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2007-06-05 ルビかけ処理 その後02 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

20070602の記事(d:id:works014:20070602)に脚注で追記したとおり、その日の内に丁寧な返信をいただいていました。

その後のやりとりの中で、こちらの希望に応じて、公開を前提にメールの内容をまとめて書き直してくださいました。


以下に、その全文を掲載させていただきます。

●“JIS X 4051”の表5についての質問への回答


              日本エディタースクール

                  小 林  敏

                   2007_06_05


〈質問の内容〉


 “JIS X 4051”の表5の左欄(16)及び(17)と上欄(3)との交差セルが空白となっている.“空白”は“ルビかけ”の誤りではないか?

 なお,左欄とは“前の文字クラス”,上欄とは“後ろの文字クラス”を意味します.また,(16)又は(17)は“ルビ付き親文字群中の文字”,(3)は“行頭禁則和字”の文字クラスです.


〈回答〉


 最初にお断りしておきますが,私は,第3次改正原案作成委員会の幹事を担当していたものです(規格票の解説の最後に記載があります).しかし,現在は,この原案作成委員会は,解散されています.したがって,あくまで,かつて原案作成に関係した者ではありますが,以下の説明は,原案作成委員会の立場を述べたものではなく,あくまでも,組版に関心がある1人としての考えと理解してください.

 そして,なぜ私が回答をしているかといえば,日本規格協会で原案作成委員会に関係した人の情報として,“JIS X 4051”ならアイツが詳しいだろうということで,質問が回送されてきたことによります.


1 上で述べたように原案作成委員会は解散しているので,責任をもって回答できる組織は,残念ながら存在していない.


2 前の文字クラスが(3)で後ろの文字クラスが(16)及び(17)の場合の“ルビかけ”を“空白”とする方が,18ページの3.1)と19ページの3.2)で規定している内容との整合性がとれる,と思われます.それは,18ページの3.1)と19ページの3.2)のルビを掛けてよい文字クラスとして“行頭禁則和字”は入っていないからです.

 なお,46ページの備考に,処理系定義で,小書きの仮名は“行頭禁則和字”から除外する規定があります.そして,除外した場合は,平仮名の小書きの文字(“っ”“ゃ”など)は平仮名の文字クラスとなりますから,“従って”に付く“したが”というルビ文字がはみ出した場合,“っ”にルビ文字をルビ文字サイズの全角まで掛けることが可能になります.


3 行頭禁則和字には,次のような文字が含まれています.

 (1)音引

 (2)仮名の繰り返し符号

 (3)々(同の字点)

 (4)小書きの片仮名(ァィッなど)

 (5)小書きの平仮名(っょゅなど)


4 すると,当然,次のような疑問が出てきます.質問の疑問も,ここにありました.

 処理系定義の処理法は別にして,少なくとも小書きの平仮名(っょゅなど)には,前にくる漢字に付くルビで,はみ出したルビ文字を最大でルビ文字サイズの全角まで掛かってよいのではないか?


5 ここで,原則に戻って考えてみます.

 ルビが掛かってよいかどうかの判断は,次の2点です.

 1)他の文字やアキにルビ文字が掛かった場合に,誤読させる危険はないか?

 これは他の漢字にルビは掛けないというルールまたは掛けてもルビ文字サイズの二分までというルールになります.

 2)他の文字やアキにルビ文字が掛かった場合に,体裁が悪くないかどうか?

 これは「幸」という場合に,“さいわい”というルビ文字を付ける場合は,起こしの“「”にはルビを掛けたくない(または最大でルビ文字サイズの二分まで),というルールになります.なお,“」”には,一般に,その形から最大でルビ文字サイズの1字まで掛かってよいということになるでしょう.

 ただし,“「幸」”の場合は,“幸”の前後を四分アキにして,前後のカギにルビ文字サイズの二分だけ掛ける形か,“幸”の前後を二分アキにして,前後のカギにルビ文字を掛けないようにするのがよいでしょう.

 ということからは,従っての“っ”に,“が”というルビ文字はルビ文字サイズの全角まで掛かってよいと思います.縦組の場合は,ルビ文字サイズの全角まで掛けるが(特に肩ツキの場合),横組の場合は,ルビ文字サイズの二分だけになります.

 そして,ルビの付け方についていえば,絶対的なルールはなく,あくまで,これより,この方がいいよね,というのが実情だと思っています.だから,その辺のいいかげんさがコンピュータの機械的な処理のむつかしいところだと思っています.


6 以上のことを考えると,“JIS X 4051”の表5の(16)及び(17)と(3)の関係については,再検討が必要であると思います.

 行頭禁則和字という文字クラスの括りかたは,行頭・行末処理という点では問題がないが,ルビ処理を考え場合は,異なる文字種を一括している,といえます.ですから,行頭禁則和字を更に細分化した文字クラスを作成する必要があると,私は思っています.つまり,ルビ文字が掛かってよいグループと,そうでないグループです.例えば,次のようになります.

 掛かってよいグループ 前述の(2)と(5)

 掛かってよくないグループ 前述の(1),(3),(4)

 *(1)や(2)の例はほとんどない(特に後ろにくるケース)と思いますが,全て決めないと規格にならないということで,この辺に規格作成の面倒さもあります.

 *例は,“JIS X 4051”の考え方に従ったものです.現在のところ,片仮名は漢字の文字クラスに含まれているので,それに従ったものです.私は漢字からはみ出したルビが片仮名に掛かっても誤読されるわけではないので,掛かってもよい,と思っています.この考えに従えば,別の文字クラス分けも考えられます.

