藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー このページをアンテナに追加 RSSフィード

2018-07-20 AIの勘所。

[]頼もしい相棒に。 頼もしい相棒に。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 頼もしい相棒に。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

ここ数年で「膨大な知識を重ねて特徴を見抜く」ということではAIが完全に人を凌駕した。
これからもそういう分野ではどんどん導入されて、恐ろしくレベルアップするだろう。

シンギュラリティがどうのという前に、これから5年くらいは人の業務の「AIへの置き換えラッシュ」が楽しいテーマになると思う。

AIによる職業淘汰を心配する声も多いが、AIが人助けをしてくれるのはこれからが本番だ。

専門家に聞くと、荷物の仕分けや自動運転やRPAなどの分野よりも「各分野の"専門家"を支援する効果」が非常に高いのだという。

記事中にある「医師をサポートする」とか「研究者のデータ処理を助ける」とかいう「専門家強化ツール」のような役割だ。

つまりAIが専門家の仕事を取ってしまうのではなく「専門家の仕事をさらに優れたものにする」という。

例えば物流の支援なら、AIが最適なルートや方法を提案し、人間のマネージャはそれを元に「他業種との連携」とか「別サービスの発想」などを考える。てな具合だ。

自分にしても「高齢者のマーケットの推移はどうなるだろうか…」とか「法律との関わりについては…」なんてことを考えている時間が多い。
白書とか、民間統計とか、いろんなものを読んで思考を巡らしてはいるものの効率的とは言い難い。
AI(というか優れたコンピュータ)がそうした作業を助けてくれれば「本来やりたいこと」についても考える余裕が出てくるだろう。

まずは自分が「専門家として」どんどん使ってみたいものである。

がん患者を救い医療業界で人気化したAI「ワトソン」の次の狙い
 IBMの人工知能(AI)技術「ワトソン」は2016年にがん患者の命を救って話題を集めるや、医療・ヘルスケア業界で仕事が急増した。そのワトソンは次に何を仕掛けるのか――。『週刊ダイヤモンド』7月21日号の第1特集「製薬 電機 IT/ 医療産業エリート大争奪戦」の拡大版として、産業のキーマンたちのインタビューを特別連載でお届けする。第2回はITサービスの巨人日本アイ・ビー・エム(日本IBM)の金子達哉ヘルスケア・ライフサイエンス事業部パートナーに聞く。(聞き手/「週刊ダイヤモンド」編集部 臼井真粧美)

――近年の技術進化によって、ライフサイエンスやヘルスケアの分野でのビジネスは広がっていますか。

急速に広がりました。2016年東京大学医科学研究所で「ワトソン」(IBMのAI技術)ががん患者の病因を突き止めたと報道されたのが転機になりました。

――東大医科研でワトソンが診断の難しい特殊な白血病をわずか10分ほどで見抜き、患者の命を救ったケースですね。国内で初めて、AIが治療に影響を与えたと言われています。

インパクトは相当なもので、あれから病院だけではなく政府などいろいろなところからAIを使って問題を解決できないかという相談が寄せられ、ビジネスがぐっと広がりました。

――それまでのビジネスというと?

国内では500床以上の大病院向けの電子カルテシステム導入を20年以上にわたってやってきました。あとは製薬やライフサイエンス系の企業にERP(基幹系情報システム)導入などのコンサルティング。AI、リアルワールドデータ(診療報酬請求や診療記録、健診など患者の健康状態や医療提供に関連するデータ)などの括りでビジネスをやれるようになったのはこの2、3年。風が吹いてからです。

16年にはヘルスケアの事業部とライフサイエンス・製薬企業向け事業部がシナジーを出せるよう、「ヘルスケア・ライフサイエンス事業部」に統合。製薬企業、医療機関だけではなくて保険、食品、政府、自治体などのさまざまなプロジェクトを手掛けています。

――例えば?

ページ: 2

 国立循環器病研究センターとは、心筋梗塞など心臓疾患の発症重篤化するリスクについてAIを使って予測し、適切なタイミングでの治療などにつなげるモデルの構築に取り組んでいます。その第2弾では気象データも使っているんですよ。買収した米ウェザー・ カンパニー(気象情報サービス会社)が持つ気象データと心臓疾患などの相関性を調べるというもの。心臓疾患は発症して数時間が勝負であり、天候によって救急体制を変えるといったことにつながっていきます。

第一生命保険藤田保健衛生大学が構築した糖尿病の悪化を予測するモデルでも、データ解析にワトソンが使われました。保険会社にとっては、保険加入者へ付加価値の高いサービスを提供していく取り組みですね。

――医療産業でのAIのマネタイズは、AIを組み込んだ医療機機器について国の認可制度も整っておらず、まだ容易ではありません。ワトソンを使ったサービスは、金銭的収益を生むBtoBビジネスとして成立しているのですか。

はい。うちではすでに、BtoBビジネスにおいてAIが一つの柱になっています。

――収益化で先を走りますが、他社のAI技術やサービスが追いついたり、AIがコモディティ化されることを想定した勝負も仕掛けるとき?

今ないマーケットを自分たちで作って、ビジネスにしていきますよ。AI活用、電子カルテ導入、効率化など今まで個々にプロジェクトを受けてきましたが、最初からAIが組み込まれたアプリケーションをパッケージ化して、この第3四半期以降に出していこうと思っています。

具体例を挙げると、もっと賢い電子カルテ。AIがあらかじめ組み込まれた電子カルテシステムです。

今の電子カルテは記録がメインですが、記録データに論文データなどを組み合わせ機械に学ばせる。そうすることで、医師が音声で入力してワトソンと対話し、一緒に考えを出し合えるようになる。患者ごとのゲノム解析データや薬剤アレルギーなどの情報なども取り込んで解析して、患者の疾患診断や個々に適切な薬なりの治療方針を導き出す時代にしていきたい。

――電子カルテとAIを組み合わせて市場を作るんですね。

ページ: 3

 大病院だけではなく、電子カルテが入っていないクリニックなどに初期費用なしの月1万円とか提供して面を取るとか、イノベーションによる差別化でマーケットシェアを取っていくことも検討します。

もっとも、これは大きな仕掛けの一部。リアルワールドデータにおいては、患者ごとにどういう治療や薬が治りやすいかといったパーソナルケアなどに取り組んでいて、そうなると次に目指す姿はAIというソフトの部分と、リアルワールドデータというデータの部分を繋げるプラットホーマーです。

一歩、二歩、三歩進んで考えると、医療機関内の情報システムは全部繋がり、患者の家もセンサーの付いたスマートハウスになって日常のデータが取れるようになり、これらが全てつながる。今は研究としてやっていますが、未病(病気ではないが健康ともいえない状態)のところがうちはまだちょっと弱い。電子カルテにはその部分のデータがないですから。

健常者が病気にならないようにする新しくて大きいマーケットでビジネスをしていくには、いろいろな会社とパートナーと組んで攻める必要があります。エクササイズレッスンをやっているスポーツクラブだったりね。

BtoBを基本線にしながらも、BtoBtoCといったところが非常に大事になる。パーソナライズなケアの世界は、業界の垣根がどんどんなくなっていくでしょう。

――5年後の絵図は?

糖尿病であれば発症前の段階からα、βなりに細分化され、それごとにマーケティングや薬なりの開発が進んでいる。そのベースとして、AIやリアルワールドデータを活用してもっとインテグレートされたヘルスケアのエコシステム(複数の企業らよって構築された製品やサービスの収益環境)が構築されていると思います。

かねこ・たつや/米国の大学で経営学会計学学士を取得後、プライスウォーターハウスを経てIBM入社。国内外で製薬企業対象のプロジェクトなどを経験。2016年よりヘルスケア事業部とライフサイエンス事業部が統合されたヘルスケア・ライフサイエンス事業部の事業部長

2018-06-23 現代のルネッサンス。

[]頂点の先に。 頂点の先に。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 頂点の先に。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

ネット社会、ボーダレス化の時代に。
パリの無料のレストランが人気だという。
シェフは世界一のアワード取得者。
お店のスタッフは全員ボランティアだという。

「世界一になった後に何をするかは、とても大切なこと。
有名になったことで得た信用と、賛同してくれる友人シェフたちのネットワークを使って、『料理は愛だ』ということを世界に伝えたい」

何か松下幸之助翁の哲学を聞いているようだ。

そして食品も廃棄させない。

地域のスーパーマーケットと契約し、賞味期限などが近く、本来ならば廃棄されてしまう食材を使って料理を作っている。
(中略)
今世界では、年間13億トンのフードロスが出ており、8億1500万人が飢餓に苦しんでいる。
廃棄されてしまう食料の全てを使えば、飢餓に苦しむ人をなくすことができるのだ。
それを、シェフらしいやり方でできないか、というのがマッシモの考えだ。

一人のアイデアと実行のエネルギーが、現実の問題を解決してゆく。

自分たちは、できれば何かの頂点を目指し、そして「頂点に立った後のこと」をイメージできると良さそうだ。
ゴールの先には、また違う景色が見えるということを心しておきたいと思う。

ボランティアが殺到 世界一のシェフが手がける「無料レストラン」
パリのあるレストランに予約が殺到している。といっても、客として食べに行くわけではない、ボランティアの話だ。金融コンサルタントで自らの事務所を持っているというニコラスは、「急遽空きが出たというので、仕事を切り上げて来たよ。毎日のようにウェブサイトをチェックしていたんだ」と嬉しそうに語る。

人気を集めるその仕事は、レストランのサービススタッフ。そして食事客は、全員路上生活者だ。そのレストラン「レフェットリオ(Refettorio) 」の噂は以前から聞いており、一体どんなものなのだろうと興味を持っていた。

実際に確かめるチャンスが訪れたのは、今年5月のこと。筆者は新しいレストランのアワード「The World Restaurant Awards」の審査員の一人としてパリにおり、同じく審査員だったレフェットリオの創設者、マッシモ・ボットゥーラと同席した。話を聞いてみると「興味があるならパリの店に来てみればいい。今日の夕方、6時に、マドレーヌ寺院で」と、すぐに話がまとまった。

マッシモ・ボットゥーラと言えば、世界のベストレストラン50で世界一に輝いた(2016年)、イタリア・モデナの「オステリア・フランチェスカーナ」のオーナーシェフだ。

約束の時間にマドレーヌ寺院を訪れると、「ようこそ」とマッシモが陽気な笑顔で迎えてくれた。路上生活者に食事を提供する、と聞いて筆者がイメージしたのは、公園などで行われる炊き出しだが、寺院の横の入り口から「レフェットリオ」に足を踏み入れると、それとは全く違った風景が広がっていた。

室内は、温かなオレンジ色の間接照明で彩られ、レンガ造りの天井には雲をかたどった装飾が吊り下げられている。きちんとセッティングされたテーブルの上には、スタイリッシュなLEDランプ。驚く筆者にマッシモは「ここでやることは、オステリア・フランチェスカーナでやることと何も変わらない。クオリティに妥協はしない。シェフというのは、料理を通して、愛を広める活動家だと思っているからね」と語った。

レストランは毎日オープンし、昼間は一般客向けの有料レストラン、そして夜は路上生活者を対象にした無料レストランとなる。月に数回、世界中から、マッシモの友人の著名なシェフがやって来ては、この無料レストランで料理を作る。

「世界一になった後に何をするかは、とても大切なこと。有名になったことで得た信用と、賛同してくれる友人シェフたちのネットワークを使って、『料理は愛だ』ということを世界に伝えたい」

ページ: 2
オーガニック食材で料理を提供

もう一つ、「レフェットリオ」がとてもユニークなのは、食品廃棄問題の解消にも取り組んでいる点だ。地域のスーパーマーケットと契約し、賞味期限などが近く、本来ならば廃棄されてしまう食材を使って料理を作っている。

この日厨房に立っていたのは、アメリカ初のミシュラン二ツ星を獲得したサンフランシスコのレストラン「アトリエ・クレン」のドミニク・クレンシェフ。パリ郊外で両親が農業を営んでいたというドミニクは、食は社会の核となるもの、という思いを幼い頃から育くんできた。食品廃棄についてずっと問題意識を持っていたものの、実際にレフェットリオに参加するのは初めてだ。

ドミニクは届いた牛乳を筆者に差し出すと、「見て。これはオーガニック。どれも捨てるのは勿体無い、質の良いものばかりよ」と話してくれた。

シェフはその日の午後3時頃に届いた食材を使って、即興で前菜、メイン、デザートの3皿を作ることが求められる。この日、ドミニクが作ったのは、薄いタルト生地の上にクリームチーズスモークサーモンほうれん草などの野菜を乗せた前菜、鴨のコンフィ、そしてバナナミルクシェイク。

料理の経験次第では厨房のボランティアもできるが、プロの厨房経験のない筆者はサービスを担当することになった。筆者にとって、飲食のサービスは、大学生の時のアルバイト以来。実際の仕事については、これまで3度経験しているという、ポーリンに教えてもらうことになった。

仕事の流れを尋ねると、「まず水を注いで」などと、実際の動きを伝えられるのかと思っていたが、意外な答えが返ってきた。

「お客様が席についたら、まず笑顔でお迎えして、『もてなされている』という幸せな気持ちになってもらうように気を配って」

そう、ここで提供しているのは料理そのものだけではない。ここは、内包された幸せを含めた「愛」を伝える場所だったのだ、と改めて感じさせられた瞬間だった。

客席は90席だが、この日は公共交通機関のストライキのため、訪れたのは60人ほど。全員が政府から路上生活者として認定されたカードを保持するものの、見た目からはそうとはわからないこぎれいな格好をした人ばかりだ。

担当したのは、一人で訪れた、物静かで無骨な印象の中年男性。筆者が、「味はどうですか?」と尋ねると、話しかけられたことに一瞬驚いた顔をした後、「とても美味しい」とニッコリと微笑んだ。丁寧に骨から肉を外し、ゆっくりと確かめるように味わっている姿が、とても印象的だった。

他にも、ここで知り合った友人と待ち合わせをしているという初老の女性客、中にはすっかり仲良くなった友人同士、大きなグループで食事をしている人もいて、まるで、普通のレストランに迷い込んだのではないかという錯覚を覚えるほど。

毎日のように訪れる人も少なくなく、いつの間にかそこには自然なコミュニティが生まれ、路上生活者の精神的な支えになっていっているのだという。

ページ: 3
きっかけは、ミラノ万博

このパリのレフェットリオは今年3月にオープンしたが、現在イタリアのミラノ、モデナ、ボローニャナポリリオデジャネイロロンドンで展開する同じコンセプトの店舗を合わせると、7店舗目となる。

マッシモがこのアイデアを思いついたのは、2015年ミラノ万博に遡る。万博のテーマが、「地球に食料を、生命にエネルギーを(Feeding The Planet, Energy For Life)」であったことから着想を得た。

国際連合食糧農業機関の算定によると、今世界では、年間13億トンのフードロスが出ており、8億1500万人が飢餓に苦しんでいる。廃棄されてしまう食料の全てを使えば、飢餓に苦しむ人をなくすことができるのだ。それを、シェフらしいやり方でできないか、というのがマッシモの考えだ。

「地球はこれ以上の人数を賄う食材を生み出せないから、食料廃棄ををなくす必要がある。スーパーマーケットから届いた食材は、ありきたりに見えるかもしれない。けれど、私たちシェフにはクリエイティビティという力がある。目の前の食材という見えるものを使って、見えないものを生み出す力がね」

その「見えないもの」とはなんだろう。

実際にボランティアをして感じたことは、多くの人が幸せそうに食卓を囲んでいるということだった。質素ながらもきちんとした身なりをして、サービスのスタッフにも、受付のレセプショニストにも、お礼を言って帰っていく。筆者の担当した男性も、離席していたレセプショニストが戻るまで待ち、丁寧にお礼を言って立ち去った。

きちんと扱ってもらえることへの心地よさや食卓に込められたコミュニケーション。ただ飢えを満たす何かではない、とても大切なものも受け取っているように見えた。

マッシモは、「私たちの祖母の代は、硬くなってしまったパンクルトンにしたり、スープと一緒に煮込むなど、食材を無駄にせず最後まで使い切っていた。それと同じように、廃棄されてしまうはずの食材を丁寧に扱い、美味しい料理を生み出すことで、食に尊厳を取り戻す」と語る。

社会が忙しくなっていく中で、私たちはどうしてもたくさんの情報を処理しなくてはならなくなった。その結果、関心をなくしたり、おざなりにしてしまっている物事が少なくない。コストを考え、効率を考えた先に、失われたものとは何か? 「尊厳を取り戻す」というのは、食材だけではない。きちんと扱い、扱われる、という相互関係によって、人も尊厳を取り戻す必要があるのではないか。

それは、食事客だけではない。参加したボランティアたちも、この活動が自分自身を癒す行為であると語っていたのが印象的だった。

冒頭のニコラスは、「仕事で数字ばかり見ている毎日だが、ここには、本当の人と人とのふれあいがある」とその魅力を語る。4回目の参加だというダニエラは、「美しい建物の中でみんなが幸せそうに食事をしているこの空気が好き。自分が浄化された気持ちになる」のだという。

ページ: 4
笑顔を見るのが何よりも喜び

何かを受け取っている、という思いは、発案者のマッシモも同じだ。「私は忙しくなったが、訪れる度に、とても大切なものを受け取っている。自分は取るに足りない存在だと思って、無表情だった人たちが、自分は価値ある存在だと感じられるようになり、徐々に笑顔を取り戻していくこと、その様子を見るのが何よりも嬉しい」

ミラノ万博でも料理を振る舞い、この日ドミニクシェフのサポートとして参加していた東京銀座「イル・リストランテ ルカ・ファンティン」のルカシェフは今、東京に同じ構想のレストランを作れないかと考えている。

「ここには料理の原点がある。その場にある食材で、心を込めて、できるだけ美味しい食事を作る。まるで、家族に食事を作るような、料理を作る上で大切な温かい気持ちを思い出させてくれる」

最初の客がやってくる直前、マッシモが筆者にスタッフ用のエプロンをかけてくれながら言った言葉がとても印象的だった。

「これは革命なんだ。あなたはここに立っていて、ゲストとコミュニケーションをとることができる。あなたはサービスを通じて、革命に参加している」

日本語の「革命」という言葉はいささか堅苦しく頭でっかちな匂いがするのだが、人と人が食を囲み、相互に温かなコミュニケーションが生まれる、こんな平和な「革命」があっていい。

イタリアは、「スローフード」という考えの発祥の地でもある。一人のイタリア人シェフが起こす食の革命。「Food for Soul」という基金をベースに、わずか3年の間に7店舗がオープンするというのは、かなりスピーディな展開と言えるだろう。世界一に輝いたマッシモの人柄や信用力がバックにあるのはもちろんだが、サポートする人が増えているのは、それだけではなく、それが今、私たちに欠けているものだと、皆が薄々気づいているからなのかもしれない。

早すぎる時代の流れの中で、少し足を止めてみてはどうか。「レフェットリオ」が投げかけるのは、現代のルネッサンス人間主義への回帰への誘いなのかもしれない。

2018-06-20 人ごとではなく。

[]重要事項を優先する。 重要事項を優先する。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 重要事項を優先する。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

自分くらいがトヨタ社長の声明を聞いて、どうこう言うのもおこがましい限りだけれど。
「勝つか負けるかではなく、生きるか死ぬか」という言葉にはビリビリ来るものがある。

一兆円の利益を出す企業ですら、中小と同様の「そのクラスなりの危機」にさらされる。
あらためて、競争というのは大変なものだと思う。

トヨタほどの規模も特徴もないが、自分の周囲だけで見れば自分の立場も同様だ。

天下国家がどう、政治がどう、世界経済為替がどう、AIやIoTがどうの、などと言っている間に「自分がどう」という話をきちんと詰めておかねばならない。

『一番重要なことは何か』をいつも意識できますように、と今一度思う。

"生きるか、死ぬか"トヨタの危機感の正体
「100年に一度の大改革の時代」「勝つか負けるかではなく、生きるか死ぬか」。トヨタ自動車豊田章男社長は、こうした発言を繰り返しており、危機感を隠しません。次世代自動車の世界で、トヨタは生き残れるのか。立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は「部品点数の少ない電気自動車にシフトすれば、下請けや孫請けなど数十万人の雇用に影響する恐れがある」としたうえで、今後のトヨタを10項目から分析します――。(第6回)

※本稿は、田中道昭『2022年の次世代自動車産業 異業種戦争の攻防と日本の活路』(PHPビジネス新書)の第10章「トヨタとソフトバンクから占う日本勢の勝算」(全53ページ)の一部を再編集したものです。

■本当に「トヨタ自動車は出遅れている」のか

EV(電気自動車)など、次世代自動車産業において「トヨタ自動車は出遅れている」という論調があります。とりわけ次世代エコカーにおいては20年来、「プリウス」に代表されるハイブリッド車を主力としていたことから、トヨタは世界的なEVシフトに取り残される格好にも見えます。

豊田章男社長が抱いているであろう「トヨタの危機感」を10項目に整理するなら、次のようになるでしょう。

・自動車産業の構造、需給関係が変化し、業界全体の規模や販売台数が減少する恐れがあること。
・業界内外との競争で厳しい展開となり、自社のマーケットシェアが減少する恐れがあること。
・次世代自動車産業における競争のカギが、ハードからOSやサービスなどに変化し、テクノロジー企業などに覇権を握られる可能性があること。
・既存の自動車メーカーはハードの納入会社化してしまう可能性があること。
中国欧州のEVシフトが急速化していること。
・中国が推し進める新エネルギー車(NEV)の対象からハイブリッド車を除外するなど、トヨタ狙いの動きが明らかであること。
・EV化や自動運転化での短期間での収益化・量産化が読めないこと。
・CASEでの対応が最先端プレイヤーと比較すると出遅れている可能性があること。
・ライドシェアなど日本国内では規制で手が打てない分野は状況が見えにくく、会社全体として必要なレベルにまで危機感が高まらないこと。
・次世代自動車産業においては巨大なトヨタや関連企業、関連産業の雇用を維持するのが困難となる可能性があること。

なかでも、最後の項目「雇用維持」という使命感が、トヨタの足かせになったという可能性は重要です。

トヨタは、エンジン関連の部品を下請け企業、孫請け企業からなる巨大なピラミッド構造によって製造してきました。しかし、ガソリン車に比べ部品数がはるかに少ないEVにシフトすれば、下請け企業、孫請け企業の事業の根本的な見直しが必要となり、数十万人とも言われる雇用に影を落とすと懸念されているのです。

■「トヨタをクルマ会社を超える会社に変革させる」

トヨタ危うし。この事実は、多くの日本人が誇りとし、愛してやまない企業だけに、ショッキングなことかもしれません。

ですが、誰が指摘するまでもなく、危機を誰よりも自覚しているのは、トヨタ自身。それは、「自動車業界は100年に一度の大改革の時代」「勝つか負けるかではなく、生きるか死ぬか」といった、豊田社長の言葉からも、痛いほどひしひしと伝わってくるものです。

CES2018で豊田社長は、「私はトヨタを、クルマ会社を超え、人々の様々な移動を助ける会社、モビリティカンパニーへと変革することを決意しました」と宣言。同時に、モビリティ・サービス専用の次世代EV「イー・パレット・コンセプト(e-Palette Concept)」を発表しました。

ページ: 2

 イー・パレット・コンセプトは、一見すると箱型のEV。しかしその実態は、EV、シェアリング、自動運転といった次世代自動車の技術の全てを取り込み、なおかつ、用途に応じて柔軟に形を変えるプラットフォームです。例えば、朝夕はライドシェアリングとして利用され、昼間は移動店舗や移動ホテル、移動オフィスにと、「パレットのように」姿を変えられるとしています。

「将来はイー・パレットにより、お店があなたのもとに来てくれるのです」と豊田社長。すでにアマゾン滴滴出行マツダピザハット、ウーバーなどがパートナーとして発表されており、今後は彼らと実証実験を進め、2020年東京オリンピックでもイー・パレットで貢献する、と宣言しています。

■ITソリューションを一気通貫に提供する新会社を設立

2018年3月には、トヨタコミュニケーションシステム・トヨタケーラム・トヨタデジタルクルーズのIT子会社三社を統合し、2019年1月に新会社トヨタシステムズを設立することが発表されました。これには、自動車業界が直面する「100年に一度」の大変革期においてITが果たす役割がますます大きくなるなか、3社がこれまで個別に担ってきたノウハウを一本化、ITソリューションを一気通貫に提供することで、トヨタグループの連携強化に貢献するという狙いがあるようです。

同じく3月に、デンソーアイシン精機と共同による自動運転の新会社「トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスド・デベロップメント(TRI-AD)」を都内に設立することも発表。英語を社内公用語とし、国内外から1000人規模の技術者を採用、また三社で3000億円以上を投資することで、自動運転技術の開発を急ぎます。CEOには、元グーグルのロボティクス部門長が就任することが決まりました。トヨタは2016年にAI、自動運転、ロボティクスなどを研究するTRIをシリコンバレーに設立していましたが、国内に新会社を設立することでさらなる競争力の強化を図ります。

■次世代自動車産業の4つの潮流である「CASE」

今後トヨタはどうなるのか、どうするべきなのか。次世代自動車産業の4つの潮流である「CASE」を軸に、分析してみたいと思います。

まず「CASE」の「C」、コネクティビティです。私がトヨタのサービスが「ガラパゴス化」しないか最も懸念している部分です。それは、コネクティビティでは、クルマと通信や各種サービスをつなげるだけではなく、生活の全てが相互につながるということが期待されているからです。

トヨタは2018年1月にアマゾン・アレクサの搭載も発表した一方で、かなり前から、テレマティクスサービスに挑戦し、独自のプラットフォーム「T-Connect」を展開していました。もっとも、T-Connectは自動車内で使うことを前提としたサービス。アマゾンがアマゾン・アレクサを武器としてスマートホームからスマートカーに攻めてきているのに対して、トヨタはT-Connectでスマートカーから攻めていくという構図になっています。

この構図は、アマゾンがECからリアル店舗を攻め始めているのに対して、リアル店舗の企業がECを攻めようとしているのに酷似しています。物流倉庫内にある膨大な在庫を背景とする優れた品揃えと「ビッグデータ×AI」をもとにしてリアル店舗を展開するアマゾン。かたや「限られた店舗での品揃えをもとにさらに限られた品揃えでEC店舗を展開しようとしている」というリアル店舗の企業側が仕掛けている戦いの構図。後者には厳しい戦いです。

ページ: 3

■真の「オールジャパン体制で戦う必要がある

音声認識AIには、モバイルインターフェース、アレクサのようなスマートホームでのインターフェース、そしてクルマのなかのインターフェースと、3つの領域があります。ただし、スマートホームからスマートカー、さらにはスマートシティまでのエコシステムをおさえるとなると、トヨタ単体では困難な領域。そこでは業界の垣根を超えることが必要になるでしょう。

それこそ、トヨタ、ソニー、あるいはパナソニックなどが手を組むような、真の「オールジャパン」体制で、モバイル×ホーム×クルマの音声認識AIのプラットフォームを全力で取りにいくべきではないでしょうか。すでにスマートホームのエコシステムとなっているアマゾン・アレクサに対抗するのは単独企業では簡単ではないことを、日本企業は再認識する必要があると思います。

■「トヨタは自動織機の発明により創業した会社」

「CASE」の「A」、自動化は出遅れ気味です。タクシーやライドシェアなどに利用される「サービスカー」と、自分が所有・運転する「オーナーカー」とを比較した場合、「オーナーカー」のほうが自動運転車を開発・実用化するハードルは高くなります。「サービスカー」であれば地域限定で走らせることもできますし、ドライバーの人件費が不要になるのでライドシェア会社は多少高額でも購入するかもしれないからです。トヨタがメインで生産しているのは、もちろん「オーナーカー」。そこがトヨタと、グーグルなどのメガテック企業やウーバーなどのライドシェア会社との決定的な違いです。

何よりも見逃せないのは、トヨタの出自です。CES2018で豊田社長はこのように語りました。

「トヨタはもともと自動車ではなく自動織機の発明により創業した会社であることを知らない方もいらっしゃるかもしれません。私の祖父である豊田喜一郎は、当時多くの人が不可能だと考えていた、織機を作ることから自動車を作ることを決意しました」

異業種戦争でありテクノロジー企業側が有利と見られがちなCESという場において、自分たちは再び異業種の会社として次世代自動車産業での戦いに臨む決意を示したものであると私は感じました。

その一方で、トヨタ生産方式の本質の一つは自働化。もともとの自動織機の会社だった時代、豊田佐吉が「自ら働く繊機」という意味を込めて、その機械を「自働繊機」と命名し、当初の社名もしばらくは豊田自働織機製作所になっていたそうです。創業者の精神を大切にする豊田社長であれば、「自ら働く自動車」である自動運転車を中核とする次世代自動車産業は自分たちこそが創るのだ、という使命感に持ち溢れているのではないかと想像しています。

ページ: 4

レンタカーの店舗網を活用してライドシェアに乗り込むか

「CASE」の「S」、サービスの領域では、「モビリティ・カンパニー宣言」に続くイー・パレット構想のほか、サービスを全方位に広げようとしています。国内では、日本交通傘下で配車アプリを開発しているジャパンタクシーに75億円を出資することで合意、配車支援システムの開発や走行データの活用で提携を進めます。

また、レンタカー市場は欧米では独立系レンタカー会社がシェアをおさえていますが、国内ではトヨタレンタリースが王者。ライドシェア会社への出資、さらに自社でもライドシェアの実証研究を行っていることから、いざとなったら、駅前など利便性の高い立地にあるトヨタレンタカーの店舗網を活用してライドシェアにも乗り込めるポテンシャルを秘めています。

2017年12月には、トヨタレンタリース東京と、法人向け自動車リース事業を展開するトヨタフリートリースを統合、新会社「トヨタモビリティサービス」を設立すると発表しました。ライドシェア会社は、トヨタが日本国内でライドシェア事業が展開できていないとしても決して侮るべきではないと思います。

「CASE」の「E」、つまり電動化においては、トヨタグループや業界構造の維持を考えるあまり、思い切ったシフトができなかったという背景がありました。しかし、先ほど触れたように、トヨタはEVとその量産の技術において他のプレイヤーより優れた潜在力をもっています。また、黒字化のカギを握る電池でも世界最大手のパナソニックと提携。中国勢が海外勢を量で圧倒している状況を質でも凌駕し始める前に、トヨタが巻き返しできるかどうかの勝負となりそうです。

----------
田中 道昭(たなか・みちあき)
立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授
シカゴ大学ビジネススクールMBA。専門はストラテジーマーケティングおよびリーダーシップ&ミッションマネジメント上場企業社外取締役経営コンサルタントも務める。主な著書に『アマゾンが描く2022年の世界』など。
----------

2018-06-17 人ごとではなく。

[]重要事項を優先する。 重要事項を優先する。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 重要事項を優先する。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

自分くらいがトヨタ社長の声明を聞いて、どうこう言うのもおこがましい限りだけれど。
「勝つか負けるかではなく、生きるか死ぬか」という言葉にはビリビリ来るものがある。

一兆円の利益を出す企業ですら、中小と同様の「そのクラスなりの危機」にさらされる。
あらためて、競争というのは大変なものだと思う。

トヨタほどの規模も特徴もないが、自分の周囲だけで見れば自分の立場も同様だ。

天下国家がどう、政治がどう、世界経済為替がどう、AIやIoTがどうの、などと言っている間に「自分がどう」という話をきちんと詰めておかねばならない。

『一番重要なことは何か』をいつも意識できますように、と今一度思う。


"生きるか、死ぬか"トヨタの危機感の正体

6/15(金) 9:15配信

「100年に一度の大改革の時代」「勝つか負けるかではなく、生きるか死ぬか」。トヨタ自動車豊田章男社長は、こうした発言を繰り返しており、危機感を隠しません。次世代自動車の世界で、トヨタは生き残れるのか。立教大学ビジネススクールの田中道昭教授は「部品点数の少ない電気自動車にシフトすれば、下請けや孫請けなど数十万人の雇用に影響する恐れがある」としたうえで、今後のトヨタを10項目から分析します――。(第6回)

※本稿は、田中道昭『2022年の次世代自動車産業 異業種戦争の攻防と日本の活路』(PHPビジネス新書)の第10章「トヨタとソフトバンクから占う日本勢の勝算」(全53ページ)の一部を再編集したものです。

■本当に「トヨタ自動車は出遅れている」のか

EV(電気自動車)など、次世代自動車産業において「トヨタ自動車は出遅れている」という論調があります。とりわけ次世代エコカーにおいては20年来、「プリウス」に代表されるハイブリッド車を主力としていたことから、トヨタは世界的なEVシフトに取り残される格好にも見えます。

豊田章男社長が抱いているであろう「トヨタの危機感」を10項目に整理するなら、次のようになるでしょう。

・自動車産業の構造、需給関係が変化し、業界全体の規模や販売台数が減少する恐れがあること。
・業界内外との競争で厳しい展開となり、自社のマーケットシェアが減少する恐れがあること。
・次世代自動車産業における競争のカギが、ハードからOSやサービスなどに変化し、テクノロジー企業などに覇権を握られる可能性があること。
・既存の自動車メーカーはハードの納入会社化してしまう可能性があること。
中国欧州のEVシフトが急速化していること。
・中国が推し進める新エネルギー車(NEV)の対象からハイブリッド車を除外するなど、トヨタ狙いの動きが明らかであること。
・EV化や自動運転化での短期間での収益化・量産化が読めないこと。
・CASEでの対応が最先端プレイヤーと比較すると出遅れている可能性があること。
・ライドシェアなど日本国内では規制で手が打てない分野は状況が見えにくく、会社全体として必要なレベルにまで危機感が高まらないこと。
・次世代自動車産業においては巨大なトヨタや関連企業、関連産業の雇用を維持するのが困難となる可能性があること。

なかでも、最後の項目「雇用維持」という使命感が、トヨタの足かせになったという可能性は重要です。

トヨタは、エンジン関連の部品を下請け企業、孫請け企業からなる巨大なピラミッド構造によって製造してきました。しかし、ガソリン車に比べ部品数がはるかに少ないEVにシフトすれば、下請け企業、孫請け企業の事業の根本的な見直しが必要となり、数十万人とも言われる雇用に影を落とすと懸念されているのです。

■「トヨタをクルマ会社を超える会社に変革させる」

トヨタ危うし。この事実は、多くの日本人が誇りとし、愛してやまない企業だけに、ショッキングなことかもしれません。

ですが、誰が指摘するまでもなく、危機を誰よりも自覚しているのは、トヨタ自身。それは、「自動車業界は100年に一度の大改革の時代」「勝つか負けるかではなく、生きるか死ぬか」といった、豊田社長の言葉からも、痛いほどひしひしと伝わってくるものです。

CES2018で豊田社長は、「私はトヨタを、クルマ会社を超え、人々の様々な移動を助ける会社、モビリティカンパニーへと変革することを決意しました」と宣言。同時に、モビリティ・サービス専用の次世代EV「イー・パレット・コンセプト(e-Palette Concept)」を発表しました。

ページ: 2

 イー・パレット・コンセプトは、一見すると箱型のEV。しかしその実態は、EV、シェアリング、自動運転といった次世代自動車の技術の全てを取り込み、なおかつ、用途に応じて柔軟に形を変えるプラットフォームです。例えば、朝夕はライドシェアリングとして利用され、昼間は移動店舗や移動ホテル、移動オフィスにと、「パレットのように」姿を変えられるとしています。

「将来はイー・パレットにより、お店があなたのもとに来てくれるのです」と豊田社長。すでにアマゾン滴滴出行マツダピザハット、ウーバーなどがパートナーとして発表されており、今後は彼らと実証実験を進め、2020年東京オリンピックでもイー・パレットで貢献する、と宣言しています。

■ITソリューションを一気通貫に提供する新会社を設立

2018年3月には、トヨタコミュニケーションシステム・トヨタケーラム・トヨタデジタルクルーズのIT子会社三社を統合し、2019年1月に新会社トヨタシステムズを設立することが発表されました。これには、自動車業界が直面する「100年に一度」の大変革期においてITが果たす役割がますます大きくなるなか、3社がこれまで個別に担ってきたノウハウを一本化、ITソリューションを一気通貫に提供することで、トヨタグループの連携強化に貢献するという狙いがあるようです。

同じく3月に、デンソーアイシン精機と共同による自動運転の新会社「トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスド・デベロップメント(TRI-AD)」を都内に設立することも発表。英語を社内公用語とし、国内外から1000人規模の技術者を採用、また三社で3000億円以上を投資することで、自動運転技術の開発を急ぎます。CEOには、元グーグルのロボティクス部門長が就任することが決まりました。トヨタは2016年にAI、自動運転、ロボティクスなどを研究するTRIをシリコンバレーに設立していましたが、国内に新会社を設立することでさらなる競争力の強化を図ります。

■次世代自動車産業の4つの潮流である「CASE」

今後トヨタはどうなるのか、どうするべきなのか。次世代自動車産業の4つの潮流である「CASE」を軸に、分析してみたいと思います。

まず「CASE」の「C」、コネクティビティです。私がトヨタのサービスが「ガラパゴス化」しないか最も懸念している部分です。それは、コネクティビティでは、クルマと通信や各種サービスをつなげるだけではなく、生活の全てが相互につながるということが期待されているからです。

トヨタは2018年1月にアマゾン・アレクサの搭載も発表した一方で、かなり前から、テレマティクスサービスに挑戦し、独自のプラットフォーム「T-Connect」を展開していました。もっとも、T-Connectは自動車内で使うことを前提としたサービス。アマゾンがアマゾン・アレクサを武器としてスマートホームからスマートカーに攻めてきているのに対して、トヨタはT-Connectでスマートカーから攻めていくという構図になっています。

この構図は、アマゾンがECからリアル店舗を攻め始めているのに対して、リアル店舗の企業がECを攻めようとしているのに酷似しています。物流倉庫内にある膨大な在庫を背景とする優れた品揃えと「ビッグデータ×AI」をもとにしてリアル店舗を展開するアマゾン。かたや「限られた店舗での品揃えをもとにさらに限られた品揃えでEC店舗を展開しようとしている」というリアル店舗の企業側が仕掛けている戦いの構図。後者には厳しい戦いです。

