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2009-06-09 旧字体で気にかかること_04 このエントリーを含むブックマーク このエントリーのブックマークコメント

ちょっと確認したいことがあって調べていた。


漢字整理案(大正8年、文部省普通学務局国語調査室)

凡例には

(一)本案は尋常小学校の各種教科書に使用せる漢字二千六百余字に就きて、字形の整理を行ひ其の標準を定めたるものなり。

(二)本案の整理方針は簡便を主とし、慣用を重んじ活字体と手書体との一致を図るに在り。

(三)本案は康煕字典の字形を本として整理を行ひたるものなり。

と記されており*1、また、解説には

一般に「漢字整理案」に掲げられている字体が小学校の国語教科書(国語読本)に用いられたとされるのは、次のような事情によっている。すなわち、大正14年11月に常用漢字表の字体を整理した「字体整理案」が臨時国語調査会から発表されるが、同案の整理方針がこの「漢字整理案」におけるものとほぼ同様のものであり、それが採用されたということである。

とある(大字は標準体、小字は字典体)。


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  • 「篇」の字典体は「一コノ」型

下段にある三字は許容体案(大字は許容体、小字は標準体)。

その凡例には

(一)許容体は古字俗字略字等を問はず、標準体に比し簡単にして書き易く、又は慣用の久しく且広きものより之を採用せり。

とある。


常用漢字表(昭和6年、臨時国語調査会)

大正12年に発表された常用漢字表を修正したもの(詳しい解説は引用元のpdfを参照していただきたい)。


f:id:works014:20090609162153j:image:w530

  • 巻末に『注意』として、「本表においては( )印を附した原字を捨て、これに対する簡易字体を一般に採用する積である。」とある。

漢字字体整理案(昭和12年、国語審議会

凡例には

一 本案は昭和六年五月臨時国語調査会で発表した常用漢字表(一八五八字)の文字について字体を整理したものである。

二 本案は康煕字典の字体を本として整理したもので、その整理の方針は特別の場合を除く外、慣用を重んじ、簡便を主としたものである。

とある(画像中の○については引用元のpdfを……)。


f:id:works014:20090609162131j:image:w530

  • 「戸/戻/房/所/編」については「字典体を採用する字」として巻末に「ノコノ」型に作った字体が掲載されている。

標準漢字表(昭和17年、国語審議会

詳しい解説は引用元のpdfを参照していただきたいが、凡例にあたる部分には

一、本表の漢字は臨時国語調査会発表の「常用漢字表」実行の状況に照し、時運の要求に応じて選定したものである。

一、本表の漢字中には普通に行はれてゐる簡易字体を採用した。

とあるが、康煕字典体については言及がない。


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  • 従来字典体とされていたものと比べると「編/啓」が整理・変更されている。
  • 「一コノ」型の「炉」は記載なし。
  • 画像ではヌケているが「肩」は字典体と同じ「一コノ」型(090611追記)

今日はココまで(後日追記する)。

なお、「脳/悩」についてはid:ogwataさんの『「正字」における束縛の諸相』というpdfを見ていて気になったので、抜き出しておいた(以後では割愛するつもり)。


活字字体整理案昭和22年、活字字体整理に関する協議会)

当用漢字字体表の基礎となったもの(詳しい解説は引用元のpdfを参照していただきたい)。


f:id:works014:20090609214441j:image:w530


f:id:works014:20090609214440j:image:w530

  • 字典体云々の記載は無いものの「偏/雇/顧/啓/肩」の下の字体は明らかに従来の康煕字典体とされていたものではない(「遍」も)。
  • また下の字体の内、「字体については整理中」とされた「当用漢字表」*2と同一と認められるのは「戸房所扇啓(爐)」のみ。

以下、青字部分090610追記

もちろん学問的な動機付けはあるのだろうが、素人眼には字典体から離れて「何もかも一緒くた」にしてしまった感がある。

とくに「啓」は、「拡張旧字体」ともいえそうな「ノコノ」型の「簡易字体」を標準漢字表/当用漢字表で採り、その整理案として「一コノ」型の「康煕字典体」を挙げるという、なんとも笑ってしまいそうな経過を辿っている。


●『明朝体活字字形一覧』で適当に拾うと以下の通り。


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……というわけで、一部字種の旧字体の選定にいまだに悩むのに加えて*3、出現頻度調査など他の資料、あるいは「扁/騙」との兼ね合いもあるだろうが*4、「表外漢字字体表」で「ノコノ」型の「篇」が採られたことに大きな疑問が残る*5

私的には情けないことにいつまでたっても「堂々巡り」をしているように感じる……。


※元資料はすべて文化庁国語施策情報システムHP『国語施策沿革資料11:漢字字体資料集(諸案集成1)』及び『国語施策沿革資料12:漢字字体資料集(諸案集成2)』より

※なお、ここでは取り上げなかったが、大正12年の「常用漢字表」及び14年の「字体整理案」については、うわづら文庫からダウンロード可能な木枝増一『臨時國語調査會發表/漢字漢語假名遣整理案』に収録されているのを確認している(090611追記)。

※上記青字部分以外にも、画像を変更したり、テキストに些細な追記を加えたが、その旨を明記していない部分もあることをご容赦願いたい(090610及び090611)。

*1:旧字+片仮名書きを改めた、以下同

*2:画像は割愛

*3:「偏/啓/遍」は「ノコノ」型を採ってしまっている

*4:あいにく他に適当な資料も持ち合わせていないので迂闊なことはいえないが

*5:こちらももちろん印刷標準字体に合わせて「ノコノ」型を採っている

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