藤野の散文-小暑、逃げ水、不如帰。 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2018-05-17 現金の終焉。

[]デジタルマネーの破壊力。 デジタルマネーの破壊力。を含むブックマーク デジタルマネーの破壊力。のブックマークコメント

金融関係のアプリを先取りしたfintechが、特に新興国では圧倒的に浸透している。
中国の沿岸都市は変貌著しいらしく、また小国ほどシステムの乗り換えが簡単で浸透しやすいらしい。

口座の開設だ、本人確認だ、振り込み手数料だ、と言っている間に「関係なくやりましょう」という勢力が出てきたということだ。

一言でいえば「既得権益が技術にすっぱ抜かれた」ような状態だと思う。

(前略)
これに対して、インド政府が最初に行った取り組みが、2009年に開始されたアドハーである。
これは指紋と網膜という、2つの生体情報に基づく認証技術(バイオメトリクスと呼ばれ、これ自体もフィンテック関連のサブテーマとして大きな注目を集めている)を使って、国民にデジタルIDを付与するプロジェクトだ。

多分「現金」があったればこそ既存の銀行は「口座」とか「送金」とかでの絶対的な優位を保っていた。

今現金でなく、電子マネーで「互いのID」があるのならば、銀行は必要なくなったのだ。

日本の銀行も、決済という機能では死滅するだろう。
融資為替も、いつまで持ちこたえられるだろうか。

案外雌雄が決するのはここ数年のことではないだろうか。
デジタルマネーは銀行を瞬く間に蒸発させるかもしれない。

アジア生活を激変させた、最新フィンテックの「破壊力」
 「リープフロッグ」という言葉をご存知だろうか。直訳すれば「蛙飛び」という意味になるのだが、ビジネスやテクノロジーの世界では、「ある分野で遅れていた国や地域が、その分野の最新手法を取り入れることで、一気に最前線へと躍り出ること」を意味する。  「フィンテック」の解説をした前編の冒頭で、Go-Payというサービスにより、インドネシア最先端モバイル決済社会が到来しようとしていることを紹介したが、これもリープフロッグの一例である。  アジアのフィンテックが各国で実現しようとしているのが、まさにこのリープフロッグだ。

銀行口座のない生活

 4月といえば、日本では新学期新年度のシーズンだ。日本人の場合、大学生にもなれば、銀行口座を持っていてもおかしくない。ましてや新社会人にもなれば、銀行口座がないので給与振り込みができない、などというケースは例外的だろう。

しかしアジア地域では、銀行口座を持っていない人々の方が主流派、という国も珍しくないのだ。

たとえば世界銀行2014年に行った調査によれば、アセアン諸国(カンボジア、インドネシア、ラオスマレーシアミャンマーフィリピンシンガポール、タイ、ベトナム)全体で、銀行口座を持つ成人は全体の50パーセントに過ぎないことがわかっている。

またアジア地域は、国によって経済状況が大きく異なるのが1つの特徴となっているが、この点についても同様であり、特にカンボジア、ラオス、ミャンマー、フィリピン、ベトナムといった国々では、銀行口座を持つ成人の割合はおよそ30パーセントかそれに満たない数字となっている。

前述のように、私たちにとって銀行口座は「あって当たり前」の存在だ。そのため銀行口座のない、銀行を利用しない生活がどのようなものか、ちょっと想像してみてほしい。

給料はどうやって受け取るのか? 引き落としで支払っている料金や代金はどうしよう? そして何より、将来のための貯蓄をどうすればいいのか――金融機関が提供するさまざまなサービスがなければ、現代的な経済活動は困難になってしまうのだ。

こうした先進国の人々にとっては当たり前の金融サービスを、いままでそれにアクセスできなかった人々にも提供すること。これは「ファイナンシャルインクルージョン(金融包摂)」と呼ばれる概念で、アジア地域のフィンテック企業が活発に活動している領域のひとつだ。