ページ: 3

■真の「オールジャパン体制で戦う必要がある

音声認識AIには、モバイルインターフェース、アレクサのようなスマートホームでのインターフェース、そしてクルマのなかのインターフェースと、3つの領域があります。ただし、スマートホームからスマートカー、さらにはスマートシティまでのエコシステムをおさえるとなると、トヨタ単体では困難な領域。そこでは業界の垣根を超えることが必要になるでしょう。

それこそ、トヨタ、ソニー、あるいはパナソニックなどが手を組むような、真の「オールジャパン」体制で、モバイル×ホーム×クルマの音声認識AIのプラットフォームを全力で取りにいくべきではないでしょうか。すでにスマートホームのエコシステムとなっているアマゾン・アレクサに対抗するのは単独企業では簡単ではないことを、日本企業は再認識する必要があると思います。

■「トヨタは自動織機の発明により創業した会社」

「CASE」の「A」、自動化は出遅れ気味です。タクシーやライドシェアなどに利用される「サービスカー」と、自分が所有・運転する「オーナーカー」とを比較した場合、「オーナーカー」のほうが自動運転車を開発・実用化するハードルは高くなります。「サービスカー」であれば地域限定で走らせることもできますし、ドライバーの人件費が不要になるのでライドシェア会社は多少高額でも購入するかもしれないからです。トヨタがメインで生産しているのは、もちろん「オーナーカー」。そこがトヨタと、グーグルなどのメガテック企業やウーバーなどのライドシェア会社との決定的な違いです。

何よりも見逃せないのは、トヨタの出自です。CES2018で豊田社長はこのように語りました。

「トヨタはもともと自動車ではなく自動織機の発明により創業した会社であることを知らない方もいらっしゃるかもしれません。私の祖父である豊田喜一郎は、当時多くの人が不可能だと考えていた、織機を作ることから自動車を作ることを決意しました」

異業種戦争でありテクノロジー企業側が有利と見られがちなCESという場において、自分たちは再び異業種の会社として次世代自動車産業での戦いに臨む決意を示したものであると私は感じました。

その一方で、トヨタ生産方式の本質の一つは自働化。もともとの自動織機の会社だった時代、豊田佐吉が「自ら働く繊機」という意味を込めて、その機械を「自働繊機」と命名し、当初の社名もしばらくは豊田自働織機製作所になっていたそうです。創業者の精神を大切にする豊田社長であれば、「自ら働く自動車」である自動運転車を中核とする次世代自動車産業は自分たちこそが創るのだ、という使命感に持ち溢れているのではないかと想像しています。

ページ: 4

レンタカーの店舗網を活用してライドシェアに乗り込むか

「CASE」の「S」、サービスの領域では、「モビリティ・カンパニー宣言」に続くイー・パレット構想のほか、サービスを全方位に広げようとしています。国内では、日本交通傘下で配車アプリを開発しているジャパンタクシーに75億円を出資することで合意、配車支援システムの開発や走行データの活用で提携を進めます。

また、レンタカー市場は欧米では独立系レンタカー会社がシェアをおさえていますが、国内ではトヨタレンタリースが王者。ライドシェア会社への出資、さらに自社でもライドシェアの実証研究を行っていることから、いざとなったら、駅前など利便性の高い立地にあるトヨタレンタカーの店舗網を活用してライドシェアにも乗り込めるポテンシャルを秘めています。

2017年12月には、トヨタレンタリース東京と、法人向け自動車リース事業を展開するトヨタフリートリースを統合、新会社「トヨタモビリティサービス」を設立すると発表しました。ライドシェア会社は、トヨタが日本国内でライドシェア事業が展開できていないとしても決して侮るべきではないと思います。

「CASE」の「E」、つまり電動化においては、トヨタグループや業界構造の維持を考えるあまり、思い切ったシフトができなかったという背景がありました。しかし、先ほど触れたように、トヨタはEVとその量産の技術において他のプレイヤーより優れた潜在力をもっています。また、黒字化のカギを握る電池でも世界最大手のパナソニックと提携。中国勢が海外勢を量で圧倒している状況を質でも凌駕し始める前に、トヨタが巻き返しできるかどうかの勝負となりそうです。

----------
田中 道昭(たなか・みちあき)
立教大学ビジネススクール(大学院ビジネスデザイン研究科)教授
シカゴ大学ビジネススクールMBA。専門はストラテジーマーケティングおよびリーダーシップ&ミッションマネジメント上場企業社外取締役経営コンサルタントも務める。主な著書に『アマゾンが描く2022年の世界』など。
----------

2018-06-12 来日のおもてなし。

[]本質を見る力。 本質を見る力。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 本質を見る力。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

airbnbで登録されていた日本の部屋の"8割"が降りたらしい。
「年間3650万室が消えた」というのは軽くはない問題だと思う。
空室とか空車とか、手持ち無沙汰とか。

「空き」をITを使っていかにシェアするか?
という根本的なことに「既存勢力」がいつまで抗えるだろうか。
自分は時間の問題だと思う。

自分の住んでいるマンションでも、住人は「民泊許すまじ」と鼻息が荒い。
けれど考えるべきは「安心な民泊」とか「文化交流」のはずである。

日本ではすでに800万戸の空き家があるという。
いかに空き家をシェアするか?ということを最優先に、規制や運用を考えるべきだと強く思う。
このままでは、ビジネスチャンスも、文化も育っていかない。
日本はホームステイやルームシェアのノウハウを、早急に取り入れる必要があるだろう。

消えた3650万室 エアビー8割減 どうなるアフター『民泊新法』
エアビーホスト向けの住宅宿泊事業届出のよびかけ 出典:エアービーアンドビー


KNNポール神田です!
一般住宅に旅行者を有料で泊める民泊の仲介世界最大手、米エアビーアンドビーが許認可などがない日本国内の施設の掲載をやめたことが(2018年6月)4日、分かった。エアビーのサイトで現在検索できる施設は約1万3800件と今春時点から8割弱減った。(2018年6月)15日の住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行で求められる対策を前倒ししたとみられる。エアビーの今春時点での登録総数は約6万2000件

出典:民泊仲介エアビー、掲載数8割減 新法控え対策

米エアービーアンドビーの日本サイト

https://www.airbnb.jp/

民泊新法で消えた4万8,200登録。1日あたり10万人、年間3650万人のキャパが消えた

これを単純に登録数を部屋数として考えると…6万2,000室存在した部屋数が1万3800室に減った。市場が22.2パーセントもシュリンクしたのだ。つまり4万8,200室が一瞬にして消えたのだ。1室あたり2名で考えると、12万4000人もの対応キャパシティが、2万7600人しか対応できなくなり、9万6400人分の部屋が消失した。1日10万人、年間では3650万人のキャパが消えたこととなる。

観光庁が、「エアビーアンドビー」などの民泊仲介業者に対して、予約客の取り消しを2018年6月1日に通知したことが影響したと考えられる。通知の概要においては、「現時点において法に基づく届出等のない物件に係る新規の予約は行われないようにすること」とあるからだ。

観光庁[違法物件に係る予約の取扱いについて通知を発出しました 違法物件に係る予約の取扱いについて通知を発出しました]より

筆者のホスティング登録している部屋も6月15日を待たずに6月2日に非公開とされている。

非公開となった筆者のホスティング物件 出典:エアビーホスト管理ページ

実践してみて、はじめて実感できる「シェアリング経済」のすごさ

「シェアリング経済」は、実践してみてわかることが多々ある。実際に筆者の場合は、日本ではホスティングにまで至らなくとも、エアビーで登録し自分の部屋を貸し出した場合の相場を知ることができた。

たとえば、マンションを購入したりする場合に、その場所の物件をエアビーで登録するだけでどれくらいの1日あたりの収益があるのかという新たな指標を可視化してくれ、資産としての価値を客観評価できる。それだけでなく、いつがハイシーズン、ローシーズンなのかの宿泊需要までが、ひと目でわかるのだ。そんなホスティングのマネージメントの仕組みが秀逸さが、エアビーアンドビーの成長エンジンなのだ。

住所と部屋のタイプで収入シミュレーションが可能 出典:エアビーホスト管理画面

東京新宿の現在の1Kの住居をエアビーでホストした場合の収入は、一週間で5万円と収入相場をアドバイスしてくれる。満室ならば月額20万円となる…。また、需要にあわせて自動的に価格が変動する「スマートプライシング」で料金はエアビーアンドビーにほとんどお任せすることができる。民泊のシーズンごとに売れる相場の料金を世界で一番知っている会社でもある。

需要時期において価格が自動的に変動するスマートプライシング機能を適応してみた

自分の部屋の1週間の価値がすぐにわかる、エアビーの収入相場

https://4knn.tv/airbnb-a-week/

この仕組のおかげで、素人でも簡単にゲストを迎えいれることが簡単にできた。

そもそも「民泊新法」とは

「民泊新法(住宅宿泊事業法)」という法律2017年6月9日に国会で決まり、2018年6月15日に施行されるので、この法に適さない民泊はすべて「違法民泊(旅館業法違反100万円、懲役6ヶ月以下)」となり罰せられることとなる。そして登録して「住宅宿泊事業法」上の運営者となっても年間運用は最大180日の縛りがあり、各自治体の条例によっては、さらに、営業期間や曜日の縛りがあるので年間半年以下でしか運用できなくなり、ビジネス目的の民泊はほとんど成立しなくなり、撤退さざるをえなくなったのだ。民泊で、幸運にも、近隣住民の許可も得られ、消防署の許可も得られるという奇遇な事業者でも年間半分以下しか稼働できないのでは、事業としてはとても成立できない。むしろ、その規制で運営できる人といえば地方の空き室化する場所くらいのものだ。そこにアウトバウンド需要は見込みづらい…。

※「住宅宿泊事業」とは、旅館業法第3条の2第1項に規定する営業者以外の者が、宿泊料を受けて届出住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数が180日を超えないもの。

空き家820万戸、空き家率13.5%(2013年)を残したまま。日本に芽生えた民泊のシェアリングエコノミーを摘み取ってしまったのだ。

ベッド・アンド・ブレックファースト文化(B&B)

このような厳しい法律が登場した背景は、やはり、ヨーロッパなどで長年培われてきたベッド・アンド・ブレックファースト文化(B&B)の土壌がない日本で、いきなり上陸し、しかもワンルームのようなマンションで管理人と会うこともなく、キーボックスだけの設置だけという状況が放置され続いたことが問題だった。見知らぬ外国人が大きなスーツケースをもってウロウロ、夜中に酒を飲んで騒ぐ、タバコのポイ捨て、大阪ではついに、民泊で死体が発見されるなどとショッキングな事件が相次いだ。もちろん、ホテルや旅館などよりも、安い値段で部屋を民泊で貸されることによっての経済的な打撃に対してのロビー活動もあったことだろう。

日本において、ヨーロッパのように引退したホスト夫婦が、子どもたちが巣立ったあとの部屋を「民泊」として提供し、ベッドと朝食を用意し、旅人と一緒に時間をシェアしながら、同時に生活費の足しにするような「B&B

文化」が何もないまま日本で展開されてしまったことが今回の状況を招いてしまったと思う。当然、法律がないので取り締まることができない空白期間を経て、今回の施行となった。政府が、ホスト滞在型を推奨したり、アウトバウンド客に日本の暮らしをホストと一緒に過ごす日本型民泊のあり方を指導し、プライバシーのある宿泊業界と、異文化シェアリングのコミュニケーション業界と明確に区分けできなかったことを本当に残念に思う。日本は、これでまた、UBERなどの「ライドシェア」と同様に、シェアリングエコノミー後進国への道を歩みだしてしまったのだ。

2020年「宿泊需給問題」がまたぶり返す…

2020年訪日外国人旅行者数4000万人時代を迎え、みずほ総研は2017年9月に「2020年客室不足の試算」として、3万室不足から2.3万室不足とリポートした。しかし、この民泊の8割激減によって、2016年8月の「訪日外国人4000万人時代の宿泊施設不足」のレポートした4.4万室不足時代に舞い戻ってしまった。いやむしろ、首都圏においては、需要過多による供給不足による過剰の値上げやオークション価格並に尋常ではない宿泊価格の異常事態が発生することだろう。当然、そうなると、そのビジネスを埋める形で、表立って「民泊」ができない「ヤミ民泊」が大量発生する状況も考えられる。

最悪、そこでのトラブルが多発し、2020年に向けてインバウンド市場にも甚大な影響を与える頭痛のタネを抱えている。宿泊ホテルのローシーズンとハイシーズンの価格差に対してもある程度の価格規制も必要だろう。

また、エアビーアンドビーの仲介モデルとは違う「送客専門」のサイトへの登録や、長期賃貸の中途解約制度などの、さまざまなスレスレの「合法民泊」が登場したとしても、近隣住民とのトラブルによって宿泊需要がある限りイタチごっこの問題は続くことだろう。

「民泊」撤退バブルに湧くネットサービス

民泊撤退でいろんなモノがもらえる 出典:ジモティー検索画面

民泊新法を撤退することによって、6月は数万室の賃貸民泊撤退バブルに湧いている。都心で「賃貸」する側ならば得に今月はチャンスだ。民泊で貸し出されていた物件が大量に空き部屋化しているからだ。15日以降の撤退予約でこれから賃貸住宅から戸建てマンションでも影響があるだろう。

また、民泊撤退により、ベッドや家具、ソファ、テレビなどの廃棄するにしても費用がかかるものは、地元の掲示板の「ジモティ」などで「民泊」「撤退」などで検索してみると15日以降の予定が前倒しになり、現場に引取りにいけば、無料でもらえるという異常事態も発生している。そう、これらもすべて需給のバランス異常によって起こりうるシェアリングエコノミーのファンダメンタルズなのだ。

「民泊」は死に絶え、エアビーはUEBERの跡を追うのか

エアビーの武道体験サイト 日本の体験消費を仲介している 出典:エアービーアンドビー

6月15日に起こりうる「民泊ショック」は想定内ではあったが、8割減というのはかなりの激震クラスであった。すでにエアビーは「宿泊」だけではなく、旅先での経験を仲介する「体験&スポット」という、コト消費をピックアップしている。アウトバウンド客は、宿泊し、ホテルのコンシェルジュに頼るだけではなく、いろんな日本での体験をエアビーを通じて経験することができる。

「素敵なキッチン」のある宿泊先などのリスティングも進んでいる特別なお墨付きの「Airbnb Plus」 出典:エアビーアンドビー

また、「Airbnb Plus」というエアビーが厳選したスペシャルなお墨付きな宿泊場所を用意している。まだ、日本は少ないが、いずれホテルや旅館などでは、体験できない宿泊は人気が出ることだろう。たとえば、「憧れキッチン」という宿泊先はむしろ、ホテルや旅館では提供できないシェアリングエコノミーならではのリスティングである。こんなキッチンのある暮らしで数日暮らしてみたいというようなニーズを発掘させたのだ。

単に、日程と旅先で、検索した場所へ宿泊するということから、このキッチンがある国へ行ってみたいという「旅」の動機すら変えるチャンスを提供することもできる。

「広い庭」のある宿泊、

「果てしない眺め」の宿泊などがリーズナブルに宿泊できる。ITの仕組みでありとあらゆる、持つ人と持たざる人の間を埋めるのがシェアリングエコノミーだ。 ライドシェアのUBERが日本では「UBER EATS」として、レストランの出前の仲介サービスとして成立している。デリバリーする人は自転車でも徒歩でも、好きな時にアプリを立ち上げ、働きたい時だけ自由に働く。指示や住所や支払いはすべてスマートフォン経由で完結する。オールドエコノミ−のサービスが雇用を抱え、在庫を抱え、営業し、業種を絞り、サービスを提供するコストと、シェアリングエコノミーのシステムの運用だけを変えるだけで、サービスを提供できる人とサービスの無限の組み合わせを紡ぎ出す勝負の時代となっている。形骸化したプロフェッショナルと、好きでたまらないど素人のかなでるサービス。どちらを利用ユーザーが選ぶかという選択の競争時代となっている。競争が続けば、指数関数的に安くなるサービス利用料は、シェアリングエコノミーが行政よりも政府よりも国家よりもすぐれたパブリックサービスエコノミーとして、税金を投入するよりもよりよいサービスを提供しだすことだろう。

2018-06-10 金融から進む寡占。

[]集約する便利。 集約する便利。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 集約する便利。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

中国・アリババ傘下の金融会社がいよいよアジアを席巻するのではないか、という記事。
日本でも2000年以降、金融ビッグバンなどと言って「国際化」「ボーダレス化」がずっと言われてきたけれど、そういうのが本当に進むのはこれからなのではないだろうか。
これまでは「大企業」とか「銀行」とか「国」のレベルで進んできたけれど、自分たち一般人にはせいぜい「外貨預金とか外国株を買う」くらいの実感しかなかったけれど、今度はスマホを起点にして「何もかも、根こそぎ」という感じがする。
ユーザーの末端までリーチが届くというのは恐ろしいものだ。

便利に勝るサービスはない。

支払いも、クレジットも、投資も、メールも、お誘いも、お願いも、すべてが「ワンストップ」になる流れだと思う。
楽しいこともワンストップ、になったら少しつまらないと思うのは自分だけだろうか。


中国アントが1.5兆円の調達完了、企業価値はウーバーを突破

6/8(金) 17:30配信

中国のアリババ傘下の「アントフィナンシャル(以下、アント)」が総額140億ドル(約1.5兆円)にのぼる巨額の資金調達を完了させた。

今回の出資にはシンガポールの政府系投資会社「GIC」や「テマセク」、マレーシアの政府系ファンド「カザナ・ナショナル」、カナダの年金基金投資委員会「CPPIB」らが参加した。また、プライベートエクイティの「Warburg Pincus」「Silver Lake Partners」「General Atlantic」らも出資した。

アントは今回の資金調達における同社の評価額を明かしていないが、関係筋がフォーブスに語ったところによると、直近の評価額は1500億ドル(16兆3000億円)にのぼるという。これは、未上場企業としてはウーバー以上の企業価値であり、アントは世界で最も企業価値の高い非公開企業ということになる。

アントは2016年に実施した前回のラウンドで45億ドルを調達し、評価額は600億ドル(約6.5兆円)だった。

今回の調達資金でグローバル展開を加速させ、途上国向けの投資も行なうとアントは述べている。「アリペイ(支付宝)」のほか、世界最大のオンライン投資信託「Yu’e Bao(余额宝)」を運営する同社の、究極のゴールは世界中の消費者に金融サービスを提供することだ。

アントはバングラデシュの送金サービス「bKash」やパキスタンの「Telenor Microfinance Bank」など、アジアの金融会社への出資も進めている。香港ではビリオネアの李嘉誠(Li Ka-shing)が率いる長江和記実業(CKハチソン・ホールディングス)との合弁事業を通じ、アリペイの普及を図っている。

アントのチェアマンでCEOのEric Jingは「中国をはじめ世界中のパートナーとともに、オープンなエコシステムを築いていきたい」と声明で述べた。

中国の銀行にも歩み寄る姿勢

アントは先進的テクノロジーの、プロバイダー的ポジションの確立に向けての動きも進めており、将来的にはこの部門の売上が本業に迫る可能性もある。同社はAIを用いた生体認証の仕組みを、中国の複数の銀行向けに導入する契約を結んでいる。そのなかには、中国光大銀行(China Everbright Bank)や上海浦東発展銀行(Shanghai Pudong Development Bank)などが含まれる。

アントの直近の銀行との取り組みは、同社に対して近年高まった、政府からの監視の目を和らげる効果もありそうだ。中国政府はアントが政府系銀行のビジネスを奪い、消費者の債務を膨張させるリスクに神経を尖らせてきた。

上海のコンサルティング企業「Kapronasia」創業者のZennon Kapronは「最近のアントは銀行と対決するのではなく、協業する意欲を見せている。これは政府から見ると歓迎すべきことだ」と述べた。

2018-06-02 まじめに幽体離脱。

[]もっとウェブ進化。 もっとウェブ進化。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク もっとウェブ進化。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

インターネットが普及しだして(20年前)、どんどん「あらゆる時間差」がなくなり、もうそれもかなり極まったかな、と思っていた。
というかここ20年、ずっと「もう今が最新の進化ではないか」と思っていたが、常に予想は覆された。

VRが出てきて「いよいよここまでか」とまたも思ったわけですが、まったく違う視座もあった。
自分のアバターが現地で実際に動き。
その触感が自分に返ってくるという。

確かに幽体離脱という気がする。
災害現場でも活躍するだろうが、本当に「人の体験」に制約がなくなる可能性がありそうだ。

世界旅行でも、いや宇宙旅行だって遠隔で可能になり。
そうしたら、街中や観光地や山や海や極地は「アバターとして動くロボットだらけ」になるのだろうか。

人は究極には移動しなくなるのかもしれない。
いや、部屋の中では(体を動かして)移動行為はしているから、もう「どちらが移動なのか」を問う意味もなくなりそうだ。

人には辛い単純作業を肩代わりしたり、
世界中から「労働」に参加したり、
瞬間に移動して「その場へ旅」したり。

技術の底はまだ見えない。


移動をなくす、「幽体離脱」のテクノロジー

5月29日、テレイグジスタンス(Telexistence Inc.)とKDDIによる「遠隔操作ロボット量産型プロトタイプMODEL H」の記者発表でのことだ。

写真付きはこちら

「このなかで小笠原諸島に行ったことがある人、いますか?」

軽く200人をこえる記者会見場で、テレイグジスタンスの共同創業者兼CEO、富岡仁がステージ上から質問すると、手を挙げたのはわずか3人。

ステージ上で富岡が続けて、こう話す。

「2011年、小笠原諸島は世界自然遺産に認定され、観光資源に恵まれています。しかし、アクセス手段は客船だけで、毎日出航しているわけではありません。所要時間は片道24時間かかります。100kmという距離が小笠原諸島での体験を難しくさせているのです」

富岡が提案したのがTELEXISTENCE TRAVEL。「MODEL H」はKDDIグループの伝送技術を活用。ロボットを自分の「分身」として、遠いところで活動させることを可能にした。つまり、距離や空間を超えて、分身のロボットを通じて、視覚・聴覚・触覚などの「体験」を自分に伝えることができるのだ。2018年夏、このロボットを使って小笠原諸島の体験ツアーを始めるという。

「距離を超えた体験」とは何か?

「MODEL H」の開発段階から密着したForbes JAPANによる特別レポートを紹介しよう。

実は、海外でもテレイグジスタンスに早くから注目し、驚きの声をあげた人たちがいた。話は2年前の2016年8月3日に遡る。

この日、Xプライズ財団のビジョネアーズ・プライズ・デザインというチームがお台場にある日本科学未来館を訪ねた。非公開の研究棟にある一室で、彼らはヘッドマウントディスプレイを装着。手袋をつけて体を動かした瞬間、驚きの声を上げた。「まさに、これだ!」

手を自分の目の高さまで上げる。しかし、目の前に見えるのは自分の手ではない。研究室に置かれた「テレサV(ファイブ)」の手だ。テレサVは「MODEL H」の一代前のロボットである。

ヘッドマウントディスプレイをつけた者が動くと、ロボットも同じ動きをする。ヘッドマウントディスプレイで見る光景は、テレサVの目から見える景色だ。テレサVが「私」を見れば、私の目には「私」が見える。そう、私の身体がもう一つ、ロボットとして存在する。つまり、「私の分身」なのだ。

「動き」「視界」だけではない。ロボットが手で感じる「触覚」が、同時に自分の手に伝わってくる。
ページ: 2
新たな産業を創出する

亀を触る感覚や温度が、遠隔で人間にも伝わる

「これが探し求めていたアバターだ!」。感嘆の声を上げるビジョネアーズは、代わる代わるテレサVを自分の分身にしては喜んだ。遠隔地と同じ場所にいるような感覚にさせる「テレプレゼンス」という概念とは違い、触覚や体験を分身と共有する。

言うなれば、幽体離脱し、ロボットを自分の身体とする人間の究極の存在拡張。この概念を、舘翮(たちすすむ)東京大学名誉教授は1980年に発表。それは「テレイグジスタンス」と名付けられた。以来、36年。日本のロボット工学とVR(バーチャルリアリティ)を引っ張ってきた舘教授が開発したのがテレサVだった。

それから約2カ月後、Xプライズ財団はサミットを開いた。財団の目的は、「人類のブレークスルー」だ。これまで有人弾道宇宙飛行コンテストや、海水からの原油回収など、大規模なプロジェクトを開催している。

リンドバーグの大西洋単独無着陸飛行が、人間の移動や観光という新たな領域を爆発的に広げたように、世界規模の賞金レースによって新たな産業を創出する企画だ。

約300人のメンターと呼ばれる投資家、学者、実業家、慈善事業家、芸術家、技術者が集まり、次期賞金レースの候補である9つのテーマを2日間にわたって審査した。このとき実演されたのが、舘教授が開発したテレサVである。

そして舘の研究は、ついに世界的レースの次期テーマになると決定した。これが、つい2年ほど前の出来事だった──。

96社を訪ね歩く

富岡仁が上海の裏通りにある安宿に辿り着いたのは2018年1月である。「相当やばいですよ」と苦笑する彼の宿泊先は、一泊3000円。視察先は、中国で増え始めた無人店舗だ。

「中国に行く前に、日本で96社を7カ月かけて回り、テレイグジスタンスの概念を説明して歩きました。96社のうち、現在1割の企業と話を進めています。スタートアップとしては、かなりの打率と思いません?」

屈託なく富岡が笑う。96社と中国視察。彼らが取り組むのは、私たちの「働き方」のブレークスルーである。彼らの会社設立の経緯はこうだ。

2016年のXプライズ財団の決定により、舘のもとには世界からビジネス化の依頼が殺到していた。世界初を実現させた研究を誰かが量産・普及化させなければならず、事業化は喫緊の課題だった。たまたま舘の研究室に出入りしていたのが、元三菱商事の富岡である。1979年生まれで、テレイグジスタンスの概念を舘が生んだときはまだ1歳だった。

富岡が振り返る。

「僕はもともと甲子園球場の高校野球をVRで生配信できたら面白いなと、VRの事業化を模索していました。VRの話で先生方とお付き合いをしていたら、会社を一緒にできないかと相談されたのです」

17年1月、舘を会長に据えて、テレイグジスタンス社は設立された。ベンチャーキャピタル「グローバル・ブレイン」はKDDIとともに出資を即決。世界中のロボットベンチャーを見てきた同社の青木英剛は、その理由をこう話す。

「理想のロボットは、ドラえもんです。しかし、現在の自動ロボットはまだ赤ちゃん以下のことしかできません。一方、テレイグジスタンスは人間が間に入ることで、人間と同じように完璧に動きます。汎用技術なのであらゆる産業で応用できます」

ページ: 3
エリートを捨てた若者たち

もともと舘の概念は、83年に始まった国家プロジェクト「極限作業ロボット」の中核をなす。ロボットは構造化された既知の環境でしか作業ができず、原子力、海洋、石油コンビナートなどでの作業は、人間の判断が必要な局面が多い。そのため、遠隔から知能ロボットを分身のように動かすことを目指したのだ。

エリートを捨てた若者たち

もう一つ、青木が「日本には珍しい勝ちパターン」と言うのは、「経営」である。

「大学発ベンチャーは技術は素晴らしくても、経営人材を会社設立後に入れる例が多く、技術陣と噛み合わずに空回りしてしまう。しかし、テレイグジスタンスは設立時に駒が揃っていて、事業戦略がしっかりしています」

日本人、スリランカ人、チェコ人など多国籍チームでスタートした同社は、「スーパーエリートチーム」として語られているが、むしろ突き動かされるようにエリートを捨てた若者たちと見た方がいい。

日本人の父と台湾人の母の間に生まれた富岡は、生後まもなく父親を病気で亡くしている。「え、それ、書くんですか」と、富岡がたじろいだのは彼の高校中退後にまつわる話だ。高校1年の1学期で「つまらなくて」と、退学届を出した後、16歳の職場としては大胆だが、五反田のキャバクラで皿洗いをしていたという。

「朝帰りの生活を1年ほど続けていると、ある日、母親からカナダにいる親族の結婚式に行こうと言われました。到着した翌日、母は私のパスポートを持って帰国してしまい、『卒業するまで帰ってくるな』と、高校の手続きまでしていたんです」

外はマイナス40度。言葉は通じない。定期的に母親から送られてくる段ボール箱の中身はすべて書籍で、孫正義、本田宗一郎、稲盛和夫ら起業家の本だった。

「暇だから読むんですが、孫さんの本を読むと、俺、何やってんだという気持ちになるわけです」と、彼は苦笑する。母親の計算通りか、その後、アメリカの大学を卒業し、スタンフォード大学経営大学院修士を取得。三菱商事では大きなプロジェクトを動かしてきたが、そうした安泰のコースも「孫正義さん的に言えば、幻想(笑)」と、会社を飛び出したのである。

もう一人、富岡と96社を手分けして回った同社COOの彦坂雄一郎は、世界で戦いたいという思いからプロのサッカー選手を目指していたが、大学4年時に父親が経営していた小さな運送会社が倒産。家庭の事情により、サッカー選手を諦めて、東大大学院、そしてゴールドマン・サックス証券に入社した。が、新人研修が終わった直後に今度はリーマンショックに襲われた。周囲はリストラされたため、嵐のような日常を切り盛りしていく。

「お前は1年で金融業界の20年分を見たと言われましたが、9年続けたとき、テクノロジーの世界で革命が起きているのに、理工学部出身の僕が技術の世界から遠のいている。舘先生の研究を世に出して勝負したいと思ったんです」

彼らはテレイグジスタンスを「輸送革命」と捉えた。「移動をなくして、どこでも働ける」からだ。例えば、南米から日本に出稼ぎに来なくても、工場にテレイグジスタンスを置いておけば、日本が夜の間、昼間の南米から遠隔でロボットに作業させることができる。

普及させるには二つの課題があった。まず、ニーズはどこにあるか。そして、ヒューマノイド型ロボットはコストが高く、商業的に成功させた企業はない。この歴史的事実をどう克服するか、だ。

ページ: 4
ロボットを使った技術の伝承

「御社のビジネスエリアではこういうことができます」と、各産業の大手から訪ね歩いてみると意外だった。彦坂が言う。

「正直、クレイジーな話なので理解されないのは仕方がないと思っていました。しかし、自分たちの仕事を変えたいと熱く語る方々は大企業にもいたのです」

災害救助や建設業など危険作業の代替は容易に想像がつくが、例えば、アパレルは華やかな店頭での仕事よりも、梱包を解いたり検品をしたりする倉庫作業の時間が圧倒的に長い。人手不足の悩みは業界ごとに背景が違うことを知った。

ある日、彦坂はKDDIの紹介で、石川県七尾市のエフラボという「日本最大の椅子再生工場」に飛んだ。全国のホテル、結婚式場、劇場、病院、あるいはハワイのホテルからも椅子修理の注文が来る。

「遠方から能登半島への仕事が来るということは、それだけこの職業に就く人が少ないことがわかりました」と彦坂は言う。椅子は滅菌をした後、布地を剥がして分解し、歪みを直し、新たな布地の裁断、縫製、加工と細やかな作業が求められる。エフラボの松井正尚社長が言う。

「もともとこの地域はアパレルの縫製工場が多く集まっていたのですが、生産拠点が中国に移ったことで激減しました。80社ほどあった建具業も6社まで減っています。職人が集まりにくく、50代以上が中心です。若い人の技術習得には時間がかかります。そこでロボットと人間の仕事をうまく使い分けられないかと思ったのです」

テレイグジスタンスは最終的に「ハイブリッドモーションプランニング」というものを目指している。ベテラン技術者の動きをロボットが機械学習で習得していく。そして若い未習熟者の作業をロボットが補正する。つまり、ロボットを使った技術の伝承だ。また、一人の技術者の動きを10台の機械で動かせば、作業量は10倍になる。ロボットの完全自動化はまだ先の課題だが、彼らに見えてきたテレイグジスタンスの核心は、「都市の人口集中の緩和」である。

昨年8月、大分県庁東京事務所の武藤祐治はテレイグジスタンス社を訪れた。「概念を知らなかったので、衝撃でした」と武藤は言うが、彼は富岡と彦坂に面会を重ねるうちに、可能性を広げていく。

最初に武藤が思いついたのは、地方在住の者なら容易に予想できる課題だった。

「大分県は果樹栽培が多く、ブドウ棚はずっと上を見ながら摘む作業があります。ハウスみかんなどビニール栽培は、夏になると、過酷になります。高齢化する生産者の負担軽減になると思いました」

東京にいながらテレイグジスタンスを活用した観光体験もできる。「温度が伝わるのなら、温泉に入れましょう」という提案には、彦坂が「水は勘弁してください」と苦笑したが、東京でビラを配ったり、動画を見せたりするよりも、大分を遠隔体験する方が誘客につながるだろう。

ページ: 5
都市の人口集中の緩和

しかし、武藤は時間が経つにつれて、別のことを考え始めた。それは「地方は人口減少で人手不足」という課題への疑問だ。県庁で情報インフラを担当していたころ、彼は夕方に退庁すると、障害者施設や引きこもりの家庭を訪ね歩いた。

「情報インフラと言う前に、もっとやることがあるような気がしました。引きこもりの子がいる家庭は予想以上に多く、高齢の親は子どもの将来を心配しています。外出できないのは対人コミュニケーションが原因です。環境を用意することが重要ではないかと思うようになりました」

発達障害や身体障害がある人たちにも話を聞くと、社会参加を望んでいる。しかし、施設の仕事は割り箸の袋詰めのような作業に限定されており、平均月収は2万円ほど。自立にはほど遠い。

「労働力って健常者だけではないと思いました」と武藤は言う。働きたくても仕事に行けない事情がある。大分県内だけでもこうした「潜在的労働力」は放置されたままだ。一体、日本でどれだけの人が置き去りにされているのか。公民館などで作業環境をつくり、大都会の仕事を遠隔でできないものか。つまり、都市と地方から「距離」の障害をなくすことで、「働く」という概念を一気に変えられる。

武藤の話を聞き、富岡と彦坂はこう答えた。「それは、テレイグジスタンスの目指すところです」。

可能性を広げる無人店舗

富岡たちが考えたのは二本立て戦略だった。一つは宇宙事業といった時間あたりのコストが極端に高い、「高負荷・高単価」の仕事である。もう一つが小売りだ。産業の中でもっとも従事者が多く、有効求人倍率も2.6倍(2017年)。しかし、店舗がある地域の人しか働けないため、人手不足が起きている。富岡が言う。

「中国で急速な勢いで無人店舗が増えています。ただ、無人化しているのは決済の部分だけです。入荷、検品、陳列、接客のうち、自動化・遠隔化できるものはもっとあると気づいたのです」

富岡は三菱商事時代、シリコンバレーファンドを組んでいた習性から、小売りのアイデアを数字にしてモデリングしてみた。「僕の中では大ホームランの発想でした」と言う富岡に、採算は? と問うと、彼はこう答えた。「ありでした」。

小売、旅行、危険作業から社会参加をしたくてもできない人たちの就労や都市の集中緩和まで。「距離」という考えがなくなると、人間の生活はどう変わるのか。この夏、「MODEL H」がまずは「観光」から可能性を切り開いていく。

富岡 仁◎テレイグジスタンス共同創業者兼CEO。スタンフォード大学経営大学院修士。2004年に三菱商事入社。16年にジョン・ルース元駐日大使や米ベンチャーキャピタル「アンドリーセン・ホロウィッツ」のパートナーだったアシュビン・バチレディらとグロースキャピタルファンド「Geodesic Capital」を組成、運用。

舘 翮◎1946年生まれ。東京大学名誉教授、工学博士。バーチャルリアリティを学問領域として確立し、日本バーチャルリアリティ学会初代会長を務めた。ロボティクスと計測制御の国際化に貢献し、国内外の賞を数多く受賞している。

2018-05-22 日本的雇用の終焉。

[]自由に働く時代。 自由に働く時代。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 自由に働く時代。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

日本の社会人の象徴だった初任給が揺さぶられている。
かくいう自分も、就職の時に「なんでこうもすべての会社の初任給は20万円に揃えられているのか」と不思議に思ったものだ。
年功序列はともかく、「終身雇用」の色は未だに濃く、一時期は「日本的経営」のお手本のようにも取り上げられていた。
しかし時代は遷ろう。

自分は雇用契約は、お金次第で絶対に流動化したほうがいいと思うが、いよいよ今年あたりから「日本的雇用」は変わり始めているのだと思う。

同質性を最優先した初任給や昇級のシステム、失業保険や退職金。
全社員を対象にした就業規則や割増し賃金制度とか。

「スタートアップの俺についてきてくれるのなら月に50万出す!」とか。
大企業でも「当プロジェクトは出来高制、ストックオプションを出します!」とか。

そう思えばこれまでの雇用慣行というのは、凄まじく「右向け右」だった。
気持ち悪いくらい。

あまりに狩猟的に報酬が上下するのも殺伐とするけれど、仕事の内容とか、パフォーマンスとか、ゴールとか、そんなものに個別に呼応していく時代がついに来たようだ。

みんなが喜んで自発的に参加してくれるような仕事はやりやすくなるのに違いない。


中国発「初任給40万円ショック」 賃金革命 (ルポ迫真)

 4月1日に社会人になった吉田真也(24)は大学でコンピュータサイエンスを学んだ。就職活動中、何社かから声がかかり、選んだのがいま東京・新宿の本社に毎日通うLINE。「自分の技術を適切に評価してもらえている」というのが入社する決め手になった。

 そう感じたのは就活中の2016年12月だ。18年春入社が内定した吉田は会議室で採用担当者と向き合った。「これが吉田さんの初任給です」。福利厚生など労働条件を一通り説明した担当者はおもむろにホワイトボードに数字を書いた。

 同社のエンジニアの初任給は最低で年間501万6千円。選考過程の成績に応じて高くなる。吉田は通常の正社員だが成果に応じて毎年の給与が決まる年俸制。成績優秀者の初任給が100万円以上高い「スペシャリスト選考」枠に選ばれた。

 経済産業省の16年の調査によると日本のIT(情報技術)人材の20代の平均給与は年間413万円。米国の1023万円に比べると少ないが、世界規模での人材争奪を意識する日本企業も徐々に引き上げている。

 初任給を見直す動きも目を引く。売り手市場という理由だけではない。能力や意欲があり結果を出す人材に厚く配分する仕組みが初任給にまで行き着いた。LINEの人事担当執行役員、落合紀貴(43)は「個々人が納得する年俸を提示しなければならない」と言う。