 *行頭禁則和字に片仮名や同の字点が含まれていることが,18ページの3.1)と19ページの3.2)のルビを掛けてよい文字クラスに行頭禁則和字が入っていない理由かと思います.


7 次に“JIS X 4051”と組版ソフトとの関係です.

 “JIS X 4051”は,絶対に厳守すべきルールというよりは,参照するルールと思っています(あるいは,この程度は少なくとも処理してほしいね,という内容であると思っています).規格そのものでは,処理系定義により云々という形で,多くの異なった処理法を規定しています.

 また,処理系なりに考え,よりよい処理結果になるように工夫することは必要でしょうし,それが価格を付けて組版ソフトを販売している会社のするべきことと思っています(その結果をどう評価するかは組版ソフトを使うユーザーでしょう).

 *“JIS X 4051”に完全に対応している組版ソフトはないと思いますし,“JIS X 4051”の規定でも,ルビならルビ,漢文なら漢文という個々の要素ごとに対応することも認めています.

 *また,個々の要素,例えば,“ルビ処理”についても“JIS X 4051”で規定している“熟語ルビ”の処理を実装している組版ソフトは,現在のところはないでしょう.しかし,日本語組版処理のルビとしては,熟語の場合は,それなりに工夫が必要ですよ,と指摘することが重要で,その指摘に対し,組版ソフトを開発する人に対する問題提起というか,課題を与えることにつながり,それにより使いやすい組版ソフトが開発されていけば,仕事の合理化につながると思います.

 *そして,日本語組版処理は,思ったほど簡単でなく,けっこうややこしい処理が必要なことです.疑問の原因として指摘されていたInDesignは,そうした意味でいえば,日本語組版処理についていえば,とても努力されていると思います.まだまだ要望したい事項や問題点もあります.しかし,少なくとも対応しようという姿勢はもっています.こうした態度は評価してあげることは必要だと思っています.もちろん,批判をするなということではなく,批判や批評は,どんどんしていく必要があるし,それがいずれは改良につながります.


8 最後に,日本工業規格は,5年ごとに見なおすことになっていますが,残念ながら“JIS X 4051”を改正するための作業の開始は,現在のところ期待できないように思われます.どこかの団体が手を上げて改正作業を開始するという機運を作っていくことが必要かもしれません.(そして,こうした規格のドキュメント作成は,たぶんにボランティア的な活動が必要です.JIS X 0213なども解説にそうした記載があります.)

 前述した“熟語ルビ”も,審議時間の関係で,私自身としては不十分なものと思っています(でも,それが必要よ,と指摘したことでは意味があるかと思っています).その他の箇所でも,再検討が必要な事項はありますし,追加したい要素もあります(解説の最後にいくつかの残された課題は列挙しておきました).

 いずれにしても,こうした規格に多くの方が関心をよせ,いろいろと意見を戦わせ,いずれかの機会によりよいものにしていくことが必要なように思います.


よく考えもせず「行頭禁則和字が抜けているのでは」とまで言い放った、私の浅はかで短絡的な質問に対する、示唆に富んだ貴重な原案作成の当事者のご意見です。小林様、公開をも快諾くださり、本当にありがとうございました。


InDesignが従来のDTP組版ソフトに比して、圧倒的な機能を有しているのは誰もが認めるところだと思います。

だからこそ、今回の件に関しても、

「開発担当者が表5と本文の不整合に疑念を持って、ルビかけ許容文字を分離するなど、もう少しつっこんで検討すべきだったのでは?」

と、無い物ねだりをしてしまうのだろう、私。 

Adobeさん、ガバショ!! ということで.........

こにこに 2010/07/07 18:23 3年前の記事にコメントで申し訳ないです。
親文字の後の小書きの平仮名にはみ出したルビが掛からないInDesignの仕様について、
その後アドビに問い合わせはされたのでしょうか?
なにもアクションを起こさないと、変更されることはないと思います。(起こさなくても変更しちゃう機能もありますが)
InDesign CS5で確認したところ、CS2(とCS4)と同じ結果で、「従って」の「っ」にはルビは掛かりませんでした。
ただ、不思議なことにフレームグリッド設定で[字間]を-0.1H(あるいはそれ以上)に設定してあげると突然「っ」にルビがかかるようになります。(これこそバグですか?)
弊社でも、このInDesignの挙動のため、余計なスタイル設定が増えることに頭を抱えてます。

works014works014 2010/07/07 19:19 >こにさん
いつもありがとうございます。

Adobeさんへのアクションについては、http://d.hatena.ne.jp/works014/20070526 の頭の方に記した通り、当時既にサポート担当の方から「JIS X 4051に則って、行頭禁則和字にはかからない仕様です」ということで一蹴されてしまっています。
「JIS X 4051に則って」いるのは確かなので変更するつもりはないだろうと考えております。
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仰っている現象は先方から見ればバグ以外の何ものでもないでしょうねぇ。
※フレームグリッドを利用した均等ツメはほとんど使わないのですが、ルビ部が元の送りになってしまうのでヘタすると字詰めが変わる(例えば20字詰めに19字しか入らない)……というコトを最近聞きました。これも悩ましいですね。
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最近のルビの記事に書いたことですが、例えばセンター付きのモノルビが(前後の文字種によっては)センターに入らない仕様は、とても「JIS X 4051に則って」いるとは言い難いのですが……。
これはタイミングをみてカスタマーポータルにて質問するつもりです。
※お気づきでしょうが、他にも色々と投げていて……結果は追記しています。