象徴的な企業のひとつが、Wave Moneyという企業だ。彼らが活動しているのは、2015年民主化された東南アジアの国・ミャンマー。

ノルウェーテレコム会社であるTelenorと、ミャンマーのYoma Bankが立ち上げた企業で、携帯電話を通じて貯金や送金ができるというサービスを展開している。

Wave Moneyによれば、ミャンマーで1つでも金融サービスを利用したことのある人々は、人口全体のたった6パーセントでしかない。

一方で携帯電話は広く普及しており、人口全体の90パーセントが、インターネットに接続可能な携帯電話へのアクセスを有しているそうである。

そこで携帯電話をベースに金融サービスを提供することで、いわば「手つかず」の状態にあった一般向け金融サービス市場を開拓したのが、このWave Moneyである。

利用は簡単で、Telenorがミャンマーで展開している携帯電話サービスの番号を持っているだけでよい(この番号がWave Moneyのアカウントとなる)。

そして「Wave Shop」と呼ばれる近くの代理店(雑貨屋のような小さな店舗も多い)に行き、そこで現金を支払う。

するとアカウントに電子マネーがチャージされたような状態になるため、あとはこれを他の携帯電話に送金してやればOK。現金を引き出したければ、再び近所のWave Shopに行き、手続きをすれば良い。

Wave Moneyは2016年10月に、同国初のモバイル金融サービス提供者として認可されたばかりだが、Wave Moneyの代理店は、既にミャンマー全土に約2万ヵ所存在している。これは同国内に設置されているATMの数(約3,000台)のおよそ6倍、同じく銀行支店数(約2,000か所)のおよそ10倍に相当する。

その結果、同サービスは早くも約130万人のユーザーを獲得している。人口約5300万人の同国で、立ち上げから2年もたたない間に達成した成果としては、悪くない数字だろう。

プレゼンを行った、同社のブラッド・ジョーンズCEOは、この成果を文字通り「リープフロッグ」と形容した。ミャンマーはWave Moneyの力で、モバイル金融サービスにおけるリープフロッグを達成する可能性があると言えるだろう。

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格安航空会社も電子マネーに参入

 前編の冒頭で紹介したように、インドネシアのバイクタクシー配車アプリ「Go-Jek」は、独自の決済システムを提供することでサービスの拡大を図っている。

これと同じような展開が、マレーシアでも見られる。同国で人気を博しているタクシー配車アプリ「Grab」が、独自の決済サービス「GrabPay」を開始したのだ。

Grabは2012年に立ち上げられたサービスで、当初はタクシー配車を行っていたが、その後Go-Jekのようなバイクタクシーの配車サービス、Uberのような一般の人々が運転するクルマの配車サービスなどに拡大してきた。

そして参入したのが決済の分野で、はじめは同社による配車サービス時の支払いに限定されていたが、既に小売店での支払い等にも使用できるようになっている。

実は非金融機関による決済サービスへの参入は、アジア地域におけるトレンドのひとつとなっている。

今回のMoney20/20に合わせ、世界的な会計事務所のアーンスト・アンド・ヤングが「ASEAN FinTech Census 2018」というレポートを発表しているのだが、それによればアセアン諸国のフィンテック企業のうち、決済サービスを提供しているのは全体の33パーセント。

実に3社に1社が決済分野で活動しているということになる。さらに送金サービスまで加えると、この割合は54パーセントになり、半数を超えてしまうそうだ。

なぜ決済サービスがこれほど賑わっているのか。関係者からさまざまな解説がなされているが、シンガポールに拠点を置くユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)は、次のような点を指摘している。

・インターネットへのアクセスの普及、特にスマートフォンの普及により、若くてテクノロジーに強い消費者が急激に増加している。
・ASEAN諸国は経済が好調で、小売業、特にeコマース分野が急速に拡大しつつあり、それに対する便利で安全な決済サービスが求められている。

また前述のように、これらの国々では伝統的な金融サービスがそれほど普及していないことを思い出そう。デジタル機器を通じて、リアルタイムにアクセスすることが可能になった数多くの消費者たち。しかも彼らは、既存の金融サービスを利用していない。彼らを狙い、新たな決済サービスを立ち上げる企業が相次いでいるのである。

さらに前述の「ASEAN FinTech Census 2018」では、非金融機関による決済サービス参入によく見られるパターンのひとつとして、「既に多くの顧客を獲得している消費者向けサービス企業が、顧客基盤の活用とサービスの差別化を目指して決済サービス提供に踏み切る」という形を紹介している。

まさしくGo-PayやGrabPayのパターンだが、Money20/20 Asiaではもうひとつ、ユニークなサービスが登場している。それが「Big Pay」だ。

Big PayはMoney 20/20 Asiaで公式発表がなされるという、まさに真新しい決済サービスなのだが、展開している企業は格安航空会社(LCC)のエアアジアである。

同社はアジアのLCCとして最大手で、年間乗客数は約5700万人に達する。この顧客基盤を活かし、金融分野にまでサービスを拡大し、顧客の囲い込みを図ろうというわけだ。