 3月上旬、フリマアプリのメルカリ(東京・港)にエンジニアとして1カ月後に入社予定の毛利竹宏(23)にメールが届いた。差し出したのはメルカリ人事部。入社は半ば決まっているのに、「メルカリの一員となっていただきたく、以下の条件で採用オファーをさせていただきます」と恭しい文面だった。年俸は1年前に決まっていた額よりも高かった。

 一部の内定者の年俸に入社前のインターンシップなどの成果を反映し数十万円から数百万円を上乗せする制度が適用された。毛利は米子会社で新機能を開発した実績が評価された。「メルカリで本気で世界を目指したくなった」。毛利は言う。

 日本企業の人事担当の間で昨夏から「ファーウェイ・ショック」がささやかれる。中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の日本法人が理工系専攻者を対象に、いくつかの職種で大卒予定者40万1千円、修士修了で43万円を提示していた。

 「欧米企業にやっと肩を並べたレベルで、珍しくはない」というのが華為技術日本法人の公式回答。だが、業界ごとの横並びが多かった日本企業に、初任給から能力にみあった待遇を用意しなければ優秀な人材を獲得できなくなるとの危機感が急速に高まった。

 「入社後は給料が上がるけど初任給が低いのは不満だった」。サイバーエージェント社長の藤田晋(44)は17年11月、社内の食事会で若手のエンジニアの声を耳にした。すぐに制度変更を指示し、今春入社の約50人のエンジニア職を対象に一律の初任給制度を廃止した。専門技術を持つ人材に年720万円以上を支払う取り組みも始めた。

 技術のディスラプション(創造的破壊)が人材獲得競争に拍車をかける。あらゆるモノがネットにつながる「IoT」や人工知能(AI)は企業の盛衰を直接左右する基幹技術となった。大和総研主任研究員の溝端幹雄(45)は「日本企業は潜在能力を重視して新卒を採用してきたが技術革新のスピードが増し即戦力が重視されている。実力主義の給与体系が広がる可能性がある」と話す。

 初任給だけではない。ファーウェイは時に年収3千万円ともいわれる条件で日本の電機大手から社員を引き抜いている。待遇を上げなければ、人材を採ることも流出を防ぐこともできなくなる。

 「今、引き上げないと競争力が確保できない」

 「ベース給まで上げる必要があるのか」

 今春、ベース給で15年ぶりの引き上げを決めたソニー。一時金を含めた年収ベースで5%増となる。議論を始めた17年末から意見が二分した。

 ベース給引き上げは長期間にわたり業績への影響が大きいが、ソニーというブランドで採用を有利に進めた過去と今とは異なる。人事企画部統括部長の宇野木志郎(45)は「電機業界全体が埋没するという危機感があった」と振り返る。年功序列や業界横並びの賃金制度はもはや通用しない。

 (敬称略)

 大手製造業の主導で賃金相場が決まるモデルは崩れた。生産性や国際競争力を高めるには賃金をどうすればよいのか。

2018-05-17 現金の終焉。

[]デジタルマネーの破壊力。 デジタルマネーの破壊力。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク デジタルマネーの破壊力。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

金融関係のアプリを先取りしたfintechが、特に新興国では圧倒的に浸透している。
中国の沿岸都市は変貌著しいらしく、また小国ほどシステムの乗り換えが簡単で浸透しやすいらしい。

口座の開設だ、本人確認だ、振り込み手数料だ、と言っている間に「関係なくやりましょう」という勢力が出てきたということだ。

一言でいえば「既得権益が技術にすっぱ抜かれた」ような状態だと思う。

(前略)
これに対して、インド政府が最初に行った取り組みが、2009年に開始されたアドハーである。
これは指紋と網膜という、2つの生体情報に基づく認証技術(バイオメトリクスと呼ばれ、これ自体もフィンテック関連のサブテーマとして大きな注目を集めている)を使って、国民にデジタルIDを付与するプロジェクトだ。

多分「現金」があったればこそ既存の銀行は「口座」とか「送金」とかでの絶対的な優位を保っていた。

今現金でなく、電子マネーで「互いのID」があるのならば、銀行は必要なくなったのだ。

日本の銀行も、決済という機能では死滅するだろう。
融資も為替も、いつまで持ちこたえられるだろうか。

案外雌雄が決するのはここ数年のことではないだろうか。
デジタルマネーは銀行を瞬く間に蒸発させるかもしれない。

アジアの生活を激変させた、最新フィンテックの「破壊力」
 「リープフロッグ」という言葉をご存知だろうか。直訳すれば「蛙飛び」という意味になるのだが、ビジネスやテクノロジーの世界では、「ある分野で遅れていた国や地域が、その分野の最新手法を取り入れることで、一気に最前線へと躍り出ること」を意味する。  「フィンテック」の解説をした前編の冒頭で、Go-Payというサービスにより、インドネシアに最先端モバイル決済社会が到来しようとしていることを紹介したが、これもリープフロッグの一例である。  アジアのフィンテックが各国で実現しようとしているのが、まさにこのリープフロッグだ。

銀行口座のない生活

 4月といえば、日本では新学期・新年度のシーズンだ。日本人の場合、大学生にもなれば、銀行口座を持っていてもおかしくない。ましてや新社会人にもなれば、銀行口座がないので給与振り込みができない、などというケースは例外的だろう。

しかしアジア地域では、銀行口座を持っていない人々の方が主流派、という国も珍しくないのだ。

たとえば世界銀行が2014年に行った調査によれば、アセアン諸国(カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)全体で、銀行口座を持つ成人は全体の50パーセントに過ぎないことがわかっている。

またアジア地域は、国によって経済状況が大きく異なるのが1つの特徴となっているが、この点についても同様であり、特にカンボジア、ラオス、ミャンマー、フィリピン、ベトナムといった国々では、銀行口座を持つ成人の割合はおよそ30パーセントかそれに満たない数字となっている。

前述のように、私たちにとって銀行口座は「あって当たり前」の存在だ。そのため銀行口座のない、銀行を利用しない生活がどのようなものか、ちょっと想像してみてほしい。

給料はどうやって受け取るのか? 引き落としで支払っている料金や代金はどうしよう? そして何より、将来のための貯蓄をどうすればいいのか――金融機関が提供するさまざまなサービスがなければ、現代的な経済活動は困難になってしまうのだ。

こうした先進国の人々にとっては当たり前の金融サービスを、いままでそれにアクセスできなかった人々にも提供すること。これは「ファイナンシャル・インクルージョン(金融包摂)」と呼ばれる概念で、アジア地域のフィンテック企業が活発に活動している領域のひとつだ。

象徴的な企業のひとつが、Wave Moneyという企業だ。彼らが活動しているのは、2015年に民主化された東南アジアの国・ミャンマー。

ノルウェーのテレコム会社であるTelenorと、ミャンマーのYoma Bankが立ち上げた企業で、携帯電話を通じて貯金や送金ができるというサービスを展開している。

Wave Moneyによれば、ミャンマーで1つでも金融サービスを利用したことのある人々は、人口全体のたった6パーセントでしかない。

一方で携帯電話は広く普及しており、人口全体の90パーセントが、インターネットに接続可能な携帯電話へのアクセスを有しているそうである。

そこで携帯電話をベースに金融サービスを提供することで、いわば「手つかず」の状態にあった一般向け金融サービス市場を開拓したのが、このWave Moneyである。

利用は簡単で、Telenorがミャンマーで展開している携帯電話サービスの番号を持っているだけでよい(この番号がWave Moneyのアカウントとなる)。

そして「Wave Shop」と呼ばれる近くの代理店(雑貨屋のような小さな店舗も多い)に行き、そこで現金を支払う。

するとアカウントに電子マネーがチャージされたような状態になるため、あとはこれを他の携帯電話に送金してやればOK。現金を引き出したければ、再び近所のWave Shopに行き、手続きをすれば良い。

Wave Moneyは2016年10月に、同国初のモバイル金融サービス提供者として認可されたばかりだが、Wave Moneyの代理店は、既にミャンマー全土に約2万ヵ所存在している。これは同国内に設置されているATMの数(約3,000台)のおよそ6倍、同じく銀行支店数(約2,000か所)のおよそ10倍に相当する。

その結果、同サービスは早くも約130万人のユーザーを獲得している。人口約5300万人の同国で、立ち上げから2年もたたない間に達成した成果としては、悪くない数字だろう。

プレゼンを行った、同社のブラッド・ジョーンズCEOは、この成果を文字通り「リープフロッグ」と形容した。ミャンマーはWave Moneyの力で、モバイル金融サービスにおけるリープフロッグを達成する可能性があると言えるだろう。

ページ: 2
格安航空会社も電子マネーに参入

 前編の冒頭で紹介したように、インドネシアのバイクタクシー配車アプリ「Go-Jek」は、独自の決済システムを提供することでサービスの拡大を図っている。

これと同じような展開が、マレーシアでも見られる。同国で人気を博しているタクシー配車アプリ「Grab」が、独自の決済サービス「GrabPay」を開始したのだ。

Grabは2012年に立ち上げられたサービスで、当初はタクシー配車を行っていたが、その後Go-Jekのようなバイクタクシーの配車サービス、Uberのような一般の人々が運転するクルマの配車サービスなどに拡大してきた。

そして参入したのが決済の分野で、はじめは同社による配車サービス時の支払いに限定されていたが、既に小売店での支払い等にも使用できるようになっている。

実は非金融機関による決済サービスへの参入は、アジア地域におけるトレンドのひとつとなっている。

今回のMoney20/20に合わせ、世界的な会計事務所のアーンスト・アンド・ヤングが「ASEAN FinTech Census 2018」というレポートを発表しているのだが、それによればアセアン諸国のフィンテック企業のうち、決済サービスを提供しているのは全体の33パーセント。

実に3社に1社が決済分野で活動しているということになる。さらに送金サービスまで加えると、この割合は54パーセントになり、半数を超えてしまうそうだ。

なぜ決済サービスがこれほど賑わっているのか。関係者からさまざまな解説がなされているが、シンガポールに拠点を置くユナイテッド・オーバーシーズ銀行(UOB)は、次のような点を指摘している。

・インターネットへのアクセスの普及、特にスマートフォンの普及により、若くてテクノロジーに強い消費者が急激に増加している。
・ASEAN諸国は経済が好調で、小売業、特にeコマース分野が急速に拡大しつつあり、それに対する便利で安全な決済サービスが求められている。

また前述のように、これらの国々では伝統的な金融サービスがそれほど普及していないことを思い出そう。デジタル機器を通じて、リアルタイムにアクセスすることが可能になった数多くの消費者たち。しかも彼らは、既存の金融サービスを利用していない。彼らを狙い、新たな決済サービスを立ち上げる企業が相次いでいるのである。

さらに前述の「ASEAN FinTech Census 2018」では、非金融機関による決済サービス参入によく見られるパターンのひとつとして、「既に多くの顧客を獲得している消費者向けサービス企業が、顧客基盤の活用とサービスの差別化を目指して決済サービス提供に踏み切る」という形を紹介している。

まさしくGo-PayやGrabPayのパターンだが、Money20/20 Asiaではもうひとつ、ユニークなサービスが登場している。それが「Big Pay」だ。

Big PayはMoney 20/20 Asiaで公式発表がなされるという、まさに真新しい決済サービスなのだが、展開している企業は格安航空会社(LCC)のエアアジアである。

同社はアジアのLCCとして最大手で、年間乗客数は約5700万人に達する。この顧客基盤を活かし、金融分野にまでサービスを拡大し、顧客の囲い込みを図ろうというわけだ。

エアアジアのトニー・フェルナンデス創業者兼CEOは、Big Payで国際送金サービスにまで参入するつもりであると語っている。彼が武器として指摘したのが、同社が持つ顧客データだ。

航空会社なのだから当然だが、エアアジアは多くの人々の移動記録を有している。それを利用することで、国際送金サービスの潜在的な顧客にアプローチすることや、彼らに合わせたサービスを展開することが可能になるというわけである。

生活に根差したバイクタクシーを支援するベンチャー企業や、アセアン地域の人々に空の旅を身近なものにした航空会社。それぞれが独自の視点から、決済サービスを提供している。

一見すると、雨後の竹の子のように見えるアジア諸国の決済サービスも、近づいて見ればそれぞれの特色を活かした活動を行っていることがわかるだろう。

ページ: 3

4/27(金) 11:00配信

デジタル社会のインフラをつくる

 だがこうした取り組みを着実に進めていくためには、企業の力だけでなく、国や社会の力も必要になる。

たとえば便利な金融サービスを生み出せたとして、それを開設するために必要なID(身元証明)を、人々が持っていないとしたらどうだろうか。

日本では考えづらいことだが、アジア諸国の住民の中には、医療機関や公的サービスの不備によって出生時の証明が得られなかった人々もいる。いくら金融サービスが高度化しても、それに参加できないのであれば意味がない。

これを大規模な国家プロジェクトで解決しようとしている国がある。2024年までに人口数で中国を抜くと予想されている、インドである。

インドでは「アドハー(Aadhaar)」と「インディア・スタック(India Stack)」という画期的な取り組みが進められており、これによってフィンテック系のサービスは大きな後押しを受けている。

Money20/20 Asiaにおいても、これらのプロジェクトをテーマとした関連セッションが、2日目だけで3つも開催されたほどである。

インドではこれまでの経済状況と、その国土の広さもあり、IDを持たずに生活している国民が多数存在していた。

彼らは銀行口座など、金融サービスのアカウントを開設することができず、各種の公共サービスを受けることも、事業を興すために必要な融資を受けることもできない。結果として、インドの経済成長を阻害する要因となってしまっていた。

これに対して、インド政府が最初に行った取り組みが、2009年に開始されたアドハーである。これは指紋と網膜という、2つの生体情報に基づく認証技術(バイオメトリクスと呼ばれ、これ自体もフィンテック関連のサブテーマとして大きな注目を集めている)を使って、国民にデジタルIDを付与するプロジェクトだ。

広大なインドで、全国民に生体情報に基づくIDなど付与できるわけがない――そうした下馬評をものともせず、インド政府は農村地域にまでデータ収集スタッフを派遣。その結果、総人口13億人のインドで、既に約11億人にIDを発行することに成功している。

この成功を受けて、インド政府がさらに立ち上げたのが、2016年のインディア・スタックだ。これは複数のシステムを統合させた情報インフラで、アドハーのIDを使ってログインすることができる。

そこに保管されているのは、ありとあらゆる種類の個人情報だ。住所や職歴など基本的なものから始まり、納税情報や公共料金の支払いといった公的なもの、さらには医療情報や銀行の取引明細に至るまで、多種多様なデータが集まっている。

インド国民はこの中から、特定の相手に対して情報を開示することができる。融資を受けたければ、納税情報や各種の支払い情報を共有することで、自分の信用力を証明することができるというわけだ。

インド政府はそれと並行して、決済のみの機能を有し、口座維持手数料のいらない決済銀行を設立。これに国民の参加を呼びかけ、3年間で約2億7000万件の新規口座が設立されるという成果を残している。

インド政府は着実に、前述の「ファイナンシャル・インクルージョン」と、国民全体のデジタル経済への移行を実現しつつあるのだ。

こうしたインドの取り組みに対し、ノーベル経済学賞を受賞した経済学者の経済学者のジョセフ・スティグリッツは、「米国もインドにならい、デジタル経済への移行を進めるべき」という趣旨の発言をしている。

先進国である米国ですら、デジタル分野の取り組みではインドに一歩遅れている――これぞ最大級の「リープフロッグ」と言えるだろう。

前・後編にわけ、「フィンテック」というトレンドと、それがアジアの国々でどのように花開いているかを見てきた。

フィンテックはお金という、生活に密接した存在を大きく変えるサービスであり、それだけに社会全体を変える力を持っている。それぞれの国で、どのようなフィンテック系サービスに注目が集まっているのかに目を向けてみるだけでも、その国の現状と未来を感じることができるだろう。

3/3ページ

最終更新:4/27(金) 11:00
現代ビジネス

2018-04-25 うすうす感じてはいましたが。(2)

[]人間に優位性はあるか? 人間に優位性はあるか? - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 人間に優位性はあるか? - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

GIGAZINEより。

ヨシュア・ベンジオ氏は「『現実世界の完璧なモデル』と学習により得られた『推測ベースのモデル』には大きな開きがある」と述べており、「不確実要素」が無数に存在する問題に対して、「自己学習」で全ての情報を得ることは難しく、まだ多くの課題が残っているとしています。

これって、現実社会の「私たちそのもの」ではないだろうか。
景気がどう、格差や新興国がどう、地球の気候がどう、民族や宗教がどう、どうどうどう…
複雑系ではあるけれど、「優秀な人たち」が個々の頭脳で分析するのではなく、統計的に処理したほうが実は早いのではないだろうか。
ほんの少しの未来を確実に予測できるのは、まだまだ先のことだろう。
自分は50年あまり生きてきて、そんな風に感じることが多い。

優れた一人の政治家に「最重要な判断を委ねる」というスタイルはそろそろ終わりにすべきではないだろうか。

さらに。
今の時点では、まだ「人間」は「人間ならではの強み」を取り沙汰する。

しかし、AIの自己学習から得られる思考パターンは人間のものとは明らかに異なり、「新しいアイデア」や「今まで知られていなかった考え方」を生み出す可能性を秘めています。このため、AIの「自己学習」は今まで難問とされてきた問題を解決できると期待されており、今後の発展が望まれています。

これも「意外性を持てるのは人間だけ」ということの裏返しだろう。
「意外性」までもが「予測のパターン」にどんどんと入って来れば、人としての優位性は何か?という話がより深まるのだと思う。

完全無敵の「AlphaGo Zero」でも使われた「AIによる自己学習」の欠点とは?
Google傘下のDeepMindの囲碁AI「AlphaGo」が、2016年にトップ棋士の一人である韓国のイ・セドル(李世乭)氏、2017年には中国の柯潔氏に勝利を収めたことが知られています。さらにDeepMindの新しい囲碁AI「AlphaGo Zero」が過去の棋譜データすら与えずに、たった3日間の自己学習のみで「AlphaGo」と100局対戦して100勝無敗の圧倒的勝利を収めることになります。このため、過去のデータに頼らずとも、人工知能による「自己学習」はとても万能で、どんなことにも応用できるとされていますが、実際のところは苦手な分野もあるとのこと。最強と思われるAIの「自己学習」のどこに欠点があるのかを、科学系のニュースを扱っているQuanta Magazineが報じています。

Why Self-Taught Artificial Intelligence Has Trouble With the Real World | Quanta Magazine
https://www.quantamagazine.org/why-self-taught-artificial-intelligence-has-trouble-with-the-real-world-20180221/

「AlphaGo Zero」はルールのみを学習し、実際に人間が行っていた対局のデータは使用せず、自己対局だけで学習しました。当然、最初は意味の全くない指し方でスタートしますが、指した内容が「勝利に紐付くもの」と「紐付かないもの」を新しい知識として習得し、最終的にはイ・セドル氏、柯潔氏を破った「AlphaGo」との100番勝負で100勝するという圧倒的な強さを手に入れました。

さらに、DeepMindは2017年12月に囲碁以外のボードゲームを学ぶことができる「AlphaZero」を発表し、AIがチェスや将棋でもトップレベルの力を「自己学習」のみで得ています。DeepMindによると、ボードゲームで世界を制することを目的に「AlphaZero」などのAIソフトウェアをリリースしているわけではなく、実際は「室温超伝導の実現」や「タンパク質の折りたたみ問題」にこれらのAIを適用するために、ステップアップの一環として行っているとのことです。

AIの「自己学習」はどんなものにでも応用できると思われがちですが、弱点も存在します。囲碁や将棋などのボードゲームでは相手の駒が常に見えており、相手が次に指す内容は限定されるため、どの駒が動くかを予測することは簡単です。しかし、対局開始直前のルール変更で「〇手ごとにくじを引き、内容に応じて何かが起こる」ような「不確実性の高い問題」が発生すると、AIは対処できず、まだまだ課題があるとされています。

By dotLinda

例えば、自動車自動運転を考えてみると、「突然の大雨や落雷、暴風などの悪天候」や「走行車線上で自転車に乗っている人の突然の方向転換」、「突然道路上に人や物が飛び出してくる」など、無数に存在する緊急事態をAIが対応することになると、判断に困ることが予測されます。これらの対処は、実際にAIが自ら経験して学習できれば問題ありませんが、走行試験のレベルで無数に存在する全ての不確定要素を経験できるかと言われると疑問が残ります。

By peasap

また、外科手術に至っては患者が手術中に突然症状が悪化することが予想され、突発的な事態が発生しても、何の症状か見極め適切に対処する必要があります。これらはAIが実際に外科手術を行って、さまざまな事態を学習する必要がありますが、未来の技術革新のためとはいえ、学習不十分でまともな対応ができるか怪しい状態のAIに手術してもらいデータを提供したいという人はいないはずです。

モントリオール大学のディープラーニングのパイオニアであるヨシュア・ベンジオ氏は「『現実世界の完璧なモデル』と学習により得られた『推測ベースのモデル』には大きな開きがある」と述べており、「不確実要素」が無数に存在する問題に対して、「自己学習」で全ての情報を得ることは難しく、まだ多くの課題が残っているとしています。

By fdecomite

しかし、AIの自己学習から得られる思考パターンは人間のものとは明らかに異なり、「新しいアイデア」や「今まで知られていなかった考え方」を生み出す可能性を秘めています。このため、AIの「自己学習」は今まで難問とされてきた問題を解決できると期待されており、今後の発展が望まれています。

codercoder 2018/04/24 23:39 よく意外性とか創造性と既存の人たちは言いますが、それが織り込まれたらその後はどうなるんでしょうね?
自分ならある程度はロジックに組めると思います。

2018-04-24 うすうす感じてはいましたが。(1)

[]AIに欠点はあるか? AIに欠点はあるか? - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク AIに欠点はあるか? - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

GIGAZINEより。
皮肉にも。
AIの台頭で、初めて自分との比較とか、そもそも知能ってなんや?ということになってきた。
記事では「AIは学べないこと(例外)に弱い」と指摘されている。
逆に言えば「学べること」では無敵らしい。

では自分はどうか。
「今までしてきた仕事」以外にできることってほとんどない。
病気の診断も手術ももちろんできないし、
航空機の操縦もできない。
鉄も作れないし、お米だって無理だ。
この世の中で、できることの方が圧倒的に少ない。

AIに奪われない仕事は? なんて言っているが実はほとんどの仕事は代替されるのではないだろうか。
"情熱とか恨み"とか、ちょっと説明しにくい存在(つまり人らしいっていうのはこういうことかな)以外は
どんどん肩代わりされていくと自分は思う。

人が本来持つ「感情」とか「価値観・文化」とか「情熱」とか。
そういう部分にだけ「人間らしさ」が残ってゆくことになるのではないだろうか。
そしてそれだって、緻密に調べてみれば、ロジックで把握できるようにもなるかもしれない。
人はコンピューターの言うことを頼りに、自分たちの生き方を決める時代がくるような気がする。

完全無敵の「AlphaGo Zero」でも使われた「AIによる自己学習」の欠点とは?
Google傘下のDeepMindの囲碁AI「AlphaGo」が、2016年にトップ棋士の一人である韓国のイ・セドル(李世乭)氏、2017年には中国の柯潔氏に勝利を収めたことが知られています。さらにDeepMindの新しい囲碁AI「AlphaGo Zero」が過去の棋譜データすら与えずに、たった3日間の自己学習のみで「AlphaGo」と100局対戦して100勝無敗の圧倒的勝利を収めることになります。このため、過去のデータに頼らずとも、人工知能による「自己学習」はとても万能で、どんなことにも応用できるとされていますが、実際のところは苦手な分野もあるとのこと。最強と思われるAIの「自己学習」のどこに欠点があるのかを、科学系のニュースを扱っているQuanta Magazineが報じています。

Why Self-Taught Artificial Intelligence Has Trouble With the Real World | Quanta Magazine
https://www.quantamagazine.org/why-self-taught-artificial-intelligence-has-trouble-with-the-real-world-20180221/

「AlphaGo Zero」はルールのみを学習し、実際に人間が行っていた対局のデータは使用せず、自己対局だけで学習しました。当然、最初は意味の全くない指し方でスタートしますが、指した内容が「勝利に紐付くもの」と「紐付かないもの」を新しい知識として習得し、最終的にはイ・セドル氏、柯潔氏を破った「AlphaGo」との100番勝負で100勝するという圧倒的な強さを手に入れました。

さらに、DeepMindは2017年12月に囲碁以外のボードゲームを学ぶことができる「AlphaZero」を発表し、AIがチェスや将棋でもトップレベルの力を「自己学習」のみで得ています。DeepMindによると、ボードゲームで世界を制することを目的に「AlphaZero」などのAIソフトウェアをリリースしているわけではなく、実際は「室温超伝導の実現」や「タンパク質の折りたたみ問題」にこれらのAIを適用するために、ステップアップの一環として行っているとのことです。

AIの「自己学習」はどんなものにでも応用できると思われがちですが、弱点も存在します。囲碁や将棋などのボードゲームでは相手の駒が常に見えており、相手が次に指す内容は限定されるため、どの駒が動くかを予測することは簡単です。しかし、対局開始直前のルール変更で「〇手ごとにくじを引き、内容に応じて何かが起こる」ような「不確実性の高い問題」が発生すると、AIは対処できず、まだまだ課題があるとされています。

By dotLinda

例えば、自動車自動運転を考えてみると、「突然の大雨や落雷、暴風などの悪天候」や「走行車線上で自転車に乗っている人の突然の方向転換」、「突然道路上に人や物が飛び出してくる」など、無数に存在する緊急事態をAIが対応することになると、判断に困ることが予測されます。これらの対処は、実際にAIが自ら経験して学習できれば問題ありませんが、走行試験のレベルで無数に存在する全ての不確定要素を経験できるかと言われると疑問が残ります。

By peasap

また、外科手術に至っては患者が手術中に突然症状が悪化することが予想され、突発的な事態が発生しても、何の症状か見極め適切に対処する必要があります。これらはAIが実際に外科手術を行って、さまざまな事態を学習する必要がありますが、未来の技術革新のためとはいえ、学習不十分でまともな対応ができるか怪しい状態のAIに手術してもらいデータを提供したいという人はいないはずです。

モントリオール大学のディープラーニングのパイオニアであるヨシュア・ベンジオ氏は「『現実世界の完璧なモデル』と学習により得られた『推測ベースのモデル』には大きな開きがある」と述べており、「不確実要素」が無数に存在する問題に対して、「自己学習」で全ての情報を得ることは難しく、まだ多くの課題が残っているとしています。

By fdecomite

しかし、AIの自己学習から得られる思考パターンは人間のものとは明らかに異なり、「新しいアイデア」や「今まで知られていなかった考え方」を生み出す可能性を秘めています。このため、AIの「自己学習」は今まで難問とされてきた問題を解決できると期待されており、今後の発展が望まれています。

2018-04-19 AIの先に

[]最後はエゴかも。 最後はエゴかも。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 最後はエゴかも。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

コンピューターの処理能力がいよいよ向上し、いよいよ「知性との競争」が話題になっている。
それにしても「知識と知性の差」とは一体なんだろうか。

「知識と知識をつなぎ合わせて、論理的に新しいもの」を作ればそれは「知性」のような気もする。

だってだって、自分の頭の中にある思考の中で「自分だけで考えたもの」はどれほどあるだろうか。

もうほとんどのことは「外部から与えられた知識の修正」程度ではないかとも思う。
そして、それをコンピューターが真似できない理由があるだろうか。

「コンピューターに何ができるのか?」という問いはそのまま「人間は何をしてきたのか?」という問いに導かれる。

意外な行動とか、組み合わせとか、執念とか、そうしたものも「規定値としてプログラム」されてしまえば、すぐに「珍しい突然変異」ではなくなってしまう。

流行りのイノベーションだって、どんどんコンピューター優位になる可能性はとても高いと自分は思う。
「データの量と、計算処理の負荷」が目下最大の課題だというのだから、早晩そうした問題は解決されるだろう。

結局人にしかなく、コンピューターにできない判断というのは、「ある種の狂気」にも似た強烈なポリシーとか、経営方針とか価値観、なのではないだろうか。
理屈では(特に経済的には)取り得ない選択をするために。

そしてそして。
「そんなこと」すらプログラムされてしまえば、もうそれは生身の人間の判断といささかも違わないのではないだろうか。

いまさら聞けないディープラーニング
自分でルールを見つけて賢くなっていく人工知能
現在もっともホットなITのキーワードといえば、AIやIoT、ロボティクスといった単語が挙げられるだろう。そうした一連の先端テクノロジーの背後にある重要な技術が「ディープラーニング」だ。日本語では「深層学習」と呼ばれ、今日もまたさまざまなメディアを賑わせている。だが、それがどういったものかを詳しく説明できる人は多くないだろう。今回は初心に立ち返って、ディープラーニングの基本をもう一度おさらいしたい。

データ解析の結果をAIが学習しながら判断の精度を上げていく

 現在多くの企業が合言葉のように口にするのが、「DX=デジタルトランスフォーメーション」だ。激しく移り変わる市場のはざまで自社の活路を切り開いていくのに、デジタル技術は必要不可欠な存在となっている。そのキーテクノロジーの一つがAI(人工知能)なのは、ご承知の通りである。

 だがAI自体は包括的な概念であり、テクノロジーとしても範囲が非常に広範囲にわたる。また高度な専門知識が要求されるため、一握りの専門家以外の人々にとっては、何やら難しくとらえどころがないとの認識を持たれてきた。それがにわかに脚光を浴びたのは、ごく最近のことだ。第3次AIブームとも呼ばれる現在の盛り上がりのきっかけとなったのが、今回のテーマである「ディープラーニング」である。

 ディープラーニングとは、AIが学習対象のデータから特徴を抽出・解析して、それらをもとに判断を下し、その結果の正否をAIに戻して判断の誤りを修正。再び判断を実行するといった一連の作業を高速で繰り返しながら、より精度の高い認識や判断を行えるように学習していくという一連のプロセスを指している。

 このためディープラーニングは、画像認識の分野などで大きな力を発揮する。たとえば赤いマグカップと青いマグカップを、色や形などの特徴を画像から抽出し、上に挙げた「判断→評価→修正→判断」の繰り返しを通じて、この二つのアイテムをより正確に認識・判別できるようになってゆくのだ。

GPUがディープラーニングの実用化を一気に加速

 ここまで読んできて、カンの良い方は「あ、じゃあディープラーニングは、いわゆるマシンラーニング(機械学習)なんじゃないか」と気づいただろう。たしかにディープラーニングは、マシンラーニングの一分野に含まれる。だがマシンラーニングとは大きく異なる点があって、それがディープラーニングを大きく特徴づけているのを知っておこう。

 再びマグカップを例に採ると、マシンラーニングでは何を識別の条件とするかを人が定義しなくてはならない。たとえば「色と形の2つの特徴をもとに違いを判別せよ」といった指示を、あらかじめシステムに与えてやることが必要なのだ。

 一方ディープラーニングでは、この条件付けをAIが自動的に行うことができる。このため人間では不可能な、高速で正確な学習プロセスの繰り返しが可能になる。その結果、同じ学習を行うのにも従来は数カ月を要したものが数日レベルにまでに短縮され、認識の精度も飛躍的に向上した。このことが、今日のディープラーニングの実用化に大きな拍車をかけているのだ。

 さらにもう1つ、ディープラーニングの実用化の推進力となったのが、「汎用GPUコンピューティング」の急速な進化だ。GPUとは「Graphics Processing Unit」の名前が示すように、もともと3D画像処理(3Dゲームや3D CADなど)のために専用に設計されたプロセサである。一般のCPUが1つの処理を連続的に行うのを得意とするのに対して、GPUは並列演算すなわち同じ処理を同時に高速で行える点が特徴となっている。

 3D画像処理では、空間内の頂点計算や陰影処理のために、膨大なパワーを必要とする。そのパワーを、画像処理以外にも活用しない手はない。そこで登場したのが汎用GPUコンピューティングだ。当初、科学技術計算分野(スーパーコンピュータなど)で使われ始めた汎用GPUコンピューティングだが、2012年にディープラーニングにも有効であることが実証され、現在のAIブームを生み出す原動力となった。実際のところ、汎用GPUコンピューティングと出会う前のディープラーニングは、理論上は確立されていたものの、必要な計算量が膨大すぎてとても実用にはならないとみなされていたのである。

画像認識から医療、株価予測まで無限に広がる応用の可能性

 では、実際にディープラーニングは、現在どのような分野で利用されているのだろうか。たとえば画像認識の分野では、Facebookが登録ユーザーの顔写真をAIによる顔認識システムで分析し、他の人が新しく投稿した写真にそのユーザーが写っていると、自動的に氏名をタグづけする機能を提供している。

 顔認識以外には、工場の生産ライン上を流れる製品や部品の不良品チェックを行うといった利用も進んでいる。また判別の精度そのものをアップするだけでなく、従来は熟練者が目視で行っていた判別のナレッジをAIで取り込んでシステム化し、若手労働人口の減少に向けた熟練工の技術継承に応用する試みも行われている。

 この他にも、レントゲン写真や内視鏡検査の映像を分析する診断アシスタントなど、医療分野でのディープラーニングの応用も進んでいる。米国のスタートアップであるEnlitic社が開発した悪性腫瘍の検出システムは、人間の専門医を上回る成績を挙げたという報告もある。

 金融業界におけるフィンテックでも、ディープラーニングの活用が積極的に取り組まれている。すでにみずほフィナンシャルグループは、2017年9月から国内外の一部の機関投資家を対象に、株価の動きを予測するAI能を組み込んだ取引システムを提供している。このシステムには各銘柄ごとに数千種類の情報が収められており、人間のトレーダーでは見つけられない特徴的な動向までを発見して株価予想に利用している。

 この他にも、顧客問い合わせに対するチャットボットを使った自動応答システムや、スマホやタブレットに内蔵されたパーソナルアシスタント、Amazon EchoやGoogle Homeといったスマートスピーカー、そして自動運転システムなど、ディープラーニングの応用範囲はほぼ無限大だといえよう。

力技で実現してきたディープラーニング、その今後と課題は

 日進月歩のディープラーニングの今後だが、代表的なGPUメーカーであるNVIDIA社とAMD社では、ディープラーニングを明確にターゲットにしたGPUの開発が進められている。もともと3Dゲームは精度よりも速度が重視されるため、単精度(32ビット)による演算が主であった。一方、科学技術計算ではより正確な計算が求められるため、倍精度(64ビット)で行われるのが常である。ところが、ディープラーニングで行われるグラフ処理(点と線で表されるネットワークにおけるデータ処理)では、精度は必要とされない。半精度(16ビット)でも十分なのである。

 こうした背景に合わせるようにGPUは進化してきた。具体的には単精度だけだったものが、倍精度も扱えるようになり、最新モデルには半精度向けのアクセラレーション機能も搭載されるようになってきている。

 一方で、GPUとは別にディープラーニング専用チップの開発も進んでいる。Intel社は2016年11月に、2020年までにディープラーニング性能を現在の100倍に高める計画を発表。その実現に向けて2017年10月、ディープラーニングに特化したNervana NNP(Neural Network Processor)を発表した。また、Googleは、2017年5月に新しいTPU(Tensor processing unit)を発表し、ディープラーニング用フレームワークであるTensorFlowによるAI処理を、効率的に実行する環境を整えつつある。

 今後ディープラーニングが克服してゆくべき課題としては、まず、学習用に膨大なデータが必要な点がある。ディープラーニングは、元データが少ないと認識や判断の精度が上げにくい。少ない元データに最適化されすぎて、未知のデータに対応できない“過学習”という現象も発生する。そこで、元データが少ないときは、元データを少し加工したダミーデータを作ってデータを水増しするといったことが行われているのだが、これにより、データ加工の手間が増え、学習に必要な演算能力も増えるという事態に陥っている。

 もう1つの問題は、処理の負荷が高い点だ。これまでのディープラーニングは、GPUや専用チップを使って“力技”でAIを実現してきた。手元のスマホが搭載するパーソナルアシスタントも、スマホは単に入出力デバイスに過ぎず、実体はクラウド上で処理されている。SiriやCortanaがオフラインで使えないのはそういう理由だ。

 だが、自動運転車に搭載されるAIが「オフラインでは使えません」というのは非常に困る。もちろん、自動運転車向けのAIユニットはその点も考慮されているのだが、より省電力でよりコンパクトなものが実現できないと、オフラインでも使えるAI搭載のウェアラブルデバイスは実現できない。

 より少ないデータとより少ない処理能力で、効率的かつ精度の高い学習を可能にするためには、新たなアルゴリズムの開発が求められる。それがディープラーニングの改良版になるのか、あるいはディープラーニングに取って代わる新たなアルゴリズムになるのかは分からない。いずれにしてもAIを取り巻く技術は激しく進化と変遷を繰り返しており、今後もますます目が離せない。

2018-03-26 政治家というリーダーシップ。

[]真面目に選ぶ時代に。 真面目に選ぶ時代に。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 真面目に選ぶ時代に。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

よく会社の経営はトップの資質次第だと言われる。
それはわかる。

株主の信任を受けて経営を任された経営陣は、責任を負い結果で評価される。
政治家も同じことだろうか。

選挙で「株主ならぬ国民」から選出され、政治を任され、結果に責任を負う。
でも。
それにしては株主である国民は、ずい分と不満ばかりをあげつらう。
なんでだろうか。

それは経営と政治の質の違いだ。
経営では、株主は「より利益をだしてくださいよ」という方向で一致している。

一方政治では。
国民全員が株主、だから「ありとあらゆる意見が混ざり合って」いる。
利益(経済成長)だけを出しても、
弱者や高齢者だけを手厚く保護(福祉)しても、
外交や国防だけに頑張っても、
決して全面的な賛同は得られないのが政治家なのだ。

だから、逆に「個別のリーダーたち」の動きは民間企業よりも、実は重要なのかもしれない。
長らく自分は「首相とか外務大臣」が外交して築く信頼関係など、全く意味がないと思っていた。

国同士の外交に、"一個人である政治家が関係する"ということに納得がいかなかったのだ。

しかしどうも現実の「国同士のお付き合い」はやはり最終的に「人対人」で培われる部分も大きいらしい。
過去幾多の歴史の転換の舞台は、必ずキーになる人がいた、と描写される。

自分たちは、これからのために「最も重要な進路」を信託できる人物を真剣に選ばねばならない時期にいると思う。
自民党にだけ阿(おもね)っていた時代は、いよいよ終わりを迎える。

