ちたいものだと思う。

パナマ文書が変えたスクープ報道 欧州総局長 大林 尚
2016/4/25 6:30
ニュースソース
日本経済新聞 電子版
 パナマ文書は「文書」という字面から思い浮かべるイメージとは懸け離れた代物である。中米パナマの大規模なローファーム、モサック・フォンセカから流出した天文学的な量のデジタル資料を、ミュンヘンに本社を置く南ドイツ新聞の記者2人がワシントンの非政府組織(NGO)である国際調査報道ジャーナリスト連合に持ち込んだのが1年あまり前。この間、同連合に協力する世界各国のジャーナリストおよそ400人が、それを丹念に解析してきた。

■最も口が堅いローファーム

アイスランドのグンロイグソン首相が辞任したのは、パナマ文書に基づく調査報道がきっかけだった。写真は4日、レイキャビクで議会演説する首相=AP
アイスランドのグンロイグソン首相が辞任したのは、パナマ文書に基づく調査報道がきっかけだった。写真は4日、レイキャビクで議会演説する首相=AP

 モサック・フォンセカをローファームという枕ことばで呼んだのは「法律事務所」という日本語から受ける印象の枠に収まりきらないプロ集団だからだ。同社はパナマ以外にも、カリブ海に浮かぶ英国領バージン諸島、さらに南太平洋のサモアやニウエなど、会社を新設する規制がゆるい国や地域に拠点を広げてきたという。セールスポイントは「最も口が堅いローファーム」だ。

 サモアもニウエもかつては英国の植民地だった。本国の規制が及びにくい、これらオフショア地域に、モサック・フォンセカは集中して進出してきた。オフショア・ローファームと呼ばれるゆえんである。じつはロンドンの金融センター、シティも本国の首都にありながら金融投資に関する規制を大きくゆるめ、中東、ロシア、中国を含む世界中から投資資金を集めている。モサック・フォンセカはこうした英国に独特のダブルスタンダード二重基準)の申し子といえるかもしれない。

筆者が注目した記事
・4月15日 日経朝刊6面「富裕層資産隠し美術品も使う パナマ文書で判明 指南役存在、進む巧妙化」
・4月14日 日経朝刊8面「『パナマ文書』世界揺るがす 突然の公開なぜ 独紙に『告発』1年かけ検証」
・4月12日 日経朝刊8面「パナマ文書が示す教訓(TheEconomist)」
大林尚(おおばやし・つかさ) 84年日本経済新聞社入社。経済部編集委員論説委員、欧州編集総局(ロンドン)編集委員を経て16年4月から同総局長。年金、医療改革や人口減少問題に一家言を持つ。欧州の構造問題を取材。
大林尚(おおばやし・つかさ) 84年日本経済新聞社入社。経済部編集委員論説委員、欧州編集総局(ロンドン)編集委員を経て16年4月から同総局長。年金、医療改革や人口減少問題に一家言を持つ。欧州の構造問題を取材。

 同社から漏れ出したデジタル資料の量は2.6テラバイト。テラは1兆を表す接頭辞だが、具体的にどの程度の量なのかピンとこない。大ざっぱな内訳は、電子メール480万件、PDFファイル210万件、画像ファイル100万件――など。過去40年間にモサック・フォンセカに蓄積されたものだ。

 この資料の解析にあたるジャーナリストは、同連合からいくつかの条件を課された。この件に関する記事を一斉に世に出す日付・時刻を厳守する、ほかのメディアと情報を共有する、などだ。英国はリベラル色が強い高級紙ガーディアンと公共放送のBBC、フランスからはル・モンドが参加した。日本勢は共同通信朝日新聞だった。

 アイスランドの前首相グンロイグソン氏が辞任に追い込まれたのは、租税回避地であるバージン諸島に妻と共同名義の会社を持っていた点を、この資料の解析結果をもとにアイスランドの記者が質(ただ)したのがきっかけだ。前首相はこの会社を通じてアイスランドの3つの銀行に債券投資をしていた。税逃れが目的の巨額資産隠しという疑いを拭えなかった。

ジャーナリスト連合がウェブサイト上に公開した資料にはさまざまな個人情報が含まれている
ジャーナリスト連合がウェブサイト上に公開した資料にはさまざまな個人情報が含まれている

 一方、ウォール・ストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズなど米国の主要紙は解析作業に参加しなかった。ワシントン・ポストも同連合のお膝元の有力紙であるにもかかわらず不参加だ。本紙を含め、これら不参加組は当然のことながら資料を見ることができなかった。正確に言えば、参加組が英国時間4月3日の日曜に一斉に報道を始めるまで、資料そのものの存在を知らなかった。

■問われる公開資料の解析能力

 ただし今は、同連合がそれぞれの国の公益に役立つと判断した資料をインターネット上に順次、公開し始めている。これを読み込み、解析し、裏付け取材し、記事としてひとつのストーリーに仕立てる作業への扉は、世界中のジャーナリストに開かれている。何しろ2.6テラバイトである。同連合はすべてをそのまま公表するわけではないが、それでもスクープが潜んでいる可能性は大いにある。

 従来、メディアの世界でスクープと言えば大きなニュースをいち早く、正確に世に出すことを意味した。パナマ文書はその常識を変えつつある。ジャーナリストの解析力を試すスクープ合戦が、すでに始まっている。

(ロンドンで)