エアアジアのトニー・フェルナンデス創業者兼CEOは、Big Payで国際送金サービスにまで参入するつもりであると語っている。彼が武器として指摘したのが、同社が持つ顧客データだ。

航空会社なのだから当然だが、エアアジアは多くの人々の移動記録を有している。それを利用することで、国際送金サービスの潜在的な顧客にアプローチすることや、彼らに合わせたサービスを展開することが可能になるというわけである。

生活に根差したバイクタクシーを支援するベンチャー企業や、アセアン地域の人々に空の旅を身近なものにした航空会社。それぞれが独自の視点から、決済サービスを提供している。

一見すると、雨後の竹の子のように見えるアジア諸国の決済サービスも、近づいて見ればそれぞれの特色を活かした活動を行っていることがわかるだろう。

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4/27(金) 11:00配信

デジタル社会のインフラをつくる

 だがこうした取り組みを着実に進めていくためには、企業の力だけでなく、国や社会の力も必要になる。

たとえば便利な金融サービスを生み出せたとして、それを開設するために必要なID(身元証明)を、人々が持っていないとしたらどうだろうか。

日本では考えづらいことだが、アジア諸国の住民の中には、医療機関公的サービスの不備によって出生時の証明が得られなかった人々もいる。いくら金融サービスが高度化しても、それに参加できないのであれば意味がない。

これを大規模な国家プロジェクトで解決しようとしている国がある。2024年までに人口数で中国を抜くと予想されている、インドである。

インドでは「アドハー(Aadhaar)」と「インディア・スタック(India Stack)」という画期的な取り組みが進められており、これによってフィンテック系のサービスは大きな後押しを受けている。

Money20/20 Asiaにおいても、これらのプロジェクトをテーマとした関連セッションが、2日目だけで3つも開催されたほどである。

インドではこれまでの経済状況と、その国土の広さもあり、IDを持たずに生活している国民が多数存在していた。

彼らは銀行口座など、金融サービスのアカウントを開設することができず、各種の公共サービスを受けることも、事業を興すために必要な融資を受けることもできない。結果として、インドの経済成長を阻害する要因となってしまっていた。

これに対して、インド政府が最初に行った取り組みが、2009年に開始されたアドハーである。これは指紋と網膜という、2つの生体情報に基づく認証技術(バイオメトリクスと呼ばれ、これ自体もフィンテック関連のサブテーマとして大きな注目を集めている)を使って、国民にデジタルIDを付与するプロジェクトだ。

広大なインドで、全国民に生体情報に基づくIDなど付与できるわけがない――そうした下馬評をものともせず、インド政府は農村地域にまでデータ収集スタッフを派遣。その結果、総人口13億人のインドで、既に約11億人にIDを発行することに成功している。

この成功を受けて、インド政府がさらに立ち上げたのが、2016年のインディア・スタックだ。これは複数のシステムを統合させた情報インフラで、アドハーのIDを使ってログインすることができる。

そこに保管されているのは、ありとあらゆる種類の個人情報だ。住所や職歴など基本的なものから始まり、納税情報や公共料金の支払いといった公的なもの、さらには医療情報や銀行の取引明細に至るまで、多種多様なデータが集まっている。

インド国民はこの中から、特定の相手に対して情報を開示することができる。融資を受けたければ、納税情報や各種の支払い情報を共有することで、自分の信用力を証明することができるというわけだ。

インド政府はそれと並行して、決済のみの機能を有し、口座維持手数料のいらない決済銀行を設立。これに国民の参加を呼びかけ、3年間で約2億7000万件の新規口座が設立されるという成果を残している。

インド政府は着実に、前述の「ファイナンシャル・インクルージョン」と、国民全体のデジタル経済への移行を実現しつつあるのだ。

こうしたインドの取り組みに対し、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者の経済学者のジョセフ・スティグリッツは、「米国もインドにならい、デジタル経済への移行を進めるべき」という趣旨の発言をしている。

先進国である米国ですら、デジタル分野の取り組みではインドに一歩遅れている――これぞ最大級の「リープフロッグ」と言えるだろう。

前・後編にわけ、「フィンテック」というトレンドと、それがアジアの国々でどのように花開いているかを見てきた。

フィンテックはお金という、生活に密接した存在を大きく変えるサービスであり、それだけに社会全体を変える力を持っている。それぞれの国で、どのようなフィンテック系サービスに注目が集まっているのかに目を向けてみるだけでも、その国の現状と未来を感じることができるだろう。

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最終更新:4/27(金) 11:00
現代ビジネス