麻生氏不在の存在感
 首相まで務めた先輩議員でありながら、14歳下の安倍晋三首相を「総理」と呼び、敬礼を怠らない。政権ナンバー2としての麻生太郎副総理・財務相の所作は徹底している。その麻生氏が2017年の国会で、安倍首相の答弁に珍しく嫌な顔をしていた場面が印象に残っている。

 安倍首相がアベノミクスの成功を訴える中で、08年のリーマン・ショック後の経済運営を当てこすったときのこと。09年からの旧民主党政権への皮肉だとしても、危機時に首相として奔走した麻生氏には聞き捨てならなかったようだ。

 麻生氏ら当時の首脳の真剣ぶりを示したのが、日米欧に新興国を加えた20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)の創設。リーマン・ショックから2カ月の早さで会議の開催までこぎ着け、結束を新たにした。国際金融の安定を守る国際通貨基金(IMF)の拡充は、日本の音頭でG20会議を舞台に進んだ。

 石油危機後の経済を論じるため1975年に日米欧の首脳が集まったことに始まるのがG7の枠組み。G7は共通の価値観をもつ少数のメンバーが集まるのに対し、G20は成長著しい中国やインドも顔をそろえる。「G20会議は出席者が多すぎて言いっ放しになりがち。なかなか議論が深まらない」(国際金融筋)との不満はある。それでも、過去10年でG20はすっかり国際社会に定着した。

 近年際立つ特徴は、G7とG20を通じて最も早い年初のG20財務相・中央銀行総裁会議がその1年の国際社会のテーマを方向付ける役割だ。市場の動揺を受けた2016年2月の上海での会合は「政策総動員」を打ち出し、金融政策だけでなく財政や経済構造の改革に取り組むと強調。「政策総動員」が16年を通じたキーワードになった。

 ドイツ南西部のバーデンバーデンで開いた17年3月の会合は、米国第一を掲げる米トランプ政権を国際社会が迎える場でもあった。「保護主義に対抗」という定例表現を米国の主張で削除せざるを得なかった共同声明が衝撃的だった。議長国のドイツをはじめとする参加者に米国へのいら立ちが充満していた。

 異様なムードの会議で米国に寄り添う姿勢が目立ったのが麻生氏。「『毎回同じこと言うな』って言って、次のとき言わなかったら『なんで言わないんだ』という程度のもの」。独特の言い回しで反保護主義の文言削除をめぐる騒ぎを一蹴した。G20会議に併せてムニューシン米財務長官と個別に会い、米国を迎え入れる窓口役を買って出ているようにも映った。

 米国の鉄鋼輸入制限の発動が迫るタイミングに重なった18年最初のG20財務相会議は20日(日本時間21日)、アルゼンチンのブエノスアイレスで幕を閉じた。通商政策の担当ではない財務相が集まっても通商が最大のテーマになるよじれ。米国は自国中心の強気を崩さず、トランプ時代の国際協調は18年も山あり谷ありだと予感させた。

 今回、欧州や新興国が米国との窓口役を期待したであろう麻生氏の姿はブエノスアイレスになかった。G20会議がヤマ場を迎えた頃に麻生氏がいたのは日本の国会だ。学校法人「森友学園」に関する決裁文書を財務省が書き換えた問題にまつわる疑問は尽きず、麻生氏の責任と進退を問う声が次々と上がっている。

 不在がむしろ存在感を示すことがある。ブエノスアイレスでそう感じたG20会議の出席者もいただろう。森友問題の収拾のため、麻生氏辞任の可能性を想像するときに政権関係者が感じるのと同じように。

(編集委員 上杉素直)

2018-03-23 真横で見た狂気。(2)

[]捨て身の原理。 捨て身の原理。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 捨て身の原理。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

皆が「狂気でしかない」と引いていた企業が、その狂気を貫いた結果市場を制覇する、という図式は昔からあった。
その度にその経営者は賞賛されたり、疑問視されたりしてきたと思う。
それはともかく。

つくづく「再び一文無しになるかもしれない」と思いながらのチャレンジは必要だ。
せっかく手にした今のポジションは居心地がいいけれど。
もう一度「雑巾掛け」からやったるで、という覚悟があればいい。
多分、次も成功するだろうと思う。

つまり

成功するかしないのか、というのはそういう、いわば「捨て身の原理」のようなものなのではないだろうか。

この"捨て身の気持ち"は実に簡単だ。
今お金や人脈がなくてもいい。
必要なのは「自分の気持ち」だけである。

ひょっとしてamazonが躍進しているのも「そんなマインドセット」ではないだろうか。
一度ジェフ・ベゾスに聞いてみたいものだ。
「あなたは捨て身で経営しているのではないですか?」と。

「Amazonされる」など造語が誕生するほど恐れられるAmazonの悪夢のような底なしの欲望
by Canonicalized
Amazon倉庫の過酷な労働環境が明らかになったり、Amazon本社で飛び降り自殺が起きたりと、Amazonの職場環境についてはこれまで何度も批判と称賛が飛び交ってきました。そんなAmazonについて、ジェフ・ベゾスCEOは「『Amazonのやり方が正しい』とは言わない、しかし20年で根付いた文化だ」とコメントしているのですが、新たにBloombergが「どうやってAmazonはアメリカ企業にとっての悪夢となったか」というコラムを投稿しています。

How Amazon Became Corporate America’s Nightmare
https://www.bloomberg.com/graphics/2018-amazon-industry-displacement/

Amazonは世界で最も驚異的で、不合理に拡大を続ける恐るべき企業です。今では石けんを販売しながらテレビ番組などの制作を行い、政府にはコンピューティングパワーを売りつけ、クリスマスイブでもユーザーの求めるものを戸口まで配達してくれます。

2018年には地球上で最も価値のある企業とランク付けされたAmazonですが、年間利益はサウスウエスト航空よりも少なく、世界で426番目に多いという程度。ただし、Amazonのジェフ・ベゾスCEOは世界で最も裕福な人です。Amazonはインターネット上で誕生したECサイトですが、今では自前の倉庫や食料品店を持っており、エンパイア・ステート・ビル換算で90棟分の不動産を所有しています。

Amazonはその影響力を年々増しています。ベゾスCEOはAmazonがあらゆる業界で確固たる地位を確立することを望んでいるかのようであり、総合格闘技UFCのPPVを販売したりリアル販売店舗をオープンしたりと、事業の拡大はとどまるところを知りません。また、ベゾスCEOは「Amazonで築いた富を宇宙旅行事業実現のために使う」と発言しており、宇宙旅行事業にも関心を寄せていることが明らかになっています。

急速に成長してきたAmazonですが、それがなぜ他の企業にとっての悪夢となっている状況について、Bloombergは「アメリカの大企業の幹部たちは、2017年に投資家との電話の中で何千回もAmazonについて言及しており、その回数は『トランプ大統領』や『税金』よりも多い」と、Amazonの影響力の大きさを表現しています。検索エンジンのGoogleが「検索する」という動詞として使われるようになったように、「Amazon」という単語は「他の企業に損害を与える」ことを示す動詞として使われるようになり始めているそうです。実際、一部では「be Amazoned(アマゾられる)」という用語が「あなたのビジネスは他企業の参入によりダメになるかもしれない」という意味で使われているとのこと。

以下のグラフは「be Amazoned」がいかに他の企業にとって脅威であるかを示すもの。2018年1月30日にAmazonはJPモルガンやバークシャー・ハサウェイと協力してヘルスケア市場へ参入することを発表したのですが、その前後でのヘルスケア関連銘柄の値動きを示したグラフ。1月29日の終値を100としており、100以上になっていれば「1月29日の終値よりも高い」、100以下なら「1月29日の終値よりも低い」ということになります。1月30日の発表後、ヘルスケア関連銘柄は全て100以下に落ちています。

以下のグラフは、各業界における「Amazon関連のニュースが出た日の株価の下落率」を示したもの。縦軸が下落率で、横軸は日付を表しています。丸は企業の株価を表しており、丸の色が企業の属する業界を示しています。なお、青が食品業界、赤がヘルスケア業界、黄色が小売業界、ミント色が配送業界、紫色が自動車業界、グレーがテクノロジー業界、緑が不動産業界です。

そんなAmazonでも2014年には行うあらゆることが間違いであるかのような大きな失敗を犯しました。2014年、Amazonは独自開発のスマートフォン「Fire Phone」を発売します。大きな期待を持って登場した端末で、発売当初は性能の高さを印象づけるレポートが続々登場しましたが、結局は「失敗作」の烙印を押されついには販売打ち切りとなります。Fire Phoneの販売不調によりAmazonは大赤字を計上。2014年のホリデーシーズンの収入の伸びは、2001年以降で2番目に悪いというもので、これもFire Phoneのせいにされる始末でした。

そんなFire PhoneはGIGAZINEでもレビュー済み。一体どんな端末だったのかは以下の記事でチェックできます。

本当にAmazonスマホ「Fire Phone」は失敗作なのか1週間ほど試してみて分かったこと - GIGAZINE

2014年の失態によりAmazonは株価を20%も下げますが、1年後には市場価値を5倍にまで膨れあがらせます。2015年アマゾンウェブサービス(AWS)躍進の年でもありました。2006年のAWSのサービス開始以降、Amazonはクラウドコンピューティングサービスにおいて常に市場をリードしており、AWSは誕生したばかりの若い企業やスタートアップだけでなく、Netflixなどの大企業からも利用される存在へと進化を遂げます。そんなAWSの2015年における営業利益は、Amazon全体の営業利益の3分の2を占めていたそうです。なお、AmazonがAWSに支えられる構図は記事作成時点の2018年になっても続いています。

Amazonのクラウドサービス「AWS」が絶好調で株価が急上昇 - GIGAZINE

2015年はAmazonが有料会員向けに行う大セール「プライムデー」を初めて開催した年でもあります。2017年のプライムデーにおいて、Amazonは2000億円以上の売上を記録しており、Bloombergは「Amazonはより多くのものを顧客に買わせる方法を見つけた」と記しています。

2014年12月には購入した商品が1時間で届くサービス「Prime Now」をスタート。約1年後の2015年11月には日本でもPrime Nowのサービスがスタートし、2016年に入ってからはサービスエリアが東京以外の大阪・兵庫・横浜まで拡充されています。

他にも、2015年に所持していた109の流通倉庫は2018年までに150にまで増加。さらに、音声認識AI搭載のスマートスピーカー「Amazon Echo」をリリースし、同分野においてAppleやGoogleを先行しています。また、2017年には高級スーパーマーケットのWhole Foodsを1兆5000億円で買収しています。

AmazonがWhole Foodsを買収した狙いは、以下の記事を読めばよくわかります。

Amazonの1兆円超えのWhole Foods買収に見るAmazon帝国構築に向けた取り組みとは? - GIGAZINE

多くの企業にとって恐ろしいのは、Amazonが小売事業においても成長の余地を持っているという点です。アメリカでは小売事業における売上の90%以上が物理店舗上で発生しています。オンラインショッピングの割合は増加していますが、Amazonは買収したWhole Foodsの実店舗を持っており、他にもAmazon GoやAmazon booksなどの実店舗も有しています。

AmazonがWhole Foodsを買収する動きを察知することが難しかったように、Amazonが次にどの業界に進出するのかを予測することは非常に困難です。2018年2月27日にはスマートホーム家電の「Ring」を買収したばかりですが、2018年3月12日には「小規模事業者向けクレジットカードを計画」とも報じられており、これによりAmerican Expressの株価は約1.4%下落しました。

そんなAmazonも無敵というわけではありません。北米では電子商取引における利益率はわずか2.7%で、多くの人々が想像するほど大きな利益を生み出せているわけではありません。しかし、今のところAmazonやベゾスCEOの狙いを封じ込められるような力を持つ存在は一握りであることは明らかです。

2018-03-22 真横で見た狂気。(1)

[]成功者の傍で。 成功者の傍で。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 成功者の傍で。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

amazonがまだサービス当初で。

なんだか本屋だか雑貨屋なのかよく分からない時期。
世界最大の倉庫を作る、とか
何年も大赤字である、とか
実はクラウド提供企業らしい、とか。

まったく同じ世代で、真横で同社の様子を見ていても分からなかった。
GoogleとかAppleとかとはまた違う迫力がいよいよ表出している。

amazonがアメリカで、そして数年後に日本で巨大な自動倉庫を作っていた頃。
まだ自分たちは「ネットのポータルをどう取るか」とか「ECの決済を握れば主役になれる」とか。
SNSとか、色んなコンテンツを提供するプラットフォームはどうだろう、
などと考えていた。

EC市場で顧客を獲得し、そのまま物流網を構築し。
本でも映像でも家電でも、なんでも乗っかる「webと物流」を支配ようとしていたのはamazonだった。

多分、普通のweb業界や物販業界の人とは「見ている景色」が違ったのだろう。
一時は狂気の試みと思われたamazonがトップランナーになっている。

さて、自分たちは「じゃあこれからは…」という視点で何を見るのだろうか。
今後もamazon一強が続くのか。
でなければ、ポストamazonは何なのか。

まだ今なら考えることはできる。
(つづく)

「Amazonされる」など造語が誕生するほど恐れられるAmazonの悪夢のような底なしの欲望
by Canonicalized
Amazon倉庫の過酷な労働環境が明らかになったり、Amazon本社で飛び降り自殺が起きたりと、Amazonの職場環境についてはこれまで何度も批判と称賛が飛び交ってきました。そんなAmazonについて、ジェフ・ベゾスCEOは「『Amazonのやり方が正しい』とは言わない、しかし20年で根付いた文化だ」とコメントしているのですが、新たにBloombergが「どうやってAmazonはアメリカ企業にとっての悪夢となったか」というコラムを投稿しています。

How Amazon Became Corporate America’s Nightmare
https://www.bloomberg.com/graphics/2018-amazon-industry-displacement/

Amazonは世界で最も驚異的で、不合理に拡大を続ける恐るべき企業です。今では石けんを販売しながらテレビ番組などの制作を行い、政府にはコンピューティングパワーを売りつけ、クリスマスイブでもユーザーの求めるものを戸口まで配達してくれます。

2018年には地球上で最も価値のある企業とランク付けされたAmazonですが、年間利益はサウスウエスト航空よりも少なく、世界で426番目に多いという程度。ただし、Amazonのジェフ・ベゾスCEOは世界で最も裕福な人です。Amazonはインターネット上で誕生したECサイトですが、今では自前の倉庫や食料品店を持っており、エンパイア・ステート・ビル換算で90棟分の不動産を所有しています。

Amazonはその影響力を年々増しています。ベゾスCEOはAmazonがあらゆる業界で確固たる地位を確立することを望んでいるかのようであり、総合格闘技UFCのPPVを販売したりリアル販売店舗をオープンしたりと、事業の拡大はとどまるところを知りません。また、ベゾスCEOは「Amazonで築いた富を宇宙旅行事業実現のために使う」と発言しており、宇宙旅行事業にも関心を寄せていることが明らかになっています。

急速に成長してきたAmazonですが、それがなぜ他の企業にとっての悪夢となっている状況について、Bloombergは「アメリカの大企業の幹部たちは、2017年に投資家との電話の中で何千回もAmazonについて言及しており、その回数は『トランプ大統領』や『税金』よりも多い」と、Amazonの影響力の大きさを表現しています。検索エンジンのGoogleが「検索する」という動詞として使われるようになったように、「Amazon」という単語は「他の企業に損害を与える」ことを示す動詞として使われるようになり始めているそうです。実際、一部では「be Amazoned(アマゾられる)」という用語が「あなたのビジネスは他企業の参入によりダメになるかもしれない」という意味で使われているとのこと。

以下のグラフは「be Amazoned」がいかに他の企業にとって脅威であるかを示すもの。2018年1月30日にAmazonはJPモルガンやバークシャー・ハサウェイと協力してヘルスケア市場へ参入することを発表したのですが、その前後でのヘルスケア関連銘柄の値動きを示したグラフ。1月29日の終値を100としており、100以上になっていれば「1月29日の終値よりも高い」、100以下なら「1月29日の終値よりも低い」ということになります。1月30日の発表後、ヘルスケア関連銘柄は全て100以下に落ちています。

以下のグラフは、各業界における「Amazon関連のニュースが出た日の株価の下落率」を示したもの。縦軸が下落率で、横軸は日付を表しています。丸は企業の株価を表しており、丸の色が企業の属する業界を示しています。なお、青が食品業界、赤がヘルスケア業界、黄色が小売業界、ミント色が配送業界、紫色が自動車業界、グレーがテクノロジー業界、緑が不動産業界です。

そんなAmazonでも2014年には行うあらゆることが間違いであるかのような大きな失敗を犯しました。2014年、Amazonは独自開発のスマートフォン「Fire Phone」を発売します。大きな期待を持って登場した端末で、発売当初は性能の高さを印象づけるレポートが続々登場しましたが、結局は「失敗作」の烙印を押されついには販売打ち切りとなります。Fire Phoneの販売不調によりAmazonは大赤字を計上。2014年のホリデーシーズンの収入の伸びは、2001年以降で2番目に悪いというもので、これもFire Phoneのせいにされる始末でした。

そんなFire PhoneはGIGAZINEでもレビュー済み。一体どんな端末だったのかは以下の記事でチェックできます。

本当にAmazonスマホ「Fire Phone」は失敗作なのか1週間ほど試してみて分かったこと - GIGAZINE

2014年の失態によりAmazonは株価を20%も下げますが、1年後には市場価値を5倍にまで膨れあがらせます。2015年アマゾンウェブサービス(AWS)躍進の年でもありました。2006年のAWSのサービス開始以降、Amazonはクラウドコンピューティングサービスにおいて常に市場をリードしており、AWSは誕生したばかりの若い企業やスタートアップだけでなく、Netflixなどの大企業からも利用される存在へと進化を遂げます。そんなAWSの2015年における営業利益は、Amazon全体の営業利益の3分の2を占めていたそうです。なお、AmazonがAWSに支えられる構図は記事作成時点の2018年になっても続いています。

Amazonのクラウドサービス「AWS」が絶好調で株価が急上昇 - GIGAZINE

2015年はAmazonが有料会員向けに行う大セール「プライムデー」を初めて開催した年でもあります。2017年のプライムデーにおいて、Amazonは2000億円以上の売上を記録しており、Bloombergは「Amazonはより多くのものを顧客に買わせる方法を見つけた」と記しています。

2014年12月には購入した商品が1時間で届くサービス「Prime Now」をスタート。約1年後の2015年11月には日本でもPrime Nowのサービスがスタートし、2016年に入ってからはサービスエリアが東京以外の大阪・兵庫・横浜まで拡充されています。

他にも、2015年に所持していた109の流通倉庫は2018年までに150にまで増加。さらに、音声認識AI搭載のスマートスピーカー「Amazon Echo」をリリースし、同分野においてAppleやGoogleを先行しています。また、2017年には高級スーパーマーケットのWhole Foodsを1兆5000億円で買収しています。

AmazonがWhole Foodsを買収した狙いは、以下の記事を読めばよくわかります。

Amazonの1兆円超えのWhole Foods買収に見るAmazon帝国構築に向けた取り組みとは? - GIGAZINE

多くの企業にとって恐ろしいのは、Amazonが小売事業においても成長の余地を持っているという点です。アメリカでは小売事業における売上の90%以上が物理店舗上で発生しています。オンラインショッピングの割合は増加していますが、Amazonは買収したWhole Foodsの実店舗を持っており、他にもAmazon GoやAmazon booksなどの実店舗も有しています。

AmazonがWhole Foodsを買収する動きを察知することが難しかったように、Amazonが次にどの業界に進出するのかを予測することは非常に困難です。2018年2月27日にはスマートホーム家電の「Ring」を買収したばかりですが、2018年3月12日には「小規模事業者向けクレジットカードを計画」とも報じられており、これによりAmerican Expressの株価は約1.4%下落しました。

そんなAmazonも無敵というわけではありません。北米では電子商取引における利益率はわずか2.7%で、多くの人々が想像するほど大きな利益を生み出せているわけではありません。しかし、今のところAmazonやベゾスCEOの狙いを封じ込められるような力を持つ存在は一握りであることは明らかです。

2018-02-18 物流の覇者。

[]巨大化のわけ。 巨大化のわけ。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 巨大化のわけ。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

今更ですが、AGFA(Apple, Google, Facebook, AmazonあとAlibabaもあるらしい)の中で最後まで生き残るのはやっぱりamazonでしょうか。

これまで、海外での販売は企業にとって大きな負担とリスクが伴った。
外国で倉庫を契約し、物流業者を動かし、決済や顧客サービスも整備しなければならない。
ところが、アマゾンを使えば、瞬く間に「海外進出」が可能になる。

amazonがネット通販の巨人と思っていたらびっくり。
プラットフォーマという言葉でも足りない。
聞けば融資までしてくれるという。
「総合販売商社」になっているらしい。
クラウド・システムも提供し、リアルな物流網も持つ。

さらには音声技術でユーザーとのインターフェイスも取れるかもしれないという。
ベゾスという創業者が最初からどの程度の「広さ」でビジネスを考えていたのか分からないが、顧客の「ラスト1インチを取りに行った」勝利か、などと思う。

自分とは比べるべくもないが、会社というのは信条とか情熱とか、そんなものがつくづく大事で。
流されることなく自分の思う道をただひたすら…

うまくいくかどうか、ということを先に考えるのは「邪(よこしま)」なことなのに違いない。

全てをのみ込む小宇宙
「魅惑のエコシステム(生態系)」の全貌

アマゾンは進軍した先々で、あらゆる人と企業を取り込み巨大化していく。その豊穣な生態系は、一度入ると抜けられないブラックホールなのか。

ぼん家具の立石幸士社長は、アマゾンで成長して新オフィスを立ち上げた

 前年同月比16倍の増収──。

 ネット家具販売のぼん家具(和歌山県海南市)は1年前、アマゾンでそんな月間販売を記録した。その後も3〜5割の成長が続き、その波に乗って8月、和歌山駅近くに新オフィスを構えた。

 入り口には取引先から贈られた大きな胡蝶蘭がずらりと並ぶが、その中に1つだけミニチュアのような小さな胡蝶蘭があった。

 「これはアマゾンさんから頂いたものです」。ぼん家具の立石幸士社長は笑いながら鉢を指さして、「アマゾンの体質を物語っている」と付け加えた。無駄なコストをかけず、究極の効率化を推し進めるカルチャーである。

 2年前、アマゾンのマーケットプレイスに出店してから、停滞していた業績が一気に成長軌道に乗った。アマゾンが求める高レベルの物流品質を実現するために、生産から物流まで事業を見直し、磨き上げてきたからだ。

 「プライムのマークが付くかどうかで売れ行きががらりと変わる」。立石社長はそう効果を話す。プライム会員向けの商品に指定されるには、アマゾンの物流サービス「フルフィルメント by Amazon(FBA)」を使う必要がある。だが、家具は倉庫の面積を食うため、多くの品を置いてもらうことはできない。

 そこに朗報が入る。昨年、マーケットプレイスの外部業者に対して、アマゾンと同水準の物流のスピードと品質を実現すれば、プライムマークを付けることが発表された。

 ぼん家具はアマゾン担当者や運送業者、家具メーカーと打ち合わせを重ねる。その結果、荷物の3辺を160cm以内にすると運送スピードが格段に速くなることが分かった。それを海外メーカーと交渉、部品や設計を変更してスピード配送を実現していった。

 そして昨年7月、ぼん家具は日本初のマーケットプレイスでのプライム認定を獲得した。現在、プライム対象商品は全1600アイテムの3割程度。「この比率を高めることが、販売を伸ばすポイントになる。アマゾンの基準に合わせるだけで、企業が強くなる」

人気商品にカネを貸し込む

 アマゾンはマーケットプレイスに参加する事業者に、様々な「成長装置」を用意する。その筆頭が強力な物流網だ。

 先に述べたFBAはアマゾンが商品の保管や出荷、決済、顧客対応などeコマースに関わる業務を代行するサービスだ。商品によって8〜15%の手数料を支払うが、「フルフィルメントセンター」と呼ばれる配送センターに納品するだけで済む。eコマースの関連コストが変動費になるメリットは大きい。

 「このサービスを使えば、最高の商品を作ることだけを考えればいい」。高さが調整できる立ち机を製造販売するStand Steadyの創業者、デイ・マーティン会長はアマゾン効果をそう話す。

 配送センターは、世界で150カ所以上に点在する。アマゾンの生態系に参加すれば、物流網は海外まで伸びる。

 これまで、海外での販売は企業にとって大きな負担とリスクが伴った。外国で倉庫を契約し、物流業者を動かし、決済や顧客サービスも整備しなければならない。ところが、アマゾンを使えば、瞬く間に「海外進出」が可能になる。

米国市場をアマゾンで攻め、販売を急増させた長谷川工業の長谷川義高副社長

 はしご脚立メーカーの長谷川工業(大阪市)は、2009年に発売したデザイン脚立「ルカーノ」で国内外のデザイン賞を獲得した。その勢いで海外販売を開始したが、なかなか数字が伸びない。そこで昨年、アマゾンに米国進出のサポートを依頼した。

 「商品の見せ方から物流、カード決済まで全てを支援してくれた」(長谷川義高副社長)。効果はすぐに表れた。ルカーノの海外の販売数量が、ここにきて日本と同水準まで上昇してきたのだ。

 「欧州も、アマゾンでの販売を検討している」(長谷川副社長)

 アマゾンは「成長装置」として、金融機能も用意している。

設立直後の融資で、王国権ベステックグループ社長はベストセラーを連発

 14年、車載用充電器などを販売するベステックグループ(横浜市)を設立したばかりの王国権社長は、資金繰りに悩んでいた。出身国である中国のメーカーから仕入れた製品をアマゾンで販売していたが、飛ぶように売れたため在庫を増やしたい。だが、創業間もないうえに、外国人経営者ということもあって銀行は融資を渋った。

 そんな時、苦境を見透かしたようにアマゾンから融資のオファーが届いた。

 ネットに必要事項を入力して送信すると、わずか2営業日後に数百万円が振り込まれた。その後もアマゾンの資金を使って急成長し、今年になって家電製品の取り扱いを始めると、冷蔵庫は3カ月で売り切れた。今では数千万円をアマゾンから借り入れている。

 「アマゾンが売り上げと在庫の推移を見て貸した短期ローンなら、返済はほぼ確実だと思う」(王社長)

 銀行が企業のリアルタイムの数字を捉えることは難しく、どうしても後手に回ってしまう。そうした金融の盲点を突き、しかもマーケットプレイスの機会ロスを解消している。

 最近はスタートアップの育成に力を入れる。国内外の革新的な新興企業にマーケティングや配送などを支援する「Amazon Launchpad」だ。特設ページには1万5000の新興企業の商品が掲載されている。このプログラムを利用している企業は全世界で2100社を超える。

米アンキのタペイナー社長はAmazon Launchpadでメジャーに

 AI(人工知能)を搭載したレーシングカーキットや小型AIロボを開発する米アンキもその中の一社。ハンス・タペイナー社長は、「商品の概要だけでなく、どういう考え方で商品が生まれたのか、作り手の思いを伝えられる」とプログラムの長所を説明する。

 新商品アイデアを消費者に熱く語りかけたい──。そんな起業家の熱意を、アマゾンは消費者に伝えてビジネスを後押ししている。

 生態系に加わる起業家が新たな市場を開拓する。それがサイトの魅力を高め、アマゾンの売り上げを伸ばしていく。その結果は数字にも表れている。

1998年の入社以来、商品カテゴリーの強化や欧州事業の拡大に尽力してきたブルーサード氏。「驚くべきことに、20年前のアマゾンと今のアマゾンを見ても、そのカルチャーがほとんど変わっていない」と語る(写真=Hayley Young)

 16年にマーケットプレイスで20億アイテムが販売されたが、17年は上期でその数字をクリアしてしまった。その生態系を支えているのは、世界で200万を超える中小業者だ。「売り手の成功は我々の成功」。インターナショナル・セラー・サービスのバイスプレジデント、エリック・ブルーサード氏は語る。

軒先を貸して、繁盛店を作る

 「弾み車(flywheel)」。ベゾス氏は急成長の仕組みを、その言葉に込める。重い弾み車を回すには大きな労力がかかる。だが、押し続けていくうちに少しずつ勢いが増し、そのうち自転のように回り続けていく。経済に置き換えれば、好循環を生み出す仕組みさえ動き出せばビジネスは拡大して止まらなくなるという理論だ。

 振り返れば、マーケットプレイスはこの循環を生み出す舞台装置だった。

全ての打ち手は成長につながる
●ベゾス氏の弾み車

 参加業者を引き込めば品ぞろえが増し、サイトに来た人の満足度は向上する。そうして顧客が増えれば出品者がさらに集まる。その利益を値下げに使えばさらに加速力が上がっていく(上図を参照)。00年代前半の苦境の中、競合他社に軒先(サイト)を開放したことで、この弾み車が回り始めた。

 「外部の売り手をアマゾンに引き入れる決断がなければ、地球最大の品ぞろえというビジョンは実現できなかった。アマゾンの強さは、リテール事業とマーケットプレイスの両方を持っていることにある」(ブルーサード氏)

 その決断は、社内に衝撃を与えた。アマゾンのリテール部門にしてみれば、突然、ライバルが自社サイトで販売を始めることになる。高い販売目標があるのに、客を奪われかねない。

 だが、ベゾス氏は「顧客の利益」を軸に判断する。外部の出品者の方が安ければ、それは消費者にとって望ましいことだ。競争によって自社の競争力も磨かれると考える。

 その背景には過去の失敗がある。ネットオークションで成功したイーベイを追撃するため、1999年にアマゾンもオークション事業を始めた。ところが、大苦戦を強いられる。アマゾンがeコマースとオークションを全く別のサービスとして運営したことが原因だった。そこでサイトの統合を決断する。

 「アマゾンと外部業者の商品を同じように買えるようにすることが狙いだった」。『The Amazon Way』の著者で、マーケットプレイスの改革を主導したジョン・ロスマン氏はそう振り返る。

 その後も、弾み車を加速させるために、様々な仕掛けを打ち続けた。回転を始めた弾み車にさらなる推進力を与えたのはアマゾンプライムだ。

 eコマースの最大のネックは「eコマースは送料分が高くつく」という顧客心理。そこに、「プライム会員は送料無料」とうたったため、逆に大量購入を生み出した。できるだけアマゾンで買おうとする消費者が増えたことで、商品検索のシェアも増加、eコマースは破竹の勢いで伸びた。そのプライム会員に様々な特典を追加して、盤石の「eコマース消費群」へと育て上げていった。

「配当ゼロ宣言」を貫く

 もっとも、次々と打たれてきた生態系の強化・育成策は、ベゾス氏とアマゾンが最初からロードマップを描いて進めたことではなかった。プライムやその後の施策は、一つひとつが単体で利益を出すとみて導入したわけではない。

 プライムの年会費やFBAの物流手数料といった配送関連の収入と、実際にかかった配送コストを比較すると、2016年は70億ドル以上の赤字とみられる。だが、プライム会員によってeコマースの売上高やシェアが押し上げられているので、配送の収支だけを切り出して議論しても意味はない。

 それは、生態系が全ての生物による支え合いによって成立していることと同じ構図だ。

 プライム会員向けの無料配送を始めた05年当時、単独で採算が取れるとは誰も考えていなかった。ただ、無料配送は顧客にメリットが大きく、購入が増えることは間違いない。最後は、ベゾス氏の鶴の一声で始まった。

 その判断軸は創業期からブレていない。毎年、株主総会に際してベゾス氏がしたためる「株主への手紙」。そこには、上場初年度の1997年の年次報告書に掲載された「Day One」の哲学を記した文章が添えられている。

 「市場のポジションを得るため、顧客と売り上げの伸びにフォーカスします。そのため、配当は一切払いません」

 今でこそ、米配車サービス大手ウーバーテクノロジーズのように、赤字覚悟で顧客と売り上げを取りに行く戦略はウェブ関連サービスではよく見られるようになった。それを20年も前から続けているのは、ベゾス氏の哲学と長期的視点のなせる業だろう。

 この20年でアマゾンは他に類を見ない複雑な生態系を作り上げた。オープンで誰もが暮らしやすい世界だからこそ、あらゆる起業家が「成長の土台」として活用している。生物が地球を必要とするように、マーケットプレイスは不可欠な大地となりつつある。

 アマゾンが構築したもう一つの巨大なエコシステム(生態系)はアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)だ。

将来もクラウド市場は拡大していく
●クラウド市場の推移予測(グローバル)

注:ウィキボン調査のパブリッククラウド市場規模

 クラウドコンピューティング業界は2016年に市場規模が約800億ドルに達した。27年には5250億ドルに成長すると予測される(ハイテク調査グループ、ウィキボン調査)。その成長市場でAWSは他の追随を許さない。

 AWSの登場前、企業はサーバーを購入して自前のシステムを構築する必要があった。だが、アマゾンは社内で使っていたシステムの機能を他社に「間貸し」するサービスを始める。これを使えば、企業はサーバーやデータセンターを持つ必要がなくなる。電気やガスのように従量課金制なので「ハードは買ったが容量が余っている」という無駄もない。

 「システム費用を設備投資でなく、変動コストとして処理できるのは大きい」。AWSとの協業に関わった米レッドハットのビジネス開発担当バイスプレジデント、マイケル・フェリス氏はそう効果を話す。今ではAWSはストレージやサーバー処理、AIなど90の主要な機能サービスを提供している。

仕事が勝手に舞い込む

エフエム和歌山の山口誠二氏はニュースの音声読み上げシステムをAWSで構築

 社員7人のエフエム和歌山は、AWSの音声読み上げ機能「Polly」を使って、ニュースを流している。新聞社のニュース原稿をテキストデータとして蓄積し、放送時間に米オレゴン州のAWSのデータセンターに送信すると、1〜2秒後に日本語の音声ニュースが流れる。

 「深夜帯などはアナウンサーを用意できない。予算が少ない民間放送局には強力な武器になる」

 そう話す企画・編成の山口誠二氏が音声読み上げを検討したのは3年前のこと。だが、システム会社はシステム構築費で70万円、月々のテキスト読み上げに2万〜3万円を提示した。小さな地方局には負担が重すぎるため、この時は断念せざるを得なかった。

 ところが、AWSは初期費用がかからず、10万文字で400円という破格の値段だった。1日6回ニュースを読み上げても、年間1000円もかからない。「今後は音楽番組のDJにも使う方針だ」

ネット写真サービスで顔認識機能を組み込む千株式会社の千葉伸明社長

 ネット写真サービスを手掛ける千株式会社もAWSにとりつかれた一社だ。幼稚園や小学校の運動会といったイベントの写真を撮影・販売する同社は、今年になってAWSの画像認識サービス「Amazon Rekognition」の採用を決めた。イベントによっては写真が1万枚を超えるため、自分の子供の写真を探すのは時間と労力がかかる。だが、アマゾンのサービスを使えば、1〜2秒で目当ての写真が探し出せる。

 「10年前から探していた機能。国内外の会社に頼んだが、1000万円を超えるコストを提示されたこともある」と千葉伸明社長は打ち明ける。だが、AWSは従量課金で、1イベントを検索できるようにするためにかかる平均コストは200円程度で済む。

 利用率は2〜3割だが、今後はサイトに来た顧客に、過去の購入履歴から家族の写真を先回りして表示するサービスを検討している。アマゾンの広告表示に使われている機能の応用だ。

 AWSはコスト低減だけでなく、事業のイノベーションを支える。機能や規模が自在に増減できるため、新規事業など、機敏にビジネスを展開するケースに向いている。AWSがなければ、Airbnbやネットフリックスはビジネスを一気に拡大できなかっただろう。

 「周りのスタートアップの企業はほぼAWSを使っている。使わずに立ち上げた会社を探す方が難しいくらいだ」。サンフランシスコのソフトウエアエンジニア、ジミー・スー氏はそう話す。

 AWSの登場で、システム業界は激変してしまった。

AWSのプレミアパートナー、クラスメソッドの横田聡社長(写真=的野 弘路)

 「うちからは売り込みはしない。それでも、あらゆる業界から仕事が舞い込む」。日本に7社しかいないAWSのプレミアコンサルティングパートナーとして、AWS機能を使ったシステム設計を手掛けるクラスメソッドの横田聡社長はそう打ち明ける。

 当初は企業向けにシステムを開発していたが、自社システムのためにAWSを触り始めて、パーツ(機能部品)を組み上げて瞬時にシステムを構築できるAWSの威力を知った。その後、資生堂やソフトバンク、凸版印刷など大企業のシステム構築を担うことで急成長、今年中にその数は1000社を超える。

 こうしたAWS生態系に、大手IT企業ものみ込まれている。

 大手ITのNECも、AWSのプレミアパートナーに認定されている。NECは自社でもクラウド事業を展開しているが、年内にAWSの認定技術者を現在の2倍の500人体制にするという。

 「NECなど歴史のある大企業にとってAWSは脅威。でもサーバーや自社サービスにこだわればDisrupt(破壊)される。どうAWSと協力していくかを考えないとならない」(NECの榎本亮CMO)。大手IT会社も取り込み、AWS生態系は勢力図を拡大している。

「ジョブズになる必要はない」

 ネット書店だったアマゾンから、なぜ革新的なクラウド事業が生まれたのか。元をたどると、自社のシステム部門が成長のボトルネックになっていた事実に突き当たる。

 00年代初頭、ベゾス氏は社内に、ある「お触れ」を出した。システムやサービスを機能や構成要素ごとに分解して、社内外の人間が手軽に利用できるようにしろ、という指示だ。これが実現すれば、必要な機能を集めて新しいサービスを素早く作ることができる。

 ベゾス氏が出したこの指令は、今で言うAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)の概念を含んでいた。APIという言葉さえ浸透していない時期に、社内のシステムやサービスを部品にしてやり取りするよう求めたのだ。

 アマゾンの元エンジニアで、その後グーグルに移ったスティーブ・イエギ氏のブログには、02年ごろのベゾス氏の指令が詳しく書かれている。

 「全てのチームがサービスインターフェースを通してデータや機能を公開すること」「全てのインターフェースは例外なく外部から見えるように設計すること」。ベゾス氏はそう命じて、従わない者は例外なく解雇すると宣告したという。

 「ベゾスが命令を出すのはいつものことで、社員はそのたびにハンマーを振り上げられたありんこのように慌てふためく。だが、02年ごろに出された命令はいつもと違っていた。その命令は目玉が飛び出るくらい大きく、それまでの命令がちっぽけに見えたほどだった」。イエギ氏はそうつづっている。

