藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

低さのひみつ。

日本人の生産性はかなり低いらしい。
G7で一番下。
どよーんとしたトピックだけれど、海外勤務経験のある友人たちに聞くほどに納得がいく。

「すべてが過剰」だという。
都心部の道路標識とか。
役所のあらゆる手続きとか規制とか。
公共施設の数とか設備とか。

どこにでも建築許可とか、営業許可とか言った規制はあるけれど「おしなべて最もきつい」のが日本らしい。
生産性の低さは、怠慢とかインセンティヴと言うよりは「やりすぎの規制や手続き」にあるということのようだ。

米国などは、あれだけの訴訟社会だというのに「ビザの手続きの不備で役所が訴えられた」とか「役所の許可が甘かったから事故が起きた」といった話はあまり聞かない。
特に銀行とか、役所の手続きは不備だらけで実に雑だ、と聞くけれど案外「適度な粗さ」で生産性を保っているのかもしれない。

記事では「日本人の低エンゲージメント(仕事への熱意のなさ)と日本経済の低生産性は密接不可分の関係にあるのではないか。」と指摘されているが、「勤勉なくせに熱意がない」というところに日本人の特性があるような気がする。
(つづく)

安倍さん、生産性革命の本丸はここ 編集委員 西條都夫
 安倍政権が生産性革命の旗を掲げている。日本経済の問題点が主要7カ国(G7)の中で最も低い労働生産性であることはかねて指摘されていた。ノーベル経済学賞を受賞したポール・クルーグマン教授も「生産性が全てではないが、ほぼ全て」と述べたことがある。

■働く人の「やる気」置き去りに

 私たちの生活水準や豊かさが長期的に向上していくのか、足踏みするのか、前より悪くなるのか。それを決める最重要のファクターが生産性であり、生産性が伸びさえすれば(伸び率にもよるが)、財政赤字も人口減少も中韓企業の追い上げも、さらには東芝のような有名企業の経営の行き詰まりも十分に克服できて、おつりが来るという考え方である。

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 その意味で安倍政権が生産性に焦点を合わせるのは正しいだろう。ただし、問題意識の正しさと、それを解決するための処方箋の適切さはまた別だ。政府が2017年12月に発表した「新たな経済政策」では日本の生産性を過去5年の実績値の2倍強に当たる年率2%のペースで引き上げる目標を掲げ、そのために人材投資に積極的な企業への減税措置や、自動走行などの新技術の開発普及に力を入れるという。

 これらの施策はやらないよりはやった方がいいかもしれないが、どこか的外れというか、一番大切なことを置き去りにしている気がする。

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 それは働く人の「やる気」である。別掲のグラフを見てほしい。米IBM傘下のケネクサという調査会社が12年に実施した国際調査によると、働く人のエンゲージメントが最も低いのが日本だった。ちなみに同種の調査でも似たような結果が出ており、専門家の間では「日本人の低エンゲージメント」はほぼ確定した事実だ。

■仕事におけるエンゲージメントとは

 エンゲージメントとは耳慣れない言葉かもしれないが、人事コンサルティング会社ビヨンド・グローバルの森田英一社長によると、「会社の目指す方向と自分のやりたいことが合致している状態」を指すという。

 エンゲージメントにはもともと「結婚」とか「婚約」という意味があり、仕事におけるエンゲージメントとは会社(組織)とそこで働く個人が幸せな結婚をしている状態、と思えば分かりやすいかもしれない。日本語に訳すときは「(仕事への)熱意」という言葉がよく使われる。

 このエンゲージメントは「まじめさ」や「勤勉さ」とは少し違う。言われたことを指示通りにこなす受け身のまじめさではなく、もっと積極的に仕事に関わりあうイメージだ。

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 例えばファストフード店でマニュアルどおりに作業するアルバイトは、「まじめ」かもしれないが「エンゲージメント」の度合いは高くない。言われたことを忠実に守っているだけだからだ。逆にもっと働きやすい職場をつくるために、マニュアルの改善を提案するような従業員は「熱意(エンゲージメント)」が高い。仕事に対して主体的に向きあう姿勢がそこにあるからだ。

 先ほどの「結婚」の例えでいえば、配偶者の言うとおりに従順に振る舞うのではなく、結婚生活の質を高めるために、自ら考え行動する夫婦というイメージだろうか。

 「日本人はまじめで勤勉」というのが世間の常識で、実際に働き過ぎが問題になるほど年間の労働時間も長い。ところが、それは受け身のまじめさで、自ら仕事に積極的に向きあうエンゲージメントが低いとすれば、そこから生産性を高めるようなイノベーションが生まれにくいのも道理だろう。日本人の低エンゲージメントと日本経済の低生産性は密接不可分の関係にあるのではないか。

■2つの処方箋

 ではどうすればいいか。1つは労働市場流動性の向上だ。各種の調査では「この会社でずっと働きたい」と思っている人は実は少数派だが、「実際にはずっと働くことになるだろう」と考えている日本人は少なからずいる。つまり「他に選択肢がないから、しかたなくここにいる」という人が多く、そうした人は低エンゲージメント人間の典型で、おそらくは周囲の人のやる気にも悪影響を及ぼしているに違いない。

 そんな人を少しでも減らすためには、労働市場流動性を高め、働く人の選択肢を増やす必要がある。

 もう1つの処方箋は、若い人の発意やアイデアを生かす工夫だ。日本の大組織は年功序列が基本でもともと若手の発言力は高くない。加えて多くの企業や職場で中高年が厚く若手の薄い逆ピラミッド型の人員構成が増えている現状では、若い人の発言権は2重の意味で制約される。「何を言っても通らない」と思えば、誰も何も発言しなくなり、職場のエンゲージメントは著しく低下する。

 政府が生産性向上の旗を振る際には、こうした問題意識を踏まえることが大切だろう。オフィスや店舗のパソコンの台数が増えれば、自動的に生産性が引き上がるわけではないのだ。それぞれの職場のミクロな人事政策にまで政府が介入することは実際には難しいだろうが、「やる気が問題」という認識を欠いたままの政策は絵に描いた餅に終わる気がする。

西條都夫(さいじょう・くにお)
 1987年日本経済新聞社入社。産業部、米州編集総局(ニューヨーク)などを経て経済解説部編集委員論説委員。専門分野は自動車・電機・企業経営全般・産業政策など。