藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

メディアが変わるとき。

メディアと知識人と政治家。

そしてさらに都市部と農村部。

私の本は警告だったが、まさに米国、英国と同じように、大都市の知識層とディープ・フランス(フランスらしさが色濃く残る農村部)の間には明らかに大きな溝がある」とデュルペール氏。

こういう具合に「五次元」くらいにな世の中は多層化しているからややこしい。
「それぞれの分野」の人が「自分の立場」からものを言う。
その物の見方は一理あるが、「他分野」との整合性はまるでない。
「あいだを取り持つもの」がいなければずっと平行線で自説を主張するばかりだ。

何事も、すべてを論理的に説明しきれるものではないと思うが、
相手とか、敵対する両者の間を取り持つ機能がなければ、話はまとまらない。

自民と都民ファーストと立憲民主と。

中立で綺麗に整理してゆくのがメディアの一番の役割のはずだ。
今のようなネット時代、新しい形の「メディアの存在」が試行されているように見える。
いよいよ「スポンサーのくびき」から放たれる"真のメディア"が登場する時代なのかもしれない。

[FT]「民衆の代表」今は昔 仏左派知識人の嘆き
 フランスのエコール・ポリテクニーク(国立理工科学校)で哲学を教えるミカエル・フセル教授は、パリ中心部のカフェ「ル・ルージュ・リメ」でコーヒーをすすりながら、左派の知識人が本当に重要な存在だった時代を振り返る。

 教授いわく、ピエール・ブルデューが鉄道労働者によるストライキを先導したり、ミシェル・フーコーが刑務所改革に関する議論の流れを変えたり、エミール・ゾラドレフュス事件(1894年にユダヤ系の陸軍大尉アルフレド・ドレフュスがスパイ容疑で逮捕された冤罪事件)の際に正義を求めて嘆願したりできた時代はとうの昔に過ぎ去った。

 「我々はもう、この国の知的指導者ではない」。現在42歳でジーンズにツイードジャケット姿のフセル氏はこう話す。「メディアでは、大きなインパクトを与えるのは保守派の声。政治では、テクノクラート(実務家)だ」。

■ルソー、サルトル… 知識人主導の伝統

仏知識人はジャン=ポール・サルトルなど、社会と政治に大きな影響力を持ってきた

 間近に迫ったフランスの選挙は、ポピュリスト(大衆迎合主義者)で極右政党を率いるマリーヌ・ルペン氏の台頭で話題が持ち切りになっている。ルペン氏は、排外主義と経済ナショナリズムを織り交ぜることで、かつて左派によって代表されていた無力な労働者階級の大部分に声を与えた。

 世論調査によれば、オランド大統領の不人気な社会党政権が5年間続いた後、同党大統領候補のブノワ・アモン氏は4月23日の第1回投票で5位になるとみられている。選挙戦中の議論の大部分は、アイデンティティーと治安という伝統的な保守派の争点に集中した。

 フセル教授などの左派知識人の内省は、米大統領選でドナルド・トランプ氏を勝利に導き、英国を欧州連合(EU)離脱に向かわせたポピュリストの急激な台頭を理解するのに苦しんでいる西側世界全体のリベラル派エリートの内省と重なる。

 だが、フランスでは恐らく、自省が特に痛烈だ。何しろここは、古くは18世紀のジャン・ルソーや19世紀のビクトル・ユーゴーにまでさかのぼる進歩派知識人が社会と政治に大きな影響力を持つ道徳的権威だった場所だ。

 1968年5月の「五月革命」の暴動の際にジャン=ポール・サルトルが市民的不服従で逮捕されたとき、シャルル・ドゴール大統領は「ボルテール(18世紀の仏啓蒙主義を代表する哲学者)を逮捕したりはしない」と言って見逃した。

 21世紀になっても、フランス大統領は知識人から助言を受け入れている。哲学者のベルナール=アンリ・レヴィ氏は、友人のニコラ・サルコジ大統領に介入を働きかけ、2011年にリビア派兵を決めたフランスの決断にかかわった。

■右派がメディアを席巻

 英オックスフォード大学のフェローで、「How the French think(フランス人の考え方)」の著者であるスディール・ハザリシン氏は「フランスには知的左派による力と影響力の長い伝統がある。だが、彼らの影響力は近年、衰えた」と言う。

 さらに、フランスは右傾化し、有権者が移民と国家的アイデンティティーに大きな懸念を抱くようになったと指摘する。

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 フランスは寛容とリベラリズムの名の下にイスラム主義者に屈服していると主張し、メディアを席巻しているのは、エコール・ポリテクニークでフセル氏の前任者だったアラン・フィンケルクロー氏のような右派の知識人だ。

 フィンケルクロー氏が2013年に刊行した著書「L’identite malheureuse(不幸なアイデンティティー)」は、エリック・ゼムール氏の「Le Suicide Francais(フランス人の自殺)」と並び、ベストセラーとなった。どちらも国家的衰退のテーマに取り組み、フランスの黄金時代を回顧した作品だ。

ベストセラーを書いた経済学者のトマ・ピケティ氏は大統領候補のアモン氏に協力している

 国際的な成功を手にしたミシェル・ウエルベック氏は、イスラム台頭について書き続けている。2015年刊行の「Submission(服従)」は、イスラム主義者がフランス大統領に選ばれる物語を描いている。

 別のエリート養成大学、エコール・ノルマル・シュペリウール高等師範学校)の哲学部長を務めるマルク・クレポン氏は、左派はアイデンティティーと移民の問題に対応するのが下手だったと述べ、「我々はこれらの問題への対応をメディアに友好的な右派に任せてしまった」と言う。

さらに、ゾラやジャック・デリダアルベール・カミュサルトルといった思想家は、貧しい人や弱者を擁護する道徳的指導者だったとクレポン氏は言う。「左派は再び、声と力を見つける必要がある」。

■大都市の知識層と農村部に溝

 フランスには影響力がある左派の知識人がいないわけではない。実際、大統領候補のチームに影響力を持つ人さえいるが、20世紀の偉大な思想家よりは、むしろ専門家との共通点が多い。社会理論家で公職にあるジャック・アタリ氏は、大統領選の最有力候補、エマニュエル・マクロン氏の選挙チームの一員だ。ベストセラーを書いた経済学者のトマ・ピケティ氏と社会学者のドミニク・メーダ氏はアモン氏に協力している。

 左派の作家は、右派の争点に対抗する人気書を執筆している。2015年にベストセラーとなったフランソワ・デュルペール氏の漫画本「La Presidente(ラ・プレジダント、女性大統領)」は、ルペン氏が2017年の大統領選に勝つことを想像した思考実験だった。

 この本は、そのような場合にフランスがいかに大混乱に陥るかという訓話として書かれた。だが、デュルペール氏はその後、ルペン氏の率いる国民戦線(FN)の支持率上昇を見て、自分の話が国民の大半に通じているのかどうか疑うようになったと言う。

 「私の本は警告だったが、まさに米国、英国と同じように、大都市の知識層とディープ・フランス(フランスらしさが色濃く残る農村部)の間には明らかに大きな溝がある」とデュルペール氏。「我々は、反対側にいる人たちに語りかけるのに苦労している」。

By Michael Stothard in Paris

(2017年4月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/

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