 APIとは、見方を変えれば様々な機能をセルフサービスの形で提供するということだ。また、APIを使えばデータやソフトウエア、部門間の統合も容易になる。ある機能が欲しければ自分で取りに行く。サービスを作った方は機能や使い方をAPIの形で公開する。そうすれば、ボトルネックは解消するとベゾス氏は考えたわけだ。

 構成要素をバラバラに分解して取りに行く──。この発想こそ、アマゾンをクラウド企業の先駆者に転換させた本質であり、売上高1359億ドルの巨大企業になった今もスピード感を失わずに成長している理由だ。

 ストレージや演算処理などの機能がパーツに分かれていれば、欲しいシステムを瞬時に組み上げられる。進出国でレコメンデーション(おすすめ)機能を追加したければ、過去に作られたAPIを活用すればいい。音声読み上げや画像認識も開発チームがすぐにAPIにしたから、早期に公開できたに違いない。システム開発は格段に速くなった。

 それにしても、ベゾス氏はなぜ、あのお触れを出したのか。思考の奥底はのぞけないが、状況証拠としては、ITバブル崩壊後のカオスの中で、組織の効率化とビジネスの収益化を必死になって考え続けた結果だと思われる。

 「全ての人に合う製品を作るためには、ジョブズになる必要はないということにベゾスは気づいた」。イエギ氏はブログでそうも語っている。それは、グーグルに向けた批判でもあった。

 万人が満足する製品やサービスを作ることは不可能である。だが、誰もが自由に参加できる「場」を作れば、それぞれの開発者が顧客に合うものを勝手に作る。やるべきことはメニューを増やすことと、誰でも利用できるようにすること。だが、プロダクト主導のグーグルはそれが理解できない。そうイエギ氏は嘆いたのだ。

 ベゾス氏はそこに誰よりも早く気づいたからこそ、強大なプラットフォーマーへと変貌を遂げた。

 AWS以外の環境でサービスが使えるようになるなど、進化を続けている。高いシェアを獲得しても囲い込まず、逆にオープンにすることで、AWSの生態系を繁栄させようとしている。

 そのアマゾンで、さらに人々を巻き込む新しい生態系が出現している。「アレクサ」だ。

(写真=David Becker/Getty Images)
声だけで、あらゆるモノを動かす
●アレクサの仕組み

アレクサは話し手の音声をテキストに変換する技術と、テキストの意味を読み取り、端末に伝える技術の集合体(写真=T3 Magazine/Getty Images)

 アレクサとは、アマゾンが開発したAIによる音声認識エンジンで、話し手の声を聞き取り、テキストに変換する技術(自然音声認識)と、テキストの意味を読み取り、アプリケーションに伝える技術(自然言語処理)から構成される。アマゾンが発売している「エコー」は、アレクサを搭載したスピーカーだ。

 2014年にエコーを発売して以来、アレクサはスマートフォンに代わる次世代インフラと目されるようになった。

 スマホの登場以前、コンピューターを動かすにはキーボードとマウスが必須だった。だが、iPhoneが誕生すると、タップとスワイプが人と機械をつなぐインターフェースとして台頭した。

 「次の革命は間違いなくボイス(音声)インターフェース。そのことを最初に認識して先頭を走るのがアマゾンだ」。米ガートナーのアナリスト、ワーナー・ゴーツ氏はそう指摘する。

 エコーの普及で、音声アシスタントを巡る競争は激しさを増している。

 8月23日、グーグルとウォルマートは音声によるネット通販事業で提携すると発表した。グーグルのネット宅配サービスにウォルマートが商品を提供、グーグルの音声AIを搭載した「グーグルホーム」に話しかければ、声での注文が可能になる。

 すると翌週、音声アシスタント市場で競合しているアマゾンとマイクロソフトが提携を発表した。アレクサとマイクロソフトの「コルタナ」を連携させるという戦略だ。

 コルタナはすでにウィンドウズ10に組み込まれ、スケジュール管理やメールの読み上げに対応しているが、パソコンでの利用にとどまっている。一方、アレクサはエコーを通じて米国の家庭に浸透しているが、ビジネス用途は弱い。「両者の顧客満足度を高めるための提携だ」(アレクサ関連事業部門担当のバイスプレジデント、トニ・リード氏)

アレクサ関連事業部門を担当するバイスプレジデントのトニ・リード氏。家には10以上のエコーがあるという(写真=Hayley Young)

企業の中心に食い込む装置

 AIによる音声アシスタントの嚆矢はアップルのシリだったが、ジョブズ亡き後、開発ペースが減速した。技術的にはグーグルが上回っているという声もある。それでもアレクサの利用が拡大しているのはエコーの発売が早かったことに加えて、外部の開発者が自由にアレクサを組み込んでサービスを構築できる環境を整えているからだ。

 エコーの発表当初、アレクサを使ったサービスは13にすぎなかったが、今では2万に急増した。1月の米家電ショー(CES)では、アレクサ搭載商品が700以上も展示されて話題をさらった。

 技術を開放して外部の開発者を取り込む。そのフィードバックによって質を磨き上げ、生態系を繁栄させていく。それは、ベゾス氏がeコマースやクラウドでとった手法そのものだ。

 「大半の技術がなく、一から作る必要があった」。そうリード氏は振り返る。最初の一歩はノイズのある部屋の中で、「アレクサ」と呼びかけた時に、言葉を認識して起動することだった。それが、いつしか技術を売りにする企業を追い抜いてしまった。

 そんな無謀とも思える挑戦に乗り出したのは、ベゾス氏の思想である、顧客満足につながるなら困難があっても腰を据えて突き進むカルチャーに他ならない。「アマゾンは失敗を許容する文化がある。挑戦することを恐れる必要がない」(デジタルビデオのティム・レスリー氏)。これはマネジメント層に浸透している。そして、外部に門戸を開いて切磋琢磨していく。

 音声を媒介としたアレクサという生態系は、消費者とビジネスを結びつけ、さらなる地平を切り開いている。

 37ページで見たように、アレクサは音楽ストリーミングの世界を激変させ、音楽消費の新しい世界を生み出してしまった。いずれはマーケティングと広告の世界をも揺さぶるだろう。

 さらに、ビジネスの内部にまで食い込もうとしている。

 アマゾンは社内コミュニケーションやビデオ会議などのツールとして、エコーを企業内に送り込む腹積もりだ。スクリーン搭載の「エコー・ショー」はその布石だろう。日々の業務が音声で進められる世界は早晩訪れる。その時、オフィスの中心にエコーがあれば、販売や購買といった企業取引を、根こそぎ囲い込むことになる。

 それは、アマゾンの複数の生態系が絡み合いながら、さらに強固で抜け難い集合体になっていくことを意味する。もはや、アマゾンなしにビジネスも生活も送れない。そんな世界が到来する。

2018-02-17 エイジレスと勝ちパターン。

[]普遍的なこと。 普遍的なこと。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 普遍的なこと。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

日経より、五十代になって変わらずキャリア進化をしている女性の記事。

(また単にお客様のことだけではなく)、プロダクト、競合、業界の構造など、自分の仕事に関わることは、どんなことでも、全体像と細部をできる限り把握するように努めてきました

これは大事だ。
「全体像と細部」というのがキモだと思う。
全体像という意味では、たいてい関わってくる「隣接の」行政とか法律とか政治とかマスコミとかも重要だ。

しかもマクロで総論ばかり研究しても、実務の助けにはならない。
「神は細部に宿る」から、現場の実務のことを知らずには新しいアイデアは出てこない。

世の中に成功のためのコツを記した著作は数多いが、
1. 自分の「勝ちパターン」を身につける
2. 直感や「心の声」を大事にする
3. 新しい世界に足を踏み入れ、体験し、学び続ける
こんなとところに集約されているのではないだろうか。

大事なのは、自分がどこに進んでいるのか?
を考える余裕(というか技術)なのだと思う。

50代で起業、シンガポール女性に学ぶ「エイジレスに生きる3つのヒント」
1/20(土) 11:00配信
「アラサー」や「アラフォー」という言葉のなかに、皮肉や自嘲のようなニュアンスを感じることはありませんか。いまだに女性に対して、20代が市場価値としては最高といった見方も少なくありません。

日本の社会で生きるうえで「世間からどう見られるか」は、いまでも日々の生活や人生の選択において大きな価値基準。とりわけ、「年齢相応か」という観点はその際たるものといっても過言ではありません。そうした旧弊な価値観が、無意識のうちに私たちの中に「年齢によるハードル」をつくり出し、本来ある可能性を蝕んでいるということに、日本の外で生活を始めて、初めて気づかされました。

海外でも「年齢相応か」という基準がないわけではありません。でも、私がいま暮らしているシンガポールでは、日本よりもそうした価値観に縛られず、充実した人生を生きている人たちをたくさん目撃することができるように思います。

クリスティーナ・テオさんもそんな「エイジレス」な生き方をする女性のひとり。シンガポール生まれの彼女は、現在54歳。起業する女性を支援するコミュニティ「Startup Asia Women」の創業者兼代表として、一度に数100名以上を動員するスタートアップのイベントを何度も開催し、成功させています。

いまやこの国のスタートアップ業界では、その名前を知らない人はいないコミュニティのひとつです。去年の11月からは新たに会社も立ち上げ、自ら社長としてスタートアップ企業を経営するという新しいチャレンジもはじめています。

実は、そんな彼女が、シンガポールに戻ってきたのは2016年のこと。社会人になってからのほとんどを、台湾、フランス、イタリア、香港、ニューヨークといった国外で過ごした彼女は、当初母国に戻る気はありませんでした。46歳で結婚し、その後拠点にしていた香港から帰ろうと思ったきっかけは、80歳を越える高齢になった実母の存在でした。万が一の時に備えて母と暮らそうと、夫を香港において、独りシンガポールへ戻ってきたのです。

今でこそ確固としたステイタスを持ち活躍していますが、帰国当時はまさにゼロからのスタート。自分ではなく、家族の都合での引っ越し。また海外での生活が長かったこともあり、シンガポールでの交友関係やビジネス・コネクションはなきに等しい状態でした。

でも、せっかく帰ってきたからには、シンガポールでも何か意味のあることをしたい。このような思いでクリスティーナさんを突き動かしたのは、豊富な海外生活の体験で得た「エイジレスな生き方」でした。

クリスティーナさんの人生から学ぶ「エイジレスに生きる3つのヒント」をご紹介しましょう。

1. 自分の「勝ちパターン」を身につける

クリスティーナさんは23歳で海外での仕事をするチャンスをつかみます。キャリアのスタートは台湾のコンピューター関連機器メーカーAcer。以来IBM、Yahoo、O2、CSL Hong KongなどITや情報通信関連業界の大手企業を中心にキャリアを積んできました。

彼女がこの業界に入ったのはちょうど1980年代後半、パーソナルコンピュータ(PC)が普及し始めた頃。それに合わせてインターネットが生まれ、爆発的に広がり、それがスマートフォンの誕生に繋がっていく、まさにその流れとともに歩んできました。

時代の最先端を行く業界だったこともあり、任される仕事はこれまでやったことのない仕事ばかり。30代前半でYahoo! Singapore初のゼネラルマネージャに就任し、シンガポール拠点立ち上げをすることになったときには、インターネット業界、いわゆるドットコム企業での経験はゼロ。また40歳で世界初のウィンドウズ版スマホの発売をリードしたときにも、関連する経験はゼロ。

そんななかで彼女が見出した未経験の仕事を成功に導くための秘訣は、「どんな仕事も常に当事者意識を持って取り組むこと」ということでした。

ページ: 2
若くして見つけた自身の「勝ちパターン」

「20〜30代の頃に仕事で意識していたのは、自分が目の前にいるお客様にとっての唯一の窓口となり、お客様の状況をすべて把握できるようにすること。また単にお客様のことだけではなく、プロダクト、競合、業界の構造など、自分の仕事に関わることは、どんなことでも、全体像と細部をできる限り把握するように努めてきました」

「そうすることで、自分自身仕事がしやすくなることはもちろんのこと、一緒に仕事をする関係者や同僚や上司も自分に信頼を置いてくれるようになります」と振り返るクリスティーナさん。

「臆することなく未知の分野に足を踏み込んで、自分の役割を見出していく」という現在まで通じる彼女の「勝ちパターン」は、仕事に夢中になって過ごした当時の体験が土台になっているようです。

2. 直感や「心の声」を大事にする

20代や30代の女性といえば、キャリアでの成功はもちろんのこと、恋愛や結婚といったプライベートでの幸せも気になる年頃。でも仕事に夢中だったクリスティーナさんにとって、正直なところプライベートの幸せは二の次でした。

「幼い頃から夢見ていた海外での生活が叶って、本当にエキサイティングな生活を送っていました。恋愛ももちろんしていました。でも、どのぐらいそこにいるのかわからないなかで、深く関係を築くということは難しい状況でした。素敵な人に出会っても、友達のままでいることを選んだこともたくさんありました」

「正直なところ、自分のやりたいことに夢中になっているときに、誰かと人生をシェアするということを進めるのは難しいと思います。当時の私は『いまはキャリアが一番大事』だとわかっていたので、仕事を優先することに納得していました」

そんなキャリア一筋で過ごした彼女に、40代早々で大きな転機が訪れました。世界初のウィンドウズ版スマホを発売するという大きな仕事に関わり、その仕事が一段落していた41歳のとき、当時の上司から何げなくかけられたひと言で目が覚めたと言います。

「クリスティーナ、次は、このスマホを発売するからよろしく!」と言われた彼女はハッと気づきます。確かに目の前の仕事は面白い。でもこのままビジネスの世界にいたら、次から次へと出てくる新たな仕事に関わり続けて行くことになる。そして、次のような「心の声」を聞いたのです。

「いまの自分が求めているのは、さらなるキャリアでの成功を積み上げていくことではない」

この直感的かつ強い気持ちに突き動かされ、あと数か月会社に残れば手に入った大金のボーナスも受け取らず、突如会社を退職。「夫探し(!)」にニューヨークに行くことを決めます。なぜニューヨークだったのか。それは当時人気を得ていたアメリカのテレビドラマ「Sex and the City」の影響でした。

行ったところで結婚相手なんて見つかるはずないと周りの友人からは散々バカにされながらも、クリスティーナさんはニューヨークに長期滞在するために大学院へ進学。それでもあくまで本当の目的は、「そこで旦那さんを見つけること」だったのでした。

ニューヨークでは自身のこれまでのキャリアのことなどは一切明かすことなく、まるで新しい人生を生き始めたかのように生活。そして約4年を経て、当初の目的であった「人生の伴侶」を見つけ、46歳で結婚しました。

仕事をやりたいと思う時期は思いっきり仕事をする。でもプライベートの幸せが欲しいと思ったら、それも素直に行動に移して追求する。クリスティーナさんのような直感や自分の心の声を大事にする姿勢は、「エイジレスな生き方」の大きなポイントのように思います。

ページ: 3
躊躇せず新しい世界に足を踏み入れる

3. 新しい世界に足を踏み入れ、体験し、学び続ける

実母の近くにいたいという思いから、長年の海外での生活に終止符を打ち、母国シンガポールに戻ってきたクリスティーナさんでしたが、そこでそのまま静かな生活に終わらないのが彼女の真骨頂です。

せっかく帰ってきたからには何か世の中に意味のあることをしたい。そんなことをぐるぐると考える日々のなかで頭に残ったのが「スタートアップ」という言葉。まさにシンガポールではゼロからのスタートだった彼女にふさわしい言葉、それが新たな人生の幕を開くキーワードともなりました。

「スタートアップと聞いて、なんとなく面白そうだなと思いながらも、それがなんなのかはまったく知りませんでした。そんなとき、世界最大級のスタートアップの祭典といわれる「Slush Asia」に参加しました。そしたらビックリ。国内外の多くの起業家や投資家の講演があり、彼らが現在取り組んでいるビジネスやそこから見えるこれからの世界のことを聞くことができたのです」

クリスティーナさんが「Slush Asia」で見聞きしたものは、すべてが素晴らしくてエキサイティングだった。ほんとうに新しい世界に足を踏み入れたという感覚を得た彼女は、そこからスタートアップについてリサーチを始め、さまざまな起業家から話を聞きます。そのなかで大きな気づきを見出すのです。

「私自身はこれまで起業の経験はありませんでしたが、所属してきた大企業では、新規事業の立ち上げや自分しかいないひとり部署への配属を何度も経験していました。それらの経験を生かして、現在スタートアップ経営者たちの力になれることがたくさんあるということに気がついたのです。まさに、自分自身が探していた『世の中に意味のあること』を見つけた瞬間でした」

立ち上げから1年足らずにもかかわらず、クリスティーナさんの「Startup Asia Women」はシンガポールのスタートアップ業界で広くその名を知られるコミュニティに発展。今では新たに自身の経営する会社も立ち上げています。

「自分で新たに起業したのは、私自身も一経営者としてスタートアップ経営の経験を積んでみたいと思ったことが第一です。またその経験を通じて、コミュニティもより有益なものにできると考えているからです。この歳になっても、世の中にはまだまだ知らないことがたくさんあって、学ぶことがたくさんある、最近あらためてそう感じています」

いつでも躊躇せずに新しい世界に足を踏み入れること。そしてその世界を自分の五感を使って体験すること。そしてそこから学び続けること。クリスティーナさんの軌跡を辿っていると、これが「エイジレスに生きる」ための大きな秘訣であると気付かされます。

テクノロジーの発展により、環境や経歴、年齢などの条件に縛られずに、より自由にクリエイティブに生きていくことができる状況が整ってきました。また個人の幸せのあり方も多様化し、自分らしい生き方を選べる時代を迎えつつあります。巷では「人生100年時代」という言葉をよく耳にするようになり、ようやく日本でも、政府主導で「人生100年時代を見据えた経済・社会システムを実現」していこうというイニシアチブもとられています。

そんなときにこそ、クリスティーナさんがその人生で会得してきた「エイジレスに生きるヒント」は役に立つかもしれません。

2018-02-16 知性の本質を考えざる。

[]いよいよ人とは。 いよいよ人とは。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク いよいよ人とは。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

AIの未来について、汎用AIと言われる「どこにでも適用できる人間のようなAI」はまだできていないらしい。
けど多分「それ」はできて行くと思う。

どんな分野でも「勘」とか「センス」というものが因数分解され、「この幾つかの選択方法ですね」と分かってしまっては是非もない。

人間はさらに「突拍子もないこと」で創造をしようとしたりする。
車を自動で走らせるとか、音声でスピーカーと会話するとか。
けれど「そういうの」も偶然性を考えることができれば、今の人間よりももっと突飛な面白いものができてくるかもしれない。

「意外性」とか「異種間結合」を意図的にやられては、あまり人間に分はないのではないだろうか。

AIに人の気持ちや欲望が分かるだろうか。
それは今の人の声を聞けば簡単に分析できるだろう。
「機械に感情はわからない」というのは聞いていない人の言い訳になると思う。

それはともかく。

自分たちは、多分史上初めて「知性とは何か」を「それを脅かす存在の前で」考える好機にいる。
漠然とした「知性とは、暗黙知と形式知があって…」とかいうのではない。

明確に「自分の(本当に)知性と言えるものは何か?」ということに答えを見つけなければ、「多少ランダムに動くコンピューター」と差はないのだろうか。

よく反論する人は「機械には感情がない」「ビジョンやポリシーは作れない」とか「機械には情熱はない」などという。
でも感情もビジョンも情熱も、いろんな範囲で数値化することはできる。

事実、自分たちは「ある範囲の中」で怒ったり、喜んだり、集中したりしている。
それが「勝手気まま」なのが人間の知性なのだとすると、それすら数値化は可能だろう。

「破産するまで突き進む」とか「全くリスクを取らない」というのは全て数字の範囲の問題に過ぎないと思う。

そして詰まるところ「自分とは何か」という哲学に戻る。
そんな機会を今一番身近で与えてくれるのがコンピューター技術なのだろう。

山中伸弥さんが羽生善治永世七冠に聞いた「AIと将棋の未来」
ノーベル賞科学者・山中伸弥氏と史上最強棋士・羽生善治氏が「10年後、100年後の世界」について語る「予言の書」が発売された。それが『人間の未来 AIの未来』だ。本書の中から「AIと将棋の未来」について書かれたパートを特別公開する。

なぜ将棋のソフトが急激に強くなっているのか

 人工知能(AI)の「AlphaGo」(アルファ碁)が世界トップクラスの囲碁棋士イ・セドルさん(韓国)に四勝一敗で圧勝したことが話題になりましたね。

 はい、2016年3月のことでした。その年の2月、私がNHKの番組[NHKスペシャル「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る」2016年5月放送]で人工知能を取材したとき、グーグルの傘下にあるイギリスのディープマインド社で、アルファ碁を開発したデミス・ハサビスさんにお会いしてお話を伺いました。囲碁は少なくとも十年は人間に追いつけないと言われていたので、大きな挑戦と思えました。おそらくイ・セドルさん自身も「負けるはずがない」と思っていたんではないでしょうか。

 それくらい、人工知能の強さは予想を超えていた。

 そうですね。将棋ソフトも想像をはるかに超えるスピードで強くなっています。2017年4月、5月の電王戦では、将棋ソフト「PONANZA」(ポナンザ)が佐藤天彦名人に二戦二勝しました。

 ここ数年、将棋のソフトが急激に強くなっているのは何か理由があるんですか。

 「ギットハブ」(GitHub)というサイトがあるんです。ギットハブはソフト開発プロジェクトのための共有ウェブサービスです。将棋ソフトはほとんどがギットハブに載っており、オープンソースなので、誰でも自由にそれを使って分析や研究ができるようになっています。

アクセスして「このプログラムのここはおかしいよ」とか「ここは直したほうがいいよ」とチェックできます。それも最新版をどんどん載せてくれます。すると、開発者はそれを見て「自分も将棋のプログラムを作ってみよう」と思う。棋士もアマ、プロを問わず「それを使って分析してみよう」となる。それで飛躍的にレベルが上がっているんです。

 そこはチェスや囲碁のソフトとは違うところですね。

 それが可能だったのは、実は「将棋ソフトを売る」マーケットが十年くらい前になくなったからなんです。強すぎて誰も買わなくなりました。マーケットがないので利害関係がない。だったら、いっそのことオープンソースにして、みんなで自由にどんどん進化させようという流れになったんです。

年に一度の将棋ソフトの大きな大会が終わると、上位ソフトのいくつかがウェブ上に公開されて、翌年にはそれをベースにした新しいソフトが出てきます。その年の頂上にいたソフトが翌年には五合目くらいになっている、ということが繰り返されているので、本当に驚異的なスピードで進化しています。

 将棋の勝負ではなく、将棋ソフトの勝負をみんなでしている(笑)。

 ええ。実は私自身、ソフトの世界で将棋はチェスから十年、十五年は遅れていると思っていたんです。チェスは世界での競技人口も多いし、論文の質と量もまさっていましたから。でも今はどういう状況かと言うと、将棋の世界で強いソフトは全部無料です。しかも、いくつもあるソフトを比較して使える共通のプラットフォームも開発されています。さらに使い方がわからない人のために、マニュアルを書いてくれている人もいます。どこまで親切なんだ、と思います。

一方でチェスの世界は、ソフトから何から全部揃えようとすると、けっこうお金がかかります。だから、チェスのソフトはそれほど多くの人が使っているわけではありません。そのため、ここ五年ほどで将棋のソフトが一気にチェスを追い越して、一番手軽で使いやすくなったんだと思います。

 そういうソフトを開発している人たちのモチベーションは、おそらく収益じゃないんですよね。

 収益ではありません。第一、それを仕事ではやっていませんから。ただ私は、こういうことがあるんじゃないかなと思っているんです。今は結局、ビッグデータと言われるデータの力とか、あるいはハードウエアの計算リソースをどれくらい持っているかが、全体の性能や機能のかなりの部分を占めてしまっています。

すると、プログラマーからすれば、自分の腕の見せどころがないというか(笑)、相当比重が下がってしまいます。その意味で、将棋ソフトの場合は、そこでやりがいを感じることができるようなんです。

 そうなってくると、どちらかと言うと、もう趣味の世界ですね。

 そうですね。それに、いろんなジャンルの人たちがいろいろアイデアを共有して進化しているところが、開発者たちは楽しいのではないかなと見ています。今まで画期的なプログラムを作った人は、もともと化学が専門とか法学が専門とかまったく違う世界にいるんです。そこで得た知識や経験値を置き換えてソフトを開発していく。そういう人たちが幅広く入ってきているところが大きいと思っています。

だから、将棋のソフトはデータとハードの力ではなくて、ソフトの力をブラッシュアップして強くしてきた側面があります。そういう意味では、「ガラパゴス的な進化」を遂げてきたと言っていいと思っています。

ページ: 2
「棋士という仕事はなくなりませんか」

棋士という職業はなくなるか

 AIの関係者に聞いた話ですが、「今後、AIが発達してもなくならない職業は何ですか?」とよく聞かれるそうです。その質問に対しては「それは今まだ存在していない職業です」と答えるということでした。なるほどな、と思いました。

もちろん、今ある仕事で残っていくものはあると思いますが、これから新たにできる職業もあるわけです。百年前の人が今の職業を見ると「これは何なのか?」とわからないものも確かにいっぱいあるでしょうね。

 棋士というお仕事はなくなりそうにないですね。

 いや、どうなんでしょうか。AIは量産できますし、将棋ソフトは最近、本当に強くなっていますから。

 でも人間の競争は人間しかできないんじゃないですか。コンピュータが二台で将棋をやっていても、見ているほうはつまらない。「機械A」が「機械B」に勝ったと言われても(笑)。そうなると、もう別の競技ですね。

 今すでにAI同士が一日二十四時間、対局し続けている「Floodgate」(フラッドゲート)というサイトがあります。そこから新しい棋譜がどんどん生まれています。もし将棋ファンの人たちが「AI同士の対戦のほうが人間同士の対戦よりも面白いね」と思うようになれば、棋士という職業はなくなってしまうかもしれません。そういう危機感はあります。

逆に言うと、今の棋士には、人間同士の対局を魅力的なものにして、AI対局以上の価値をつくり出し続けていけるかが問われているんだと思います。

一方で、AIが進化していったときに、人間の発想をより豊かにさせる、人間が今まで以上の創造性を発揮できるようになる可能性も十分あるのかな、とも思っています。AIと同じようにとは言えなくても、人間の能力も確実に上がっているということは言えるんじゃないでしょうか。

このスピードで行くと、僕たちが生きている間に、今とはまったく違う技術がまたできますよ。だって携帯電話がスマホに置き換わって、自宅でも電車の中でも子供からお年寄りまでみんな使うようになるなんて、十年前には想像もしなかったです。

だから、今から十年後、いったいどうなっているのか、僕には想像がつかないですね。でもだからと言って、人間が機械に支配されることにはきっとなっていないと思います。

 ある特定の目的に限定した専門人工知能は順調に開発が進み、活用されていくと思います。でも一つの分野で学習した知能を他の分野で応用できる、人間の知性のような「汎用性」を持った人工知能ができるのは、まだまだ先でしょうね。

暴走するAI

ページ: 3

暴走するAI

 そういう意味では、今後、私たち人間は「知能」とか「知性」をもう一度定義しなおさなければならなくなるかもしれません。

人類の歴史は「高い知能を持っているのは人間だけ」という前提でここまで来ました。でも将来、AIのIQが三千とか一万になると言われています。すると、その前提が崩れるかもしれません。

「この分野でAIは人間以上のことができる」とか「これは人間にはできても、AIにはできないだろう」といった議論をしているときに、「では人間が持つ『高い知能』の知能とは、いったい何なんだろう?」とあらためて考えざるを得なくなると思います。

でも「知能とは何なのか」と問われると、結局わからない、という結論にたどりついてしまいます。人間には「実現はできるんだけれど説明できない」とか、「実際に思っていることや感じていることでも、すべてを言葉で表現することはできない」といった分野があまりにも多く残されているように思います。

 まさにブラックボックスですね。

 ただ、AIの進化によって人間の知能と対比するものが出てきたことになりますから、人間の知能の姿をあぶり出す可能性はある気がします。これまでは比較する対象がなかったので、「知能とは何か」については答えが保留されていましたが、AIという比較対象を得たことで、「知能とはこういうものだったのか」と人間の知能の本質にアプローチできる可能性が出てきました。

「人間の知能の正体を探究していけば、人間の知能と同じようなAIを作ることができるはずだ」と考えて研究している人たちも、かなりいます。

AIと人間が協力し合う世界では、どういう可能性が生まれるんでしょうか。

 そこに私は関心があります。たとえば、アメリカでAIを活用した防犯パトロールの事例があります。全米でも犯罪発生率が高い街のことです。人員も限られているため、犯罪の発生地域や頻度などさまざまなデータを基に、AIに「今日、どこにパトロールに行けばいいか」を決めてもらったそうです。

ベテラン警官が「なぜ犯罪なんか絶対に起こりそうにない閑静な住宅街に行かなきゃいけないんだ」と言いつつ、AIの指示通りにパトロールに行くと、なぜか怪しい人がいて、まさに犯行に及ぼうと……。結果的に犯罪発生率が劇的に低下したそうです。

SF映画の『マイノリティ・リポート』を思い出しました。AIが「殺人を犯す」と予知した人間を事前に逮捕するようになっているという、ある意味とんでもない近未来社会を描いています。

 でも、それも荒唐無稽と笑っていられませんね。

 そうなんです。現在のAIは民間企業が開発しているので、ある時期まで基本的に開発プランは公開されず、あるとき、「こんなものができました」と世の中に発表される形ですね。

そういう状況では、AIの開発について、社会が新しい規準や新しい倫理をつくるといっても、どうしても現実のほうに先を越されて後手に回ってしまいます。そして、その規準や倫理を誰が、どこで、どういう形で決めるのか、その枠組みすらできていない段階では、極めて漠然とした話になるのでは、とも思います。

データがある世界では、AIは人間の経験値を超える結果を生み出す可能性があります。ただ、それが絶対かと言われると、絶対ではないわけです。そのとき、先ほども言った「ブラックボックス問題」、結果はうまく行っているけれど、そのプロセスが誰にも見えない状況を人間の側が受け入れられるかどうかが問われます。

理屈としては理解できなくなって、AIが出した結果なり結論なりを信じるか信じないか、ただそれだけの話になってしまう可能性もあります。でも人間は人間なりに考えたり、発想したりすることを捨ててはいけない、やめてはいけないと思います。

2017-10-03 介護の覚悟。

[]行政に頼らず。 行政に頼らず。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 行政に頼らず。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

介護というと「介護をする人」のことが話題に上るけれど、現場を見ていると問題の本質は「介護をされる人」にあるとつくづく思う。
タイトルに「介護の品格」と流行りっぽいのをつけようと思ったが、品格の意味する「気高さ・上品さ」よりはまだまだ手前の「覚悟」が足りないと思えるのだ。

戦後70年。
身近で災害でもない人災で、大量に人が死ぬという体験がない世代がメジャーになった。
今度は死に方が分からない。

というか未曾有の「長い時代」を前にして戸惑っている感じがする。
高齢者本人も、政治も行政も。
そしてその子供世代も。

みんなが「どうするどうする」とオドオドしているうちに「最大公約数の意見ばかり」を集めたら今の医療・介護制度になったのに違いない。

医療保険の本人負担をあげれば「高齢者票」を失う。
しかし将来の保障をしなければ「中年の票」を失う。
けれど(教育費など)若手の待遇を手厚しなければ「若手の票」を失う。

ここは一発、高齢者自身がバシッと覚悟を表明する必要があるな、と思っている。
そしてそんな覚悟を自分たち予備軍が引き継いでいかないと、今のような「社会保障費増大の連鎖」は収まっていかないだろう。

どこまでの介護が必要か、という問いはそのまま「どんな形の最期を望むか」ということだ。
若い奴にそこを見せたいものだと思う。

介護離職防げ 法律より手厚く、企業が休業・有給制度 第一生命や日立
 介護に直面する社員の退職を防ぐため、企業が多様な働き方を念頭に置いた支援制度を整え始めた。第一生命保険は介護休業について730日を上限に回数無制限とする制度を整備。花王やパナソニックは有給で休める仕組みを設ける。日本の介護離職者は既に年10万人、予備軍は100万人とも見込まれる。貴重な戦力である社員のつなぎ留めが重要な経営課題に浮上している。

 育児・介護休業法は労働者に介護休業を取る権利を認め、事業主は拒めないと定める。社員は通算93日まで3回まで分割して休める。第一生命ではこれを730日に延長し回数も無制限とした。

 同社の社員の平均年齢は46歳で、介護に追われやすい50歳以上の社員は4割を占める。「近い将来に介護に直面する社員が増加することを想定し、十分な安心感を与えるため」(人事担当)とし、法律より大幅に手厚い制度にした。悪用のリスクを恐れるよりも、離職予防の方が経営上、重要な課題だと判断した。

 実際の介護では施設が満床で入れなかったり、退去を求められたりする事態が起きる。ヘルパー代は高く、自宅介護を平日全て依頼するのは現実的ではない。特に都心部は施設と介護者が不足する。介護休業の日数や回数が限られている場合、社員が介護と仕事の選択を迫られ、やむなく退職するリスクは残る。第一生命の何回でも休業できる制度は働き方の柔軟性を高め、仕事と介護を両立しやすくする。

 このほか明治安田生命保険も2016年春に介護休業を通算1年から2年に拡大。イオンも2年の介護休業を認める。

 介護休業中は基本は無給だ。このなかでパナソニックは介護休業(同社は通算1年)の期間中、6カ月は基準内賃金の7割、それ以降は4割支給する制度を整備した。日立製作所も16年春から介護休業(同1年)のうち9カ月は給与の5割を支給する。

 国の制度では雇用保険被保険者の会社員は、介護休業中に介護休業給付金(賃金月額の67%)を受け取れる。ただし、期間は法律が休業を認める93日間だ。両社の支援は大幅に手厚くなる。

 休業よりも日常で使いやすい休暇制度を整える企業も出てきた。日本マイクロソフトは9月から、介護目的で年20日休める有給休暇を新設した。花王も1月から介護のために、最大年40日休める有給休暇を設けた。両社とも年次有給休暇(最大年20日)とは別のもので、合わせて使える。

 介護離職者は年10万人前後。既にこの10年で累計100万人になった。明治安田生活福祉研究所の試算によると予備軍は98万人にのぼる見通し。

 現在、介護・支援を必要とする65歳以上は約600万人で、過去15年で3倍弱に急増してきた。日本全体の就業者数(約6300万人)のおよそ10人に1人が直面する割合にまで高まっている。

2017-09-20 手軽の破壊力。

[]勢いは猛烈に加速する。 勢いは猛烈に加速する。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 勢いは猛烈に加速する。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

シンガポール金融通貨庁(MAS)と大手7行は7月、携帯電話番号だけで個人の銀行口座間の送金ができるサービスを始めた。
登録者数は1カ月弱で、人口の1割にあたる56万人に達した。

インターネットの世界は「道端」だ。
端末だって落とすこともある。
だから慎重に、慎重に。
というような話は「便利の勢い」に完全に呑まれてしまった。
便利に、便利に、とことん便利に。

それにしても「端末」と「ID」が結びついてもたらす便利は無限に広がる。
かつての産業革命の最中に、自分たちはいなかったけれど多分「これほどの波」ではなかったのではないだろうか。

印刷や内燃機関の発明もすごかったとは思うけれど「速度のもたらす破壊力」で言うなら今回の革命は"光速"で通信している。

変わらないのは「生物そのもの」の生きるスピードだけだろう。
「人じゃなきゃできないこと」を真面目に考えておかなければ、と真剣に思う。

アジア、電子決済の巨人に 生体認証など手軽さ競う 海外フィンテック最前線(3)
 インドの道ばたの雑貨店。男性客が差し出した札に対し、店にはおつりがない。カードや携帯電話による支払いにも対応していない。そこで店主が取り出した小型の端末に客が指を置くと、支払いが完了する――。

中国銀聯、ビザ、マスターが発表したQRコード決済は三輪タクシーなどでの利用を想定(バンコク)

 4月に始まった指紋を使った決済システム「Aadhaar Pay(アーダールペイ)」の動画広告だ。ベースは11億人超が登録するインド政府の生体認証システム。顔画像と指紋、目の虹彩画像を登録して12ケタのID番号をもらうという、いわば“生体情報付きマイナンバー”だ。自らの銀行口座をシステムにひも付ければ、カードやスマートフォン(スマホ)がなくても決済できる。

 アジア各国では固定電話やパソコンの普及が先進国に比べ遅れたことが、逆に携帯電話、スマホの爆発的な普及を促した。決済や送金でも同じ構図があり、先端技術の導入を後押ししている。

 カードを持っていなくてもスマホは持っている消費者が億人単位でいる。ユーロモニターの推計では、タイやインドネシアなど東南アジア主要6カ国のモバイル決済額は、2016年の95億ドル(約1兆円)から21年には330億ドルに拡大。日本の2割弱にすぎなかった市場規模は、21年に約4割に近づく。“巨人”の覇権争いも熱を帯びる。

 10月、タイの首都バンコク。カードすら使えない露店が多いラライサップ市場でQRコードを使ったスマホ決済が始まる。必要なのはコードが印刷されたステッカーだけ。客がコードをスマホで読み込み金額を打ち込めば支払いは終わる。

 このサービスを手掛けるのは中国銀聯、米ビザ、マスターカードのカードの世界大手。屋台や三輪タクシーなどの零細事業者を囲い込むためライバル同士が手を握った。

 中国電子商取引(EC)の巨人、アリババ集団も傘下のアント・フィナンシャルを通じ、昨年11月にタイ、今年4月にインドネシアで現地企業と相次ぎ提携。7月にはマレーシアの金融大手CIMBグループと決済サービスの展開で合意した。自社の「支付宝(アリペイ)」と同様の仕組みを東南アジアで展開する。

 危機感を募らせるのが先進的な金融市場を売り物にしてきたシンガポールだ。リー・シェンロン首相は8日の演説で「他国は電子決済を使ってキャッシュレス社会に移行しビッグデータを使って公共サービスを改善している。彼らから学び、追いつき、追い越さなければいけない」と訴えた。

 シンガポール金融通貨庁(MAS)と大手7行は7月、携帯電話番号だけで個人の銀行口座間の送金ができるサービスを始めた。登録者数は1カ月弱で、人口の1割にあたる56万人に達した。

