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W&R : Jazzと読書の日々 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010/05/16 IF YOU COULD SEE ME NOW このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

5月なのに、夜が冷える。


IF YOU COULD SEE ME NOW

1946(Carl Sigman / Tadd Dameron) Marilena Paradisi


If you could see me now

You'd know how blue I've been


もしあなたが今の私を見てくれたなら

私がどんなにブルーか分かるでしょう

一目見ただけでこの雰囲気を感じ取り

そして気づくはず、あなたが好きです


もしあなたが今の私を見てくれたなら

私のことを勇敢な女だと思うでしょう

私は耐えています、涙を見せぬように

でも限界です、今もあなたが好きです


いつか偶然あなたと出会うことがあり

季節が五月に変わる日が来たとしても

自分の心を押し殺して演じるでしょう

微笑みながら、何もなかったかように


今は気持ちを隠せそうにはありません

まだ私の目には恋の光が宿っています

もう一度あなたのもとに帰れたら、と

あなたが今の私を見てくれたなら、と


なるほど「If you could see me now」というフレーズを初めと終わりに置いて、二重のニュアンスを持たせてますね。別れてまだ心残りがある。今の自分を見られたら困ってしまう。落ち込んでいる自分。涙に崩れそうな自分。そんな自分を見られるのは恥ずかしい。でも、だから、今の自分を見てほしい。本当の気持ちに気づいてほしい。そんな複雑な想い。

1946年タッド・ダメロンがサラ・ヴォーンのために書いた曲。1998年には「歴史を超えて歌い継がれている曲」として、グラミーの殿堂入りを果たしている。タッド・ダメロンはビバップ期のピアニストで、カウント・ベイシー楽団やディジー・ガレスピー楽団にも曲を提供。自身のバンドからもマイルスやソニー・ロリンズ、デクスター・ゴードンを輩出し、ビバップ運動の立役者になっている。

D


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タッド・ダメロンによるタッド・ダメロン。亡くなる3年前、1962年のダメロン楽団です。誰がいるかって? トランペットがブルー・ミチェルとクラーク・テリー、サックスがジョニー・グリフィンとサヒブ・シハブ、ベースがロン・カーター、ドラムがフィリー・ジョー・ジョーンズ。そしてピアノにダメロン自身とビル・エヴァンス。凄いでしょ? どれだけ人徳があった人なんだろ。ヴォーカルはサラさんに似てますが、バーバラ・ウィンフィールドという方です。


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もちろん「教え子」たちも取り上げています。ヨーロッパに移住していたデクスター・ゴードンが1970年ニューヨークに戻り、ウィントン・ケリーと共演。故郷に帰っても「あなた」はいない。今の私を「あなた」に見てほしかった。豪快なゴードンのサックスも、この曲ではしんみりしてます。


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ギターでは、このウェス・モンゴメリーの1965年ライブ盤。ここでもウィントン・ケリー。マイルスを支えたケリー・トリオがテーマの演奏で露払いをし、それを引き継ぐ形でウェスのギターがインプロヴィゼーションに入っていく。ここの酔わせ方が良いです。そしてケリーがアドリブを挟んでまたテーマに戻る。ピアノが美しくて、お客さんたちも時が経つのを忘れていそう。


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「The Magic Touch」で共演したビル・エヴァンス。すでに1959年、同じリヴァーサイドに在籍していたチェット・ベイカーと、このダメロンの名曲を取り上げています。まだ駆け出しの若手二人。演奏するのもスタンダードばかり。それでも個性は光る。チェットもトランペットに徹し、淡い淋しさに包まれる。これは歌わなかったのか、それとも歌わせてもらえなかったのか?


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ダメロン楽団参加の1962年には『ムーン・ビームズ』、1965年ダメロンが亡くなったときの『トリオ65』、そして晩年ヨーロッパでのライブ。ビル・エヴァンスは生涯を通してずっと、この「イフ・ユー・クッド・シー・ミー・ナウ」を弾き続けている。それだけダメロンへの敬愛の念が厚かったのだろう。年々、新しい解釈を曲に施しながら。今の私を見てくれていますか、と。