藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

自発で動ける世界へ

以前もベーシックインカムのことを書いたことがあるけれど、ずっと気になっている。
自分の会社でもやったことがない。

反対によく耳にした言葉が「ノーワーク、ノーペイ」だ。
働かないなら給料はないよ、と。

もちろんわかる。
一人のうのうと「何もしていない穀潰し」は責められるだろう。
けれどそれだけなのかなぁ、とどこかで思っていた。

いろんな理由で「働かない人」とか「働けない人」とか「実は働くためにいろいろ考えている人」とか「働き方そのものを考え直している人」とか「あえて働かない人」とか。
もういろいろ考えている人っているような気がする。

だから「働かざるもの食うべからず」の原則を厳密に適用し過ぎるのも、ちょっと抵抗を感じる。

何か"正反対なのじゃないか"という疑問があるんです。

『もしベーシックインカムの世界が実現して、自分たちは毎月20万円を無条件でもらったら。』
自分は何をしているだろう。
案外、毎日仕事をしていないだろうか。
案外、今までの仕事以上に奉仕活動などをしていないだろうか。

これまでは「売上と経費」という採算を第一に考えて行動してきたけれど、そういう基準が変わるかもしれない。

衣食住から切り離された人々は、何を基準に行動するのか。
ひょっとして現代の最大の論点かもしれないと思う。

サボって何もしない人もいる反面、「どんどん社会的なことをする人も出てくる」と自分は思う。
「そっち」の世界を試してみるチャレンジはとっても大きな意味があると思うし、ぜひ見てみたいものだ。

毎月約20万円差し上げます あなたなら何に使う? 米の社会実験

宮地ゆう

2016年7月19日17時00分

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 サンフランシスコ市の湾を挟んで対岸にあるオークランド市で、近く、聞いたこともないような社会実験が始まろうとしている。スタートアップを育てている有名ベンチャーキャピタル(VC)でもある「Yコンビネーター(YC)」によるある試み。富裕層が増える一方で、だれもがある日突然仕事を失い、住む場所も失いかねないという厳しい環境のシリコンバレー。こんな社会のあり方に疑問を持つ人たちが出てきた。

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 サンフランシスコ市内のYCのオフィスで、プロジェクトを担当しているYCのマット・クリシロフさん(24)に会った。まだ詳細は変わる可能性があるとクリシロフさんは言いながら、こんな概要を話してくれた。

 「オークランド市の協力を得て、市内のあらゆる所得層・人種・職業の約100人を選び、毎月1500〜2千ドル(16万5千〜22万円)を無条件に渡す。これによって最低限の生活を保障し、その人たちがどのような経済行動をとるのか、1年にわたって追跡する計画です」

 幸運にも実験対象に選ばれた人は、そのお金を何に使っても構わない。二つの仕事を掛け持ちしている人は、一つだけの仕事で生活できるようになるかもしれない。もっといい仕事に就くための職業訓練に使ってもいい。すでに十分な収入がある人はただ貯蓄に回してもいいし、海外旅行に使ってもいい。

 1年間20万円近いお金が突然降ってくるという、聞いたこともないこのプロジェクトについてYCで話し合われるようになったのは、つい数カ月前のことという。考えたらすぐ実行に移すところがさすがのスピードだ。しかも、これはまだほんの試験段階。

 「1年のプロジェクトが終わったら、本実験に入ります。本格的な実験では、対象を1千人に広げて5年間追跡するつもりです」とクリシロフさん。このときはさすがに支給額を減らす予定だと言うが、それでも試験段階だけでも1億〜2億円のプロジェクトになることは間違いない。YCはこの実験のために、わざわざ専門家を雇った。有名大学の教授など数多くの応募があったという。

 いったい、これによって何をしようというのか。

 クリシロフさんは「YCは10年にわたって、できたばかりのスタートアップに投資してきた。同じように、テクノロジーによって得られる富を、どうやったら公平に分配できるかを考えてきた」という。

 もし、最低限の生活が保障されたら、人はどのような行動をとるのか。労働はどう変わり、人の生活の質はどう改善されるのか。この実験で得られた結果を公表して、政府や自治体などが社会保障のあり方を考える上で役立ててもらう、という。ただ、「これは政策提言をするためのものではなく、あくまで、現金支給というあり方がいいのかどうかを含めて考えてもらいたい」と話す。

 YCが始めようとしている実験は、これまでにも「ベーシックインカム」や「ネガティブタックス」といった言い方で、いくつかの国でさまざまな形態で試みられたことがある。最近では、スイスで国民投票もあった(スイスの場合は所得制限があったが、結果は7割以上の反対で否決)。支給の仕方にも様々なやり方があるが、当然に、財源をどうするかが、つねに大きな問題になってきた。通常は政府が税金を財源に支給するが、それを今回は一企業であるYCが全て支払おうというわけだ。

 「ここ(サンフランシスコ周辺)では、安定した雇用の確保が難しくなり、生活がどんどん不安定になってきていることを、皆が実感している。どうやったら手に職をつけたり、新しい仕事を探したりするのに最適な状態を整えられるかを考えている」という。

 YCの大胆な社会実験を、「金持ちのやること」と一蹴するのはたやすい。私も最初に聞いたときは「金持ちのVCは考えることが違う」と、思ったものだ。 そもそも、みながしょっちゅう引っ越しをしている大都市で、5年間何の条件もなくお金を渡し、1千人の生活の変化を追跡調査するのに、どれだけの費用と労力と時間がかかるか。そう考えただけで、いかに常識外れの社会実験かがわかるというもの。もちろん、会社のPRや、税金対策などの側面がまったくないかと考えると、そこまで単純な話でもないかもしれない。

 しかし、あちこちにホームレスがいるこの町で働く人たちにとって、この社会の構造や格差、社会保障のあり方は、「自分たちでも考えるべき問題」としてますます切実になりつつあるらしい。

 クリシロフさんが言うように、この実験はある方向へと政策提言をするためのものではない。ただ、お金をもらった人たちがどのような行動を取るのかを見ることで、社会保障のあり方などを考える材料にしてほしい、という。

 この社会実験がどんな結果をもたらすのか。そのとき、この町はどのように変化しているのか。注目が集まっている。(連載57)(宮地ゆう)