 アジア各地で変わる買い物風景はグローバル化の産物でもある。「中国人観光客がスマホで全ての支払いを済ませる。それをまねしたがるフィリピン人が多い」(SMインベストメンツのフレデリック・ディブンシオ社長)。経済成長を背景にした旺盛な消費者の需要が急速なフィンテックの浸透につながっている。

(中野貴司、岸本まりみ、早川麗)

2017-08-17 金と人材という資本主義の問題について。

[]外部から考えるイノベーション(2) 外部から考えるイノベーション(2) - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 外部から考えるイノベーション(2) - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

糸井重里氏、日経インタビューより。
糸井さんは「(自分は)資本主義に挑戦しているのではなく、資本主義の流れのなかで泳ぎ方を考えている程度のことだと僕は思っています。」という。
なぜなのか。
資本主義への挑戦でいいじゃないか、と考えた。

Q上場で得た資金は何に使いますか。
A.人を雇うことに使います。

「人を金で雇う」というこの「シンプルな原則」に対する糸井さんなりの今の回答なのだと思う。

「人本位」で、これまでにない「自分たちが良いと思えるコンテンツの会社(社会)」を作る。
けれどそのためにはお金もいるし、社会の「今ある市場」でも認知されよう、と糸井さんは決断したのだろう。

多分、とても重い決断だったと思う。
そうでなければ、「手順」とか「基準」とか「規制」とか「法律」とかでがんじがらめの株式市場などのアウェーにわざわざ糸井さんが行く必要もない。
自分の目には、EUやブラジルにわざわざ興業に行くアントニオ猪木に見える。

つまりは「あなたの土俵で勝負しに」行き、その土俵で「私のやりたいことをやりますよ」という宣戦布告というかチャレンジだ。

いろんな企業が宇宙開発やAIに投資している現在だが、こうした「逆走アプローチ」を試みているのは糸井さんだけではないだろうか。
(つづく)

儲ける知性を休ませ、親切を――糸井重里に資本主義を聞く
「利益をたくさん出せればうれしいが、それが第一の目標になるとずれていくと思う。最短かつ最効率で利益を得る会社が、人に喜ばれるとは思えない」。糸井重里氏が、代表取締役として率いる会社「ほぼ日」を株式上場させる際、発した言葉だ。より利益を上げられる会社の株式を皆が買う――この仕組みは資本主義を発展させてきた。しかし糸井氏は、お金を儲けることよりも大事なことがあるというのだ。いったい、資本主義をどう捉えているのか。どんな会社であろうとしているのか。糸井氏に言葉の真意を聞いた。(週刊エコノミスト編集部/Yahoo!ニュース 特集編集部)

「自分たちが使いたいモノを作る」

糸井氏は1998年にウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を立ち上げ、個人事務所から株式会社化した「ほぼ日」(東京都港区、社員74人、2016年8月期の売上高37億円)が3月、東京証券取引所ジャスダック市場に上場した。同社は「ほぼ日刊イトイ新聞」の運営や、「ほぼ日手帳」はじめ商品販売などを行う。インタビュアーは『週刊エコノミスト』編集長、金山隆一。

―― なぜ今まで会社を続けてこられたのだと思いますか。

運がよかったからと、まじめにやってきたから。この2つだと思いますね。ウェブサイトの読み物を作るにしても、販売するモノを作るにしても、案外、労働集約型の仕事なんですよ。手をかけてコツコツやったことが皆さんに喜ばれているという形です。

糸井重里氏(撮影:武市公孝)

―― 何で稼いできたんですか。

ほぼ日手帳の売り上げが7割です。「手帳で食っている会社でしょ」と批判がましく言われることもあるのですが、そう見てくださってかまわないと思います。

―― 60万部以上売れるほど支持されているというのは、よっぽど良い手帳なんですね。

自分たちが使いたいモノを作るというのが僕らの姿勢です。生意気な言い方をすれば、「良いに決まっている」というモノを出すようにしているので、それがよかったんだと思います。

―― 残りの3割は。

ほかにもタオルやハラマキといった「モノの形をしたコンテンツ」がずいぶんあります。生活の中で自分たちが「こういうモノがあればいいのにな」と思うモノを考えて、「なぜ、ないんだろう」とさんざん話をして、僕らが欲しいモノを作っています。

2001年に発売した「ほぼ日手帳」は1日1ページ。予定を管理するだけでなく、思いついたことを書きとめたりと自由な使い方ができる点が人気を呼んだ。そのほか、ハラマキをはじめオリジナルの生活用品を企画。いずれも「ほぼ日刊イトイ新聞」のなかで商品の成り立ちや特徴を読み物として紹介すると同時に、販売している。

手帳はペンを差せば開かないストッパーや24時間の罫線など工夫が凝らされている(撮影:週刊エコノミスト編集部)

―― 商品カタログと読み物を組み合わせた雑誌「通販生活」とはどこが違うんですか。

通販生活の創業者、斎藤駿さんには僕たちを見るに見かねて、いろいろとご指導いただきました。「通販生活」は雑誌を作って、通販メディアにしようと始めましたよね。僕はメディアを作りたいと考えたわけじゃなくて、最初から、ただ「場」を作りたかった。

―― メディアではなく「場」とは、どういう意味ですか。

「ほぼ日刊イトイ新聞」のウェブサイトを作った頃から、いずれ「ほぼ街」を作ろうと思っていました。ロールプレイングゲームで主人公が動き回る「街」みたいにしたかったんですよ。建物に入ってみたらお茶を飲める場所があるというように。「ほぼ日刊イトイ新聞」は読み物中心で始めたので、今はまだ文字のコンテンツが並ぶデザインですが、街のような存在だと思っています。

ウェブサイトは「ほぼ日刊」とされながら毎日更新される(撮影:週刊エコノミスト編集部)

―― 「ほぼ街」を目指すなかで、手帳が売り上げの7割という比率は変えていきますか。

他が伸びていって、相対的に手帳の割合が下がっていってほしいとは思っています。他とは、犬、猫と人が親しくなるためのアプリ「ドコノコ」やイベントですね。

3月には東京・六本木ヒルズで「生活のたのしみ展」というイベントを3日間、やりました。自分たちと、親しい人たちでいいモノを作っているなと思う人のコンテンツを1つずつお店にして、20ほどのお店を出しました。イベントはみんなに喜ばれています。儲からないですけど。

「ほぼ日」の活動範囲はいまやウェブにとどまらない。2014年にショップとイベントスペースを兼ねた「TOBICHI」を東京・南青山にオープンさせた。2016年にリリースしたアプリ「ドコノコ」は犬と猫のための写真投稿SNSだ。

小屋のような外観の「TOBICHI」(撮影:週刊エコノミスト編集部)

―― 「場を作る」といっても、ウェブ上や店舗の“場所貸し”をして稼いでいるわけではないんですよね。

よく「ウェブサイトに広告を載せないんですか」と聞かれますよ。広告価値はあると思います。広告が面白いというのもよく分かっているんです。自分もコピーライターとしてやってきたわけですから。

広告って書いていないメッセージがものすごく多いから、読者としては面白いことは確かなんです。新聞に15段1ページの広告を打っていれば、何かこの会社はやりたいことがあるんだなって思う。広告だけのウェブサイトを作っても面白いと思います。

僕が今やりたいことと広告がフィットしないので載せていませんが、すぐに利益が欲しい株主には裏切りに見えるかもしれない。そこはこれから話し合っていかなければならないと思っています。

「僕がいなくなっても株価が下がらない会社」

3月16日、東京証券取引所のジャスダック市場に上場(写真:東洋経済/アフロ)

―― 上場した理由は。

「ほぼ日刊イトイ新聞」を始めた時から、しっかりした体制を作るということは頭のなかにありました。実際にチームが育っていって、サポーターも育っていってくれた。僕がいなくなった時にそれがなくなってしまったら、つまらないですよね。上場することでオーソライズ(公認)されたと言えるかもしれません。

―― 糸井さんは、「不思議、大好き。」「おいしい生活。」「くうねるあそぶ。」など数々の名キャッチコピーを生み出すコピーライターとして活躍していました。それなのに、どうして「ほぼ日刊イトイ新聞」を始めたんですか。

自分たちがイニシアチブをもって仕事をしていくことが本当に大事だと思ったからです。単なる下請けになって、ダメになったら捨てられるんじゃなくて。ダメならダメで責任があるけれど、うまくいったら自分たちがちゃんと利益を得て、それを応援してくれるお客さんが一緒に喜べる。そういうことがしたくて、フリーのコピーライターを辞めたんです。

先輩たちを見ていると、老化に従って上手にリタイアする方もいますが、「昔は元気だったんだけどな」と感じるような方もいます。プロダクション的に仕事をしてきた会社が、リーダーがいなくなると何となくつまらなくなっていくこともあります。

コピーライターとして活躍(1989年)(写真:読売新聞/アフロ)

―― 糸井さんがいなくなった時、「ほぼ日」という会社はどうなるんだろう。投資家やファンは不安があると思います。

そのまま同じじゃない、ということは分かっています。僕の個人的なさみしさとしては、「イトイがいなくなった方がよくなったなぁ」と言われたくもない。

「ライバルはディズニー」と冗談みたいに言っているんですが、ウォルト・ディズニーがいなくなっても、ディズニー社は機能しています。自分がいなくなった時にもっと面白くなるようなことがありうるんじゃないかと思って、少しずつ準備しています。

「ほぼ日」のロゴはグラフィックデザイナー佐藤卓さんのデザイン(撮影:週刊エコノミスト編集部)

―― 糸井さんが引退する時には株価は下がりますよね。

もし株価が下がったら、僕の仕事が足りていなかったんでしょうね。この2年ぐらい僕がしているのは、僕がいなくなってもできる仕事をどんどん増やしていくことです。

―― 上場で得た資金は何に使いますか。

人を雇うことに使います。そう言うと、営業マンをたくさん入れるのかとか誤解されるんですが、そうじゃない。本当に人が必要です。内部の人が育つためにも、「そこにかけられるお金がある」と思えるのはすごく助かります。

―― どんな人を求めていますか。

実現力がある人が欲しいですね。社内にも育ってはきているけれど、社外には、驚くようなスピード感で仕事をしたり、思いもよらないメンバーを巻き込んだり、びっくりするほどかっこいい人がいます。現役でバリバリやっている人に、どうすれば「ほぼ日」に入ってもらえるかという時、「お金はないけれど頑張ろうね」と言ってもダメですよね。

インタビュー風景。「ほぼ日」のオフィスには木がふんだんに使われている(撮影:武市公孝)

モノもお金も、相対的な価値が下がった

冒頭の「最短かつ最効率で利益を得る会社が、人に喜ばれるとは思えない」という糸井氏の発言は、上場前の日本経済新聞(2017年3月4日付朝刊)に掲載されたインタビュー記事中のものだ。記事では「人格としてその会社がいいなと思い、そこの商品を使ったり株を買ったりして応援する方向に世の中は変わっていくと思う」とも述べている。

―― 糸井さんの発言を読んで、この人は資本主義に挑戦しているんだと思いました。僕は高校生だった1982年に、糸井さんが司会をしていた「YOU」というテレビ番組(当時のNHK教育テレビ)の収録を見に行ったことがあります。バブルの前から世に出てきて、バブルも知っている人が今、そんなことを話すのは驚きでした。

「利益が第一の目標になると、ずれていく」。上場時、糸井氏の発言は注目された(撮影:武市公孝)

自分の居心地の良さ、悪さで自分の行動って決まるので、理念を先に考えて、理念に合わせて行動することは、僕はあまりしたくないんです。ポスト資本主義の話はバブル崩壊の後あたりからずっと語られていますが、僕はそういう記事を読んで、「こういう考え方もあるのか」と思う程度です。

僕が強く興味を持ったのは、岩井克人さんが書いた『会社はこれからどうなるのか』(2003年)、『会社はだれのものか』(2005年)という本です。

当時、東京大学経済学部教授だった岩井克人氏は、米国流の「会社は株主のもの」という考え方に疑問を呈し、資本主義のあり方が変わっていく時代に求められる会社の姿を模索した。「ほぼ日刊イトイ新聞」では岩井氏へのインタビューを2003年に掲載している。

「会社はこれからどうなるのか?」

「続・会社はこれからどうなるのか?」

資本主義が転換期にさしかかっていると論じる岩井克人氏の著書(撮影:週刊エコノミスト編集部)

―― 岩井さんの考えのどのような点に興味を持ったんですか。

「資本主義を構成している要素が変化している」という視点です。

1つは、今の時代は、あらゆるモノが在庫になっていると思うんです。生産能力がどんどん上がって、欲しくないモノをたくさん作るという状況です。

実はお金も在庫になっています。「投資」というと聞こえはいいですが、そのまま置いておいたらお金の意味がないから、お金に仕事をさせようとするわけです。それがものすごく難しくなっている。

モノやお金の価値が相対的に下がっているのとは逆に、人の価値はどんどん上がっています。モノを作るための労働力としてよりも、イノベーションを生み出すような人材だとか、無理かもしれないことでも実現できるよう工夫する人材だとか、そういう人が圧倒的に足りないと思います。

「何かを生み出す人の価値が上がっている」

―― お金と人の重要度が逆転しているということですか。

腕組みして「うん、うん」と言っている人はいくらでも増えました。特にインターネット上に。だけど使い物になりません。具体的に何かを生み出す人の価値はどんどん上がっています。

そのなかで「僕らがどういう仕事をして、どうやって自分を養うのか」、あるいは「自分たちが生きることをどう面白く、生き生きとさせていくのか」ということを考えていけたらいいなと思っています。だから、資本主義に挑戦しているのではなく、資本主義の流れのなかで泳ぎ方を考えている程度のことだと僕は思っています。

「何かを生み出す人の価値が上がっていると思います」(撮影:武市公孝)

―― 資本主義のもと経済成長を続けるには、人間の経済活動を支える資源として「地球が2ついる」とも言われます。

地球がもう1つ欲しいのは、それだけ消費させたいわけですよね。消費が滞っているから在庫になっているわけで、人間には生きている間にそれほど消費する力はないんですが、生産の方だけはいくらでも作れるようになった。悩ましいのはエネルギーだけ、みたいな状況です。たぶんこれは、必ずどこかに落ち着くと思います。

したいことを今はできないと思い込んでいる

―― 今の状況は、資本主義に内在していた問題が表面化しただけだということですか。

そうだと思うんですよね。

よく語られる逸話としてこんな話があります。金融市場みたいなところでバリバリ働いていた人が田舎町に出かけて、そこで釣りをしている人を見て「いいな、オレもいずれやりたいんだよ、リタイアして」と言う。すると釣りをしている人が「今やればいいじゃないか。オレはしているぞ」と言う。

つまり、お金をいくら持っているかとか、どういう地位を持っているかに関係なく、「今、釣りができるのに、できないと思い込んでいる」というのが今の資本主義だと思えるんです。

だから、仕事のなかに楽しい釣りの要素が1つは欲しいし、今すぐ釣りをすればいい。これがヒントのような気がしていて、僕はできるだけそうしたいと思って生きていますね。

資本主義のなかでどう生きる (写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

「自分の利益を考えることを休ませる知性」

―― 僕は、自分の利益を優先する資本主義の代わりになるものとして、自分を殺してでも人を生かすという利他性がキーワードになるのかなと思っています。

「昔はよかった」というように利他性は資本主義と対立させて考えられがちですが、そうではなくて、混じっているのだと思います。つまり、「自分がどれだけ利益を得られるか」を考えることを休ませる知性が求められている。知性をぐるぐる回転させることで、知性を休ませるというか。

たとえば、ものすごくくたびれている時にサウナに行ったら、気持ちがいい。その時間は一銭も稼いでくれないけれど、行かずに仕事をし続けていたら死んじゃうというのも本当です。ポートフォリオをどう作るかだと思います。

その時、油断してはいけないのは、「昔、生きていた利他性が負けて、今の時代になった」という歴史があることです。自分がいかに利益を得るかと考える「知恵」を身につけた人間が、どうやって「昔はよかったね」と言われるようなこと、利他性を獲得するのか。バカになるのも知性ですからね、今は。

「バカになるのも知性」(撮影:武市公孝)

―― 「儲けようとする知性を休ませる知性」ですか。考えさせられる言葉です。

キーワードとして「親切」があると思います。もしかしたら自分と利害が相反することかもしれないけれど、それをした方が、この場、あるいはこの先に対していい影響を与えるという判断をする。そのことが自分にも快感になる。それが「親切」です。けっこう高度な知性だと思うんですよ。

「情けは人のためならず」というのはすごくクールな言葉だと思うんですが、翻訳としては「情けは自分のためにもなるしね」と言えばいいと思う。ただし、同じ言葉を「情けは人のためではなく、自分のためなんだ」と言い換えて攻めてくるものに負けてしまう可能性はもちろんあります。そこで負けないための何かを持っている必要があると思いますね。

上場で問われるもの

――  そんな糸井さんが資本主義の真ん中にある株式市場に上場して、どう受け止められましたか。

「どれだけできるか見てやろうじゃないか」と好意的にも言われるし、悪意を持っても言われます。「投資家は数字で見ますよ。もっと利益を上げて、株価を上げなさい、という人たちがいますよ」と。そこで「ほら、この方が利益が上がったでしょ」と言えるのが一番簡単なんですけれど、それほど簡単ではない。

「こういうやり方をしたらうまくいく」というものはないので、上場したことで今まで以上に、事業の質や規模が問われるようになったと思うんです。

それに、弱っちい動物なりに生き延びたとか体が大きくなったとか、そういうのを多少は見せないとつまらないですよね。僕みたいなことを言っている人間がやっぱりダメだったとなったら、後の人も寂しいですから。

週刊エコノミストの金山編集長(右)と(撮影:武市公孝)

糸井重里(いとい・しげさと)
1948年群馬県生まれ。群馬県立前橋高校卒業、法政大学文学部中退。コピーライター、作詞家、タレント、エッセイストとして活躍。1998年に「ほぼ日刊イトイ新聞」を開設。2016年12月、「株式会社東京糸井重里事務所」を「株式会社ほぼ日」に社名変更。68歳。

日本経済と世界経済の核心を分析する経済誌「週刊エコノミスト」と「Yahoo!ニュース 特集」が共同で記事を制作します。今後取り上げて欲しいテーマや人物、記事を読んだ感想などをお寄せください。メールはこちらまで。eco-mail@mainichi.co.jp

2017-08-16 アントニオ糸井。

[]外部から考えるイノベーション。(1) 外部から考えるイノベーション。(1) - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 外部から考えるイノベーション。(1) - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

糸井重里氏、日経インタビューより。

利益をたくさん出せればうれしいが、それが第一の目標になるとずれていくと思う。

自分は大学の経済学の授業で「企業は利益の最大化を目的とするもの」と習った。
会社のスタッフにもそう講義した。
けどどこかで「極大化かよ」と思った。

記事では「人格としてその会社がいいなと思い、そこの商品を使ったり株を買ったりして応援する方向に世の中は変わっていくと思う」とも述べている。

これだけのことも、これまでの経営者ははっきり言ってこなかったと思う。
環境に配慮した「グリーン市場」も唱えられて久しいが未だメジャーとは言えない。
糸井さんは「『会社はだれのものか』(2005年)岩井克人著」を読み、

資本主義に挑戦しているのではなく、資本主義の流れのなかで泳ぎ方を考えている程度のことだと僕は思っています。
という。

けどこれって立派な挑戦ですよ。
と僕は思います。
糸井事務所の上場をだから「市場に降臨したアントニオ猪木」と思った人は多いのじゃないかと思います。
(つづく)

儲ける知性を休ませ、親切を――糸井重里に資本主義を聞く

8/14(月) 12:00 配信

「利益をたくさん出せればうれしいが、それが第一の目標になるとずれていくと思う。最短かつ最効率で利益を得る会社が、人に喜ばれるとは思えない」。糸井重里氏が、代表取締役として率いる会社「ほぼ日」を株式上場させる際、発した言葉だ。より利益を上げられる会社の株式を皆が買う――この仕組みは資本主義を発展させてきた。しかし糸井氏は、お金を儲けることよりも大事なことがあるというのだ。いったい、資本主義をどう捉えているのか。どんな会社であろうとしているのか。糸井氏に言葉の真意を聞いた。(週刊エコノミスト編集部/Yahoo!ニュース 特集編集部)

「自分たちが使いたいモノを作る」

糸井氏は1998年にウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」を立ち上げ、個人事務所から株式会社化した「ほぼ日」(東京都港区、社員74人、2016年8月期の売上高37億円)が3月、東京証券取引所ジャスダック市場に上場した。同社は「ほぼ日刊イトイ新聞」の運営や、「ほぼ日手帳」はじめ商品販売などを行う。インタビュアーは『週刊エコノミスト』編集長、金山隆一。

―― なぜ今まで会社を続けてこられたのだと思いますか。

運がよかったからと、まじめにやってきたから。この2つだと思いますね。ウェブサイトの読み物を作るにしても、販売するモノを作るにしても、案外、労働集約型の仕事なんですよ。手をかけてコツコツやったことが皆さんに喜ばれているという形です。

糸井重里氏(撮影:武市公孝)

―― 何で稼いできたんですか。

ほぼ日手帳の売り上げが7割です。「手帳で食っている会社でしょ」と批判がましく言われることもあるのですが、そう見てくださってかまわないと思います。

―― 60万部以上売れるほど支持されているというのは、よっぽど良い手帳なんですね。

自分たちが使いたいモノを作るというのが僕らの姿勢です。生意気な言い方をすれば、「良いに決まっている」というモノを出すようにしているので、それがよかったんだと思います。

―― 残りの3割は。

ほかにもタオルやハラマキといった「モノの形をしたコンテンツ」がずいぶんあります。生活の中で自分たちが「こういうモノがあればいいのにな」と思うモノを考えて、「なぜ、ないんだろう」とさんざん話をして、僕らが欲しいモノを作っています。

2001年に発売した「ほぼ日手帳」は1日1ページ。予定を管理するだけでなく、思いついたことを書きとめたりと自由な使い方ができる点が人気を呼んだ。そのほか、ハラマキをはじめオリジナルの生活用品を企画。いずれも「ほぼ日刊イトイ新聞」のなかで商品の成り立ちや特徴を読み物として紹介すると同時に、販売している。

手帳はペンを差せば開かないストッパーや24時間の罫線など工夫が凝らされている(撮影:週刊エコノミスト編集部)

―― 商品カタログと読み物を組み合わせた雑誌「通販生活」とはどこが違うんですか。

通販生活の創業者、斎藤駿さんには僕たちを見るに見かねて、いろいろとご指導いただきました。「通販生活」は雑誌を作って、通販メディアにしようと始めましたよね。僕はメディアを作りたいと考えたわけじゃなくて、最初から、ただ「場」を作りたかった。

―― メディアではなく「場」とは、どういう意味ですか。

「ほぼ日刊イトイ新聞」のウェブサイトを作った頃から、いずれ「ほぼ街」を作ろうと思っていました。ロールプレイングゲームで主人公が動き回る「街」みたいにしたかったんですよ。建物に入ってみたらお茶を飲める場所があるというように。「ほぼ日刊イトイ新聞」は読み物中心で始めたので、今はまだ文字のコンテンツが並ぶデザインですが、街のような存在だと思っています。

ウェブサイトは「ほぼ日刊」とされながら毎日更新される(撮影:週刊エコノミスト編集部)

―― 「ほぼ街」を目指すなかで、手帳が売り上げの7割という比率は変えていきますか。

他が伸びていって、相対的に手帳の割合が下がっていってほしいとは思っています。他とは、犬、猫と人が親しくなるためのアプリ「ドコノコ」やイベントですね。

3月には東京・六本木ヒルズで「生活のたのしみ展」というイベントを3日間、やりました。自分たちと、親しい人たちでいいモノを作っているなと思う人のコンテンツを1つずつお店にして、20ほどのお店を出しました。イベントはみんなに喜ばれています。儲からないですけど。

「ほぼ日」の活動範囲はいまやウェブにとどまらない。2014年にショップとイベントスペースを兼ねた「TOBICHI」を東京・南青山にオープンさせた。2016年にリリースしたアプリ「ドコノコ」は犬と猫のための写真投稿SNSだ。

小屋のような外観の「TOBICHI」(撮影:週刊エコノミスト編集部)

―― 「場を作る」といっても、ウェブ上や店舗の“場所貸し”をして稼いでいるわけではないんですよね。

よく「ウェブサイトに広告を載せないんですか」と聞かれますよ。広告価値はあると思います。広告が面白いというのもよく分かっているんです。自分もコピーライターとしてやってきたわけですから。

広告って書いていないメッセージがものすごく多いから、読者としては面白いことは確かなんです。新聞に15段1ページの広告を打っていれば、何かこの会社はやりたいことがあるんだなって思う。広告だけのウェブサイトを作っても面白いと思います。

僕が今やりたいことと広告がフィットしないので載せていませんが、すぐに利益が欲しい株主には裏切りに見えるかもしれない。そこはこれから話し合っていかなければならないと思っています。

「僕がいなくなっても株価が下がらない会社」

3月16日、東京証券取引所のジャスダック市場に上場(写真:東洋経済/アフロ)

―― 上場した理由は。

「ほぼ日刊イトイ新聞」を始めた時から、しっかりした体制を作るということは頭のなかにありました。実際にチームが育っていって、サポーターも育っていってくれた。僕がいなくなった時にそれがなくなってしまったら、つまらないですよね。上場することでオーソライズ(公認)されたと言えるかもしれません。

―― 糸井さんは、「不思議、大好き。」「おいしい生活。」「くうねるあそぶ。」など数々の名キャッチコピーを生み出すコピーライターとして活躍していました。それなのに、どうして「ほぼ日刊イトイ新聞」を始めたんですか。

自分たちがイニシアチブをもって仕事をしていくことが本当に大事だと思ったからです。単なる下請けになって、ダメになったら捨てられるんじゃなくて。ダメならダメで責任があるけれど、うまくいったら自分たちがちゃんと利益を得て、それを応援してくれるお客さんが一緒に喜べる。そういうことがしたくて、フリーのコピーライターを辞めたんです。

先輩たちを見ていると、老化に従って上手にリタイアする方もいますが、「昔は元気だったんだけどな」と感じるような方もいます。プロダクション的に仕事をしてきた会社が、リーダーがいなくなると何となくつまらなくなっていくこともあります。

コピーライターとして活躍(1989年)(写真:読売新聞/アフロ)

―― 糸井さんがいなくなった時、「ほぼ日」という会社はどうなるんだろう。投資家やファンは不安があると思います。

そのまま同じじゃない、ということは分かっています。僕の個人的なさみしさとしては、「イトイがいなくなった方がよくなったなぁ」と言われたくもない。

「ライバルはディズニー」と冗談みたいに言っているんですが、ウォルト・ディズニーがいなくなっても、ディズニー社は機能しています。自分がいなくなった時にもっと面白くなるようなことがありうるんじゃないかと思って、少しずつ準備しています。

「ほぼ日」のロゴはグラフィックデザイナー佐藤卓さんのデザイン(撮影:週刊エコノミスト編集部)

―― 糸井さんが引退する時には株価は下がりますよね。

もし株価が下がったら、僕の仕事が足りていなかったんでしょうね。この2年ぐらい僕がしているのは、僕がいなくなってもできる仕事をどんどん増やしていくことです。

―― 上場で得た資金は何に使いますか。

人を雇うことに使います。そう言うと、営業マンをたくさん入れるのかとか誤解されるんですが、そうじゃない。本当に人が必要です。内部の人が育つためにも、「そこにかけられるお金がある」と思えるのはすごく助かります。

―― どんな人を求めていますか。

実現力がある人が欲しいですね。社内にも育ってはきているけれど、社外には、驚くようなスピード感で仕事をしたり、思いもよらないメンバーを巻き込んだり、びっくりするほどかっこいい人がいます。現役でバリバリやっている人に、どうすれば「ほぼ日」に入ってもらえるかという時、「お金はないけれど頑張ろうね」と言ってもダメですよね。

インタビュー風景。「ほぼ日」のオフィスには木がふんだんに使われている(撮影:武市公孝)

モノもお金も、相対的な価値が下がった

冒頭の「最短かつ最効率で利益を得る会社が、人に喜ばれるとは思えない」という糸井氏の発言は、上場前の日本経済新聞(2017年3月4日付朝刊)に掲載されたインタビュー記事中のものだ。記事では「人格としてその会社がいいなと思い、そこの商品を使ったり株を買ったりして応援する方向に世の中は変わっていくと思う」とも述べている。

―― 糸井さんの発言を読んで、この人は資本主義に挑戦しているんだと思いました。僕は高校生だった1982年に、糸井さんが司会をしていた「YOU」というテレビ番組(当時のNHK教育テレビ)の収録を見に行ったことがあります。バブルの前から世に出てきて、バブルも知っている人が今、そんなことを話すのは驚きでした。

「利益が第一の目標になると、ずれていく」。上場時、糸井氏の発言は注目された(撮影:武市公孝)

自分の居心地の良さ、悪さで自分の行動って決まるので、理念を先に考えて、理念に合わせて行動することは、僕はあまりしたくないんです。ポスト資本主義の話はバブル崩壊の後あたりからずっと語られていますが、僕はそういう記事を読んで、「こういう考え方もあるのか」と思う程度です。

僕が強く興味を持ったのは、岩井克人さんが書いた『会社はこれからどうなるのか』(2003年)、『会社はだれのものか』(2005年)という本です。

当時、東京大学経済学部教授だった岩井克人氏は、米国流の「会社は株主のもの」という考え方に疑問を呈し、資本主義のあり方が変わっていく時代に求められる会社の姿を模索した。「ほぼ日刊イトイ新聞」では岩井氏へのインタビューを2003年に掲載している。

「会社はこれからどうなるのか?」

「続・会社はこれからどうなるのか?」

資本主義が転換期にさしかかっていると論じる岩井克人氏の著書(撮影:週刊エコノミスト編集部)

―― 岩井さんの考えのどのような点に興味を持ったんですか。

「資本主義を構成している要素が変化している」という視点です。

1つは、今の時代は、あらゆるモノが在庫になっていると思うんです。生産能力がどんどん上がって、欲しくないモノをたくさん作るという状況です。

実はお金も在庫になっています。「投資」というと聞こえはいいですが、そのまま置いておいたらお金の意味がないから、お金に仕事をさせようとするわけです。それがものすごく難しくなっている。

モノやお金の価値が相対的に下がっているのとは逆に、人の価値はどんどん上がっています。モノを作るための労働力としてよりも、イノベーションを生み出すような人材だとか、無理かもしれないことでも実現できるよう工夫する人材だとか、そういう人が圧倒的に足りないと思います。

「何かを生み出す人の価値が上がっている」

―― お金と人の重要度が逆転しているということですか。

腕組みして「うん、うん」と言っている人はいくらでも増えました。特にインターネット上に。だけど使い物になりません。具体的に何かを生み出す人の価値はどんどん上がっています。

そのなかで「僕らがどういう仕事をして、どうやって自分を養うのか」、あるいは「自分たちが生きることをどう面白く、生き生きとさせていくのか」ということを考えていけたらいいなと思っています。だから、資本主義に挑戦しているのではなく、資本主義の流れのなかで泳ぎ方を考えている程度のことだと僕は思っています。

「何かを生み出す人の価値が上がっていると思います」(撮影:武市公孝)

―― 資本主義のもと経済成長を続けるには、人間の経済活動を支える資源として「地球が2ついる」とも言われます。

地球がもう1つ欲しいのは、それだけ消費させたいわけですよね。消費が滞っているから在庫になっているわけで、人間には生きている間にそれほど消費する力はないんですが、生産の方だけはいくらでも作れるようになった。悩ましいのはエネルギーだけ、みたいな状況です。たぶんこれは、必ずどこかに落ち着くと思います。

したいことを今はできないと思い込んでいる

―― 今の状況は、資本主義に内在していた問題が表面化しただけだということですか。

そうだと思うんですよね。

よく語られる逸話としてこんな話があります。金融市場みたいなところでバリバリ働いていた人が田舎町に出かけて、そこで釣りをしている人を見て「いいな、オレもいずれやりたいんだよ、リタイアして」と言う。すると釣りをしている人が「今やればいいじゃないか。オレはしているぞ」と言う。

つまり、お金をいくら持っているかとか、どういう地位を持っているかに関係なく、「今、釣りができるのに、できないと思い込んでいる」というのが今の資本主義だと思えるんです。

だから、仕事のなかに楽しい釣りの要素が1つは欲しいし、今すぐ釣りをすればいい。これがヒントのような気がしていて、僕はできるだけそうしたいと思って生きていますね。

資本主義のなかでどう生きる (写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

「自分の利益を考えることを休ませる知性」

―― 僕は、自分の利益を優先する資本主義の代わりになるものとして、自分を殺してでも人を生かすという利他性がキーワードになるのかなと思っています。

「昔はよかった」というように利他性は資本主義と対立させて考えられがちですが、そうではなくて、混じっているのだと思います。つまり、「自分がどれだけ利益を得られるか」を考えることを休ませる知性が求められている。知性をぐるぐる回転させることで、知性を休ませるというか。

たとえば、ものすごくくたびれている時にサウナに行ったら、気持ちがいい。その時間は一銭も稼いでくれないけれど、行かずに仕事をし続けていたら死んじゃうというのも本当です。ポートフォリオをどう作るかだと思います。

その時、油断してはいけないのは、「昔、生きていた利他性が負けて、今の時代になった」という歴史があることです。自分がいかに利益を得るかと考える「知恵」を身につけた人間が、どうやって「昔はよかったね」と言われるようなこと、利他性を獲得するのか。バカになるのも知性ですからね、今は。

「バカになるのも知性」(撮影:武市公孝)

―― 「儲けようとする知性を休ませる知性」ですか。考えさせられる言葉です。

キーワードとして「親切」があると思います。もしかしたら自分と利害が相反することかもしれないけれど、それをした方が、この場、あるいはこの先に対していい影響を与えるという判断をする。そのことが自分にも快感になる。それが「親切」です。けっこう高度な知性だと思うんですよ。

「情けは人のためならず」というのはすごくクールな言葉だと思うんですが、翻訳としては「情けは自分のためにもなるしね」と言えばいいと思う。ただし、同じ言葉を「情けは人のためではなく、自分のためなんだ」と言い換えて攻めてくるものに負けてしまう可能性はもちろんあります。そこで負けないための何かを持っている必要があると思いますね。

上場で問われるもの

――  そんな糸井さんが資本主義の真ん中にある株式市場に上場して、どう受け止められましたか。

「どれだけできるか見てやろうじゃないか」と好意的にも言われるし、悪意を持っても言われます。「投資家は数字で見ますよ。もっと利益を上げて、株価を上げなさい、という人たちがいますよ」と。そこで「ほら、この方が利益が上がったでしょ」と言えるのが一番簡単なんですけれど、それほど簡単ではない。

「こういうやり方をしたらうまくいく」というものはないので、上場したことで今まで以上に、事業の質や規模が問われるようになったと思うんです。

それに、弱っちい動物なりに生き延びたとか体が大きくなったとか、そういうのを多少は見せないとつまらないですよね。僕みたいなことを言っている人間がやっぱりダメだったとなったら、後の人も寂しいですから。

週刊エコノミストの金山編集長(右)と(撮影:武市公孝)

糸井重里(いとい・しげさと)
1948年群馬県生まれ。群馬県立前橋高校卒業、法政大学文学部中退。コピーライター、作詞家、タレント、エッセイストとして活躍。1998年に「ほぼ日刊イトイ新聞」を開設。2016年12月、「株式会社東京糸井重里事務所」を「株式会社ほぼ日」に社名変更。68歳。

日本経済と世界経済の核心を分析する経済誌「週刊エコノミスト」と「Yahoo!ニュース 特集」が共同で記事を制作します。今後取り上げて欲しいテーマや人物、記事を読んだ感想などをお寄せください。メールはこちらまで。eco-mail@mainichi.co.jp

2017-06-28 窓からこちらに。

[]向こうに探される時代。 向こうに探される時代。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 向こうに探される時代。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

googleが仕事の情報の提供を始めるという。
エライ時代になったものだと思う。
巷のニュースでは、そのうち「あらゆる人があらゆる仕事をシェアする時代」になるという。
会社の帰り道についでに買い物のデリバリーを手伝ったり、ふらりと出かける自転車の後ろに誰かを乗せていくかもしれない。
余った時間に「こんなことやりませんか?」と言われたら案外「お相手しましょうか?」となるような気もする。

検索する窓が、あくまで「欲しいものを探す」とか「気に入りそうなものを表示してくる」ということだったのが、もうこの窓口が起点になって「向こうから提案してくる時代」になるらしい。
IoTであらゆるものがネットにつながるのも無限の可能性を感じるが、人対人がこれからシェアする仕組みも本番はこれからだと思う。

10年後はちょっと想像のつかないことが日常になっているような気がします。


Googleが検索結果に求人情報の掲載を開始

雇用者の46%が人材不足に直面しているというデータが存在するように、アメリカでは適切な人材を雇用することに四苦八苦している企業が多く存在します。そんな中、より簡単かつ便利に求人情報を求職者のもとに届けることができるようになる機能をGoogleが実装しました。

Connecting more Americans with jobs
https://blog.google/products/search/connecting-more-americans-jobs/

Googleは開発者向けイベント「Google I/O」の中で求職者と雇用者の両方を支援することに重点を置いた「Google for Jobs」という取り組みを発表しました。この取り組みには2016年に発表された、機械学習に基づき極めて直観的に使える仕事検索機能を提供する「Cloud Jobs API」が含まれています。

GoogleはGoogle for Jobsでの活動をさらに進めるため、アメリカ国内の求職者と雇用機会を結び付けるための新しい施策も発表しました。その施策というのは、Googleの検索エンジンから直接求人情報を探せるようになるというもので、実際にどんな感じで求人情報を探せるようになるのかは以下のムービーを見るとわかります。

Find your next job, with Google - YouTube

新しく仕事を探す際、求人サイトを見たり、自分で入社したい会社に問い合わせたり、人材派遣会社に登録したりとさまざまな方法がありますが……

これからはGoogleの検索バーに「jobs near me(近くの仕事)」もしくは「teaching jobs(仕事を教えて)」と入力するだけで、ウェブ上から条件に合致した求人情報を集めてくれます。

検索すると以下のように求人情報がカード形式で並んで表示されます。

表示する情報は業種や……

求人情報が掲載された日付

勤務形態などでフィルターをかけることもできます。

さらに、検索した条件に合致する求人情報が新しく追加された場合に通知を受けることも可能。自分の求める求人情報を見逃すこともなくなるわけです。

求人情報の収集元はLinkedIn、Monster、WayUp、DirectEmployers、CareerBuilder、Glassdoor、Facebookなどで、Googleによると、この機能は「本日から英語版サービスをデスクトップとモバイルで開始する」とのこと。将来的には日本でも同様の機能が使えるようになるのかも知れません。

2017-06-19 人は人格。(3)

[]私も半端もん。 私も半端もん。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 私も半端もん。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

自分もそのたぐいだからだろうか。
「半端者」とか「端くれ」とかいう言葉に妙に惹かれる。
どこかの馬の骨、ってなんか素敵じゃないだろうか。
エリートで活躍するより、底辺から何かやる、というヒーロー伝の影響かもしれない。

「水滸伝」とか「三国志」。
どちらもエリートばかりではなく、むしろ在野の半端者を中心に「志」を中心に据えた物語の傑作だ。
生い立ちとか、時代背景とか、外部環境とか、いろんなギャップを乗り越えて「国づくり」といった理念に収斂されていく。

そこで私は最も信頼出来る部下に城を任せ、社内で所を得ていない「半端もん」、つまりは愚人を引き連れて敵地に乗り込むことにしたのです。何しろ半端もんばかりですから、最初は大変です。しかし、激しい戦いで辛酸をなめ、私の戦いぶりを見ているうちに、半端もんたちがひとかどの武将に育ちます。新しい領土は取れるし、人は育つしで一石二鳥です。

今は日常的に"イノベーション"が叫ばれて久しいが、実はそのイノベーションを見てみれば、「エスタブリッシュの業績の山」から出てくるものより「半端もんの中から出てくる意外性」が勝っているのではないだろうか。
志があれば、むしろしがらみのない「半端もんの力」は侮れない。
志がなければそのままの半端もん、ですが。


“新・経営の神様”稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)

“新・経営の神様”稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」
日本を「幸せに導く」方法とは

JALの再生では、人間性の大切さを説き続けた〔PHOTO〕gettyimages

聞き手/大西康之

京セラ(年間売上約1.5兆円)、KDDI(同約4.5兆円)という二つの巨大企業を創業、瀕死のJALを再生に導いたカリスマが語った、日本の会社を、そして日本の社会を「幸せに導く」方法とは?

