ピレモン書 4節〜6節

図をクリックすると、原寸で表示されます。

獄中書簡の中で一番短いピレモンへの手紙から確認してみます。この手紙は短いので、章の区分が有りません。全体的な説明は次の機会に譲り、早速一つの文に取り組んでみます。
今回取り上げるのは、4〜6節です。

英語では次のように表示されます。
4 I thank my God always, making mention of you in my prayers, 5 because I hear of your love and of the faith which you have toward the Lord Jesus and toward all the saints; 6 and I pray that the fellowship of your faith may become effective through the knowledge of every good thing which is in you for Christ's sake. (NASB)
括弧内の部分は、原文には無い補足であることを示しています。e-sword のYLTを見ると、この語は有りません。

新改訳では次のように表示されます。
4 私は、祈りのうちにあなたのことを覚え、いつも私の神に感謝しています。 5 それは、主イエスに対してあなたが抱いている信仰と、すべての聖徒に対するあなたの愛とについて聞いているからです。 6 私たちの間でキリストのためになされているすべての良い行ないをよく知ることによって、あなたの信仰の交わりが生きて働くものとなりますように。

日本語では三つの読点が有り、三つの文として訳されています。しかし、英文では、ピリオド一つで、一つの文です。この文を訳す時にちょっと工夫しなければならなかったのは、6節の訳であると思います。新改訳では「〜なりますように」という祈願文の末尾を用いました。新共同訳を見ますと、6節の末尾は、「祈っています」訳しています。NASBが and I pray を補っていますから、そういう訳になるのが自然だと分析されたからでしょう。このことは、構文分析をすると更に明らかになるのです。

主節は4節にある「私は神に感謝している」となります。それに付帯状況を表す分詞表現「祈りの中であなたを思い出しながら」が続いています。ところがパウロはここで、その「祈り」の内容を示さず、理由の副詞句を割り込ませたのです。彼にとっては、その理由がもっと大事で早く述べたい事柄だったのだと推察されます。そして、その理由を言い終えてから、やっと、その「祈り」の内容を示したのです。実際の文では離れてしまっていますが、that節が「〜という祈り」というつながりで、祈りの内容を示しています。間が開いたために、6節にたどり着いた時には、英語のthat節が、何につながるのかが不明瞭になってしまうので、NASBは、その不明瞭さを解消するために、and I pray を補ったのです。以前の構文分析図では、prayer と、その内容を示すthat節が同じ物を指すということで、同じインデントで記入されていましたが、4、5節の流れを表すのに邪魔になると判断しましたので、改めました。

節毎にきれいに訳す努力ということもさることながら、今回は、パウロが先に理由を言いたかったという部分を考慮すると、このままの和訳の方が、その気持ちをうまく表現できているのかもしれません。

ちなみに、mentionは「言及」という意味で理解されることが多いと思いますが、e-swordを使って、聖書ウィンドウでKJV+を選び、Strong’s Number をクリックし、辞書ウィンドウでThayerを選択すると、remembrance, memory, mention と説明されており、「記憶する」という感覚が強い語であることがわかります。新改訳の「覚え」という訳も、その理解によります。
 また、effectiveと訳されている語を同様に調べると、activeと説明されています。Strong’sの方では、powerfulという意味も示されています。


構文分析の結果に従った訳

私は、

あなたが主イエスと全ての聖徒達に対して持っている、あなたの愛と信仰について聞いているので、(5節の訳) 

あなたの信仰の交わりが、キリストのゆえにあなたの中に存在している、全ての良い物事についての知識を通して、活発になりますようにという(6節の訳)

私の祈りの中で、あなたのことを思い出しながら、いつも私の神に感謝しています。(4節の訳)

*「あなた」は、手紙の受取人のピレモンのことです。



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