虚飾をむしる

――東芝や三菱自動車のような名門でなぜ不祥事が相次ぐのでしょうか。

稲盛 今の日本企業は才覚のある人をリーダーとして重用します。私はリーダーを選ぶとき、能力ではなく人間性や人格で選びます。能力に多少の問題があっても人格のある人は努力をして成長する。そういう人をリーダーに選んでこなかったことが、問題を引き起こしているのではないか。

昔、京セラがまだ町工場だった頃、滋賀の工場で細かい仕事を黙々とする男がいました。工場へ行くたびに、なぜか彼の手元に目がいってしまうのです。中学しか出ておらず、才能などない、真面目が取り柄の男でしたが、周囲に押される形で頭角を現し、課長、部長になっていきました。

経営者は「儲けたい」「会社を大きくしたい」という我欲を起点にしがちです。しかし、本来は「人間として何が正しいか」を起点に置くべきです。自分の会社に都合がいいことばかりを選ぶのではなく、たとえ会社に不利であっても人間として正しい道を選ぶ。

そういう信念を私はフィロソフィーと呼んでいます。フィロソフィーをしっかり持った上で、一心不乱に仕事に打ち込む。そういう生き方をしていれば、道を踏み外すことはありません。

おおにし・やすゆき / 日経新聞、日経ビジネス記者を経て、現在フリーの経済ジャーナリスト。著書に『稲盛和夫 最後の闘い―JAL再生にかけた経営者人生』『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説の技術者 佐々木正』など
NEXT ▶ 天狗になった京セラ創業期

ページ: 2

“新・経営の神様”稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」
日本を「幸せに導く」方法とは

中国の司馬光という人が書いた『資治通鑑』という本によると、人間の能力を「才」、人間性を「徳」とした場合、才も徳もある人は「聖人」、徳が才に勝る人は「君子」、才が徳に勝る人は「小人」、才も徳もない人は「愚人」だそうです。

会社に聖人や君子がいれば、その人をリーダーにすればいい。しかし、なかなかそんな立派な人は見つかりません。そこで多くの会社では小人をリーダーにしてしまう。これが危ないのです。才があっても人間性のない人は己の栄達のために会社を危うい方向に持って行く恐れがある。長い目で見れば、小人よりは愚人のほうが成長します。

――今の日本企業は能力の高い人が出世する仕組みになっています。

稲盛 フィロソフィーがないと、そうなってしまいますね。京セラも成長期には人が足らないので、ずいぶんたくさん中途採用をやりました。外から優秀な人たちがたくさん入ってきたのです。高学歴で立派な職歴を持つ人たちです。私は彼らに言いました。「あなたたちは自分に才能があると思っている。それで世の中を渡っていくつもりかもしれないが、やはり大切なのは人間性だ」と。しかし才のある人たちは話を聞いてくれない。

私は、彼らが能力、実績だと思っている「虚飾」や「うぬぼれ」を引き剥がします。私はこれを「むしる」と呼んでいます。虚飾をむしられると、みすぼらしい自分が出てきます。恥ずかしいから、また一生懸命に虚飾を纏おうとしますが、それをむしる。これを繰り返すと、天狗になっていた人が謙虚になり、物事を学ぶ姿勢に変わります。

松下幸之助さんはこの状態を「素直」と表現されています。自分は小学校しか出ておらず学がないから、人が言うことを素直に聞いた。それで人間として成長できた、とおっしゃっています。

欲望に打ち克つ

私も京セラを立ち上げたばかりの20代の頃、少し天狗になっておりました。自分でファインセラミックスを開発し、自分で作って、自分で売るわけです。「なんだ全部、俺がやってるじゃないか。ならば会社の利益は全部、自分の収入でもおかしくない」と思うこともありました。

しかし「それは違う」と気づいたのです。会社というのは社会のためにみんなが集まって仕事をするところです。確かに私には新製品を開発する才能があったかもしれませんが、自分一人で会社は回らない。そう思えたのは小さな印刷工場を経営していた父の愚直な生き方を見てきたからだと思います。

空襲で工場を焼かれた父は、戦後、元工員が始めた印刷工場で雇われ人として、私たち家族のために働いてくれました。母は「借金をして、もう一度、会社をやろう」と勧めましたが、父は聞き入れませんでした。人を雇うことの怖さを痛感したのだと思います。おかげで私は自分の欲望に打ち克つことができ、道を踏み外さずに生きていくことができました。

NEXT ▶ JALが目覚めた日

ページ: 3

7月13日、14日の2日間、横浜国際平和会議場(パシフィコ横浜)の国立大ホールを約4800人の大観衆が埋め尽くした。稲盛氏が塾長を務める経営者向けの私塾「盛和塾」が年に一度開く世界大会である。

参加者の大半が中堅、中小企業の経営者たちだが、他にも横綱の白鵬、サッカーの元日本代表監督、岡田武史氏、柔道のオリンピック金メダリスト、山下泰裕氏などが塾生に名を連ねる。

現在、塾生は1万1000人(企業数で約1万社)。日本の塾生が約7600人、中国が約2700人。このほかブラジル、アメリカ、台湾にも会員がおり、塾生企業の売上高を合計すると30兆~40兆円規模に達すると見られる(本誌推計)。

1万1000人が学ぶ稲盛流経営の威力とは、どんなものか。東京江東区で看板施工事業を展開するgCストーリーの西坂勇人社長は6年前に盛和塾に入塾してから「年10回の塾長例会を一度も休んだことがない」という熱烈な信奉者。

「入塾するまで経営の目的がはっきりしなかったが、稲盛塾長の話を聞いて、ウチの会社の目的は『人の役に立つことだ』とはっきりした。社員が働きがいを感じるようになり、定着率も上がった」

稲盛氏は、このような中小企業の経営者たちに熱烈な支持を受け続けている。

JALが目覚めた日

――盛和塾は30年以上も続いていますね。

稲盛 日本のサラリーマンの99%は中堅・中小企業で働いている。彼らが一生懸命働いて心を高めれば、きっと日本はよくなるはずです。

一方、JAL(日本航空)のような大企業を再建するときも、私にできる話は同じで、我欲を抑えて仕事に邁進するということでした。

JALには高学歴で才のある人が大勢いて、最初は私の話など聞こうともしませんでした。私はエアラインの仕事に関しては全くの素人で、専門的な話はできませんから、役員など幹部を集め、人間性の大切さを諄々と説き続けました。

するとある日、古株の役員が言ったのです。「会長が言うように、人間として正しいことをやっていたら、JALはこうならなかったかもしれない」と。その日を境に、JALの人々に私の話が染み込むようになりました。今では社員が一丸となって素晴らしい経営をしてくれています。一人一人が人間性を磨けば、会社は必ずよくなります。JALの業績は見違えるように良くなりました。

“新・経営の神様”稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」
日本を「幸せに導く」方法とは

――稲盛経営でフィロソフィーと両輪をなすのが小集団をベースにした管理会計の「アメーバ経営」です。

稲盛 アメーバ経営は私が京セラを経営する中で編み出していったものです。先ほど開発からマーケティングまで自分でやっていたと言いましたが、その頃、切実に思ったのは孫悟空が毛を抜いて分身を作るように、私と同じように考え、判断してくれる社員がいてくれたらどんなに楽か、ということでした。

そこで会社を小集団(アメーバ)に分け、そのリーダーに判断を委ねるようにしました。各アメーバで毎月、時間当たり採算(売上高から経費を引いた金額を労働時間で割った数字)を算出し、目標達成を目指すのです。

リーダーは売り上げを最大、経費を最小にし、労働時間を減らすことを考えます。各アメーバの時間当たり採算は全社に公表されます。

つまりアメーバ経営とは一種の成果主義です。一般に言われている成果主義と違うのは、成果が報酬と連動しないところです。業績を上げた人々は社内で賞賛されますが、処遇は変わりません。業績が上がれば全社員の給料が上がるのです。業績と報酬を連動させた成果主義では、社員は欲望と二人連れで仕事をしてしまう。これではうまくいきません。

自分の報酬に反映されないにもかかわらず頑張れるのは「組織に貢献しよう」という気持ちがあるからです。「全従業員の物心両面の幸福の追求」こそが経営の目的なのです。

――東芝や東京電力、シャープを見ると、これまで安全だと思われてきた大企業でも、いつ何が起きるかわからない。サラリーマンは不安な時代をどう生きればいいのでしょうか。

稲盛 不安や不平不満はあるでしょうが、何があっても一生懸命に仕事をすることです。一生懸命に仕事をすれば人間的に成長し、必ず人生のプラスになる。読書や哲学から学ぶこともできますが、人間性を高めるという意味では、仕事で努力をするのが一番です。まずは自分の置かれた場所で懸命に働いてください。

私は望んだ大学に進むことができず、大手の企業に入ることもできませんでした。鹿児島大学を出て入社したのは、京都にある松風工業という碍子を作る会社でした。入社するまで知らなかったのですが、この会社は今にも潰れそうな状態で、給料の遅滞もしばしば。近所の八百屋のおばさんにまで「かわいそうにねえ」と同情されました。

そんな会社ですから、いつも同期と「早く辞めてしまおう」と話していました。実際、ある時には京都大学の工学部を出た同期と、陸上自衛隊の幹部試験を受けに行きました。彼は松風を辞めて陸自に行きましたが、私は、私を大学に行かせてくれた兄が「せっかく入れてもらった会社を1年やそこらで辞めるのはけしからん」と反対したので松風に残ることになりました。

“新・経営の神様”稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」
日本を「幸せに導く」方法とは

「半端もん」を成長させる

開き直った私は、松風でセラミックの研究に打ち込みました。今にも潰れそうな会社ですから、生きていくために必死です。すると不思議なことに、どんどん成果が出て、画期的なファインセラミックスの製品をいくつも開発することができました。それがきっかけで京セラを興し、私の経営者人生が始まりました。

今考えれば、私の人生の中で松風工業に入社したのは、最高に幸せなことでした。ひょっとしたら神様があの会社に入れてくれたのかもしれません。

――規模に関わりなく多くの企業が後継者難に陥り、人材育成の難しさが指摘されています。

稲盛 私はこれまで「半端もん戦法」で戦ってきました。京セラが多角化を始め、海外進出を本格化した時、私は考えました。新規事業は戦に例えれば敵地に乗り込むわけだから、優秀な武将を連れて行くのが常道です。しかし敵地を攻めている間に自分の城を取られてしまったのでは元も子もありません。

そこで私は最も信頼出来る部下に城を任せ、社内で所を得ていない「半端もん」、つまりは愚人を引き連れて敵地に乗り込むことにしたのです。何しろ半端もんばかりですから、最初は大変です。しかし、激しい戦いで辛酸をなめ、私の戦いぶりを見ているうちに、半端もんたちがひとかどの武将に育ちます。新しい領土は取れるし、人は育つしで一石二鳥です。

世の中では外部から連れてきた「プロ経営者」をもてはやす風潮もありますが、企業は人間の集団です。戦時中の軍歌の文句ではありませんが、「泥水すすり、草を噛んだ」仲でなければ社員はトップを信頼しません。トップにはそういう追い込まれた状態で、なお兵を励ましながら戦う強さが求められるのです。

「週刊現代」2016年8月20日・27日合併号より

2017-06-18 人は人格。(2)

[]成果主義の誤謬。 成果主義の誤謬。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 成果主義の誤謬。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

欲望と二人連れにならない仕事。
ちょっと欧米のマネジメント論にはない焦点ではなかろうか。

つまりアメーバ経営とは一種の成果主義です。
一般に言われている成果主義と違うのは、成果が報酬と連動しないところです。
業績を上げた人々は社内で賞賛されますが、処遇は変わりません。
業績が上がれば全社員の給料が上がるのです。
業績と報酬を連動させた成果主義では、社員は欲望と二人連れで仕事をしてしまう。
これではうまくいきません。

全く当たり前のように語られている「成果報酬」。
それを「成果は成果」「報酬は報酬」と分ける一見非合理的なところに秘密はあるのかもしれない。
ギブアンドテイクは当たり前、という理屈に「何を言う」という大きなストーリーが必要なのだ。

一見当たり前ぽい理屈に、ただ靡(なび)いてはいけない。
(つづく)


“新・経営の神様”稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)

“新・経営の神様”稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」
日本を「幸せに導く」方法とは

JALの再生では、人間性の大切さを説き続けた〔PHOTO〕gettyimages

聞き手/大西康之

京セラ(年間売上約1.5兆円)、KDDI(同約4.5兆円)という二つの巨大企業を創業、瀕死のJALを再生に導いたカリスマが語った、日本の会社を、そして日本の社会を「幸せに導く」方法とは?

虚飾をむしる

――東芝や三菱自動車のような名門でなぜ不祥事が相次ぐのでしょうか。

稲盛 今の日本企業は才覚のある人をリーダーとして重用します。私はリーダーを選ぶとき、能力ではなく人間性や人格で選びます。能力に多少の問題があっても人格のある人は努力をして成長する。そういう人をリーダーに選んでこなかったことが、問題を引き起こしているのではないか。

昔、京セラがまだ町工場だった頃、滋賀の工場で細かい仕事を黙々とする男がいました。工場へ行くたびに、なぜか彼の手元に目がいってしまうのです。中学しか出ておらず、才能などない、真面目が取り柄の男でしたが、周囲に押される形で頭角を現し、課長、部長になっていきました。

経営者は「儲けたい」「会社を大きくしたい」という我欲を起点にしがちです。しかし、本来は「人間として何が正しいか」を起点に置くべきです。自分の会社に都合がいいことばかりを選ぶのではなく、たとえ会社に不利であっても人間として正しい道を選ぶ。

そういう信念を私はフィロソフィーと呼んでいます。フィロソフィーをしっかり持った上で、一心不乱に仕事に打ち込む。そういう生き方をしていれば、道を踏み外すことはありません。

おおにし・やすゆき / 日経新聞、日経ビジネス記者を経て、現在フリーの経済ジャーナリスト。著書に『稲盛和夫 最後の闘い―JAL再生にかけた経営者人生』『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説の技術者 佐々木正』など
NEXT ▶ 天狗になった京セラ創業期

ページ: 2

“新・経営の神様”稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」
日本を「幸せに導く」方法とは

中国の司馬光という人が書いた『資治通鑑』という本によると、人間の能力を「才」、人間性を「徳」とした場合、才も徳もある人は「聖人」、徳が才に勝る人は「君子」、才が徳に勝る人は「小人」、才も徳もない人は「愚人」だそうです。

会社に聖人や君子がいれば、その人をリーダーにすればいい。しかし、なかなかそんな立派な人は見つかりません。そこで多くの会社では小人をリーダーにしてしまう。これが危ないのです。才があっても人間性のない人は己の栄達のために会社を危うい方向に持って行く恐れがある。長い目で見れば、小人よりは愚人のほうが成長します。

――今の日本企業は能力の高い人が出世する仕組みになっています。

稲盛 フィロソフィーがないと、そうなってしまいますね。京セラも成長期には人が足らないので、ずいぶんたくさん中途採用をやりました。外から優秀な人たちがたくさん入ってきたのです。高学歴で立派な職歴を持つ人たちです。私は彼らに言いました。「あなたたちは自分に才能があると思っている。それで世の中を渡っていくつもりかもしれないが、やはり大切なのは人間性だ」と。しかし才のある人たちは話を聞いてくれない。

私は、彼らが能力、実績だと思っている「虚飾」や「うぬぼれ」を引き剥がします。私はこれを「むしる」と呼んでいます。虚飾をむしられると、みすぼらしい自分が出てきます。恥ずかしいから、また一生懸命に虚飾を纏おうとしますが、それをむしる。これを繰り返すと、天狗になっていた人が謙虚になり、物事を学ぶ姿勢に変わります。

松下幸之助さんはこの状態を「素直」と表現されています。自分は小学校しか出ておらず学がないから、人が言うことを素直に聞いた。それで人間として成長できた、とおっしゃっています。

欲望に打ち克つ

私も京セラを立ち上げたばかりの20代の頃、少し天狗になっておりました。自分でファインセラミックスを開発し、自分で作って、自分で売るわけです。「なんだ全部、俺がやってるじゃないか。ならば会社の利益は全部、自分の収入でもおかしくない」と思うこともありました。

しかし「それは違う」と気づいたのです。会社というのは社会のためにみんなが集まって仕事をするところです。確かに私には新製品を開発する才能があったかもしれませんが、自分一人で会社は回らない。そう思えたのは小さな印刷工場を経営していた父の愚直な生き方を見てきたからだと思います。

空襲で工場を焼かれた父は、戦後、元工員が始めた印刷工場で雇われ人として、私たち家族のために働いてくれました。母は「借金をして、もう一度、会社をやろう」と勧めましたが、父は聞き入れませんでした。人を雇うことの怖さを痛感したのだと思います。おかげで私は自分の欲望に打ち克つことができ、道を踏み外さずに生きていくことができました。

NEXT ▶ JALが目覚めた日

ページ: 3

7月13日、14日の2日間、横浜国際平和会議場(パシフィコ横浜)の国立大ホールを約4800人の大観衆が埋め尽くした。稲盛氏が塾長を務める経営者向けの私塾「盛和塾」が年に一度開く世界大会である。

参加者の大半が中堅、中小企業の経営者たちだが、他にも横綱の白鵬、サッカーの元日本代表監督、岡田武史氏、柔道のオリンピック金メダリスト、山下泰裕氏などが塾生に名を連ねる。

現在、塾生は1万1000人(企業数で約1万社)。日本の塾生が約7600人、中国が約2700人。このほかブラジル、アメリカ、台湾にも会員がおり、塾生企業の売上高を合計すると30兆~40兆円規模に達すると見られる(本誌推計)。

1万1000人が学ぶ稲盛流経営の威力とは、どんなものか。東京江東区で看板施工事業を展開するgCストーリーの西坂勇人社長は6年前に盛和塾に入塾してから「年10回の塾長例会を一度も休んだことがない」という熱烈な信奉者。

「入塾するまで経営の目的がはっきりしなかったが、稲盛塾長の話を聞いて、ウチの会社の目的は『人の役に立つことだ』とはっきりした。社員が働きがいを感じるようになり、定着率も上がった」

稲盛氏は、このような中小企業の経営者たちに熱烈な支持を受け続けている。

JALが目覚めた日

――盛和塾は30年以上も続いていますね。

稲盛 日本のサラリーマンの99%は中堅・中小企業で働いている。彼らが一生懸命働いて心を高めれば、きっと日本はよくなるはずです。

一方、JAL(日本航空)のような大企業を再建するときも、私にできる話は同じで、我欲を抑えて仕事に邁進するということでした。

JALには高学歴で才のある人が大勢いて、最初は私の話など聞こうともしませんでした。私はエアラインの仕事に関しては全くの素人で、専門的な話はできませんから、役員など幹部を集め、人間性の大切さを諄々と説き続けました。

するとある日、古株の役員が言ったのです。「会長が言うように、人間として正しいことをやっていたら、JALはこうならなかったかもしれない」と。その日を境に、JALの人々に私の話が染み込むようになりました。今では社員が一丸となって素晴らしい経営をしてくれています。一人一人が人間性を磨けば、会社は必ずよくなります。JALの業績は見違えるように良くなりました。

“新・経営の神様”稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」
日本を「幸せに導く」方法とは

――稲盛経営でフィロソフィーと両輪をなすのが小集団をベースにした管理会計の「アメーバ経営」です。

稲盛 アメーバ経営は私が京セラを経営する中で編み出していったものです。先ほど開発からマーケティングまで自分でやっていたと言いましたが、その頃、切実に思ったのは孫悟空が毛を抜いて分身を作るように、私と同じように考え、判断してくれる社員がいてくれたらどんなに楽か、ということでした。

そこで会社を小集団(アメーバ)に分け、そのリーダーに判断を委ねるようにしました。各アメーバで毎月、時間当たり採算(売上高から経費を引いた金額を労働時間で割った数字)を算出し、目標達成を目指すのです。

リーダーは売り上げを最大、経費を最小にし、労働時間を減らすことを考えます。各アメーバの時間当たり採算は全社に公表されます。

つまりアメーバ経営とは一種の成果主義です。一般に言われている成果主義と違うのは、成果が報酬と連動しないところです。業績を上げた人々は社内で賞賛されますが、処遇は変わりません。業績が上がれば全社員の給料が上がるのです。業績と報酬を連動させた成果主義では、社員は欲望と二人連れで仕事をしてしまう。これではうまくいきません。

自分の報酬に反映されないにもかかわらず頑張れるのは「組織に貢献しよう」という気持ちがあるからです。「全従業員の物心両面の幸福の追求」こそが経営の目的なのです。

――東芝や東京電力、シャープを見ると、これまで安全だと思われてきた大企業でも、いつ何が起きるかわからない。サラリーマンは不安な時代をどう生きればいいのでしょうか。

稲盛 不安や不平不満はあるでしょうが、何があっても一生懸命に仕事をすることです。一生懸命に仕事をすれば人間的に成長し、必ず人生のプラスになる。読書や哲学から学ぶこともできますが、人間性を高めるという意味では、仕事で努力をするのが一番です。まずは自分の置かれた場所で懸命に働いてください。

私は望んだ大学に進むことができず、大手の企業に入ることもできませんでした。鹿児島大学を出て入社したのは、京都にある松風工業という碍子を作る会社でした。入社するまで知らなかったのですが、この会社は今にも潰れそうな状態で、給料の遅滞もしばしば。近所の八百屋のおばさんにまで「かわいそうにねえ」と同情されました。

そんな会社ですから、いつも同期と「早く辞めてしまおう」と話していました。実際、ある時には京都大学の工学部を出た同期と、陸上自衛隊の幹部試験を受けに行きました。彼は松風を辞めて陸自に行きましたが、私は、私を大学に行かせてくれた兄が「せっかく入れてもらった会社を1年やそこらで辞めるのはけしからん」と反対したので松風に残ることになりました。

“新・経営の神様”稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」
日本を「幸せに導く」方法とは

「半端もん」を成長させる

開き直った私は、松風でセラミックの研究に打ち込みました。今にも潰れそうな会社ですから、生きていくために必死です。すると不思議なことに、どんどん成果が出て、画期的なファインセラミックスの製品をいくつも開発することができました。それがきっかけで京セラを興し、私の経営者人生が始まりました。

今考えれば、私の人生の中で松風工業に入社したのは、最高に幸せなことでした。ひょっとしたら神様があの会社に入れてくれたのかもしれません。

――規模に関わりなく多くの企業が後継者難に陥り、人材育成の難しさが指摘されています。

稲盛 私はこれまで「半端もん戦法」で戦ってきました。京セラが多角化を始め、海外進出を本格化した時、私は考えました。新規事業は戦に例えれば敵地に乗り込むわけだから、優秀な武将を連れて行くのが常道です。しかし敵地を攻めている間に自分の城を取られてしまったのでは元も子もありません。

そこで私は最も信頼出来る部下に城を任せ、社内で所を得ていない「半端もん」、つまりは愚人を引き連れて敵地に乗り込むことにしたのです。何しろ半端もんばかりですから、最初は大変です。しかし、激しい戦いで辛酸をなめ、私の戦いぶりを見ているうちに、半端もんたちがひとかどの武将に育ちます。新しい領土は取れるし、人は育つしで一石二鳥です。

世の中では外部から連れてきた「プロ経営者」をもてはやす風潮もありますが、企業は人間の集団です。戦時中の軍歌の文句ではありませんが、「泥水すすり、草を噛んだ」仲でなければ社員はトップを信頼しません。トップにはそういう追い込まれた状態で、なお兵を励ましながら戦う強さが求められるのです。

「週刊現代」2016年8月20日・27日合併号より

2017-06-17 人は人格。(1)

[]聖人君子、小人愚人。 聖人君子、小人愚人。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 聖人君子、小人愚人。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

稲盛さんのインタビューより。

中国の司馬光曰く。
人間の能力を「才」、人間性を「徳」とした場合、
才も徳もある人は「聖人」、
徳が才に勝る人は「君子」、
才が徳に勝る人は「小人」、
才も徳もない人は「愚人」だそうです。

「才ある人を取り上げる。」当たり前の人事のようだが、「才と人格は違うもの」なのかもしれない。
自分が小学高時代に、「才だけのやつ」と「人格だけのやつ」っていたのじゃないか。
いた、と思う。

ひょっとして日本特有なのかもしれない。
「才」の割に人格はそれほど問われていないように思う。
「マナー」だけがあれば、その奥の人格までは問われない。
またさらに「人の人格を問う」というのはお互いに体力を使うし、大変なことでもあるから。

たとえ会社に不利であっても人間として正しい道を選ぶ。
そういう信念を私はフィロソフィーと呼んでいます。

たった一言だけれど。
つい「利のある方」とか「好みの方」へと行く気持ちを許さないこと。
改めて「そういうこと」を貫くことが、後々の偉業につながっているのだと思う。
(つづく)


“新・経営の神様”稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」(週刊現代) | 現代ビジネス | 講談社(1/5)

“新・経営の神様”稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」
日本を「幸せに導く」方法とは

JALの再生では、人間性の大切さを説き続けた〔PHOTO〕gettyimages

聞き手/大西康之

京セラ(年間売上約1.5兆円)、KDDI(同約4.5兆円)という二つの巨大企業を創業、瀕死のJALを再生に導いたカリスマが語った、日本の会社を、そして日本の社会を「幸せに導く」方法とは?

虚飾をむしる

――東芝や三菱自動車のような名門でなぜ不祥事が相次ぐのでしょうか。

稲盛 今の日本企業は才覚のある人をリーダーとして重用します。私はリーダーを選ぶとき、能力ではなく人間性や人格で選びます。能力に多少の問題があっても人格のある人は努力をして成長する。そういう人をリーダーに選んでこなかったことが、問題を引き起こしているのではないか。

昔、京セラがまだ町工場だった頃、滋賀の工場で細かい仕事を黙々とする男がいました。工場へ行くたびに、なぜか彼の手元に目がいってしまうのです。中学しか出ておらず、才能などない、真面目が取り柄の男でしたが、周囲に押される形で頭角を現し、課長、部長になっていきました。

経営者は「儲けたい」「会社を大きくしたい」という我欲を起点にしがちです。しかし、本来は「人間として何が正しいか」を起点に置くべきです。自分の会社に都合がいいことばかりを選ぶのではなく、たとえ会社に不利であっても人間として正しい道を選ぶ。

そういう信念を私はフィロソフィーと呼んでいます。フィロソフィーをしっかり持った上で、一心不乱に仕事に打ち込む。そういう生き方をしていれば、道を踏み外すことはありません。

おおにし・やすゆき / 日経新聞、日経ビジネス記者を経て、現在フリーの経済ジャーナリスト。著書に『稲盛和夫 最後の闘い―JAL再生にかけた経営者人生』『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説の技術者 佐々木正』など
NEXT ▶ 天狗になった京セラ創業期

ページ: 2

“新・経営の神様”稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」
日本を「幸せに導く」方法とは

中国の司馬光という人が書いた『資治通鑑』という本によると、人間の能力を「才」、人間性を「徳」とした場合、才も徳もある人は「聖人」、徳が才に勝る人は「君子」、才が徳に勝る人は「小人」、才も徳もない人は「愚人」だそうです。

会社に聖人や君子がいれば、その人をリーダーにすればいい。しかし、なかなかそんな立派な人は見つかりません。そこで多くの会社では小人をリーダーにしてしまう。これが危ないのです。才があっても人間性のない人は己の栄達のために会社を危うい方向に持って行く恐れがある。長い目で見れば、小人よりは愚人のほうが成長します。

――今の日本企業は能力の高い人が出世する仕組みになっています。

稲盛 フィロソフィーがないと、そうなってしまいますね。京セラも成長期には人が足らないので、ずいぶんたくさん中途採用をやりました。外から優秀な人たちがたくさん入ってきたのです。高学歴で立派な職歴を持つ人たちです。私は彼らに言いました。「あなたたちは自分に才能があると思っている。それで世の中を渡っていくつもりかもしれないが、やはり大切なのは人間性だ」と。しかし才のある人たちは話を聞いてくれない。

私は、彼らが能力、実績だと思っている「虚飾」や「うぬぼれ」を引き剥がします。私はこれを「むしる」と呼んでいます。虚飾をむしられると、みすぼらしい自分が出てきます。恥ずかしいから、また一生懸命に虚飾を纏おうとしますが、それをむしる。これを繰り返すと、天狗になっていた人が謙虚になり、物事を学ぶ姿勢に変わります。

松下幸之助さんはこの状態を「素直」と表現されています。自分は小学校しか出ておらず学がないから、人が言うことを素直に聞いた。それで人間として成長できた、とおっしゃっています。

欲望に打ち克つ

私も京セラを立ち上げたばかりの20代の頃、少し天狗になっておりました。自分でファインセラミックスを開発し、自分で作って、自分で売るわけです。「なんだ全部、俺がやってるじゃないか。ならば会社の利益は全部、自分の収入でもおかしくない」と思うこともありました。

しかし「それは違う」と気づいたのです。会社というのは社会のためにみんなが集まって仕事をするところです。確かに私には新製品を開発する才能があったかもしれませんが、自分一人で会社は回らない。そう思えたのは小さな印刷工場を経営していた父の愚直な生き方を見てきたからだと思います。

空襲で工場を焼かれた父は、戦後、元工員が始めた印刷工場で雇われ人として、私たち家族のために働いてくれました。母は「借金をして、もう一度、会社をやろう」と勧めましたが、父は聞き入れませんでした。人を雇うことの怖さを痛感したのだと思います。おかげで私は自分の欲望に打ち克つことができ、道を踏み外さずに生きていくことができました。

NEXT ▶ JALが目覚めた日

ページ: 3

7月13日、14日の2日間、横浜国際平和会議場(パシフィコ横浜)の国立大ホールを約4800人の大観衆が埋め尽くした。稲盛氏が塾長を務める経営者向けの私塾「盛和塾」が年に一度開く世界大会である。

参加者の大半が中堅、中小企業の経営者たちだが、他にも横綱の白鵬、サッカーの元日本代表監督、岡田武史氏、柔道のオリンピック金メダリスト、山下泰裕氏などが塾生に名を連ねる。

現在、塾生は1万1000人(企業数で約1万社)。日本の塾生が約7600人、中国が約2700人。このほかブラジル、アメリカ、台湾にも会員がおり、塾生企業の売上高を合計すると30兆~40兆円規模に達すると見られる(本誌推計)。

1万1000人が学ぶ稲盛流経営の威力とは、どんなものか。東京江東区で看板施工事業を展開するgCストーリーの西坂勇人社長は6年前に盛和塾に入塾してから「年10回の塾長例会を一度も休んだことがない」という熱烈な信奉者。

「入塾するまで経営の目的がはっきりしなかったが、稲盛塾長の話を聞いて、ウチの会社の目的は『人の役に立つことだ』とはっきりした。社員が働きがいを感じるようになり、定着率も上がった」

稲盛氏は、このような中小企業の経営者たちに熱烈な支持を受け続けている。

JALが目覚めた日

――盛和塾は30年以上も続いていますね。

稲盛 日本のサラリーマンの99%は中堅・中小企業で働いている。彼らが一生懸命働いて心を高めれば、きっと日本はよくなるはずです。

一方、JAL(日本航空)のような大企業を再建するときも、私にできる話は同じで、我欲を抑えて仕事に邁進するということでした。

JALには高学歴で才のある人が大勢いて、最初は私の話など聞こうともしませんでした。私はエアラインの仕事に関しては全くの素人で、専門的な話はできませんから、役員など幹部を集め、人間性の大切さを諄々と説き続けました。

するとある日、古株の役員が言ったのです。「会長が言うように、人間として正しいことをやっていたら、JALはこうならなかったかもしれない」と。その日を境に、JALの人々に私の話が染み込むようになりました。今では社員が一丸となって素晴らしい経営をしてくれています。一人一人が人間性を磨けば、会社は必ずよくなります。JALの業績は見違えるように良くなりました。

“新・経営の神様”稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」
日本を「幸せに導く」方法とは

――稲盛経営でフィロソフィーと両輪をなすのが小集団をベースにした管理会計の「アメーバ経営」です。

稲盛 アメーバ経営は私が京セラを経営する中で編み出していったものです。先ほど開発からマーケティングまで自分でやっていたと言いましたが、その頃、切実に思ったのは孫悟空が毛を抜いて分身を作るように、私と同じように考え、判断してくれる社員がいてくれたらどんなに楽か、ということでした。

そこで会社を小集団(アメーバ)に分け、そのリーダーに判断を委ねるようにしました。各アメーバで毎月、時間当たり採算(売上高から経費を引いた金額を労働時間で割った数字)を算出し、目標達成を目指すのです。

リーダーは売り上げを最大、経費を最小にし、労働時間を減らすことを考えます。各アメーバの時間当たり採算は全社に公表されます。

つまりアメーバ経営とは一種の成果主義です。一般に言われている成果主義と違うのは、成果が報酬と連動しないところです。業績を上げた人々は社内で賞賛されますが、処遇は変わりません。業績が上がれば全社員の給料が上がるのです。業績と報酬を連動させた成果主義では、社員は欲望と二人連れで仕事をしてしまう。これではうまくいきません。

自分の報酬に反映されないにもかかわらず頑張れるのは「組織に貢献しよう」という気持ちがあるからです。「全従業員の物心両面の幸福の追求」こそが経営の目的なのです。

――東芝や東京電力、シャープを見ると、これまで安全だと思われてきた大企業でも、いつ何が起きるかわからない。サラリーマンは不安な時代をどう生きればいいのでしょうか。

稲盛 不安や不平不満はあるでしょうが、何があっても一生懸命に仕事をすることです。一生懸命に仕事をすれば人間的に成長し、必ず人生のプラスになる。読書や哲学から学ぶこともできますが、人間性を高めるという意味では、仕事で努力をするのが一番です。まずは自分の置かれた場所で懸命に働いてください。

私は望んだ大学に進むことができず、大手の企業に入ることもできませんでした。鹿児島大学を出て入社したのは、京都にある松風工業という碍子を作る会社でした。入社するまで知らなかったのですが、この会社は今にも潰れそうな状態で、給料の遅滞もしばしば。近所の八百屋のおばさんにまで「かわいそうにねえ」と同情されました。

そんな会社ですから、いつも同期と「早く辞めてしまおう」と話していました。実際、ある時には京都大学の工学部を出た同期と、陸上自衛隊の幹部試験を受けに行きました。彼は松風を辞めて陸自に行きましたが、私は、私を大学に行かせてくれた兄が「せっかく入れてもらった会社を1年やそこらで辞めるのはけしからん」と反対したので松風に残ることになりました。

“新・経営の神様”稲盛和夫が明かす「日本企業、大復活のカギ」
日本を「幸せに導く」方法とは

「半端もん」を成長させる

開き直った私は、松風でセラミックの研究に打ち込みました。今にも潰れそうな会社ですから、生きていくために必死です。すると不思議なことに、どんどん成果が出て、画期的なファインセラミックスの製品をいくつも開発することができました。それがきっかけで京セラを興し、私の経営者人生が始まりました。

今考えれば、私の人生の中で松風工業に入社したのは、最高に幸せなことでした。ひょっとしたら神様があの会社に入れてくれたのかもしれません。

――規模に関わりなく多くの企業が後継者難に陥り、人材育成の難しさが指摘されています。

稲盛 私はこれまで「半端もん戦法」で戦ってきました。京セラが多角化を始め、海外進出を本格化した時、私は考えました。新規事業は戦に例えれば敵地に乗り込むわけだから、優秀な武将を連れて行くのが常道です。しかし敵地を攻めている間に自分の城を取られてしまったのでは元も子もありません。

そこで私は最も信頼出来る部下に城を任せ、社内で所を得ていない「半端もん」、つまりは愚人を引き連れて敵地に乗り込むことにしたのです。何しろ半端もんばかりですから、最初は大変です。しかし、激しい戦いで辛酸をなめ、私の戦いぶりを見ているうちに、半端もんたちがひとかどの武将に育ちます。新しい領土は取れるし、人は育つしで一石二鳥です。

世の中では外部から連れてきた「プロ経営者」をもてはやす風潮もありますが、企業は人間の集団です。戦時中の軍歌の文句ではありませんが、「泥水すすり、草を噛んだ」仲でなければ社員はトップを信頼しません。トップにはそういう追い込まれた状態で、なお兵を励ましながら戦う強さが求められるのです。

「週刊現代」2016年8月20日・27日合併号より

2017-06-12 背外側前頭前野。

[]経験か老化か。 経験か老化か。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 経験か老化か。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

年を取ると涙もろくなるのは、感情移入しやすくなったのでも、感受性が豊かになったのでもない。大脳の中枢の機能低下が真の理由だ。

昔はご近所にいた頑固ジジイも、小うるさいおばあさんも地元の風物詩という感じだったが、これからはそうもいかない。
自分たち五十代以上の人たちも「最近涙腺が弱くて」というのは、「ある機能の低下が原因」と思った方が良さそうだ。

確かに、人生を毎年生きてきて、だから「純粋なものに感動する」という自分ではなさそうだ。
しかも「怒りっぽくなる人」も同様の機能低下だと聞かされては、もうかなり「気の毒」な感じになってくる。

怒るべき時には怒り、諭すべき時には諭す。
そんな普通の自分で居られるかどうか、を自分で計っていられる自分でいたいものである。
映画って泣くために見ているような自分もいますけれど。

キレる高齢者 脳トレで感情抑えて

 最近、涙もろくなったと訴える中高年が多い。「朝のテレビドラマを見ると感情移入しやすいのか、必ず涙ぐむの」と話すのは川越市の主婦、山本直美さん(66)。「先日映画を見たら冒頭から涙があふれ出て、最後まで止まらなかった。年を取ったら感受性が豊かになったみたい」。横浜市の会社員、小林孝子さん(55)もこう振り返る。

 高齢者だけでなく、50代からも似た話が出るのは意外に思えるが、年を取ると涙もろくなるのは、感情移入しやすくなったのでも、感受性が豊かになったのでもない。大脳の中枢の機能低下が真の理由だ。

 「背外側前頭前野」と呼ばれる部位が脳全体の司令塔となり、記憶や学習、行動や感情を制御している。涙もろくなったのは、この部位が担っている感情の抑制機能が低下したからだ。

 最近は「キレる高齢者」も目立つ。携帯電話店で若い店員に突然怒鳴り始めたり、駅や病院で暴言を吐いて乱暴に振る舞ったりする高齢者を時々見かける。2016年版『犯罪白書』によれば、20年前と比べて高齢者の「暴行」は49倍に増加している。

 こうした「暴走老人」の増加も、背外側前頭前野の機能低下により、感情を抑制できない高齢者が増えたためだ。この部位の中核機能の一つに「作動記憶」がある。これは短時間に情報を保持し、処理する能力で、その容量は加齢とともに減少する。これが感情の抑制機能を低下させるのだ。

 高齢になって涙もろくなる人と怒りっぽくなる人には共通の背景があることを、中高年の方には知っていただきたい。

 東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターでは民間企業と共同で、この作動記憶容量を増やすトレーニング手法を開発、商品化している。このトレーニングを続けると記憶容量が増えるだけでなく、感情を抑制する力も強くなることがわかっている。

 「キレる高齢者」になりたくなければ、作動記憶量の脳トレをお勧めしたい。

(東北大学特任教授

村田 裕之)

2017-06-05 みんなの関心。

[]実はずっと気になること。 実はずっと気になること。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 実はずっと気になること。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

自分たちはよほど砕けた酒場でしか、自らの性向とか性の興味については語らない。
ネットはそんなものも赤裸々にする。

過去10年間で特に人気のあるカテゴリーは以下の10個。
人気順に「LESBIAN(レズビアン)」
「MILF(人妻)」
「AMATEUR(素人)」
「TEEN(10代)」
「MATURE(熟女)」
「EBONY(黒人)」
「ANAL(アナル)」
「BIG TITS(大きな胸)」
「BIG DICK(巨根)」
「HENTAI(ヘンタイ)」。

最後に日本語の「変態」が入っているのはよほどのことなのか。(日本人オリジナルでしょうか)
それにしても「そんなもの」である。
日本でも欧州でも性を扱ったテーマは学術ものでも、小説でも実に数多い。
音楽だって「恋愛テーマ」を除けば民族とかイデオロギーくらいしか残らない。

で、芸術とか文学とかは「それ」を実にいろいろと舞台設定したり演出したりして浮き彫りにしている。

それで心中してしまうような文学者もたくさん居たし、自分の人生でも「それ」をリアルにテーマにしていた芸術家もたくさんいる。
結局「そういうこと」がテーマなのだ。

結局そういうことが生きる「種」とか「こだわり」になっているらしいぞ、とあらかじめ心で準備しておくことは悪くないのではないだろうか。

これから「そのあたり」へ行く人へ。
結局こだわりになるのは「そのあたり」なんだ。
ちょっと話しておきましょう。


超人気アダルトサイトが過去10年分の流行り廃りを総まとめしたデータでを公開

By JClks

2017年5月25日に10周年を迎えたアダルトサイト「Pornhub」が、過去10年間分のアクセス情報やデータ転送量など、さまざまな情報をまとめてPornhubにおけるアダルトトレンドの変化をまとめています。

Celebrating 10 Years of Porn.. and Data! – Pornhub Insights
https://www.pornhub.com/insights/10-years

Pornhubがサービスをスタートしたのは2007年ですが、それから10年間でサイトへのアクセス内訳は大きく様変わりしています。サービス開始当初はサイトにアクセスする端末の割合がPCが99%、モバイル端末が1%だったのですが、2017年にはPCが25%、モバイル端末が75%となっています。なお、ユーザーの使用しているモバイル端末の搭載OSはAndroidが53%でiOSが47%となっているのですが、モバイルOSのシェアを考えるとiOS端末の比率の高さに驚き。

過去10年間でPornhubにアップロードされた動画ファイルの総本数は約1000万本、データ総量は約68万GB、総再生時間は約150万時間。これはPornhubの動画を再生し続けても173年間続くということ。

Pornhubにアップロードされた動画の総再生時間を年度ごとに分けるとこんな感じ。年々アップロードされた動画の総再生時間は増えており、2007年は134時間だったのが2016年にはなんと約3500倍の47万6291時間となっています。

過去10年間でアップロードされた動画をカテゴリーごとに分け、総再生時間が長いものトップ10をまとめるとこんな感じ。カテゴリーは「AMATEUR(素人)」「GAY(同性愛者)」「BLOWJOB(フェラチオ)」「HARDCORE(ハードコア)」「TEEN(10代)」「MASTURBATION(自慰)」「BABE(いい女)」「BIG TITS(大きな胸)」「FETISH(フェチ)」「ANAL(アナル)」の10個が並んでおり、特に人気なのは「AMATEUR(素人)」。

Pornhubに登録しているユーザーの数は2242万4138人、アップロードされた動画にコメントを残したことのあるユーザーは689万5045人、動画を評価したことのあるユーザーは4億8860万1369人。

Pornhubに滞在する時間の平均は以下のように変化しています。インターネット回線の進歩でより快適に動画を見やすくなっているはずですが、滞在時間はサービススタート当初よりも短くなっています。

過去10年間で特に人気のあるカテゴリーは以下の10個。人気順に「LESBIAN(レズビアン)」「MILF(人妻)」「AMATEUR(素人)」「TEEN(10代)」「MATURE(熟女)」「EBONY(黒人)」「ANAL(アナル)」「BIG TITS(大きな胸)」「BIG DICK(巨根)」「HENTAI(ヘンタイ)」。各年ごとに最も人気のあるカテゴリーをまとめると、3、4年ごとにトレンドが変わっていることがわかり、来年か再来年には現在最も人気のある「LESBIAN(レズビアン)」もその座を追われるのかも。

各年ごとに最も人気があったポルノスターはこんな感じ。

過去10年間のPornhubの歴史において最も多く動画を再生されてきたポルノスターランキングトップ10がこれ。1位のリサ・アンはなんと10億回以上動画を再生されています。

Pornhubに公開されている動画の中で人気の高いメーカーは以下の通り。

メーカーごとの再生回数の違いはこう。1位に輝いたBRAZZERSの作成した動画はなんと21億4556万5371回も再生されています。

チェリーチェリー 2017/06/05 17:03 ヘンタイって世界語だったんですね。知らなかった…

梅雨入り梅雨入り 2017/06/05 18:54 hentaiってことはやはり日本人が最もヘンタイってことですかね。AV見てるとヘンタイ度は外国の方が強いような気がしますが。でも日本はAV、風俗大国とか言われてますもんねえ。

2017-05-20 残業の本質。

[]手続きの国。 手続きの国。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 手続きの国。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

日本電産・永守社長が残業ゼロを目指すという。
"人の倍働く"と言われた経営の雄の見事な変節。
いつもながらの意思決定ぶりだ。

で外国企業と仕事をしたり、また外国人が日本の企業を見て驚くのが「意思決定の遅さ」と「手順の多さ」である。
一見「誰もが意思決定しないつもり」に見えるらしい。
りん議に象徴される決済システムはまるで四コマ漫画のようではないか。

こうした「責任の順送り」とか「手続き主義」は日本人特有の慎重さにあるのだと思っている。
空き巣とか、使い込みとか、経費水増し、なんかが一度発生すると「管理者は誰だ」「犯人は誰だ」となる。
そして「二度と起きないためにはもう一つ手続きを増やしてチェックすべきだ」という話になる。
そりゃ必要なチェックもあるだろう。

問題なのは、一度発生した手続きは容易になくならないことにある。

手続きを合理化して業務を改善しても、目にはすぐに見えにくい。
一方、もし問題が起きたらたちまち「言い出しっぺの責任問題」になるだけだ。
口出すだけ損をするってわけだ。

手続きを減らした人が賞賛される風土が必要なのだと思う。


日本電産の永守社長 残業ゼロを目指す真意

 「長く働くこと」を是としてきた日本電産の永守重信社長が2016年秋、「2020年度までに残業ゼロを目指す」と発表、世間を驚かせた。その決断の経緯はもちろん、ビジネスパーソン、そして日本企業が今後進むべき道について聞いた。(聞き手は泉恵理子日経ビジネスアソシエ前編集長)

──日本電産の永守重信社長と言えば、「誰よりも長く働く」ことを誇りとし、組織の強みとして走り続けてきた経営者として知られています。その永守社長が2016年秋、「2020年度までに残業ゼロ企業を目指す」と発表された。きっかけは何だったのでしょう。

(写真:太田未来子)

 180度方針転換したのには、経営として非常に合理的な理由があります。そしてその前提として、2015年秋以前に当社が「長く働くことを是としてきた」ことにも相応の理由があります。まずその経緯からお話ししましょう。

 私は京都の農家に生まれた、6人兄姉弟の末っ子です。父を早くに亡くし、兄夫婦に育てられました。職業訓練大学校を出た後に6年間のサラリーマン生活を経て、「いずれ必ず超精密小型モーターの時代が来る」という信念から、1973年に会社を立ち上げようと決心した。

 起業の決意を母親に打ち明けると、母は強く反対しました。「おまえが事業に失敗して首でもつらないか心配でならない。何かあれば親戚中に迷惑をかけることになる」と、なかなか首を縦に振りません。

 「どうしてもやるというなら、私が死んでからやってくれ」とまで言われましたが、当時70歳過ぎだった母は94歳まで生きました。言葉通りに待っていたら日本電産はできませんでしたね(笑)。今すぐやりたいという意志を曲げなかった私に、母はこう言いました。

 「どうしてもやると言うなら、人の倍働けるか。私は人の倍働いて、財を成した。おまえにもその覚悟はあるのか」

 私は「覚悟はある」と答えた。

 確かに覚悟はしましたが、母の言葉の意味は創業してようやく実感できました。自宅の納屋を改造して、同志を3人集めてのスタート。世界という大海原を目指して「日本電産」という立派な社名を掲げました。しかしふと周りを見渡せば、松下電器産業(現・パナソニック)、日立製作所といった「巨人のような大企業」が立ちはだかっている。

 若者4人の「名もない会社」が勝つには、どうしたらいいか。ヒト・モノ・カネの資源もない。でも、1つだけ大企業とも全く同じ条件で持てる資源があることに気づきました。1日24時間という「時間」です。時間を最大限に使うしか、勝てる方法はないと思った。

 松下電器が1日8時間働くのなら、うちは倍の16時間働こうじゃないか。残りの8時間は、最低限の睡眠と食事に充てる。たまには風呂にも入らないといけない(笑)。土日も休まず働きました。4人とも若くて体力があったし、創業の熱意に燃えていた。だからできた。

 人より倍働いた努力が実って売り上げが伸びてくると、会社の成長に伴って、働く時間は14時間、12時間と少なくなっていきました。

 2000年代に入ると、海外企業の買収を積極的に行うようになり、「海外の働き方」にじかに触れる機会が増えました。欧米のオフィスでは、17時になると誰もいなくなる。夕方から会議をしようと言っても「今日は金曜日だから」と嫌がられる。

 2010年代には米エマソンなど一流企業からも買収しましたが、さらに厳格な環境を目の当たりにしました。ドイツ企業も残業をしない。北欧はさらに進んでいるという。夏は1カ月くらい平気で休む。これでどう稼ぐのかと思いましたが、利益はしっかりと出している。

 調べると、労働生産性(従業員1人当たりの付加価値を金額にしたもの。労働の効率性を測る尺度)で北欧諸国は上位にあり、日本は20位そこそこ()。「日本電産が1兆円企業になったら、働き方を劇的に変えよう」と決めたきっかけは、世界の働き方を目の当たりにしたからです。2010年のことでした。

※ OECD加盟諸国(35カ国中)の日本の労働生産性は、2010年で22位、2015年でも22位(日本生産性本部「労働生産性の国際比較 2016年版」より)

ページ: 2

■生産性を世界トップレベルにする

──日本の産業界で働き方改革の議論が本格的に始まった時期より、ずっと早い決断だったということになります。

 「そうしなければ世界で勝てない」。そう確信したからです。

 10兆円企業を目指していますが、欧米並みの生産性を実現しなければ、それは夢で終わる。売り上げ1兆円を達成したのは2015年3月期でしたが、それから約1年間かけて残業をどう減らしていけるか、試行する期間を設けました。

 実行してみて、それで利益が上がるかどうか、まずはやってみようと。この時、いきなりスローガンを打ち出すのではなく、社内で検証して結果が出たら世間に公表する、ということに決めたのです。

 結果はすぐに出ました。当社の平均残業時間は月30時間程度でしたが、上長による定時帰宅の声掛けといった“すぐにできるアクション”で、あっという間に残業時間は3割減になった。さらに社内改革を進めて、残業時間は今期までに半分に減っています。

 残りの半分を減らすのは簡単ではありませんが、時間をかけて本気で取り組めば、不可能ではない。「いける」と確信できたので、2016年9月期の中間決算発表で「2020年までに残業ゼロ」を宣言したのです。みんなひっくり返っていましたね(笑)。「朝まで働け」なんて豪語していた経営者が、180度違うことを言い出したわけですから。

──大胆な方針転換に、一番驚いていたのは誰ですか?

 妻です。「社内の誰よりも働く」と、早朝6時半には家を出て深夜に帰っていた私が、急に早く帰ってくるようになった。「あなたどうしたの。そんなに早く帰ってこられたら困るわよ」と迷惑がられました(笑)。仕方がないから初めのうちは、用もないのに書店に寄って時間を潰したりして帰っていました。そのうち妻も私の思いを理解し、納得してくれましたが。

■競争力が高まれば利益が増え、給料・ボーナスも上がる

──従業員の反応は?

 否定的なものもありました。生活の不安からです。

 最初に残業削減の方針を社内に発表した時、投書箱には不安の声も集まった。「残業代も収入のうちと見越して住宅ローンを組んだ。残業ゼロになったら生活が成り立たなくなる」と。

 そういう声が上がることは、予想していました。私自身も20代のサラリーマン時代は、基本給とボーナスには手をつけずに起業資金として貯金し、残業代で生活していた。だから、気持ちはよく分かります。

 「安心していい」と、私は全従業員に言いました。「当社が目指すのは残業ゼロではない。残業ゼロは手段であり、目的は『生産性を世界のトップレベルまで高めること』だ。その結果、競争力が高まれば、利益が増える。利益が増えれば、給料もボーナスも上がる。むしろ、君たちの収入は上がるのだ。残業代で稼げる額の比ではない」。こう説明すると、皆安心したようでした。

 従業員の不安を払拭してから行ったのは、「アイデアの募集」です。すると、800通を超える意見が集まった。これまで行った意見募集の中で、最も反響が大きかったのです。素晴らしいアイデアには表彰をし、実現可能な改革はすぐに実行することも決めました。

 一番多かったのは、管理職についての意見でした。管理職が部下の残業の実態を把握しきれていないという不満です。次に多かったのが反省でした。当社は海外との取引が多く、営業担当者の中には英語力を身につけている人もいますが、技術者はそうとも限らない。

 「お客さんから製品の問い合わせが来ても、スペックの詳細について英語で説明できない。語学力を高めれば生産性は上がるはずなので、会社のサポートが欲しい」。そんな要望が多かった。

 従業員も必要性を感じている語学力のトレーニングについては、本社敷地に隣接する場所に大規模研修施設を新設し、2017年4月に稼働させます。語学だけでなく、マーケティングや財務、経営といった専門知識から文化教養まで、幅広い分野で自己研鑽ができる環境を整えた。800人収容できる大ホールには世界中から高名な講師を呼べますし、そこでの講義を、グループ内のTVネットワーク配信するシステムも導入しました。

ページ: 3

──ほかにはどんな改革を?

 管理職が部下の残業削減を促すための施策として、残業が必要な場合はその日の朝礼で「なぜ残業が必要か」を発表する事前申告も取り入れました。例えば、「明朝までに必要な部会用の資料作成」が残業の理由だったとしましょう。チーム内で「その資料は明朝に間に合わなくてもいい」と合意が取れれば、残業は減ります。

 効率よく働いて早く仕事を終え、余った時間でスキルを磨く。社員の能力もモチベーションも高まり、会社も成長していくという好循環が生まれるはずです。

■「働き方改革」実現には投資が必要

──残業時間削減で浮いた人件費は、どう使うのでしょう。

 これについても、明確に打ち出しています。半分はボーナスという形での「社員への還元」。もう半分は「教育投資」です。今申し上げた研修施設が、これに当たります。米国では社会人向けに大学が夜間コースを設けることが一般的ですが、日本ではまだそうした環境が追いついていない面がある。

 だから企業が、学びの場を用意するのです。17時半までエンジニアとして働き、18時からは経営を学んでMBA(経営学修士)を取得する。そんな生活が可能になる環境を提供し、より高度な能力開発に結びつけていきたいと考えています。

──働き方改革には「投資」が必要ということでしょうか。

(写真:太田未来子)

 当然です。カネも出さずに改革なんてあり得ません。

 確かに、支出せずともできる「小さな改革」はたくさんあります。例えば、会議の時間設定を60分から45分に、30分を25分に変える。弊社もこうした小さな改革で、残業削減効果を上げました。工夫はまだまだできるでしょう。ただ、そうした工夫(小さな改革)だけでは、限界がある。

 先ほどお話しした研修施設のほか、グループ内で共有するデータのクラウド化のために100億円を投資しました。データ解析のためのスーパーコンピューターも数億円かけて購入した。その結果、計算や分析といった業務にかける時間が、50分の1になりました。

 こうした働き方改革のために、2020年までに1000億円投資することを決めています。残業ゼロの実現には、カネがかかります。かけた額を、どれだけの時間で回収できるか。これを精査することも重要だと思っています。

──「女性活躍推進プロジェクト」も立ち上げられました。この狙いと具体的な施策を教えてください。

 会社の成長に伴い、優秀な女性が大勢入社してくれるようになりましたが、管理職を目指す女性が少なかった。これが課題の1つでした。

 その理由を本人たちに聞いてみると、「長く残業できないから管理職になりたくない」と。

 そうだったのかと膝を打ち、まずは積極的に女性を管理職に登用することにした。人事部長も今は女性です。女性自らアイデアを出してもらい、それを実現することで、働きやすい環境を作ろうと考えた。

 出てくるアイデアを聞き、そのすべてにOKを出しました。みな驚いた顔をしていましたね。

 在宅勤務、シフト出勤、直行直帰、時間単位の有休取得。これまで一切禁止していたものをすべて許可した。在宅勤務にする場合、カメラ付きのパソコンを支給する費用が発生したりと出費がかさみますが、これも必要経費です。導入可能な職場から試して、徐々に活用を広げていく予定です。

ページ: 4

■初めに着手したのが「CEO改革」

──ご自身自ら働き方改革を実践されているのでしょうか。

 もちろんです。初めに着手したのが私自身の「CEO改革」だったと言っていいでしょう。従業員の声を集めた時に目立ったのが「上司が帰らないから自分も帰れない」という不満でした。私はこの会社のトップですから、率先して早く帰らないといけない。

 2年前までは誰よりも早く出社し、人けのない秘書室のエアコンのスイッチを入れてから仕事に取りかかるのが日課でしたが(笑)、最近はあまり早い時間に会社に来ないようにして、どうしてもという日は裏口からソーッと入っています(笑)。

 海外出張が多いのでどうしても週末に出社せざるを得ない時があるのですが、その日は運転手を呼ばずに自分で運転し、やはり裏口からソーッと入ります(笑)。帰宅してから部下に指示メールを送ることも、緊急時以外はやめました。

──早く帰って何をされるのですか。

 自宅にトレーニングジムを作ったので、そこで体を鍛えています。食事を取った後に運動してから床に入ると、実によく眠れる。朝起きると、頭の中が冴えています。午前中の仕事の能率が格段に上がる。

 仕事のやり方も日々、見直しています。稟議書の決裁も、これまでは一つひとつボールペンでコメントを書いていましたが、似たようなことを繰り返し書いていることが多いと気づいた。分析してみると、7割が「見積もりの金額が高いのでネゴしなさい」といった、頻繁に使う10パターンくらいのコメントに絞られました。それを判子にして押すようにしたら、それだけで20分の作業が3分になった。

 資料も原則、ペーパーレス。朝から晩まで終日コースでやっていた経営会議も、昼で終わり。出席者も本当に発言する必要がある人だけに絞り、参加者を3分の1に減らした。長年やってきた仕事のやり方の「無駄の多さ」に、がくぜんとする日々です。

 私たちの会社も1兆円企業になった。世界で勝てる10兆円企業を目指すなら、変わらなければならない。脱皮しない蛇は死ぬのです。

──これから評価されるのはどんな人材でしょう。

 朝方3時まで働いたことを自慢する時代は、もう終わりです。早く帰り、結果を残す人が評価される時代になるでしょう。成果主義という言葉はあまり好きではありませんが、「結果責任」がこれまで以上に重視され、評価に結びつく時代になっていくと思います。

 ですから、働き方改革は決して甘いものではありません。「17時半」で勝負がついて、延長戦はない。「真に厳しい競争社会」になっていきますから、力をつけていない人はつらいでしょう。

──結果で評価する制度作りの難しさに直面している企業も多いようです。

 確かに難しい。特に数字で結果が出にくい間接部門での評価システム作りには、時間がかかると思っています。欧米で成果主義が成り立っているのは、終身雇用を前提としない緊張感が労使間で共有されているから。日本でも同じような成果主義を導入するとなると、労働基準法の改正から着手しないといけない。フレックスタイム制度が軒並み失敗したように、海外でうまくいっているからといって日本でうまくいくとは限りません。

 当社の場合、グループの従業員11万人のうち10万人が外国人ですから、彼らのノウハウの中で吸収できることはうまく吸い上げながら、日本に合うシステムをさらに探っていきたいと思っています。

 日本型の評価システムは転換期に来ていますね。欧米では組織管理する「マネジャーコース」だけでなく、専門性を追求する「プレーヤーコース」がキャリアの選択肢になっていて、給与格差も日本ほどない。「出世=管理職になること」という給与体系を変えることも、生産性向上に関わることです。

ページ: 5

■日本電産の3大精神に変更はない

──これほどの改革を掲げながら、ご自身に戸惑いや迷いはないのでしょうか。

 今のところ増収増益でうまくいっていますから、迷いはありません。今後、経営の数字にマイナスが出るようなことがあれば立ち止まるかもしれませんが、実現可能かどうかの検証を1つずつ行いながらソフトランディングでやっているので、うまくいく自信はあります。

 私の言うことが180度変わったので、「では、過去の永守さんのやり方は間違っていたということですか」と聞いてくる人がいますが、間違っているはずがありません。

 極めて正しくやってきたからこそ、1兆円企業になれたのです。1兆円企業になり、10兆円企業を目指すからこその大改革なのです。

 もし私が明日、ゼロから会社を立ち上げたとすれば、また1日16時間働くでしょう。ですから、誤解のないように強調しておきます。私が今始めようとしている「働き方改革」は、一定規模以上の企業だからできることです。同じことを町工場がやれば、確実に潰れます。企業の成長過程には、時間で稼がなければいけないステージと、生産性を高めて稼ぐステージが明確に分かれる。私はそう思っています。

──日本電産の3大精神として有名な「情熱、熱意、執念」、そして「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」の変更は?

 変更はありません。経営精神の根幹は、全くブレていない。繰り返しますが、あくまでゴールは「生産性向上による競争力の強化」。働き方改革は手段であり、目的ではない。この点は、世の中の多くの人が誤解しているのではと危惧しています。

──真に競争力が問われる時代、「最強の働き方」とはどんなものでしょうか。

 「プロフェッショナルであること」でしょう。特に35歳くらいまでは、何か1つ、「これだ」と思う専門性を磨き、強みにしていくことに注力した方がいい。私自身も20代は、ひたすらモーターの研究開発に没頭し、それが今の発展の礎となった。

 「若い頃にいろいろなことを経験させてから、専門性を深める」という考え方が日本には根強いようですが、私は逆がいいと思っている。まず深掘りしてから、広げていく。海外ではそれが主流です。

■人生のゴールは人それぞれ。結果は若い時の選択次第

──若い人にメッセージを。

 「若い時にしっかりと自分と向き合い、長い人生のキャリアプランを立てるべし」と、強調して伝えたいですね。「満足できる人生とはどんな人生なのか」を明確に描き、それを実現させるための計画を、きちんと立てること。そして、自分で選んだ道には責任を持ってほしいと思います。

 一番いけないのは、行き当たりばったりで仕事を変え、目先の欲求を満たすために好きなこと、楽しいことばかりを選択し、結果として何も身につかずに転落していってしまうことです。最初からそういう人生を好み、選び取っているのならいいでしょう。しかし、ただ流されているようではいけない。その結果、人生の後半になって「こんなはずじゃなかった」と悔いても遅いのです。そうなっても、自分が選んだ道なのだから、愚痴を言ってはいけない。

 70歳を越えて同級生と集まると、「永守はいいよなぁ。こんなに成功して」と言ってくる人がいますが、「冗談じゃないよ」と笑って返すんです。「若い頃、俺がトラックにモーターを積んで必死に運んでいた時、おまえは道路沿いのテニスコートで彼女と仲良くやっていたじゃないか」と。私はその頃、デートができたとしても夜中の2時(笑)。携帯電話もない時代ですから、電報で待ち合わせするような生活でした。

 歯を食いしばって働かずに青春を謳歌しておきながら、人生の後半まで悠々自適でありたい。それは、無理な話です。年を取った時に、大雨の中バス停でじっとバスが来るのを待つ人生を選ぶのか、黒塗りの車が迎えに来る人生を選ぶのか。それは、若い時の選択次第なのです。

 人生のゴールは人それぞれで、豊かな生活や成功を望まないのであれば、それはそれでいい。ただ、後から文句は言ってはいけない。今、周りの同世代を見渡すと、努力しなかったことを後悔する人はたくさんいます。しかし、「こんなに頑張ってきたのに」と、悔いる人はほとんどいません。「国は人を裏切り、人は人を裏切るが、努力だけは人を裏切らない」。これは本当にそうだと実感しています。

 若い時はなりふり構わず一生懸命働いてもいいと、私は思う。そう言うとまた「ブラックだ」なんて言われそうですが、「一生懸命に」働くことはそんなに悪いことではない。自分のやりたいことを見極めて、自分の力が伸びると感じられる環境には、給与の額など気にせず身を置いて、一直線に頑張ってほしいと思います。

 自分と真剣に向き合って、「今どんな経験が自分に必要なのか」を日々問いながら、毎日を過ごす。「これこそ我が人生」と思える日々を過ごしてください。

[日経ビジネスアソシエ 2017年5月号記事を再構成]

2017-04-04 読書の効率。

[]異性と付き合うように本を読む。 異性と付き合うように本を読む。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 異性と付き合うように本を読む。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

自室を整理していて、必要のない衣類や雑貨を処分する。
しかし一番の問題は本だ。
小説や漫画はもう買わないようにしているが、それにしても「読む本と買う本の差」がひどい。

一日に一冊買い、
読むのは三日に一冊。

これでは借金は溜まるばかりである。

日経のコラムを読んでいて、ふと気がついた。

自分はこれまで、あまりにも、均質に活字を追いすぎていたのではないかと。

コラムでの読書アドバイスはこんな感じだ。

(1)本への「質問」を決める
(2)読む時間を決める
(3)人に説明する前提で読む

つまり、無邪気に活字をそのままに追い、立ち止まったり行きつ戻りつしながら楽しんで読むのか。
それとも「駆け引きで何かを得るためだけの相手なのか。」
それとも「その本」を元に何か別のことをするために読むのか。

何をするにも、「まずあなたはどうしたいですか?」とこれほど聞かれてきたけれど。
足元の読書が、まず読書が"それ"だったのだ。

誰にでも同じ速度で接するのでもなく。
本にも「本付き合い」がある。
週刊誌も漫画も全集もマニュアルも新聞も、皆との付き合い方はきちんと決めて臨まねばならない。

今年の「意識したいこと」のテーマになった。

100%身につく「ずるい読書法」

 本を読むのに時間がかかる。頑張って読んでも内容を覚えていない──。そんな悩みを解消する、素早く読んで身につける4つの鉄則を紹介する。

■鉄則(1) 心構え:読書の質を高める「3原則」を意識する

 「せっかく時間とお金を投資して本を読むのですから、内容を最大限吸収したいものです。そのためには読書の質を高める心構えが大切です」。こう指摘するのは、『読書が「知識」と「行動」に変わる本』(明日香出版社)の著者で、読書講座を主宰する大岩俊之さんだ。

 読書の質を高める方法は大きく3つ。(1)本を読む目的を明確にし、(2)本を読む時間を決め、(3)本の内容を誰かに説明するつもりで読む。以上の点を意識しながら読むだけでも、大切な内容が記憶に残り、しかも速く読めるという。

 本を漫然と読み始めてはいけない。読み方によって読書の「成果」は大きく変わるのだ。

■読書の質を高める3原則

(1)本への「質問」を決める

 本を読む目的を明確にすると、大切な記述を見過ごさず、記憶にも残りやすい。この本を読んで何を知りたいのか。本に対する「質問」を設定する。質問は右の例と同じくらい具体的なものがいい。

(2)読む時間を決める

 「会社に着くまでの30分にここまで読む」といった具合に、読む時間をあらかじめ決めると、ダラダラ読みを回避できる。集中力が高まるため、速く読めて、内容が頭に入る。

(3)人に説明する前提で読む

 本の要点や感想を誰かに説明することを前提に読むと、伝えるために内容をしっかりと咀嚼して理解しようとする。本を読んだら、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)やブログに感想を書くことを習慣にするといい。

ページ: 2

■鉄則(2) 情報の抽出:重要な「20%」を抽出する

 「大抵の本は、『自分にとって重要な箇所』は、全体の20%しかありません。中でも本のエッセンスと言える部分はさらにその2割。本全体の4%に過ぎない。読書とは、突き詰めればそうした情報を『見つけて、抜き出す作業』なのです。すべて読んで理解する必要などありません」。大岩さんはそう言い切る。

本の概要をつかむと、「丁寧に読む場所」と「捨ててもいい場所」が見えてくる。後者は、斜め読みか、読まずに済ます

 大事な情報を素早く抽出するためには、読む順番が大切だ。本の狙いや主張が圧縮されている「はじめに」、本の構成を俯瞰できる「目次」、結論や読者へのメッセージをまとめた「おわりに」を順に読み、本の概要をつかんでから本編に入ると、スラスラ読める。

 重要だと思った箇所は、本を汚すつもりで線やメモをどんどん書き込む。マーキングは時間と手間をかけないことが大切だ(下の写真)。「本を読む時間がない」という人でも、こうした情報抽出のテクニックを使えば、「素早く」「しっかり」読める。

■鉄則(3) 反復:「20%」の重要箇所を繰り返し読む

脳は覚えた内容を急速に忘れるが、復習を重ねると忘れにくくなる。ドイツの実験心理学者、エビングハウスが発見した現象

 頑張って本を読み、重要箇所を洗い出しても、1度きりの読みっ放しにしていたら、大半の内容は記憶に残らない。本の内容を記憶に定着させるには、繰り返し読む必要がある。

 左の図は、「エビングハウスの忘却曲線」という、時間の経過とともに記憶量がどう変化するかを表した有名なグラフだ。人間の記憶は、時間の経過とともに急速に失われていくことが分かる。それを食い止めるには、「復習」が重要だ。復習を重ねるごとに記憶が定着していき、忘却のペースは下がっていく。

 よほどの本でない限り、全ページを何度も読むのは現実的ではない。再読するのは20%の重要箇所だけでいい。言い換えれば、最初に本を読む際に、「繰り返し読むに値する箇所」をマーキングするということになる。

ページ: 3

■鉄則(4) 記録:「読書ノート」にエッセンスをまとめる

 本の内容をよく理解できてきたら、最後に「読書ノート」を作成する。読書ノートには、本のエッセンス、つまり4%の最重要箇所に相当する内容を書き出す。

 「本の要点を文章でまとめる過程で、頭の中が整理されて、理解が深まります。最初は面倒だと感じるかもしれませんが、何回かやればさっとまとめられるようになります」と大岩さんは話す。

 読書ノートにまとめる内容は、(あ)本の基本情報、(い)読書の目的(鉄則(1)で紹介した本への「質問」)、(う)本のエッセンス(「質問」への答えと感想)の3つだ(下図)。

 (う)を書く際の鉄則は3つある。(1)本の要点が凝縮されている箇所は、内容を正確に覚えるためにフレーズをそのまま抜粋する。(2)それ以外の箇所は、後で見返した時にポイントがサッと分かるように、簡潔な要約を箇条書きにする。(3)本全体からどんな気づきを得たのか、言葉や図を使って「自分の感想」を書く。

 読書ノートを見返せば、「どんな本を」「いつごろ」「どうして読んで」「何を学び」「何を感じた」のかが分かる。本のエッセンスはもちろん、その時に自分が持っていた問題意識や考え方まで振り返ることができる。

 時間とお金を投資して得た読書体験をムダにせず、自分の血肉として残すために、読書ノートの作成に挑戦しよう。

大岩俊之さん
 読書講座やセミナー研修などを手けるロールジョブ代表。挫折しない読書法「ゆる速 読書講座」を立ち上げ、人気を博している。著書に『読書が「知識」と「行動」に変わる本』(明日香出版社)、『年収を上げる読書術』(大和書房)などがある。

[日経ビジネスアソシエ 2016年3月号記事を再構成]

2017-03-27 キレない年寄りになるために。

[]感受性じゃなかったのねー。 感受性じゃなかったのねー。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー を含むブックマーク 感受性じゃなかったのねー。 - 藤野の散文-菖蒲・蛍・ラベンダー のブックマークコメント

年とともに涙腺がゆるくなる。
この事実を自分も「心の機微が細やかになったのかなー」くらいに捉えていた。
現実は違った。

年を取ると涙もろくなるのは、感情移入しやすくなったのでも、感受性が豊かになったのでもない。
大脳の中枢の機能低下が真の理由だ。

ひぇぇぇぇぇ。
「大脳の中枢の機能低下が真の理由だ。」
さらに。
「涙もろくなったのは、この部位が担っている感情の抑制機能が低下したからだ。」と。
つまりはこの感情の「暴れ馬」がひいては「キレる高齢者」の原因でもあるという。

要は生活レベルに比べて「脳が退化している」ということなのだ。
寅さんとか、フランス映画を見て泣いてばかりはいられない。

最近、涙腺の緩くなった自分はまさにこのケースに違いない。
トレーニングが必要なようだ。

キレる高齢者 脳トレで感情抑えて
 最近、涙もろくなったと訴える中高年が多い。「朝のテレビドラマを見ると感情移入しやすいのか、必ず涙ぐむの」と話すのは川越市の主婦、山本直美さん(66)。「先日映画を見たら冒頭から涙があふれ出て、最後まで止まらなかった。年を取ったら感受性が豊かになったみたい」。横浜市の会社員、小林孝子さん(55)もこう振り返る。

 高齢者だけでなく、50代からも似た話が出るのは意外に思えるが、年を取ると涙もろくなるのは、感情移入しやすくなったのでも、感受性が豊かになったのでもない。大脳の中枢の機能低下が真の理由だ。

 「背外側前頭前野」と呼ばれる部位が脳全体の司令塔となり、記憶や学習、行動や感情を制御している。涙もろくなったのは、この部位が担っている感情の抑制機能が低下したからだ。

 最近は「キレる高齢者」も目立つ。携帯電話店で若い店員に突然怒鳴り始めたり、駅や病院で暴言を吐いて乱暴に振る舞ったりする高齢者を時々見かける。2016年版『犯罪白書』によれば、20年前と比べて高齢者の「暴行」は49倍に増加している。

 こうした「暴走老人」の増加も、背外側前頭前野の機能低下により、感情を抑制できない高齢者が増えたためだ。この部位の中核機能の一つに「作動記憶」がある。これは短時間に情報を保持し、処理する能力で、その容量は加齢とともに減少する。これが感情の抑制機能を低下させるのだ。

 高齢になって涙もろくなる人と怒りっぽくなる人には共通の背景があることを、中高年の方には知っていただきたい。

 東北大学スマート・エイジング国際共同研究センターでは民間企業と共同で、この作動記憶容量を増やすトレーニング手法を開発、商品化している。このトレーニングを続けると記憶容量が増えるだけでなく、感情を抑制する力も強くなることがわかっている。

 「キレる高齢者」になりたくなければ、作動記憶量の脳トレをお勧めしたい。

(東北大学特任教授

村田 裕之)